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閑話 王弟アルベルト
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ラリーア国の間者と共謀し、王女クリスティーナとクリフォード侯爵令嬢であるリーゼの誘拐に加担した、マクファーデン公爵令嬢とレストン子爵令息の国外追放が決まった。
更に、マクファーデン公爵家とレストン子爵家の取り潰し、全財産の没収も決定した。
長年、我が国の令嬢の頂点に君臨していた、あのすました悪女が裁判で取り乱し、レストン子爵令息に騙されたなどと叫ぶ姿と、恋慕していたマクファーデン公爵令嬢に、あっさりと裏切られたレストン子爵令息の絶望する顔は見ものだった。
そして傍聴席の最前列では、そんな二人を憎悪に満ちた目で睨みつけているオルダー伯爵がいる。
あの真面目で穏やかそうなオルダー伯爵が、嫌悪や敵意を剥き出しにするくらい、怒りに震えているということらしい。
リーゼとは仲が良かったのだから、その怒りは当然だ。
私だって、この気持ちをどうすればいいのかが分からないのだから。
リーゼの装着する魔法具に記録されていた、マクファーデン公爵令嬢とレストン子爵令息、ラリーア国の間者らしき者の会話の内容が、二人の犯罪行為の重要な証拠と認められ、証拠となった二人の会話を裁判で流すと、会場内の貴族達からは怒号が飛び交うほど、荒れた裁判になった。
裁判の場では、命懸けでクリスティーナを守り抜いたリーゼの功績を称え、クリフォード侯爵家が陞爵して、公爵家になることも発表された。
更にリーゼのことについては、表向きは怪我で療養中ということになっている。
令嬢が行方不明になっているということは、醜聞になってしまうので、内密にするしかなかったのだ。
そしてクリスティーナにも、リーゼは怪我をしていて、しばらくは領地で療養していて会えないと伝えている。
行方不明になっていることを知ったら、幼いクリスティーナはショックを受けるだろうから、今は伝えない方がいいだろうということになったのだ。
「叔父さま。お姉様に会いたいの!
怪我をしているなら、お見舞いに行きたいわ。」
「……クリスティーナ。リーゼは、今は王都にいないんだ。
空気の綺麗なクリフォード公爵領で、怪我が治るまで休むらしい。」
「会えないの……?手紙を書いたら、お返事くれるかしら?」
「手も怪我しているから、今はペンを持てないと聞いているんだ。返事は難しいかもしれないな。」
「そうなんだ……」
「……でも、クリスティーナが手紙を書いてくれたら、リーゼは喜ぶだろう。
手紙を書くなら、リーゼに渡して欲しいと、私からクリフォード公爵に頼んでやるよ。」
「本当?それなら今から書いてくるわ!」
何も知らないクリスティーナに嘘をつくことは、例えようのないほどに心が痛むことだった。
そんな時、先にラリーア国の調査に向かわせていた暗部の者達からの知らせが届く。
現在、ラリーア国では、腐敗した王政に不満を持つ民衆と、地方貴族や下位貴族による革命が起きており、王政が崩壊する目前らしく、上位貴族達は他国に亡命しているらしい。
クリスティーナを狙っていた者達は、前国王に近い上位貴族だと考えられ、その者達の調査を継続しているようだが、革命で貴族の力もなくなりつつあるので、その者達が今までのように、クリスティーナを攫うような余力はないだろうとのことだった。
そして肝心のリーゼのことについてだが、リーゼらしき令嬢が、ラリーア国に入国しているという情報はないという。
一体どこにいる……?
無事なのか?腹を空かしてないか、眠れているのか、危害を加えられていないか……。
考えれば考えるほど、正気を失いそうになる。
私はリーゼに、おかしくなりそうなほど惚れているようだ。
こんな気持ちになるなんて知らなかった……
そんな私は、裁判を終えてすぐに旅立つことになる。
表向きは、特使としてニューギ国に行くということになっているが、本当の目的はリーゼの捜索だ。
「叔父上。クリフォード公爵令嬢を見つけたら何を話すのです?
愛の重い執着男は嫌われますから、言動や行動には注意して下さいね。
クリスティーナが寂しがらないように、私がしっかり面倒を見るようにしますが、いつまでも帰って来ないと、叔父上を忘れてしまうかもしれないですから、必ず帰って来て下さいね。」
「……分かっている。
クリスティーナを頼んだぞ。」
早朝の出発にも関わらず、エドワードと陛下、王妃殿下が見送りに来てくれた。
エドワードは、こんな時でも相変わらず毒を吐いているが、きっとアイツなりに、この場の雰囲気を明るくするために言ってくれているのだと思われる。
〝クリフォード公爵令嬢を発見出来ることを祈っている。
無事に帰って来るのを、クリスティーナと一緒に待っている〟とでも言いたいのだろうな。
「アル、気を付けてな。」
「はい。それでは行って来ます。」
最低限の護衛を連れ、私は王都を出発したのであった。
更に、マクファーデン公爵家とレストン子爵家の取り潰し、全財産の没収も決定した。
長年、我が国の令嬢の頂点に君臨していた、あのすました悪女が裁判で取り乱し、レストン子爵令息に騙されたなどと叫ぶ姿と、恋慕していたマクファーデン公爵令嬢に、あっさりと裏切られたレストン子爵令息の絶望する顔は見ものだった。
そして傍聴席の最前列では、そんな二人を憎悪に満ちた目で睨みつけているオルダー伯爵がいる。
あの真面目で穏やかそうなオルダー伯爵が、嫌悪や敵意を剥き出しにするくらい、怒りに震えているということらしい。
リーゼとは仲が良かったのだから、その怒りは当然だ。
私だって、この気持ちをどうすればいいのかが分からないのだから。
リーゼの装着する魔法具に記録されていた、マクファーデン公爵令嬢とレストン子爵令息、ラリーア国の間者らしき者の会話の内容が、二人の犯罪行為の重要な証拠と認められ、証拠となった二人の会話を裁判で流すと、会場内の貴族達からは怒号が飛び交うほど、荒れた裁判になった。
裁判の場では、命懸けでクリスティーナを守り抜いたリーゼの功績を称え、クリフォード侯爵家が陞爵して、公爵家になることも発表された。
更にリーゼのことについては、表向きは怪我で療養中ということになっている。
令嬢が行方不明になっているということは、醜聞になってしまうので、内密にするしかなかったのだ。
そしてクリスティーナにも、リーゼは怪我をしていて、しばらくは領地で療養していて会えないと伝えている。
行方不明になっていることを知ったら、幼いクリスティーナはショックを受けるだろうから、今は伝えない方がいいだろうということになったのだ。
「叔父さま。お姉様に会いたいの!
怪我をしているなら、お見舞いに行きたいわ。」
「……クリスティーナ。リーゼは、今は王都にいないんだ。
空気の綺麗なクリフォード公爵領で、怪我が治るまで休むらしい。」
「会えないの……?手紙を書いたら、お返事くれるかしら?」
「手も怪我しているから、今はペンを持てないと聞いているんだ。返事は難しいかもしれないな。」
「そうなんだ……」
「……でも、クリスティーナが手紙を書いてくれたら、リーゼは喜ぶだろう。
手紙を書くなら、リーゼに渡して欲しいと、私からクリフォード公爵に頼んでやるよ。」
「本当?それなら今から書いてくるわ!」
何も知らないクリスティーナに嘘をつくことは、例えようのないほどに心が痛むことだった。
そんな時、先にラリーア国の調査に向かわせていた暗部の者達からの知らせが届く。
現在、ラリーア国では、腐敗した王政に不満を持つ民衆と、地方貴族や下位貴族による革命が起きており、王政が崩壊する目前らしく、上位貴族達は他国に亡命しているらしい。
クリスティーナを狙っていた者達は、前国王に近い上位貴族だと考えられ、その者達の調査を継続しているようだが、革命で貴族の力もなくなりつつあるので、その者達が今までのように、クリスティーナを攫うような余力はないだろうとのことだった。
そして肝心のリーゼのことについてだが、リーゼらしき令嬢が、ラリーア国に入国しているという情報はないという。
一体どこにいる……?
無事なのか?腹を空かしてないか、眠れているのか、危害を加えられていないか……。
考えれば考えるほど、正気を失いそうになる。
私はリーゼに、おかしくなりそうなほど惚れているようだ。
こんな気持ちになるなんて知らなかった……
そんな私は、裁判を終えてすぐに旅立つことになる。
表向きは、特使としてニューギ国に行くということになっているが、本当の目的はリーゼの捜索だ。
「叔父上。クリフォード公爵令嬢を見つけたら何を話すのです?
愛の重い執着男は嫌われますから、言動や行動には注意して下さいね。
クリスティーナが寂しがらないように、私がしっかり面倒を見るようにしますが、いつまでも帰って来ないと、叔父上を忘れてしまうかもしれないですから、必ず帰って来て下さいね。」
「……分かっている。
クリスティーナを頼んだぞ。」
早朝の出発にも関わらず、エドワードと陛下、王妃殿下が見送りに来てくれた。
エドワードは、こんな時でも相変わらず毒を吐いているが、きっとアイツなりに、この場の雰囲気を明るくするために言ってくれているのだと思われる。
〝クリフォード公爵令嬢を発見出来ることを祈っている。
無事に帰って来るのを、クリスティーナと一緒に待っている〟とでも言いたいのだろうな。
「アル、気を付けてな。」
「はい。それでは行って来ます。」
最低限の護衛を連れ、私は王都を出発したのであった。
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