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二度目の話

生捕り

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 お義兄様と話し込んでいると、家令がやってくる。


「お嬢様、王太子殿下から使者が来ております。
 お見舞いの手紙を直接お嬢様にお渡ししたいそうです。」

「…殿下から?」

「はい。応接室でお待ちいただいております。」

「今すぐ行くわ。お義兄様、少し席を外します。」

「アナ。私も付き添う。」

「……ありがとうございます。」


 全てを打ち明けた後だから、お義兄様に側にいてもらうのは何の問題もない。


 お義兄様と応接室に行くと、そこには、殿下の護衛騎士であるロイド卿がいた。
 わざわざロイド卿に届けさせるということは、重大なことが書いてある手紙だということね。


「コールマン侯爵令嬢。王太子殿下からの手紙を届けに参りました。」

「ありがとうございます。
 殿下には、私が感謝していたとお伝え下さい。」

「畏まりました。
 コールマン侯爵令嬢、どうかお気を付けて…。」


 危険だと言うことね…


「ええ。
 ロイド卿も、気を付けて戻って下さいませ。」

「ありがとうございます。」


 ロイド卿はすぐに帰って行った。


 その後、すぐに手紙を読む私。
 殿下からの手紙に書いてあったのは、予想通りのことだった。

 隣国王女が、フロスト侯爵家から暗殺者を紹介してもらっていたことを殿下は掴んだが、学園に暗殺者が潜んでいることを知るのが遅れ、危険な目に遭わせて悪かったと書いてある。

 殿下の影が暗殺者を捕まえようとしたが、自害されてしまったとも書いてある。
 だからあの時、矢が一本しか飛んで来なかったのね。
 危なかったわ…。ミルズ先生を巻き込むところだった。

 今気付いたけど、ミルズ先生に放課後居残りをさせられていなかったら、私が帰る時間が早くなっていたということよね…。
 もし早い時間にあそこを一人で歩いていたら、暗殺者を捕まえに来た殿下の影が間に合わなくて、私は矢を何本も放たれて死んでいたかもしれない…

 
 えー!ミルズ先生は、本当の命の恩人じゃないの。


 更に手紙には、隣国王女が殿下の婚約者の最有力と言われている私を急ぎで消したがっているから、自分の邸でも気を付けるようにと書いてある。
 隣国王女は、我が国に滞在している間に私を消して、殿下を慰めるつもりでいるらしいですって?
 どんだけ肉食なのよ?

 気を付けろって、何をどうすればいいのよ!

 若干、イラッとしてきた私に手が伸びてくる。
 その瞬間、お義兄様に殿下からの手紙をサッと奪われてしまった。


「お、お義兄様!それは…」

「私も知らないと対策が出来ないだろう?
 殿下には私が見たことを内緒にすれば大丈夫だ。」


 お義兄様は無言で殿下からの手紙を読むと、冷ややかに笑う。


「隣国の阿婆擦れと、フロスト侯爵家は随分と我が侯爵家を馬鹿にしてくれたな。
 アナ…、私が必ず尻尾を掴んでやる。大丈夫だ!」


 あ…、お義兄様は笑いながら怒っている。


 その日から、私は邸に籠る日々を送っていた。

 今までと違うのは、邸内に騎士が沢山潜んでいること。
 それ以外はお義兄様から、普通に過ごすようにと言われているので、読書をしたり、学園の授業の予習と復習をしたりして自分の部屋で過ごしていた。

 学園は普通に授業が再開しているようで、休んでいる私を心配してくれているチェルシーからは、手紙が届いたりする。

 ある日、部屋に引き籠るダラダラした生活を楽しんでいた私は、読書をしている途中で眠ってしまっていたらしい。


「……アナ?…眠っているのか?」

「…うん?…お義兄様?
 ごめんなさい。つい眠ってしまったようです。」


 ソファーでウトウトしていたところをお義兄様に起こされる私。


「アナ…。君が寝ている間に、ネズミを全部生捕りすることに成功した。
 我が侯爵家の影や騎士達が頑張ってくれたよ。」

「……え?」

「私はこれからネズミ達と話でもしてくる。
 アナはまだ部屋に引き籠っていて欲しい。
 良い子にしているようにな。」


 お義兄様は晴れやかに微笑むと、寝起きの私の額にキスを落として、部屋から出て行った。


「……え?お義兄様、ちょっと!」


 私が昼寝をしている間に、暗殺者が邸に来て、その暗殺者を何人か捕まえたってこと…?
 全然騒がしくなかったから、分からなかったわよ。

 暗殺者って、失敗しそうになると自害するのに、どうやって生捕りにしたの?


 後でお義兄様やお父様から話を聞かされることになるのだが、暗殺者を生捕りにするために、あの人物が大活躍したらしい。
 


 

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