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閑話 王弟アルベルト
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彼女に会うために、何度も港町に通い続けたある日…
「あっ、騎士様!リーゼなら、昨日帰って来ましたよ。
多分、今なら家にいると思うよ。」
「…それは良かった。教えてくれてありがとう!」
私は近所に住んでいるマダム達に、顔を覚えられてしまったようだ。
それよりも、やっと彼女に会える。クリスティーナは彼女からの手紙をずっと待っているから、今日こそは彼女に手紙を渡したい。
ついでに、彼女が得意だという魔法も見せてもらえたらいいと思う。
そんな期待を胸に、彼女の家を訪ねるのだが、彼女は突然訪ねて来た私達を、非常に警戒しているようであった。
自慢ではないが、私も一緒に連れて来た近衛騎士達も、令嬢達から付き纏われて困るくらいの容姿をしているのに、彼女は私達になんてこれっぽっちも興味がないようで、早く帰って欲しいという態度を取られ続ける。
こんなの初めてだ。
面白い……。
彼女の魔法が見たくて、強引に食事をお願いするのだが、食事を作る彼女の魔法は想像以上であった。
食材や調理器具が勝手に動き出して料理をするのだが、まるで見えない人間が数人で料理をしているようだったのだ。
クリスティーナが好きだと話していたハンバーグも美味しかったし、氷で冷たくした紅茶もお代わりしてしまうほどだった。
こんな楽しい食事は久しぶりのことかもしれない。
クリスティーナが、ここでの生活が恋しくなるのは仕方がないことだと思った。
クリスティーナへの手紙を預かり、その日は気分良く帰路に着く私であった。
王宮に戻って来た私は、すぐにクリスティーナに手紙を届けに行く。
「クリスティーナ。リーゼから手紙を預かってきたよ。」
「本当に?お姉様に会えたの?
ティーナも一緒に行きたかった。」
「クリスティーナの好きなハンバーグを作ってもらったけど、美味しかった。
君のお姉様は、凄い人なんだな。」
「うん!お姉様は凄いでしょ!
私もお姉様に会いたいなぁ。
叔父さま、私はお姉様にいつ会えるの?」
「それは、陛下と王妃殿下に頼まないとな。
また私が手紙を届けてやるから、しばらくはそれで我慢して欲しい。」
リーゼは迷惑そうにしていたが、私は楽しかった。
あの嫌そうな顔が面白かったな…
リーゼの魔法を国王陛下と王妃殿下に報告すると、二人ともそのような魔法は見たことがないらしく、興味津々に報告を聞いていた。
「アル。クリスティーナの養育者の令嬢は、氷まで作っていたのだな?
氷は魔力が強くなければ作れないし、非常に難しいはずだ…。その令嬢には、高位貴族の血が入っているのではないか?」
「私も彼女は、どこかの貴族の婚外子なのではないかと思っています。引き続き調査するつもりです。」
私は、またリーゼに会いたかったし、リーゼの魔法で作った食事も食べたいと思っていた。だから調査ということにして、その後も定期的にリーゼの家に行くことにした。
何度かリーゼに会って交流しているうちに、彼女の綺麗なピンクブロンドの髪と緑色の瞳と同じ色を持つ人物がいたことに気付いてしまった。
その人物はクリフォード侯爵。名門侯爵家の当主で、王家との繋がりが深く、私が子供の頃からよく知る人物だ。
非常に身近過ぎて全く気づかなかった…。
あの侯爵に愛人がいたのか?真面目だと思っていたが…。
気になった私は、すぐにクリフォード侯爵を訪ねていた。
「クリフォード侯爵は愛人がいたのか?娘がいるよな?
侯爵と同じ色の髪と瞳だから、すぐに分かったよ。」
侯爵は呆れたような顔をしている。
「殿下。私は忙しいのですが、何の御用でしょうか?
私は愛人を作る暇もないくらいの人生を送ってきたつもりですが…。」
「侯爵と同じ色を持つ、平民の美しい女性がいる。
20歳前後くらいの、魔力の強い女性だ。」
その話を聞いて、侯爵の表情が一変する。
「もしかしたら、私の行方不明になっている姪かもしれません。
没落した、元ステール伯爵家の一人娘です。没落した後に私の娘として養子縁組をしたのですが、迎えに行った時にはすでに行方不明になっておりまして、ずっと探していたのです。
殿下、その娘に会わせてもらえますか?」
侯爵の姪で、元ステール伯爵家の一人娘…?
そういうことだったのか。
あの品のある雰囲気と綺麗な所作は、伯爵令嬢だったからなのだな…。
私は、彼女が赤ちゃんだったクリスティーナを保護し、今まで養育してくれた命の恩人だということを侯爵に話した。
「最近、殿下に平民の恋人がいるという噂をよく聞きますが、まさかその娘ではないですよね?」
「……私達はそのような関係ではない。
私はただ、クリスティーナの書いた手紙を届けてやっているだけだ。」
「それならよろしいですが、殿下と平民の娘が噂になれば、その娘を利用しようと良からぬ者達が近付くかと思われますので、どうか行動にはご注意下さい。
何かあれば、立場の弱い平民娘が危険な目に遭うことになるのですから。」
「分かっている……
それに彼女がいるのは、王都から離れた港町だから、なかなか見つけるのは難しいと思っているよ。」
その後日、クリフォード侯爵と一緒にリーゼに会いに行くことになる。
「あっ、騎士様!リーゼなら、昨日帰って来ましたよ。
多分、今なら家にいると思うよ。」
「…それは良かった。教えてくれてありがとう!」
私は近所に住んでいるマダム達に、顔を覚えられてしまったようだ。
それよりも、やっと彼女に会える。クリスティーナは彼女からの手紙をずっと待っているから、今日こそは彼女に手紙を渡したい。
ついでに、彼女が得意だという魔法も見せてもらえたらいいと思う。
そんな期待を胸に、彼女の家を訪ねるのだが、彼女は突然訪ねて来た私達を、非常に警戒しているようであった。
自慢ではないが、私も一緒に連れて来た近衛騎士達も、令嬢達から付き纏われて困るくらいの容姿をしているのに、彼女は私達になんてこれっぽっちも興味がないようで、早く帰って欲しいという態度を取られ続ける。
こんなの初めてだ。
面白い……。
彼女の魔法が見たくて、強引に食事をお願いするのだが、食事を作る彼女の魔法は想像以上であった。
食材や調理器具が勝手に動き出して料理をするのだが、まるで見えない人間が数人で料理をしているようだったのだ。
クリスティーナが好きだと話していたハンバーグも美味しかったし、氷で冷たくした紅茶もお代わりしてしまうほどだった。
こんな楽しい食事は久しぶりのことかもしれない。
クリスティーナが、ここでの生活が恋しくなるのは仕方がないことだと思った。
クリスティーナへの手紙を預かり、その日は気分良く帰路に着く私であった。
王宮に戻って来た私は、すぐにクリスティーナに手紙を届けに行く。
「クリスティーナ。リーゼから手紙を預かってきたよ。」
「本当に?お姉様に会えたの?
ティーナも一緒に行きたかった。」
「クリスティーナの好きなハンバーグを作ってもらったけど、美味しかった。
君のお姉様は、凄い人なんだな。」
「うん!お姉様は凄いでしょ!
私もお姉様に会いたいなぁ。
叔父さま、私はお姉様にいつ会えるの?」
「それは、陛下と王妃殿下に頼まないとな。
また私が手紙を届けてやるから、しばらくはそれで我慢して欲しい。」
リーゼは迷惑そうにしていたが、私は楽しかった。
あの嫌そうな顔が面白かったな…
リーゼの魔法を国王陛下と王妃殿下に報告すると、二人ともそのような魔法は見たことがないらしく、興味津々に報告を聞いていた。
「アル。クリスティーナの養育者の令嬢は、氷まで作っていたのだな?
氷は魔力が強くなければ作れないし、非常に難しいはずだ…。その令嬢には、高位貴族の血が入っているのではないか?」
「私も彼女は、どこかの貴族の婚外子なのではないかと思っています。引き続き調査するつもりです。」
私は、またリーゼに会いたかったし、リーゼの魔法で作った食事も食べたいと思っていた。だから調査ということにして、その後も定期的にリーゼの家に行くことにした。
何度かリーゼに会って交流しているうちに、彼女の綺麗なピンクブロンドの髪と緑色の瞳と同じ色を持つ人物がいたことに気付いてしまった。
その人物はクリフォード侯爵。名門侯爵家の当主で、王家との繋がりが深く、私が子供の頃からよく知る人物だ。
非常に身近過ぎて全く気づかなかった…。
あの侯爵に愛人がいたのか?真面目だと思っていたが…。
気になった私は、すぐにクリフォード侯爵を訪ねていた。
「クリフォード侯爵は愛人がいたのか?娘がいるよな?
侯爵と同じ色の髪と瞳だから、すぐに分かったよ。」
侯爵は呆れたような顔をしている。
「殿下。私は忙しいのですが、何の御用でしょうか?
私は愛人を作る暇もないくらいの人生を送ってきたつもりですが…。」
「侯爵と同じ色を持つ、平民の美しい女性がいる。
20歳前後くらいの、魔力の強い女性だ。」
その話を聞いて、侯爵の表情が一変する。
「もしかしたら、私の行方不明になっている姪かもしれません。
没落した、元ステール伯爵家の一人娘です。没落した後に私の娘として養子縁組をしたのですが、迎えに行った時にはすでに行方不明になっておりまして、ずっと探していたのです。
殿下、その娘に会わせてもらえますか?」
侯爵の姪で、元ステール伯爵家の一人娘…?
そういうことだったのか。
あの品のある雰囲気と綺麗な所作は、伯爵令嬢だったからなのだな…。
私は、彼女が赤ちゃんだったクリスティーナを保護し、今まで養育してくれた命の恩人だということを侯爵に話した。
「最近、殿下に平民の恋人がいるという噂をよく聞きますが、まさかその娘ではないですよね?」
「……私達はそのような関係ではない。
私はただ、クリスティーナの書いた手紙を届けてやっているだけだ。」
「それならよろしいですが、殿下と平民の娘が噂になれば、その娘を利用しようと良からぬ者達が近付くかと思われますので、どうか行動にはご注意下さい。
何かあれば、立場の弱い平民娘が危険な目に遭うことになるのですから。」
「分かっている……
それに彼女がいるのは、王都から離れた港町だから、なかなか見つけるのは難しいと思っているよ。」
その後日、クリフォード侯爵と一緒にリーゼに会いに行くことになる。
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