異世界で捨て子を育てたら王女だった話

せいめ

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バザー

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 もうすぐ年に一度の神殿のお祭りがある。
 その日は、各地から沢山の人が神殿に訪れるほど、盛大な祭りらしい。

 そしてこの国の人達は、信仰心の厚い人が多いようで、神殿の力がとても強いらしい。
 だから上位の神官であるおじ様も、強い権力をお持ちのように見える。
 おじ様との生活は、裕福な貴族の生活と何ら変わりないし、おじ様との繋がりが欲しいのか、顔も合わせたこともない人達から私に、縁談話もきていると聞いた。
 しかしおじ様は、そんな縁談話を無視してくれているので有り難いと思う。


 私の方は、神殿のお祭りの日に、孤児院でバザーをするらしく、その準備に忙しくなっていた。
 バザーで刺繍のハンカチを作って売ることになり、今、必死に制作しているのだ。
 勿論、魔法での制作だ。私が直接やるよりも、早くて綺麗に仕上がるのだから、今更、自分の力でやろうなんて思わない。
 魔法は時と場合によっては、人をダメにするもののようだ。


 おじ様は、私が刺繍のハンカチを制作することを知ると、すぐに馴染みの商会を呼んでくれて、必要な材料を沢山揃えてくれる。


「リーゼ。毎日遅くまで刺繍をしていると聞いた。
 昼間は孤児院で忙しく働いているのに、夜まで忙しく働くなんて、体は大丈夫なのか?」

「魔法を使って作っているだけですから、大丈夫ですわ。
 それよりも、おじ様が刺繍のハンカチの材料を沢山買って下さったので、とても助かっております。
 刺繍糸もハンカチも、最高級の物を揃えて下さったお陰で、良いものが作れていますわ。
 孤児院の院長先生が、これなら高く売ることが出来そうだと喜んで下さっていますのよ。
 すべておじ様のお陰ですわ。ありがとうございます。」

「そうか……。それなら良かった。
 他に何か必要な物があれば何でも言いなさい。
 エリーゼは、私に遠慮して何も言えないから、ドレスや宝石など何も欲しがらないのかと心配しているんだ。」


 ああ……、私はおじ様が大好きだなぁ。
 カッコよくて優しい、私の理想のお父様だよ。

 ドレスも宝石も孤児院通いの私には必要ないから、欲しがらないだけなのだけど。
 それに、私が心から欲しているのは、老後の蓄えになる現金だけだとは、口が裂けても言えない……。
 大好きなおじ様に、私のブラックなところは見せられないもの。


「おじ様との今の生活に満足しておりますし、必要な物は全て揃っておりますから大丈夫ですわ。
 いつもおじ様には感謝しております。」

「そう言ってくれるなら良かった。
 体に気を付けて頑張りなさい。」

「はい。おじ様も仕事が忙しいとお聞きしておりますが、体に気を付けて下さいね。
 おじ様に何かあったら、悲しむ者が沢山いるのですから。」

「ああ。ありがとう。」


 イケオジが優しく微笑んでくれている。
 私、今の生活が幸せ……。おじ様に何かあったら、本気で病むかもしれない。

 今の私は、ファザコンに近い状態になっているよ。
 こんな年にもなって参ったな……。


 孤児院では、バザーの時にクッキーなども作って売るらしく、小麦や砂糖などの材料の寄付を受け付けているようだ。
 そんな時、私は院長先生に呼ばれる。


「リーゼ嬢。バザーの時に、いつも小麦を寄付してくれている貴族の方から、今年はジャガイモが豊作だったからと、ジャガイモを沢山頂いたのだ。
 かなりの量を頂いて、倉庫の中がジャガイモだらけになっているんだよ。」

「ジャガイモですか……。」

「このジャガイモを使って何か作れないだろうか?
 この国でジャガイモと言ったら、メイン料理の付け合わせか、スープの具材くらいで、バザーで売り出すような料理は思い浮かばなくてね。
 他国から来たリーゼ嬢なら、異国の料理に詳しいかもしれないと思って声を掛けてみたんだ。
 何かいいアイディアがあったら教えて欲しい。」


 ジャガイモなら、コロッケとかポテトフライだよね!


「ジャガイモ料理なら少しだけ知っています。
 油で揚げる料理ですが、大丈夫でしょうか?」

「知っているのか?
 試しに作ってもらえないだろうか?」

「この国の人達が、気に入ってくれるかは分からないですが、作ってみたいと思います。」

「助かるよ!」


 ということで、私はコロッケを作ることになった。



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