41 / 102
二度目の話
あの時と同じ
しおりを挟む
「…やはり。コールマン侯爵令嬢、勉強でもしているのか?」
あ、誰かに話しかけられている…
……ひぃー!
慌てて立ち上がり、カーテシーをする私。
「このような場なのだから、気にせずに座ってくれ。」
「王太子殿下、ご機嫌麗しゅうございます。」
座れと言われても、殿下が立っているのに座れないわ!
「コールマン侯爵令嬢は、もうマニー語の本が読めるのか?
噂通りの才女なのだな。」
「ただ興味を持って見ていただけですわ。」
気まずいわね。ただ、この前学園で会った時みたいに、冷ややかな雰囲気は感じられないからいいけれど。
「ここの席…、空いているか?」
「あ、空いていると思われます。」
はい?王族用の別室があるわよね。何で私の前に座るのよ?
少し離れた場所にいる護衛騎士達も、何か言いたそうな目で見ているわ。
今すぐに帰りたいけど、今帰るのも感じ悪いだろうから、もう少ししたら席を立ちあがろう。
それにしても、王太子殿下はこの時間はいつも生徒会よね?何でいるのかしら?
もしかして…、テスト期間?
「君は、アルマンと仲がいいのか?」
え?なぜ突然その話…
どう見ても仲良さそうに見えないでしょうが!
「いえ。私のような者が、あのお方と仲が良いなどと言えるような立場にありませんわ。」
「なるほど…。君はあまりそう言ったことには興味はないということか。」
あ…!その柔らかく微笑む表情は一度目の時と同じだわ。
懐かしいわね。
「そうですわね。興味はないです。」
このことは、あの男の友人で親戚でもある殿下にはハッキリ伝えておいた方がいいわね。
「興味がないって…。ぷっ、…くっ、くっ!
す、すまない。誰もが憧れる公爵家の嫡男に向かって、興味がないなどとハッキリいう者がいることが面白くて…、つい…。」
笑い方もあの時と変わっていなかった…
はっ!…これは筆頭公爵家に不敬だったかしら?
いけない!あの公爵家を怒らせると、ギロリー侯爵令嬢のように、没落させられてしまうわ。
「あ、あの…、このことはご本人様には…、内緒でお願いできますでしょうか?
不敬だと思われたくはないのです。
殿下にこのようなことを言うことも、大変無礼であることは承知しております。」
「…ダメだ。このことは、私からアルマンに伝えておく。」
「そんな…!」
ええー!ブレア公爵家に睨まれてしまうわよ!
「…くっ。…冗談だ!言わないよ。
内緒にするから、そんな泣きそうな顔をしないでくれ。
コールマン侯爵令嬢が面白すぎて、つい揶揄ってしまった。すまないな。」
「酷いですわ!」
「そんなに怒らないでくれ。
本当に悪かった…。」
こんな風に私を揶揄うところも、あの時と変わってないのね…。
早くこの場から離れた方がいいに決まっているのに、殿下と話をするのは思いのほか楽しかった。
その後、殿下とどれくらい話をしただろうか…
「アナ。遅くなる前に迎えに来た!」
お義兄様に声を掛けられてハッとした。
「お義兄様、どうして…?」
「コールマン侯爵令息、義妹殿を私の話に付き合わせてしまって申し訳ない。
この年齢でマニー語の本を読んでいたから、気になって話しかけてしまったんだ。」
殿下の言葉からは、私に気を遣ってくれているのが伝わるものだった。
やっぱり今世の殿下もお優しい方なのね。何だか安心する。
「王太子殿下、私の義妹が大変お世話になりまして、ありがとうございました。
アナ。最近は図書館での読書や勉強で忙しいからと、一緒にお茶をしたり、ゆっくりと食事をする暇がなかっただろう?
今日は一緒に過ごしたいと思って迎えに来たんだよ。」
やはり、しばらくはブラコンはやめられそうにないわね…。
お義兄様が迎えに来てくれたことによって、この場から離れるための理由にもなるわ。
「お義兄様、ありがとうございます。
忙しいお義兄様が迎えに来てくださるなんて、とても嬉しいですわ。」
「アナの淹れたお茶がどうしても飲みたかったんだ。
帰ったら淹れてくれるか?」
ああ、お義兄様の秘密の恋人が羨ましい。
やっぱりお義兄様は素敵だもの。
「はい。勿論ですわ。」
「コールマン侯爵家の義兄妹は本当に仲が良いんだな。羨ましいよ。」
「アナは私の一番の宝物なのです。」
え…!お義兄様、殿下にまでシスコンをアピールしないでよ。
「お、お義兄様。殿下になんて事を…。」
「コールマン侯爵令息は、義兄として君を可愛がってくれているのだから良いではないか。」
「お恥ずかしいですわ。」
お優しい殿下は、こんなお義兄様に引かずにいてくれるのね。一度目と変わらずにいい人だわ。
死神認定して悪かったかしらね。いや、この人も私が死ぬきっかけの一つであったのだから、いい人であっても、気を付けなければならないわ。
この人と婚約したら、厳しい王妃教育が待っているし、努力しても結局は結ばれないのだから、近づいてはいけない。
あの時のような、悲しい思いはしたくない。
私は平凡な方と普通の結婚をして、普通の幸せを掴んで長生きしたいもの。
殿下が図書館に来そうな日は、もう来るのはやめよう。
後でお義兄様に、テスト期間がいつまでなのか聞いておいた方がいいわね。
そういえば、最近は図書館ばかり来ていたから、王都の街中を散歩してなかったわ。
明日は、お店や道を調べるために街歩きしようかしら。
あ、誰かに話しかけられている…
……ひぃー!
慌てて立ち上がり、カーテシーをする私。
「このような場なのだから、気にせずに座ってくれ。」
「王太子殿下、ご機嫌麗しゅうございます。」
座れと言われても、殿下が立っているのに座れないわ!
「コールマン侯爵令嬢は、もうマニー語の本が読めるのか?
噂通りの才女なのだな。」
「ただ興味を持って見ていただけですわ。」
気まずいわね。ただ、この前学園で会った時みたいに、冷ややかな雰囲気は感じられないからいいけれど。
「ここの席…、空いているか?」
「あ、空いていると思われます。」
はい?王族用の別室があるわよね。何で私の前に座るのよ?
少し離れた場所にいる護衛騎士達も、何か言いたそうな目で見ているわ。
今すぐに帰りたいけど、今帰るのも感じ悪いだろうから、もう少ししたら席を立ちあがろう。
それにしても、王太子殿下はこの時間はいつも生徒会よね?何でいるのかしら?
もしかして…、テスト期間?
「君は、アルマンと仲がいいのか?」
え?なぜ突然その話…
どう見ても仲良さそうに見えないでしょうが!
「いえ。私のような者が、あのお方と仲が良いなどと言えるような立場にありませんわ。」
「なるほど…。君はあまりそう言ったことには興味はないということか。」
あ…!その柔らかく微笑む表情は一度目の時と同じだわ。
懐かしいわね。
「そうですわね。興味はないです。」
このことは、あの男の友人で親戚でもある殿下にはハッキリ伝えておいた方がいいわね。
「興味がないって…。ぷっ、…くっ、くっ!
す、すまない。誰もが憧れる公爵家の嫡男に向かって、興味がないなどとハッキリいう者がいることが面白くて…、つい…。」
笑い方もあの時と変わっていなかった…
はっ!…これは筆頭公爵家に不敬だったかしら?
いけない!あの公爵家を怒らせると、ギロリー侯爵令嬢のように、没落させられてしまうわ。
「あ、あの…、このことはご本人様には…、内緒でお願いできますでしょうか?
不敬だと思われたくはないのです。
殿下にこのようなことを言うことも、大変無礼であることは承知しております。」
「…ダメだ。このことは、私からアルマンに伝えておく。」
「そんな…!」
ええー!ブレア公爵家に睨まれてしまうわよ!
「…くっ。…冗談だ!言わないよ。
内緒にするから、そんな泣きそうな顔をしないでくれ。
コールマン侯爵令嬢が面白すぎて、つい揶揄ってしまった。すまないな。」
「酷いですわ!」
「そんなに怒らないでくれ。
本当に悪かった…。」
こんな風に私を揶揄うところも、あの時と変わってないのね…。
早くこの場から離れた方がいいに決まっているのに、殿下と話をするのは思いのほか楽しかった。
その後、殿下とどれくらい話をしただろうか…
「アナ。遅くなる前に迎えに来た!」
お義兄様に声を掛けられてハッとした。
「お義兄様、どうして…?」
「コールマン侯爵令息、義妹殿を私の話に付き合わせてしまって申し訳ない。
この年齢でマニー語の本を読んでいたから、気になって話しかけてしまったんだ。」
殿下の言葉からは、私に気を遣ってくれているのが伝わるものだった。
やっぱり今世の殿下もお優しい方なのね。何だか安心する。
「王太子殿下、私の義妹が大変お世話になりまして、ありがとうございました。
アナ。最近は図書館での読書や勉強で忙しいからと、一緒にお茶をしたり、ゆっくりと食事をする暇がなかっただろう?
今日は一緒に過ごしたいと思って迎えに来たんだよ。」
やはり、しばらくはブラコンはやめられそうにないわね…。
お義兄様が迎えに来てくれたことによって、この場から離れるための理由にもなるわ。
「お義兄様、ありがとうございます。
忙しいお義兄様が迎えに来てくださるなんて、とても嬉しいですわ。」
「アナの淹れたお茶がどうしても飲みたかったんだ。
帰ったら淹れてくれるか?」
ああ、お義兄様の秘密の恋人が羨ましい。
やっぱりお義兄様は素敵だもの。
「はい。勿論ですわ。」
「コールマン侯爵家の義兄妹は本当に仲が良いんだな。羨ましいよ。」
「アナは私の一番の宝物なのです。」
え…!お義兄様、殿下にまでシスコンをアピールしないでよ。
「お、お義兄様。殿下になんて事を…。」
「コールマン侯爵令息は、義兄として君を可愛がってくれているのだから良いではないか。」
「お恥ずかしいですわ。」
お優しい殿下は、こんなお義兄様に引かずにいてくれるのね。一度目と変わらずにいい人だわ。
死神認定して悪かったかしらね。いや、この人も私が死ぬきっかけの一つであったのだから、いい人であっても、気を付けなければならないわ。
この人と婚約したら、厳しい王妃教育が待っているし、努力しても結局は結ばれないのだから、近づいてはいけない。
あの時のような、悲しい思いはしたくない。
私は平凡な方と普通の結婚をして、普通の幸せを掴んで長生きしたいもの。
殿下が図書館に来そうな日は、もう来るのはやめよう。
後でお義兄様に、テスト期間がいつまでなのか聞いておいた方がいいわね。
そういえば、最近は図書館ばかり来ていたから、王都の街中を散歩してなかったわ。
明日は、お店や道を調べるために街歩きしようかしら。
171
お気に入りに追加
8,366
あなたにおすすめの小説
挙式後すぐに離婚届を手渡された私は、この結婚は予め捨てられることが確定していた事実を知らされました
結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
【結婚した日に、「君にこれを預けておく」と離婚届を手渡されました】
今日、私は子供の頃からずっと大好きだった人と結婚した。しかし、式の後に絶望的な事を彼に言われた。
「ごめん、本当は君とは結婚したくなかったんだ。これを預けておくから、その気になったら提出してくれ」
そう言って手渡されたのは何と離婚届けだった。
そしてどこまでも冷たい態度の夫の行動に傷つけられていく私。
けれどその裏には私の知らない、ある深い事情が隠されていた。
その真意を知った時、私は―。
※暫く鬱展開が続きます
※他サイトでも投稿中

貴方が側妃を望んだのです
cyaru
恋愛
「君はそれでいいのか」王太子ハロルドは言った。
「えぇ。勿論ですわ」婚約者の公爵令嬢フランセアは答えた。
誠の愛に気がついたと言われたフランセアは微笑んで答えた。
※2022年6月12日。一部書き足しました。
※架空のお話です。現実世界の話ではありません。
史実などに基づいたものではない事をご理解ください。
※話の都合上、残酷な描写がありますがそれがざまぁなのかは受け取り方は人それぞれです。
表現的にどうかと思う回は冒頭に注意喚起を書き込むようにしますが有無は作者の判断です。
※更新していくうえでタグは幾つか増えます。
※作者都合のご都合主義です。
※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。
※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります)
※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。

王子は婚約破棄を泣いて詫びる
tartan321
恋愛
最愛の妹を失った王子は婚約者のキャシーに復讐を企てた。非力な王子ではあったが、仲間の協力を取り付けて、キャシーを王宮から追い出すことに成功する。
目的を達成し安堵した王子の前に突然死んだ妹の霊が現れた。
「お兄さま。キャシー様を3日以内に連れ戻して!」
存亡をかけた戦いの前に王子はただただ無力だった。
王子は妹の言葉を信じ、遥か遠くの村にいるキャシーを訪ねることにした……。
不遇な王妃は国王の愛を望まない
ゆきむらさり
恋愛
〔あらすじ〕📝ある時、クラウン王国の国王カルロスの元に、自ら命を絶った王妃アリーヤの訃報が届く。王妃アリーヤを冷遇しておきながら嘆く国王カルロスに皆は不思議がる。なにせ国王カルロスは幼馴染の側妃ベリンダを寵愛し、政略結婚の為に他国アメジスト王国から輿入れした不遇の王女アリーヤには見向きもしない。はたから見れば哀れな王妃アリーヤだが、実は他に愛する人がいる王妃アリーヤにもその方が都合が良いとも。彼女が真に望むのは愛する人と共に居られる些細な幸せ。ある時、自国に囚われの身である愛する人の訃報を受け取る王妃アリーヤは絶望に駆られるも……。主人公の舞台は途中から変わります。
※設定などは独自の世界観で、あくまでもご都合主義。断罪あり(苦手な方はご注意下さい)。ハピエン🩷
※稚拙ながらも投稿初日からHOTランキング(2024.11.21)に入れて頂き、ありがとうございます🙂 今回初めて最高ランキング5位(11/23)✨ まさに感無量です🥲
【完結】365日後の花言葉
Ringo
恋愛
許せなかった。
幼い頃からの婚約者でもあり、誰よりも大好きで愛していたあなただからこそ。
あなたの裏切りを知った翌朝、私の元に届いたのはゼラニウムの花束。
“ごめんなさい”
言い訳もせず、拒絶し続ける私の元に通い続けるあなたの愛情を、私はもう一度信じてもいいの?
※勢いよく本編完結しまして、番外編ではイチャイチャするふたりのその後をお届けします。
旦那様には愛人がいますが気にしません。
りつ
恋愛
イレーナの夫には愛人がいた。名はマリアンヌ。子どものように可愛らしい彼女のお腹にはすでに子どもまでいた。けれどイレーナは別に気にしなかった。彼女は子どもが嫌いだったから。
※表紙は「かんたん表紙メーカー」様で作成しました。

願いの代償
らがまふぃん
恋愛
誰も彼もが軽視する。婚約者に家族までも。
公爵家に生まれ、王太子の婚約者となっても、誰からも認められることのないメルナーゼ・カーマイン。
唐突に思う。
どうして頑張っているのか。
どうして生きていたいのか。
もう、いいのではないだろうか。
メルナーゼが生を諦めたとき、世界の運命が決まった。
*ご都合主義です。わかりづらいなどありましたらすみません。笑って読んでくださいませ。本編15話で完結です。番外編を数話、気まぐれに投稿します。よろしくお願いいたします。
※ありがたいことにHOTランキング入りいたしました。たくさんの方の目に触れる機会に感謝です。本編は終了しましたが、番外編も投稿予定ですので、気長にお付き合いくださると嬉しいです。たくさんのお気に入り登録、しおり、エール、いいねをありがとうございます。R7.1/31

運命の番?棄てたのは貴方です
ひよこ1号
恋愛
竜人族の侯爵令嬢エデュラには愛する番が居た。二人は幼い頃に出会い、婚約していたが、番である第一王子エリンギルは、新たに番と名乗り出たリリアーデと婚約する。邪魔になったエデュラとの婚約を解消し、番を引き裂いた大罪人として追放するが……。一方で幼い頃に出会った侯爵令嬢を忘れられない帝国の皇子は、男爵令息と身分を偽り竜人国へと留学していた。
番との運命の出会いと別離の物語。番でない人々の貫く愛。
※自己設定満載ですので気を付けてください。
※性描写はないですが、一線を越える個所もあります
※多少の残酷表現あります。
以上2点からセルフレイティング
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる