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二度目の話

待つ

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 私の部屋に入って来たのは、お母様だった。

 お母様は、手紙のような物を持って目を輝かせている。

「アナ、ブレア公爵令息から手紙が届いたわよ!」

 普通なら、手紙はメイドや家令が持って来るのに、お母様はブレア様からの手紙が嬉しくて、手紙の内容が気になり、我慢できずに直接持って来てくれたって感じね…。
 ここまで喜んでくれているのに、縁談を断ったりしたら、お母様は泣いちゃうかもしれない。

「何て書いてあるのかしら?
 早く開封して、読んでみなさい。」

 お義母様のこの感じだと、私が手紙を読み終えるまでここにいるわね…

「はい…。」

 ブレア様からの手紙は、また一緒にお茶をしようというお誘いだった。
 今度はブレア公爵家の別邸に招待したいこと、本邸とは趣の違う邸なので、ぜひ遊びに来て欲しいと書いてあった。

「お母様、ブレア様は今度は別邸に招待して下さるそうです。」

「それは早くお返事を書きなさい!
 日程を早く決めておかないと、こちらとしても行く前に準備というものがあるのですから!」

 お母様には、断るという選択はないようだ。

 私の方も、いつまでもブレア様に返事をしない訳にはいかない。直接会ってきちんと伝えてこよう。
 ブレア様みたいな良い人に、これ以上迷惑はかけられない。


 ブレア様はお茶会の当日、私を邸まで迎えに来てくれた。
 お母様はそんなブレア様を大歓迎している。
 あの嬉しそうなお母様の顔を見るのがとても辛い…。


 コールマン侯爵家から、馬車で30分くらいの場所にブレア公爵家の別邸はあった。
 さすが筆頭公爵家の別邸だわ…。本邸に負けないくらい豪邸ね。


「シア。別邸はコールマン侯爵家からそこまで遠くないから、ここに住んでもいつでも里帰り出来ると思う。
 君は本邸にいるのは辛そうだし、住むなら別邸の方がいいと思うんだ。」

 私が本邸で毒を盛られたことを忘れられず、何も食べられないから、気を遣って別邸に住もうと言ってくれているのね…。
 まだ婚約の返事はしていないのに、やはりこの人は強引な方だわ。

 でも…、本当に優しい人だと思う。
 きっとこの人とやり直しで結婚したら、今度こそ幸せになれるかもしれない。

 分かってはいるのに、私はこの方の気持ちに応えられないのだ。


「ブレア様…、ごめんなさい。
 私、ブレア様と婚約は出来ません。」

 ブレア様は一瞬で表情が険しくなる。

「理由を教えてくれないか?」

「別に好きな人がいることに気付いてしまいました。
 こんな私がブレア様と婚約するなんて、不誠実なことは出来ないと思いました。」

「好きな相手とは…?まさか、学園の教師ではないよな?」

 ブレア様まであの噂話を知っていたの?

「それは違いますからね!」

「……コールマン侯爵令息か?」

「……。」

 この方も鋭い…。尚更のこと、別に好きな人がいる状態で婚約なんて出来ない。
 こんな良い人を傷付けてしまう。

「王太子殿下とは終わったと聞いてずっと不思議だった。
 その後にコールマン侯爵令息が病になり、落ち込む君を見て、もしかしてと思っていた。
 シアとコールマン侯爵令息は…その…、気持ちは伝え合ったのか?」

「お義兄様には私達家族に内緒で、愛する人がいるようですわ。」

「それは本当か?コールマン侯爵令息は、女性は誰も相手にしてなかったと思うが。
 シア、私は君が別に好きな男がいても構わない。
 私は君と一緒にいたいんだ。」

 真面目な顔して、なんてことを言っているのよ!
 
「ダメですわ!
 私はブレア様に幸せになって欲しいので、ブレア様を心から愛してくれる方と結ばれて欲しいのです。」

「残念ながら私は、一度目の時からずっとシアだけしか見てなかったから、簡単には諦められないんだ。
 コールマン侯爵令息と君がまだ思いを伝え合っていないのなら、尚更まだ諦められない。」

「え…?」

「…2年だ。2年待つ!」

「はい?」

「2年後に君が誰とも婚約していなかったら、その時は諦めて、私と婚約して欲しい。
 君が嫌だと言っても、国王陛下に頼み込んで、王命にしてもらってでも君と婚約させてもらう。
 君の恋が上手くいけばいいが、もし上手くいかなかった場合、どうせ適当な貴族と結婚させられるのだから、私でもいいだろう?
 私はシアだけを愛しているし、金持ちだし、見た目も悪くはないと思うんだ。結婚するにはちょうどいい男だろう?」

 この方は…、どこまでも良い人のようだ。

「そこまでブレア様に迷惑は掛けられませんわ。」

「私がまだ君を諦められないだけなんだ。
 迷惑を掛けているのは私だから、そんな悲しそうな顔をしないでくれ。
 今世では、シアの悲しそうな顔は見たくないんだ。」

「ふふっ。ブレア様は本当に強引な方ですわ。」

「よく言われるよ。」




 
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