異世界で捨て子を育てたら王女だった話

せいめ

文字の大きさ
上 下
19 / 106
連載

閑話 王弟アルベルト

しおりを挟む
〝アルベルトへ

 待望の赤ちゃんが産まれました。
 アルと同じ色の髪と瞳を持つ女の子で、クリスティーナと名付けたの。
 アルの姪になるわね。よく泣く子で毎日大変だけど、とっても可愛いわよ。
 いつかこの子を連れて里帰りをする日を楽しみにしているわ。
 その時までに、アルも人生の伴侶を見つけておきなさい。〟


 海の向こうのラリーア国に嫁いだ姉は、幸せな結婚生活を送っていたようだ。
 大好きだった姉の幸せを祈っていた私は、その手紙を読んで、とても安心したことを覚えている。


 しかし、それから三ヶ月くらい経ったある日、兄である国王から呼び出され、衝撃的なことを知らされる。
 ラリーア国でクーデターが起きて、国王一家が殺されたということだった。
 その知らせを聞いた兄は、すぐに暗部の部隊を送り込み、姉の捜索や情報を探らせたものの、生存は絶望的だと判断される。
 しかし姉が殺された時に、そこに姉の子供はいなかったらしい。姉が我が国から連れて行ったメイド達も行方不明になっており、姉が子供とメイド達を逃した可能性が出てきたのだった。
 そこから、姉の子供を捜す日々が続く。

 しかし、ラリーア国中をいくら探しても何の手がかりも掴むことも出来なかった。
 もしかしたら、子供を託されたメイドが運良く船に乗れて、我が国に戻ることが出来たのかもしれないと考えた私達は、国内の孤児院を中心に探してみることにした。
 だが、なかなか手掛かりは見つからない。

 諦めかけたその時、港町の自警団から姉の子供と特徴が一致する女の子がいると連絡がある。
 私はすぐにその子供に会いに行くことにした。

 自警団から、その女の子が平民の未婚女性と暮らしていると聞き、早速その家に向かうのだが、予想とは違う事ばかりであった。

 平民と聞いていたのに、私達を出迎えた女性は平民離れした容姿をしており、言葉遣いや所作は貴族のようだった。
 そして姉の子供かもしれない女の子は、とても可愛かった。
 確かに私と同じ色を持っている。顔立ちも姉に似ているような気がした。

 だが、この女の子の服装は一体…?

 貴族の令嬢がお忍びで出掛ける時に着せてもおかしくないような、平民が着るには高そうなワンピースを着て、髪の毛も綺麗に縛って可愛いリボンまで付けている。
 本当にただの平民の家なのか?かなり裕福そうにも見える。
 そして何となくだが、この女の子がとても大切に育てられていたのが分かった。


 女の子に名前を聞くと……

「私の名前はクリスティーナです。」

 クリスティーナと言っている。そして同居女性からは、女の子を保護した時に身に付けていた服とおくるみを見せられるのであった。

 おくるみには、クリスティーナと名前が刺繍してあった。
 そして、ラリーア王家の紋章らしき物も刺繍されていたのだ。
 この女の子は姉の子供かもしれない。

 これは一度持ち帰って、兄上と義姉上、宰相達に見せよう。
 
 私の報告を聞いた兄達は、その女の子が姉の残したクリスティーナ王女だろうと判断した。
 そしてその翌日、私は港町へクリスティーナを迎えに行くことになる。

 突然迎えに来た私達を見て、同居女性とクリスティーナは驚いていたようだったが、国王命令だと言えば、あっさりと受け入れてくれた。


「どうかお気をつけて。」


 クリスティーナがお姉ちゃんと呼んでいた同居女性は、涙を流して見送っていた……




 途中で休憩を取りながら、急いで王都に向かい、午後には王宮に到着することが出来た。
 
 王宮でクリスティーナを待っていた、国王陛下と王妃殿下は、一目見て涙を流す。


「……マーガレットの小さい頃に瓜二つだ。」

「ええ。そっくりですわね。あの頃のマーガレット王女が戻って来たみたいですわ…。」


 義理の姉である王妃殿下は、我が国の元公爵令嬢で姉の小さな頃を知っているのだ。


「可愛いワンピースね。アルベルトが買ってあげたのかしら?」

 クリスティーナの可愛らしい服装に、王妃殿下がすぐに興味を持つ。

「…いえ。クリスティーナを養育していた平民女性が着せてくれたものです。」

「平民でも、裕福な商家の娘だったのかしら?
 こうやって見ると、クリスティーナに合わせて、オーダーで仕立ててくれたみたいによく似合っているわね。布地も良い物を使っているわ。
 貧しい生活をしていたのかと心配していたけど、大切にされていたようね。」

「そうですね…。
 その女性はクリスティーナを、とても可愛がっていたように見えました。」

「これは、私のお姉様が魔法で作ってくれました!
 ティーナはピンクが好きだから、ピンクの服を沢山作ってくれました!」


 突然、私達の会話を聞いていた、クリスティーナが口を開く。
 
 魔法で服を作っただって…?

「まあ!ピンクが好きなのね。とっても可愛いわ。
 クリスティーナによく似合っているわよ。
 クリスティーナを育ててくれたお姉様のお話を沢山聞かせてね。」

「はい!お姉様は、何でも魔法で作ってくれてすごいの。
 ティーナの服は全部お姉様が作ってくれたのです!」


 王妃殿下もその話にすぐに食い付いていた。
 魔法で服を作った話なんて聞いたことがないから、誰だって興味を持つだろう。

 馬車でずっと眠っていたクリスティーナは、疲れた様子もなく、元気におしゃべりを始める。
 
 私達は、おしゃべりが大好きな可愛いクリスティーナの話を聞くことから始まった。
 



 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

私が死んで満足ですか?

マチバリ
恋愛
王太子に婚約破棄を告げられた伯爵令嬢ロロナが死んだ。 ある者は面倒な婚約破棄の手続きをせずに済んだと安堵し、ある者はずっと欲しかった物が手に入ると喜んだ。 全てが上手くおさまると思っていた彼らだったが、ロロナの死が与えた影響はあまりに大きかった。 書籍化にともない本編を引き下げいたしました

婚約破棄された令嬢が記憶を消され、それを望んだ王子は後悔することになりました

kieiku
恋愛
「では、記憶消去の魔法を執行します」 王子に婚約破棄された公爵令嬢は、王子妃教育の知識を消し去るため、10歳以降の記憶を奪われることになった。そして記憶を失い、退行した令嬢の言葉が王子を後悔に突き落とす。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

この度、双子の妹が私になりすまして旦那様と初夜を済ませてしまったので、 私は妹として生きる事になりました

秘密 (秘翠ミツキ)
恋愛
*レンタル配信されました。 レンタルだけの番外編ssもあるので、お読み頂けたら嬉しいです。 【伯爵令嬢のアンネリーゼは侯爵令息のオスカーと結婚をした。籍を入れたその夜、初夜を迎える筈だったが急激な睡魔に襲われて意識を手放してしまった。そして、朝目を覚ますと双子の妹であるアンナマリーが自分になり代わり旦那のオスカーと初夜を済ませてしまっていた。しかも両親は「見た目は同じなんだし、済ませてしまったなら仕方ないわ。アンネリーゼ、貴女は今日からアンナマリーとして過ごしなさい」と告げた。 そして妹として過ごす事になったアンネリーゼは妹の代わりに学院に通う事となり……更にそこで最悪な事態に見舞われて……?】

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。 だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。 その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。