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二度目の話

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 元気をなくした私に、お義兄様がハーブティーを淹れてくれる。


「アナ、大丈夫か?
 死にそうな顔をしているな…。」

「矢が飛んで来ました。
 ミルズ先生が助けてくれなかったら私は……」

「アナ、大丈夫だ。我が家門の騎士達を信じろ。
 ミルズ先生と実家の子爵家には、義父上から礼状を出したらしいし、後日落ち着いたら、直接お礼を伝えに行くと言っていた。
 それよりも、しばらくアナは外出しない方がいいな。」

「はい。分かっています。」


 一度目の時は、外出先で待ち伏せされて襲撃されたことが何度かあったから、今は外出しないのが一番なのは知っている。
 でも、一度目の時にやって来た暗殺グループとは違うかもしれないから、暗殺の手法が違う可能性が高い。
 周りを巻き込みたくないから、部屋に一人で籠るのが一番ね。


「アナ…。君は何を抱えている?
 まるで自分が暗殺者に狙われることを予想していたかのように見える。
 ショックを受けつつも、この現状を受け入れているような…。」


 ハァ。お義兄様は今日も鋭い人だわ。
 弱っている時に鋭く追求されるのは、こんなに辛いのね…


「アナは、まだ正式に殿下の婚約者に決まった訳ではないのだから、学園にまで暗殺者を送る必要などないのに。
 学園は他にも沢山の貴族がいるのだから、巻き込みたくない者まで巻き込んでしまう可能性が高くなる。そのことによって、敵を多く作るリスクが高くなるのだから、急いで暗殺しなければならないなどの理由がない限りは、私なら暗殺者を学園には送り込まない。
 まるで、まだ未熟な者が浅はかな考えで暗殺者に命令したようなやり方だ。
 それに王立の貴族学園にまで暗殺者を送るなんて、国王陛下を敵に回すようなものだからな。
 こんなことは、我が国の貴族がするとは思えない。」


 お義兄様は、今日も頭が冴えていらっしゃるようだ…
 
 
「もしかしてアナは、暗殺者を仕向けた犯人を知っているのではないか?」

「……まだ分かりません。」

「さっき話したことに当てはまる人物で、一番に私が疑うのは、隣国から外遊に来ている第二王女だな…。」

「………。」

「アナ…。私を信じてくれ。
 私はアナを愛しているんだ。アナを守りたい。
 アナに何かあったら、私の人生は無意味なものになるだろう。」


 私はお義兄様の大切な恋人なのかと、勘違いしてしまいそうだわ…。

 家族として愛してくれているだけなのだから、勘違いしてはいけない。
 そんな切なそうな目で見つめないで欲しいわよ。


「君は何を悩んでいる?
 アナの苦しみを私も分かち合いたいと思っている。」


 もう…、限界……


「お義兄様は私が変なことを話しても、私を嫌いになりませんか?
 頭がおかしくなったと、私を避けたり病気を疑ったりしませんか?
 私が話したことを、絶対に秘密にしてくれますか?」

「私はアナを信じている。
 絶対に秘密にする。」

「実は、私は……」


 お義兄様に隠し続けることに限界を感じた私は、自分が二度目の人生を送っていることを話した。

 一度目の人生で私が殿下の婚約者だったことや、殿下と婚約解消になりブレア公爵令息と王命で結婚したこと。
 公爵家のメイド長に毒を盛られて、お義兄様に助けを求めたこと。
 お義兄様は仲が良くなかった私を助けてくれて、最後まで側にいてくれたこと。
 殿下にも一番目の記憶があって、隣国の第二王女が私達の敵であると教えてくれたことや、フロスト卿が第二王女の協力者であることも全て話した。


「きっとお義兄様は、私が夢を見たのだろうとか、精神的に病んでいるとか感じているでしょう。
 でもこの話に嘘はありません。」


 お義兄様は黙って私の話に耳を傾けてくれた。
 そして話し終えた私の隣に座ると、優しく私を抱き寄せる。


「アナ…。話してくれて嬉しい。
 私はアナの一番の味方だ。君の話を信じるよ。」


 お義兄様はあっさりと信じると言っている。


「えぇ!こんな話を信じてくれるのですか?」

「アナは嘘はつけないだろう?
 おっちょこちょいなアナが嘘をついたら、私はすぐに見破る自信があるからな。
 それに私はアナを愛しているのだから、皆んながアナを信じなかったとしても、私はアナを信じる。」


 殿下も私が嘘をつくと分かると言っていたけど、お義兄様まで私の嘘を見破る自信があるって…。
 私、チョロすぎるわ…

 でも…、お義兄様が信じてくれると言ってくれた。
 なんて心強いんだろう。嬉しい…

 生まれて初めて、自分のおっちょこちょいが役に立った瞬間だった。
 
 
 
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