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二度目の話
相談
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お父様もお母様も、お義兄様が寝込んでいることに心を痛めているようだった。
「平民にルークと同じような症状の者がいるとは聞いているが、貴族でそのような病で臥せっているという話はまだ聞かない。
まだ治療が確立するまでに時間がかかるかもしれないな…。」
「そうですわね…。貴族でも患者が沢山でるような病なら、国や研究機関が急いで対応してくれるのでしょうが…。」
他にも色々な病気の研究で忙しいのに、平民の中で少し流行っているだけの病を、急いで対応してくれるはずはないないのは知っている。
貴族の中にも、分かりやすいくらい多数の患者が出るようならすぐにでも動いてくれるのかもしれないが、今は他の貴族がこの病になっているという情報はない。
更に貴族社会では、いつ足をすくわれるか分からないからと、病気で臥せっているなんてことは内密にする場合が多い。
特に跡取りであるお義兄様が病気で臥せっているなんて、他の家門には知られる訳にはいかなかった。
スミス先生は、外部にこのことがバレないようにと気を遣いながら、治療法がないかを探してくれている。
しかし、こうしている間に、お義兄様はどんどん弱っていく…
ずっとベッドで臥せっている日々が続いているお義兄様は、会話することも辛そうになっていた。
「アナ…。ここは大丈夫…だ。ゲホっ、ゲホっ…。
早く…部屋に戻るよ…うに…。ゲホっ…。」
「お義兄様…、私は…お義兄様の側に付いていたいのです。
スミス先生は、男性に感染していると言ってました。
私は大丈夫ですから、側に置いてください。」
「…ゲホっ。…アナ、無理は…しないように…。」
「分かっておりますわ。」
側に付いていたいと言っても、私がお義兄様にしてあげられることは、咳き込むお義兄様の背中をさすってあげたり、汗を拭いてあげたり、食事を食べるお手伝いをすることくらいだった。
「アナ…、私は…大丈夫…だ。ゲホっ、ゲホっ…
もう…休みなさい…。」
「もう少しだけ、側にいさせて下さい。
私には何も出来ないので、側にいることしか出来ないのです。
ごめんなさい…。あの時、お義兄様は私を助けてくれたのに、今の私は無力で…。」
「ゲホっ…、側に…いてくれるだけで…嬉しい。
ありがとな…。」
学園とお義兄様の看病の日々を送っていた私だったが、ブレア様とのお茶会の日を迎える。
お義兄様の具合が悪いので、私は行きたくないと言ったのだが、お母様はそれを許してくれなかった。
こんな時だからこそ、社交はこなさないといけないと言われてしまったのだ。
「コールマン侯爵令嬢、来てくれて感謝する。
今日は君に会えて嬉しいよ。」
「ブレア様、ご機嫌よう。
本日はお招きにあずかり光栄ですわ。」
この前、お互いのことをある程度打ち明けた仲ではあるから、今日は前ほどギクシャクはしていないような気がする。
「先月、君との茶会の後にずっと領地の方に行っていたんだ。三日ほど前にこっちに戻ってきたばかりなんだが、少し寒くなってきたか?
最近少し冷えてきているから、体調を崩さないようにな。
君は風邪をひきやすかったから、心配していたんだ。」
あの時と変わらず、優しい人だと思う。
でも、風邪と言われて思い浮かべるのは…
「……ありがとうございます。」
「やはり、いつもと違うな…。
どこか悪いのか?それとも、何か嫌なことでもあったか?」」
「いえ、私は元気ですわ。」
「…瞬きが増えたな。
何かあるなら、私に話してくれないか?」
私が嘘をつくと瞬きが増えることを、ブレア様も知っていたらしい…。
私、本当にチョロ過ぎるわ。
だけど、さすが元夫だと思う。短い夫婦生活だったはずだけど、私の癖をよく覚えていてくれたのね。
殿下と同様に、ブレア様にも嘘や誤魔化しは効かないということか…。
でもお義兄様が具合が悪いことを外部の人に話すことは口止めされているし、どうしよう…。
「……本当に何でもないのです。」
「私はそんなに頼りないか?」
「そういう訳では…。」
ブレア様は近くに控えていたメイド達に合図をすると、メイド達は下がって行ってしまった。
また人払いしたのね…
「私は口は堅い。
シア…。私は君には幸せになって欲しいし、いつも笑っていて欲しいと思っている。
教えてくれ。どうして君はそんなに体調が悪そうなんだ?
また誰かに毒でも盛られているのではないだろうな?」
この人なりに純粋に私を心配してくれているようだった…
お義兄様のことで、寝不足で悩み続けていたから、今の私は具合が悪そうに見えているってことなのね。
人知れぬ所で、私をずっと守ってくれていた人だ。
この人になら、相談してもいいのかもしれない…。
「平民にルークと同じような症状の者がいるとは聞いているが、貴族でそのような病で臥せっているという話はまだ聞かない。
まだ治療が確立するまでに時間がかかるかもしれないな…。」
「そうですわね…。貴族でも患者が沢山でるような病なら、国や研究機関が急いで対応してくれるのでしょうが…。」
他にも色々な病気の研究で忙しいのに、平民の中で少し流行っているだけの病を、急いで対応してくれるはずはないないのは知っている。
貴族の中にも、分かりやすいくらい多数の患者が出るようならすぐにでも動いてくれるのかもしれないが、今は他の貴族がこの病になっているという情報はない。
更に貴族社会では、いつ足をすくわれるか分からないからと、病気で臥せっているなんてことは内密にする場合が多い。
特に跡取りであるお義兄様が病気で臥せっているなんて、他の家門には知られる訳にはいかなかった。
スミス先生は、外部にこのことがバレないようにと気を遣いながら、治療法がないかを探してくれている。
しかし、こうしている間に、お義兄様はどんどん弱っていく…
ずっとベッドで臥せっている日々が続いているお義兄様は、会話することも辛そうになっていた。
「アナ…。ここは大丈夫…だ。ゲホっ、ゲホっ…。
早く…部屋に戻るよ…うに…。ゲホっ…。」
「お義兄様…、私は…お義兄様の側に付いていたいのです。
スミス先生は、男性に感染していると言ってました。
私は大丈夫ですから、側に置いてください。」
「…ゲホっ。…アナ、無理は…しないように…。」
「分かっておりますわ。」
側に付いていたいと言っても、私がお義兄様にしてあげられることは、咳き込むお義兄様の背中をさすってあげたり、汗を拭いてあげたり、食事を食べるお手伝いをすることくらいだった。
「アナ…、私は…大丈夫…だ。ゲホっ、ゲホっ…
もう…休みなさい…。」
「もう少しだけ、側にいさせて下さい。
私には何も出来ないので、側にいることしか出来ないのです。
ごめんなさい…。あの時、お義兄様は私を助けてくれたのに、今の私は無力で…。」
「ゲホっ…、側に…いてくれるだけで…嬉しい。
ありがとな…。」
学園とお義兄様の看病の日々を送っていた私だったが、ブレア様とのお茶会の日を迎える。
お義兄様の具合が悪いので、私は行きたくないと言ったのだが、お母様はそれを許してくれなかった。
こんな時だからこそ、社交はこなさないといけないと言われてしまったのだ。
「コールマン侯爵令嬢、来てくれて感謝する。
今日は君に会えて嬉しいよ。」
「ブレア様、ご機嫌よう。
本日はお招きにあずかり光栄ですわ。」
この前、お互いのことをある程度打ち明けた仲ではあるから、今日は前ほどギクシャクはしていないような気がする。
「先月、君との茶会の後にずっと領地の方に行っていたんだ。三日ほど前にこっちに戻ってきたばかりなんだが、少し寒くなってきたか?
最近少し冷えてきているから、体調を崩さないようにな。
君は風邪をひきやすかったから、心配していたんだ。」
あの時と変わらず、優しい人だと思う。
でも、風邪と言われて思い浮かべるのは…
「……ありがとうございます。」
「やはり、いつもと違うな…。
どこか悪いのか?それとも、何か嫌なことでもあったか?」」
「いえ、私は元気ですわ。」
「…瞬きが増えたな。
何かあるなら、私に話してくれないか?」
私が嘘をつくと瞬きが増えることを、ブレア様も知っていたらしい…。
私、本当にチョロ過ぎるわ。
だけど、さすが元夫だと思う。短い夫婦生活だったはずだけど、私の癖をよく覚えていてくれたのね。
殿下と同様に、ブレア様にも嘘や誤魔化しは効かないということか…。
でもお義兄様が具合が悪いことを外部の人に話すことは口止めされているし、どうしよう…。
「……本当に何でもないのです。」
「私はそんなに頼りないか?」
「そういう訳では…。」
ブレア様は近くに控えていたメイド達に合図をすると、メイド達は下がって行ってしまった。
また人払いしたのね…
「私は口は堅い。
シア…。私は君には幸せになって欲しいし、いつも笑っていて欲しいと思っている。
教えてくれ。どうして君はそんなに体調が悪そうなんだ?
また誰かに毒でも盛られているのではないだろうな?」
この人なりに純粋に私を心配してくれているようだった…
お義兄様のことで、寝不足で悩み続けていたから、今の私は具合が悪そうに見えているってことなのね。
人知れぬ所で、私をずっと守ってくれていた人だ。
この人になら、相談してもいいのかもしれない…。
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