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面倒な人達
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イケオジ神官が絶句し、気不味い雰囲気が流れる。
あの毒母の本性を知ってしまい、相当なショックを受けているようだ。
「神官様にお願いがございます。
私はこの国で、一からやり直しをしたいと思っております。
ですから、私がここにいることを両親に知らせないで欲しいのです。
どうか……、ご慈悲を……。」
この国で頑張ると決めた私は、イケオジ神官の前に行き、跪いている。
この世界で跪いてお願いするのは、前世で土下座をするのと同じくらいのことだと思う。
ここまでするのは大袈裟かもしれないが、私が今の生活を守るために、どこまで真剣なのかを伝えたかった。
そのために、毒母の知り合いに跪くくらいのことは、大したことないと思っている。
「……何てことだ。
君は私なんかに跪く必要はないんだ。」
イケオジ神官は、私の手を取って、立ち上がらせる。
この神官は高貴な生まれなのか、所作がとても美しく見えた。
「どうやら私は……、何も知らなかったようだ。
君が私を怯えた目で見ている理由がやっと分かったよ。
私は、君がこの国にいたいと考えているなら、それを邪魔しようとは思わないし、君が望まないのなら、君の両親に知らせようとも思っていない。
急に呼び出して、君を怖がらせてしまって悪かった。」
その言葉をどこまで信じていいのか分からないけど、私が今の生活を続けたいという気持ちは分かってもらえたようだ。
その後、何となく元気のないイケオジ神官と仕事の話などをした後に、私はやっと解放される。
何か困ったことがあれば、すぐに私を訪ねなさいと言われたけど、余程のことがない限りそんなことはしませんからね。
だって貴方は、あの毒母の親しい友人みたいですから……。
今回のことで気がついたことは、今の仕事は、接客業だけあって、いつ誰に見つかるか分からないということだった。
しかも、私が知らなくても、毒母を知る人から見たら、毒母に似ている私は、すぐにあの人達の娘だとバレるということ。
貴族などの富裕層が利用する店は、他国の貴族のことを知る人が来るということらしい。
人目につかない、別の仕事を探した方がいいのかなぁ?
今だから思うことは、港町の女将さんの店は、お客さんは顔馴染みの平民の人ばっかりだから良かったのだろうな。
今の仕事は給料はいいし、賄いが美味しいし、住む場所もあるから気に入っているんだけど、どうしよう?
神官様との面会を終えた私は、今後のことを考え不安になり、気持ちが沈みつつあった。
気分転換にお茶でもして帰ろうかと、考えながら歩いていると、またあの聖騎士に遭遇する。
「リーゼ、呼び出しは終わったのか?」
「……あ、はい。終わりました。」
「今日は休みだと言っていたよな?」
「あっ……、はい。」
「私も今日は、ちょうど仕事が終わったところなんだ。
良かったら、一緒にお茶にでも行かないか?」
私が休みだとさっき話をしたから、誘ってきたのね。
「申し訳ありません。
今、少し気分が悪いので、帰って休もうかと思っていたのです。
せっかく誘って頂いたのに、本当に申し訳ありません。」
「確かに……、私の目にも君が元気がなさそうに見えていた。
大丈夫か?
具合の悪い君を一人で帰すわけにはいかないから、家まで送らせてくれ。」
ハァー……。余計に面倒なことになってしまったようだわ。
キャサリン達は、こういう人を上手くあしらっているんだよね。プロ根性だよね。本当に凄いよ……。
「いえ。一人で大丈夫ですわ。
騎士様の大切なお時間を、私のために無駄にしないで下さいませ。
それにお店の決まりで、特定のお客様と親しくすることは禁止されているのです。
お気持ちだけ頂きたく思います。」
「確かに、私は君の働く店の客だったな。
君は本当に、職務に忠実な人のようだ。
……困らせてしまって悪かった。」
分かってもらえたらしい。
この騎士様、普通にいい人っぽいもんね。
ジュースがこぼれてズボンが汚れてしまった時も、普通に感じの良い人だったもん。ああいう時に、人って本性が出たりするからね。
「いえ。騎士様のお気遣いに感謝いたします。
今日はありがとうございました。
それでは失礼致します。」
「ああ……。気を付けて。」
その日から騎士様は、しばらくの間、うちの店に来なくなってしまった。
あの日の断り方が良くなかったかもしれない。
それから更に少しして、また私はオーナーさんに呼び出される。
もしかして、あの聖騎士からクレームでも入った?
オーナーさんは、侯爵家の聖騎士がお得意様になってくれて喜んでいたから、最近店に来てくれてないことを聞かれたりして……。
「リーゼ。急に呼び出して悪いな。
実は、神官様からまたお呼び出しだ。」
そっちでしたか……。
クレームじゃなくて良かったけど、あのイケオジ神官は一体何なの?
「またお呼び出しですか?」
「ああ。大変だと思うが、明後日、仕事を休みにしてやるから行って来てくれるか?
休みでも出勤扱いにするから、その日の分の給金はちゃんと払う。
神殿の聖騎士団はうちの店のお得意様だし、あの神官様はかなり偉い方だから断れないのだ。」
「……はい。分かりました。」
オーナーさんにそこまで言われてしまったら、嫌とは言えない。
今度はあの神官から何を言われるのだろう……?
あの毒母の本性を知ってしまい、相当なショックを受けているようだ。
「神官様にお願いがございます。
私はこの国で、一からやり直しをしたいと思っております。
ですから、私がここにいることを両親に知らせないで欲しいのです。
どうか……、ご慈悲を……。」
この国で頑張ると決めた私は、イケオジ神官の前に行き、跪いている。
この世界で跪いてお願いするのは、前世で土下座をするのと同じくらいのことだと思う。
ここまでするのは大袈裟かもしれないが、私が今の生活を守るために、どこまで真剣なのかを伝えたかった。
そのために、毒母の知り合いに跪くくらいのことは、大したことないと思っている。
「……何てことだ。
君は私なんかに跪く必要はないんだ。」
イケオジ神官は、私の手を取って、立ち上がらせる。
この神官は高貴な生まれなのか、所作がとても美しく見えた。
「どうやら私は……、何も知らなかったようだ。
君が私を怯えた目で見ている理由がやっと分かったよ。
私は、君がこの国にいたいと考えているなら、それを邪魔しようとは思わないし、君が望まないのなら、君の両親に知らせようとも思っていない。
急に呼び出して、君を怖がらせてしまって悪かった。」
その言葉をどこまで信じていいのか分からないけど、私が今の生活を続けたいという気持ちは分かってもらえたようだ。
その後、何となく元気のないイケオジ神官と仕事の話などをした後に、私はやっと解放される。
何か困ったことがあれば、すぐに私を訪ねなさいと言われたけど、余程のことがない限りそんなことはしませんからね。
だって貴方は、あの毒母の親しい友人みたいですから……。
今回のことで気がついたことは、今の仕事は、接客業だけあって、いつ誰に見つかるか分からないということだった。
しかも、私が知らなくても、毒母を知る人から見たら、毒母に似ている私は、すぐにあの人達の娘だとバレるということ。
貴族などの富裕層が利用する店は、他国の貴族のことを知る人が来るということらしい。
人目につかない、別の仕事を探した方がいいのかなぁ?
今だから思うことは、港町の女将さんの店は、お客さんは顔馴染みの平民の人ばっかりだから良かったのだろうな。
今の仕事は給料はいいし、賄いが美味しいし、住む場所もあるから気に入っているんだけど、どうしよう?
神官様との面会を終えた私は、今後のことを考え不安になり、気持ちが沈みつつあった。
気分転換にお茶でもして帰ろうかと、考えながら歩いていると、またあの聖騎士に遭遇する。
「リーゼ、呼び出しは終わったのか?」
「……あ、はい。終わりました。」
「今日は休みだと言っていたよな?」
「あっ……、はい。」
「私も今日は、ちょうど仕事が終わったところなんだ。
良かったら、一緒にお茶にでも行かないか?」
私が休みだとさっき話をしたから、誘ってきたのね。
「申し訳ありません。
今、少し気分が悪いので、帰って休もうかと思っていたのです。
せっかく誘って頂いたのに、本当に申し訳ありません。」
「確かに……、私の目にも君が元気がなさそうに見えていた。
大丈夫か?
具合の悪い君を一人で帰すわけにはいかないから、家まで送らせてくれ。」
ハァー……。余計に面倒なことになってしまったようだわ。
キャサリン達は、こういう人を上手くあしらっているんだよね。プロ根性だよね。本当に凄いよ……。
「いえ。一人で大丈夫ですわ。
騎士様の大切なお時間を、私のために無駄にしないで下さいませ。
それにお店の決まりで、特定のお客様と親しくすることは禁止されているのです。
お気持ちだけ頂きたく思います。」
「確かに、私は君の働く店の客だったな。
君は本当に、職務に忠実な人のようだ。
……困らせてしまって悪かった。」
分かってもらえたらしい。
この騎士様、普通にいい人っぽいもんね。
ジュースがこぼれてズボンが汚れてしまった時も、普通に感じの良い人だったもん。ああいう時に、人って本性が出たりするからね。
「いえ。騎士様のお気遣いに感謝いたします。
今日はありがとうございました。
それでは失礼致します。」
「ああ……。気を付けて。」
その日から騎士様は、しばらくの間、うちの店に来なくなってしまった。
あの日の断り方が良くなかったかもしれない。
それから更に少しして、また私はオーナーさんに呼び出される。
もしかして、あの聖騎士からクレームでも入った?
オーナーさんは、侯爵家の聖騎士がお得意様になってくれて喜んでいたから、最近店に来てくれてないことを聞かれたりして……。
「リーゼ。急に呼び出して悪いな。
実は、神官様からまたお呼び出しだ。」
そっちでしたか……。
クレームじゃなくて良かったけど、あのイケオジ神官は一体何なの?
「またお呼び出しですか?」
「ああ。大変だと思うが、明後日、仕事を休みにしてやるから行って来てくれるか?
休みでも出勤扱いにするから、その日の分の給金はちゃんと払う。
神殿の聖騎士団はうちの店のお得意様だし、あの神官様はかなり偉い方だから断れないのだ。」
「……はい。分かりました。」
オーナーさんにそこまで言われてしまったら、嫌とは言えない。
今度はあの神官から何を言われるのだろう……?
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