25 / 106
連載
本気のかくれんぼ
しおりを挟む
ある天気の良い日だった。
元気になりつつあるティーナが、外でかくれんぼをしたいと言う。
警備の厳しい王族専用の中庭で遊ぶことは許されているので、いつものようにその中庭で遊ぶことになる。
かくれんぼと言っても、いつ刺客がくるのか分からないので、護衛騎士と一緒に隠れるという、本来のかくれんぼとは違うものになっていたが、それでもティーナは楽しいらしい。
ニコニコしてかくれんぼするティーナを見て、侍女や騎士達まで笑顔になっていた程だった。
「メイナード卿もいれば楽しかったのになぁ。」
「そうですわね。でも、メイナード卿はもうすぐ奥様に赤ちゃんが生まれるらしいですから、今日はお休みらしいのです。
元気な赤ちゃんが生まれてくるといいですね。」
「うん。赤ちゃん、見てみたいなぁ。」
鬼ごっこやかくれんぼをやる時に、いつもメイナード卿が鬼の役を上手くやって、場の雰囲気を盛り上げてくれるのだ。
あの見た目で愛妻家で子供好きなんて、ギャップ萌えよ!なんて素敵なの!…と、心の中で何度叫んだことか。
そんなメイナード卿には、もうすぐ二人目の子供が生まれるとは聞いていたのだけど、奥様が産気づいたらしく今日はお休みで、その代わりに別の近衛騎士が私の護衛をしてくれている。
「次は私とお姉様で隠れるから、騎士様達は探してね。」
ティーナと私と、護衛騎士の二人を連れて中庭の木の陰に隠れる。
私は、私達を探しにくる騎士の方を見ることに夢中になり過ぎていた。
だから自分達の背後で、何が起きているのかを気付くのに遅れてしまったのだ。
「……んっ!」
気がつくと、私は後ろから布のようなもので鼻と口を押さえられていた。
意識が薄れていく中で見えたのは、ティーナが知らない人物に口を押さえられてバタバタしている姿だった……
「……お姉様?」
ティーナの声が聞こえる。
頭がまだスッキリしない。
ハッとして目覚めると、ティーナが私の顔を覗き込んでいる。
「えっ……?ここは?」
「さっき、知らないお兄さんが来て、お菓子をくれたの。
お利口さんにしていれば、お菓子を沢山あげるから、仲良くしてねって言ってたよ。
このお菓子、美味しかったよ。」
マジですか…?誘拐犯が言いそうなことだわ。
ティーナも、王宮で生活するようになってから、度胸がついてきたようで、あっけらかんとしている。
泣かれるよりはマシだと思うことにしよう。
しかし、何があったの?あの時、私達は攫われたってことだよね?ここはどこなのよ?
その時に、私は六畳くらいの部屋の簡易ベッドのような所に寝かされていたことに気付く。
しかも、体は拘束されていなかった。
「王女殿下、ここはどこなのか分かりますか?」
「お船にいるって言ってたよ。
悪い人が入ってくると困るから、鍵を閉めておくんだって。
しばらくは、お部屋でお休みしていてねって言われたよ。」
船の中の部屋に閉じ込められているのね。だから体は拘束されてないんだ。
船はまだ揺れてない。まだ出航していないってことだわ。
刺客がティーナをラリーア国に連れて行こうとしているに違いない。
しかし、なぜ私まで一緒なんだろう?
もしかして、ティーナのお世話役でもさせようとして一緒に連れて来たのかな?
ラリーア国なんかに行ったら、どうなるか分からない。
これは、出航する前に脱出した方がいいに決まっている。
どうしよう……?
個室のある船なのだから、ある程度は大きな船ってことだよね。
大きな船なら、部屋から脱出して、上手く隠れながら逃げ出せることが出来るかもしれない。
よし!脱出しよう。
しかし、どうやって脱出する?ドアを壊したら、音で気づかれるかもしれないし、ドアの外に見張りがいる可能性もある。
その時に、部屋に窓があることに気付いた。窓から外を覗くと、窓の外は広い甲板のように見える。ここから逃げよう!!
「王女殿下。急ですが、今から本気の鬼ごっこと、隠れんぼ大会をします。」
「え?ここで隠れんぼと鬼ごっこするの?」
「はい。ここにいてはいけないので、本気の隠れんぼと、鬼ごっこをしながら逃げます。
鬼は、王女殿下にお菓子をくれた人です。鬼には沢山の仲間がいると思いますので、絶対に誰にも見つからないように、本気で逃げますよ。
鬼に見つからないように、お喋りはいけません。シーって出来ますね?」
「分かった!」
「逃げやすいように、ドレスの裾を上げて少し縛りましょう。
後で私が可愛いドレスを作りますから、お許し下さい。」
「うん!」
ティーナが物分かりのいい子で良かった!
元気になりつつあるティーナが、外でかくれんぼをしたいと言う。
警備の厳しい王族専用の中庭で遊ぶことは許されているので、いつものようにその中庭で遊ぶことになる。
かくれんぼと言っても、いつ刺客がくるのか分からないので、護衛騎士と一緒に隠れるという、本来のかくれんぼとは違うものになっていたが、それでもティーナは楽しいらしい。
ニコニコしてかくれんぼするティーナを見て、侍女や騎士達まで笑顔になっていた程だった。
「メイナード卿もいれば楽しかったのになぁ。」
「そうですわね。でも、メイナード卿はもうすぐ奥様に赤ちゃんが生まれるらしいですから、今日はお休みらしいのです。
元気な赤ちゃんが生まれてくるといいですね。」
「うん。赤ちゃん、見てみたいなぁ。」
鬼ごっこやかくれんぼをやる時に、いつもメイナード卿が鬼の役を上手くやって、場の雰囲気を盛り上げてくれるのだ。
あの見た目で愛妻家で子供好きなんて、ギャップ萌えよ!なんて素敵なの!…と、心の中で何度叫んだことか。
そんなメイナード卿には、もうすぐ二人目の子供が生まれるとは聞いていたのだけど、奥様が産気づいたらしく今日はお休みで、その代わりに別の近衛騎士が私の護衛をしてくれている。
「次は私とお姉様で隠れるから、騎士様達は探してね。」
ティーナと私と、護衛騎士の二人を連れて中庭の木の陰に隠れる。
私は、私達を探しにくる騎士の方を見ることに夢中になり過ぎていた。
だから自分達の背後で、何が起きているのかを気付くのに遅れてしまったのだ。
「……んっ!」
気がつくと、私は後ろから布のようなもので鼻と口を押さえられていた。
意識が薄れていく中で見えたのは、ティーナが知らない人物に口を押さえられてバタバタしている姿だった……
「……お姉様?」
ティーナの声が聞こえる。
頭がまだスッキリしない。
ハッとして目覚めると、ティーナが私の顔を覗き込んでいる。
「えっ……?ここは?」
「さっき、知らないお兄さんが来て、お菓子をくれたの。
お利口さんにしていれば、お菓子を沢山あげるから、仲良くしてねって言ってたよ。
このお菓子、美味しかったよ。」
マジですか…?誘拐犯が言いそうなことだわ。
ティーナも、王宮で生活するようになってから、度胸がついてきたようで、あっけらかんとしている。
泣かれるよりはマシだと思うことにしよう。
しかし、何があったの?あの時、私達は攫われたってことだよね?ここはどこなのよ?
その時に、私は六畳くらいの部屋の簡易ベッドのような所に寝かされていたことに気付く。
しかも、体は拘束されていなかった。
「王女殿下、ここはどこなのか分かりますか?」
「お船にいるって言ってたよ。
悪い人が入ってくると困るから、鍵を閉めておくんだって。
しばらくは、お部屋でお休みしていてねって言われたよ。」
船の中の部屋に閉じ込められているのね。だから体は拘束されてないんだ。
船はまだ揺れてない。まだ出航していないってことだわ。
刺客がティーナをラリーア国に連れて行こうとしているに違いない。
しかし、なぜ私まで一緒なんだろう?
もしかして、ティーナのお世話役でもさせようとして一緒に連れて来たのかな?
ラリーア国なんかに行ったら、どうなるか分からない。
これは、出航する前に脱出した方がいいに決まっている。
どうしよう……?
個室のある船なのだから、ある程度は大きな船ってことだよね。
大きな船なら、部屋から脱出して、上手く隠れながら逃げ出せることが出来るかもしれない。
よし!脱出しよう。
しかし、どうやって脱出する?ドアを壊したら、音で気づかれるかもしれないし、ドアの外に見張りがいる可能性もある。
その時に、部屋に窓があることに気付いた。窓から外を覗くと、窓の外は広い甲板のように見える。ここから逃げよう!!
「王女殿下。急ですが、今から本気の鬼ごっこと、隠れんぼ大会をします。」
「え?ここで隠れんぼと鬼ごっこするの?」
「はい。ここにいてはいけないので、本気の隠れんぼと、鬼ごっこをしながら逃げます。
鬼は、王女殿下にお菓子をくれた人です。鬼には沢山の仲間がいると思いますので、絶対に誰にも見つからないように、本気で逃げますよ。
鬼に見つからないように、お喋りはいけません。シーって出来ますね?」
「分かった!」
「逃げやすいように、ドレスの裾を上げて少し縛りましょう。
後で私が可愛いドレスを作りますから、お許し下さい。」
「うん!」
ティーナが物分かりのいい子で良かった!
58
お気に入りに追加
9,779
あなたにおすすめの小説
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
[完結]いらない子と思われていた令嬢は・・・・・・
青空一夏
恋愛
私は両親の目には映らない。それは妹が生まれてから、ずっとだ。弟が生まれてからは、もう私は存在しない。
婚約者は妹を選び、両親は当然のようにそれを喜ぶ。
「取られる方が悪いんじゃないの? 魅力がないほうが負け」
妹の言葉を肯定する家族達。
そうですか・・・・・・私は邪魔者ですよね、だから私はいなくなります。
※以前投稿していたものを引き下げ、大幅に改稿したものになります。
私が死んで満足ですか?
マチバリ
恋愛
王太子に婚約破棄を告げられた伯爵令嬢ロロナが死んだ。
ある者は面倒な婚約破棄の手続きをせずに済んだと安堵し、ある者はずっと欲しかった物が手に入ると喜んだ。
全てが上手くおさまると思っていた彼らだったが、ロロナの死が与えた影響はあまりに大きかった。
書籍化にともない本編を引き下げいたしました
自重をやめた転生者は、異世界を楽しむ
饕餮
ファンタジー
書籍発売中!
詳しくは近況ノートをご覧ください。
桐渕 有里沙ことアリサは16歳。天使のせいで異世界に転生した元日本人。
お詫びにとたくさんのスキルと、とても珍しい黒いにゃんこスライムをもらい、にゃんすらを相棒にしてその世界を旅することに。
途中で魔馬と魔鳥を助けて懐かれ、従魔契約をし、旅を続ける。
自重しないでものを作ったり、テンプレに出会ったり……。
旅を続けるうちにとある村にたどり着き、スキルを使って村の一番奥に家を建てた。
訳アリの住人たちが住む村と、そこでの暮らしはアリサに合っていたようで、人間嫌いのアリサは徐々に心を開いていく。
リュミエール世界をのんびりと冒険したり旅をしたりダンジョンに潜ったりする、スローライフ。かもしれないお話。
★最初は旅しかしていませんが、その道中でもいろいろ作ります。
★本人は自重しません。
★たまに残酷表現がありますので、苦手な方はご注意ください。
表紙は巴月のんさんに依頼し、有償で作っていただきました。
黒い猫耳の丸いものは作中に出てくる神獣・にゃんすらことにゃんこスライムです。
★カクヨムでも連載しています。カクヨム先行。
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
美少女に転生して料理して生きてくことになりました。
ゆーぞー
ファンタジー
田中真理子32歳、独身、失業中。
飲めないお酒を飲んでぶったおれた。
気がついたらマリアンヌという12歳の美少女になっていた。
その世界は加護を受けた人間しか料理をすることができない世界だった
転生幼女のチートな悠々自適生活〜伝統魔法を使い続けていたら気づけば賢者になっていた〜
犬社護
ファンタジー
ユミル(4歳)は気がついたら、崖下にある森の中にいた。
馬車が崖下に落下した影響で、前世の記憶を思い出す。周囲には散乱した荷物だけでなく、さっきまで会話していた家族が横たわっており、自分だけ助かっていることにショックを受ける。
大雨の中を泣き叫んでいる時、1体の小さな精霊カーバンクルが現れる。前世もふもふ好きだったユミルは、もふもふ精霊と会話することで悲しみも和らぎ、互いに打ち解けることに成功する。
精霊カーバンクルと仲良くなったことで、彼女は日本古来の伝統に関わる魔法を習得するのだが、チート魔法のせいで色々やらかしていく。まわりの精霊や街に住む平民や貴族達もそれに振り回されるものの、愛くるしく天真爛漫な彼女を見ることで、皆がほっこり心を癒されていく。
人々や精霊に愛されていくユミルは、伝統魔法で仲間たちと悠々自適な生活を目指します。
継母の心得 〜 番外編 〜
トール
恋愛
継母の心得の番外編のみを投稿しています。
【本編第一部完結済、2023/10/1〜第二部スタート☆書籍化 2024/11/22ノベル5巻、コミックス1巻同時刊行予定】
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。