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親方さんは、この船の船長さんと、私の今後について相談してくれているようだった。
私が最近の記憶を失っていることや、自分の毒親に売られであろうことなどを打ち明けると、今までいた場所に戻ったら、また毒親に狙われるのではないかと心配までしてくれる、とても優しい親方さんだ。
「リーゼ。船長から聞いたんだが、リーゼを見つけた日、他国の商人に貸していた部屋の窓が粉々に割られていたらしいんだ。
恐らくだが、リーゼを他国に連れていこうとしたヤツが借りてた部屋だ。
部屋を貸していた、商人らしき人物も消えているらしい。リーゼが逃げ出して、人身売買がバレるのを恐れて消えたのかもしれないな。」
「親方さん、船から簡単に逃げられるのでしょうか?」
「いや。別の仲間達の部屋に潜んで、港に着いたら、仲間の荷物にでも入れてもらって、上手く下船するんだろう。
乗船する時は荷物の検査はするが、下船する時はしないからな。」
「……ということは、毒親から私を買った者は、まだ同じ船内にいるのですね。」
「ああ。それで、リーゼに決めてもらいたいことがある。
この船は、ニューギ国に着く前に、食糧と燃料を補給するために、グーム国の港に立ち寄る。
グーム国は温暖な国で、移民が多い国だ。
景気もいいみたいだし、治安もいい。
俺らは食糧を仕入れるために、一旦、グーム国の港で船を降りるのだが、リーゼがその酷い両親から逃げたいと思うなら、グーム国で船を降りて、一からやり直すことも出来るぞ。」
「ええと……、違う国で生活するってことですか?」
「ああ。このままニューギ国に行ってしまうと、リーゼを買った人身売買の奴らに見つかってしまう可能性が高くなるし、住むならニューギ国より、グーム国の方がいい。
それとも、自分のいた国に帰って、今までと違う土地に行くとか、親戚の所に行きたいとかあるなら、リーゼが帰国できるように何とかしてやる。」
うーん?迷うな……。
親代わりの女将さん達の所に戻りたかったけど、またあの毒親が連れ戻しに来て、迷惑をかけるかもしれない。
こんな私があの毒親から逃げるには、遠い異国にいるのが一番なのかもな。
女将さん達には、心配をかけているかもしれないから、早めに手紙は出すようにはしたいけど、この世界って国外からの手紙はちゃんと届くのかな?
「グーム国では、私でも仕事を見つけて生活出来るのでしょうか?」
「大丈夫だ。仕事なら、俺の知り合いがいるから、探してもらえるように頼んでやるよ。
リーゼは宿屋で働いていた経験があるし、令嬢だったから、読み書きも、計算も出来るんだろ?
グーム国の言語は俺たちと同じリーシュ語だから問題ない。
食糧の買い付けに使う、大きな木の箱にリーゼを入れて、船からこっそり下ろしてやるから、身分証がなくても大丈夫だ。
入国してしまえば、平民は身分証を持たない者が殆どだから、生活に不便はないだろう。」
どうやらグーム国には、簡単に不法入国が出来ちゃうってことらしい。
でもそんな世界だからこそ、人身売買で外国に連れて行かれる人が沢山いるのだろうな……。
「その話を聞くと、グーム国は移民に優しい国なのですね。
私……、グーム国で頑張ってみようかと思います。」
「分かった!2日後にはグーム国に着く予定だから、心の準備をしておけよ。」
「はい!ありがとうございます。」
親方さんはなんて面倒見のいい人なんだろう。
助けてくれた親方さんのためにも、新天地で頑張ることに決めた私だった。
そして2日後、予定通りにグーム国に到着する。
「親方さん、この木の箱に入って私は下船するのですね?」
「ああ!腕っ節のいい若いヤツらに、丁寧に運ばせるから大丈夫だ。」
「分かりました。よろしくお願いします。」
「姉ちゃん……。元気でな。」
ジョセフは船でお留守番らしく、ここでお別れになる。
「ジョセフも元気でね。助けてくれてありがとう。
優しいジョセフがいてくれたから、私は元気になれたよ。
これからも困っている人がいたら、助けてあげてね。」
「……うん。」
「ジョセフ。リーゼと別れるのが寂しいのは分かるが、男なんだから泣くんじゃないぞ。」
「な、泣くわけないだろ!」
ジョセフは別れを悲しんでくれているのか、いつもより口数が少なくなっていた。
「ジョセフ。これあげる。」
「……えっ?」
「これは、足首に付けるアンクレットっていうものよ。
小さいけど宝石が付いているから、大切にしてね。」
「……こんな良いものを?」
「私は使わないからあげる。
私を忘れないでね。」
私はイヤリングやネックレス、ブレスレットなど、複数のアクセサリーを身につけていたのだ。
手癖の悪い人なら、倒れていた私から金目の物をとるくらいのことをするだろう。しかし、ジョセフやこの船で働く人たちは、そんなことはしなかった。
毒親に売られて散々だったけど、助けてくれたのが、ジョセフや親方さんだったのは不幸中の幸いだと思う。
「ジョセフ。受け取ってやれ。」
「う、うん。姉ちゃん……、ありがと。
俺、姉ちゃん忘れないよ。」
「うん。私もジョセフを忘れないよ。
元気でね。またどこかで会おうね。」
「うん!姉ちゃんもな。」
そして私は、木の箱に入れられて下船したのであった。
私が最近の記憶を失っていることや、自分の毒親に売られであろうことなどを打ち明けると、今までいた場所に戻ったら、また毒親に狙われるのではないかと心配までしてくれる、とても優しい親方さんだ。
「リーゼ。船長から聞いたんだが、リーゼを見つけた日、他国の商人に貸していた部屋の窓が粉々に割られていたらしいんだ。
恐らくだが、リーゼを他国に連れていこうとしたヤツが借りてた部屋だ。
部屋を貸していた、商人らしき人物も消えているらしい。リーゼが逃げ出して、人身売買がバレるのを恐れて消えたのかもしれないな。」
「親方さん、船から簡単に逃げられるのでしょうか?」
「いや。別の仲間達の部屋に潜んで、港に着いたら、仲間の荷物にでも入れてもらって、上手く下船するんだろう。
乗船する時は荷物の検査はするが、下船する時はしないからな。」
「……ということは、毒親から私を買った者は、まだ同じ船内にいるのですね。」
「ああ。それで、リーゼに決めてもらいたいことがある。
この船は、ニューギ国に着く前に、食糧と燃料を補給するために、グーム国の港に立ち寄る。
グーム国は温暖な国で、移民が多い国だ。
景気もいいみたいだし、治安もいい。
俺らは食糧を仕入れるために、一旦、グーム国の港で船を降りるのだが、リーゼがその酷い両親から逃げたいと思うなら、グーム国で船を降りて、一からやり直すことも出来るぞ。」
「ええと……、違う国で生活するってことですか?」
「ああ。このままニューギ国に行ってしまうと、リーゼを買った人身売買の奴らに見つかってしまう可能性が高くなるし、住むならニューギ国より、グーム国の方がいい。
それとも、自分のいた国に帰って、今までと違う土地に行くとか、親戚の所に行きたいとかあるなら、リーゼが帰国できるように何とかしてやる。」
うーん?迷うな……。
親代わりの女将さん達の所に戻りたかったけど、またあの毒親が連れ戻しに来て、迷惑をかけるかもしれない。
こんな私があの毒親から逃げるには、遠い異国にいるのが一番なのかもな。
女将さん達には、心配をかけているかもしれないから、早めに手紙は出すようにはしたいけど、この世界って国外からの手紙はちゃんと届くのかな?
「グーム国では、私でも仕事を見つけて生活出来るのでしょうか?」
「大丈夫だ。仕事なら、俺の知り合いがいるから、探してもらえるように頼んでやるよ。
リーゼは宿屋で働いていた経験があるし、令嬢だったから、読み書きも、計算も出来るんだろ?
グーム国の言語は俺たちと同じリーシュ語だから問題ない。
食糧の買い付けに使う、大きな木の箱にリーゼを入れて、船からこっそり下ろしてやるから、身分証がなくても大丈夫だ。
入国してしまえば、平民は身分証を持たない者が殆どだから、生活に不便はないだろう。」
どうやらグーム国には、簡単に不法入国が出来ちゃうってことらしい。
でもそんな世界だからこそ、人身売買で外国に連れて行かれる人が沢山いるのだろうな……。
「その話を聞くと、グーム国は移民に優しい国なのですね。
私……、グーム国で頑張ってみようかと思います。」
「分かった!2日後にはグーム国に着く予定だから、心の準備をしておけよ。」
「はい!ありがとうございます。」
親方さんはなんて面倒見のいい人なんだろう。
助けてくれた親方さんのためにも、新天地で頑張ることに決めた私だった。
そして2日後、予定通りにグーム国に到着する。
「親方さん、この木の箱に入って私は下船するのですね?」
「ああ!腕っ節のいい若いヤツらに、丁寧に運ばせるから大丈夫だ。」
「分かりました。よろしくお願いします。」
「姉ちゃん……。元気でな。」
ジョセフは船でお留守番らしく、ここでお別れになる。
「ジョセフも元気でね。助けてくれてありがとう。
優しいジョセフがいてくれたから、私は元気になれたよ。
これからも困っている人がいたら、助けてあげてね。」
「……うん。」
「ジョセフ。リーゼと別れるのが寂しいのは分かるが、男なんだから泣くんじゃないぞ。」
「な、泣くわけないだろ!」
ジョセフは別れを悲しんでくれているのか、いつもより口数が少なくなっていた。
「ジョセフ。これあげる。」
「……えっ?」
「これは、足首に付けるアンクレットっていうものよ。
小さいけど宝石が付いているから、大切にしてね。」
「……こんな良いものを?」
「私は使わないからあげる。
私を忘れないでね。」
私はイヤリングやネックレス、ブレスレットなど、複数のアクセサリーを身につけていたのだ。
手癖の悪い人なら、倒れていた私から金目の物をとるくらいのことをするだろう。しかし、ジョセフやこの船で働く人たちは、そんなことはしなかった。
毒親に売られて散々だったけど、助けてくれたのが、ジョセフや親方さんだったのは不幸中の幸いだと思う。
「ジョセフ。受け取ってやれ。」
「う、うん。姉ちゃん……、ありがと。
俺、姉ちゃん忘れないよ。」
「うん。私もジョセフを忘れないよ。
元気でね。またどこかで会おうね。」
「うん!姉ちゃんもな。」
そして私は、木の箱に入れられて下船したのであった。
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