異世界で捨て子を育てたら王女だった話

せいめ

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本気のかくれんぼ

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 ある天気の良い日だった。

 元気になりつつあるティーナが、外でかくれんぼをしたいと言う。

 警備の厳しい王族専用の中庭で遊ぶことは許されているので、いつものようにその中庭で遊ぶことになる。

 かくれんぼと言っても、いつ刺客がくるのか分からないので、護衛騎士と一緒に隠れるという、本来のかくれんぼとは違うものになっていたが、それでもティーナは楽しいらしい。
 ニコニコしてかくれんぼするティーナを見て、侍女や騎士達まで笑顔になっていた程だった。


「メイナード卿もいれば楽しかったのになぁ。」

「そうですわね。でも、メイナード卿はもうすぐ奥様に赤ちゃんが生まれるらしいですから、今日はお休みらしいのです。
 元気な赤ちゃんが生まれてくるといいですね。」

「うん。赤ちゃん、見てみたいなぁ。」


 鬼ごっこやかくれんぼをやる時に、いつもメイナード卿が鬼の役を上手くやって、場の雰囲気を盛り上げてくれるのだ。
 あの見た目で愛妻家で子供好きなんて、ギャップ萌えよ!なんて素敵なの!…と、心の中で何度叫んだことか。

 そんなメイナード卿には、もうすぐ二人目の子供が生まれるとは聞いていたのだけど、奥様が産気づいたらしく今日はお休みで、その代わりに別の近衛騎士が私の護衛をしてくれている。


「次は私とお姉様で隠れるから、騎士様達は探してね。」


 ティーナと私と、護衛騎士の二人を連れて中庭の木の陰に隠れる。


 私は、私達を探しにくる騎士の方を見ることに夢中になり過ぎていた。
 だから自分達の背後で、何が起きているのかを気付くのに遅れてしまったのだ。


「……んっ!」


 気がつくと、私は後ろから布のようなもので鼻と口を押さえられていた。
 意識が薄れていく中で見えたのは、ティーナが知らない人物に口を押さえられてバタバタしている姿だった……










「……お姉様?」


 ティーナの声が聞こえる。
 頭がまだスッキリしない。
 ハッとして目覚めると、ティーナが私の顔を覗き込んでいる。


「えっ……?ここは?」

「さっき、知らないお兄さんが来て、お菓子をくれたの。
 お利口さんにしていれば、お菓子を沢山あげるから、仲良くしてねって言ってたよ。
 このお菓子、美味しかったよ。」


 マジですか…?誘拐犯が言いそうなことだわ。

 ティーナも、王宮で生活するようになってから、度胸がついてきたようで、あっけらかんとしている。
 泣かれるよりはマシだと思うことにしよう。

 しかし、何があったの?あの時、私達は攫われたってことだよね?ここはどこなのよ?

 その時に、私は六畳くらいの部屋の簡易ベッドのような所に寝かされていたことに気付く。
 しかも、体は拘束されていなかった。


「王女殿下、ここはどこなのか分かりますか?」

「お船にいるって言ってたよ。
 悪い人が入ってくると困るから、鍵を閉めておくんだって。
 しばらくは、お部屋でお休みしていてねって言われたよ。」


 船の中の部屋に閉じ込められているのね。だから体は拘束されてないんだ。
 船はまだ揺れてない。まだ出航していないってことだわ。

 刺客がティーナをラリーア国に連れて行こうとしているに違いない。
 しかし、なぜ私まで一緒なんだろう?
 もしかして、ティーナのお世話役でもさせようとして一緒に連れて来たのかな?

 ラリーア国なんかに行ったら、どうなるか分からない。
 これは、出航する前に脱出した方がいいに決まっている。

 どうしよう……?

 個室のある船なのだから、ある程度は大きな船ってことだよね。
 大きな船なら、部屋から脱出して、上手く隠れながら逃げ出せることが出来るかもしれない。
 よし!脱出しよう。

 しかし、どうやって脱出する?ドアを壊したら、音で気づかれるかもしれないし、ドアの外に見張りがいる可能性もある。
 その時に、部屋に窓があることに気付いた。窓から外を覗くと、窓の外は広い甲板のように見える。ここから逃げよう!!


「王女殿下。急ですが、今から本気の鬼ごっこと、隠れんぼ大会をします。」

「え?ここで隠れんぼと鬼ごっこするの?」

「はい。ここにいてはいけないので、本気の隠れんぼと、鬼ごっこをしながら逃げます。
 鬼は、王女殿下にお菓子をくれた人です。鬼には沢山の仲間がいると思いますので、絶対に誰にも見つからないように、本気で逃げますよ。
 鬼に見つからないように、お喋りはいけません。シーって出来ますね?」

「分かった!」

「逃げやすいように、ドレスの裾を上げて少し縛りましょう。
 後で私が可愛いドレスを作りますから、お許し下さい。」
 
「うん!」


 ティーナが物分かりのいい子で良かった!



 
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