35 / 102
二度目の話
お義兄様の発表会
しおりを挟む
お茶会とガリ勉で忙しい日々を送っていた私は、13歳になっていた。
そんな私は、貴族学園の発表会に来ている。
これは貴族学園で三年に一度行われるもので、クラスごとに劇や音楽を発表したり、絵画や刺繍などの作品を展示して家族にお披露目する日なのである。
私の目的は勿論、お兄様の応援よ!
お義兄様のクラスは、楽器を弾くのが得意な人が多いらしく、オーケストラをやるらしいのだけど、お義兄様はバイオリンでソリストをやるらしい。
確かに義兄様の趣味はバイオリンで、上手なのは知っていたけど、ソリストをやるくらいすごいのね!
これは絶対に行かないといけないわ!
一度目の時は、お義兄様とは仲良くなかったので、発表会には行かなかったのよね。
でもブラコンの今は、躊躇なく行くことに決めた私。
しかし、ここで問題が…。
発表会の日はお父様もお母様も、予定が入っていて来れないのだ。
一度目の人生で貴族学園を卒業している私としては、学園の中はよく知っているから何の問題もない。
それに貴族学園だから、学園内には警備の騎士が配置されているし、怪しい人はいない。
会場の座席も、家族用の指定席のチケットがあるから、場所取りも必要ない。
でも一人で行くのはダメだと言われ、護衛騎士と一緒に行くことになった。まあ、しょうがない。
「お嬢様、会場はこちらです。」
護衛騎士は男爵家出身なので、貴族学園の卒業生らしく、学園のことにも詳しそうだった。
「お嬢様、お席はこちらですね。
私は出入り口付近で待機しておりますので、何かあればお呼び下さい。」
「ありがとう。」
これで誰にも邪魔されることなく、静かにお兄様の演奏を楽しめるわね。
しかし、私は大切なことを忘れていた…
座席は爵位ごとに決められており、筆頭侯爵家のうちの座席の近くには、公爵家の座席もあったのだ。
家族席に座るのが初めての私は、そんなことはすっかり忘れており、早く始まらないかなーと、気楽に座って待っていたのだが…
「あらっ?もしかして、コールマン侯爵令嬢かしら?」
この声は…!
ハッとした私は慌てて立ち上がり、カーテシーをする。
「そんなに気を遣わないでちょうだい。
今日はお一人で来ているの?」
一度目の人生の元義母が登場してきた。しかも、すぐ後ろには元義父であるブレア公爵様までいるわ…。
「ブレア公爵夫人、ご機嫌麗しゅうございます。
先日は、素敵なお茶会にご招待して下さり、ありがとうございました。
本日は、両親に予定がありまして、代わりに私が来ることになったのです。」
「そうだったのね。コールマン侯爵令息は、可愛い義妹の貴女が来てくれて、きっと喜んでくれているでしょうね。
旦那様、こちらがあのコールマン侯爵令嬢よ!」
「家庭教師達からコールマン侯爵家の義兄妹は優秀だと聞いているよ。こんなに可愛らしい御令嬢だったのか。
今日は会えて嬉しい。うちの息子が喜ぶから、また遊びに来てくれ。」
絶対に行かないわ!…と、心の中で叫ぶ私。
「過分なお褒めの言葉をいただき、痛み入ります。」
このやり取りの後、ブレア公爵夫人はとんでもないことを言い出す。
「コールマン侯爵令嬢はお一人なのよね?
公爵家の席が空いているから、こっちで一緒に座りましょう。」
「そうだな!その席よりも、こっちの席の方が見やすいだろうから、こっちに座わりなさい。」
……嘘でしょ?
この夫妻が、高すぎる身分の割には気さくな人達だということを知ってはいたけれど…、流石に人の目に付くこの場でそれは良くないわよ!
「私のような者が公爵家の席に座らせて頂くなど、畏れ多いことでございます。」
「いいのよ!空いているのだから、一緒に座りましょう。」
「遠慮はいらない。ほら、ここに座りなさい。」
ひぃー!そんな笑顔で誘わないで…
「しかし…」
「もうすぐ始まるから、早くいらっしゃい。」
ああ…。これ以上は断りきれないわね。
「……お気遣いありがとうございます。」
元義両親に負けた私。
しかし、公爵家の席は二階の最前列で目立つわね。さっきから、在校生の席の方からチクチクと視線を感じるわ。
ブレア公爵令息は一人っ子だから、両親である公爵夫妻が身内以外の令嬢と一緒に公爵家の席に座っている姿を見られたら、何を勘違いされることか…
またしくじったわ!
一人の世界に入り、お義兄様の演奏だけを楽しむつもりで来たのに……
「うちのアルは、殿下と劇をやるらしいのよ。
殿下と親友同士の役で、ヒロインを取り合うらしいわ。」
私はお義兄様以外の発表には興味はないの!…なんて言えるはずもなく、
「まあ、素敵な役ですわね」
「アナちゃんも観てあげてちょうだい。苦労してセリフを覚えたらしいから。」
「ええ、とても楽しみですわ。」
気さくな公爵夫人は、私を愛称で呼びたいなんて言い出すし。
殿下とブレア公爵令息のクラスの劇は、二人が令嬢方に大人気なこともあって、非常に盛り上がっていたようだった…。興味ないけど。
そして、ついに待ちに待ったお義兄様のクラスの出番になる。
お義兄様…、すごいカッコいい!勿論、バイオリンの演奏も素敵だわ。
あの真剣な表情が堪らないわね!
ステージのお義兄様に手を振りたいくらいだけど…、我慢ね。
やはり見に来て良かったー!
私のお義兄様が一番よ!
しかしこの後に、地獄が私を待っているのであった…。
そんな私は、貴族学園の発表会に来ている。
これは貴族学園で三年に一度行われるもので、クラスごとに劇や音楽を発表したり、絵画や刺繍などの作品を展示して家族にお披露目する日なのである。
私の目的は勿論、お兄様の応援よ!
お義兄様のクラスは、楽器を弾くのが得意な人が多いらしく、オーケストラをやるらしいのだけど、お義兄様はバイオリンでソリストをやるらしい。
確かに義兄様の趣味はバイオリンで、上手なのは知っていたけど、ソリストをやるくらいすごいのね!
これは絶対に行かないといけないわ!
一度目の時は、お義兄様とは仲良くなかったので、発表会には行かなかったのよね。
でもブラコンの今は、躊躇なく行くことに決めた私。
しかし、ここで問題が…。
発表会の日はお父様もお母様も、予定が入っていて来れないのだ。
一度目の人生で貴族学園を卒業している私としては、学園の中はよく知っているから何の問題もない。
それに貴族学園だから、学園内には警備の騎士が配置されているし、怪しい人はいない。
会場の座席も、家族用の指定席のチケットがあるから、場所取りも必要ない。
でも一人で行くのはダメだと言われ、護衛騎士と一緒に行くことになった。まあ、しょうがない。
「お嬢様、会場はこちらです。」
護衛騎士は男爵家出身なので、貴族学園の卒業生らしく、学園のことにも詳しそうだった。
「お嬢様、お席はこちらですね。
私は出入り口付近で待機しておりますので、何かあればお呼び下さい。」
「ありがとう。」
これで誰にも邪魔されることなく、静かにお兄様の演奏を楽しめるわね。
しかし、私は大切なことを忘れていた…
座席は爵位ごとに決められており、筆頭侯爵家のうちの座席の近くには、公爵家の座席もあったのだ。
家族席に座るのが初めての私は、そんなことはすっかり忘れており、早く始まらないかなーと、気楽に座って待っていたのだが…
「あらっ?もしかして、コールマン侯爵令嬢かしら?」
この声は…!
ハッとした私は慌てて立ち上がり、カーテシーをする。
「そんなに気を遣わないでちょうだい。
今日はお一人で来ているの?」
一度目の人生の元義母が登場してきた。しかも、すぐ後ろには元義父であるブレア公爵様までいるわ…。
「ブレア公爵夫人、ご機嫌麗しゅうございます。
先日は、素敵なお茶会にご招待して下さり、ありがとうございました。
本日は、両親に予定がありまして、代わりに私が来ることになったのです。」
「そうだったのね。コールマン侯爵令息は、可愛い義妹の貴女が来てくれて、きっと喜んでくれているでしょうね。
旦那様、こちらがあのコールマン侯爵令嬢よ!」
「家庭教師達からコールマン侯爵家の義兄妹は優秀だと聞いているよ。こんなに可愛らしい御令嬢だったのか。
今日は会えて嬉しい。うちの息子が喜ぶから、また遊びに来てくれ。」
絶対に行かないわ!…と、心の中で叫ぶ私。
「過分なお褒めの言葉をいただき、痛み入ります。」
このやり取りの後、ブレア公爵夫人はとんでもないことを言い出す。
「コールマン侯爵令嬢はお一人なのよね?
公爵家の席が空いているから、こっちで一緒に座りましょう。」
「そうだな!その席よりも、こっちの席の方が見やすいだろうから、こっちに座わりなさい。」
……嘘でしょ?
この夫妻が、高すぎる身分の割には気さくな人達だということを知ってはいたけれど…、流石に人の目に付くこの場でそれは良くないわよ!
「私のような者が公爵家の席に座らせて頂くなど、畏れ多いことでございます。」
「いいのよ!空いているのだから、一緒に座りましょう。」
「遠慮はいらない。ほら、ここに座りなさい。」
ひぃー!そんな笑顔で誘わないで…
「しかし…」
「もうすぐ始まるから、早くいらっしゃい。」
ああ…。これ以上は断りきれないわね。
「……お気遣いありがとうございます。」
元義両親に負けた私。
しかし、公爵家の席は二階の最前列で目立つわね。さっきから、在校生の席の方からチクチクと視線を感じるわ。
ブレア公爵令息は一人っ子だから、両親である公爵夫妻が身内以外の令嬢と一緒に公爵家の席に座っている姿を見られたら、何を勘違いされることか…
またしくじったわ!
一人の世界に入り、お義兄様の演奏だけを楽しむつもりで来たのに……
「うちのアルは、殿下と劇をやるらしいのよ。
殿下と親友同士の役で、ヒロインを取り合うらしいわ。」
私はお義兄様以外の発表には興味はないの!…なんて言えるはずもなく、
「まあ、素敵な役ですわね」
「アナちゃんも観てあげてちょうだい。苦労してセリフを覚えたらしいから。」
「ええ、とても楽しみですわ。」
気さくな公爵夫人は、私を愛称で呼びたいなんて言い出すし。
殿下とブレア公爵令息のクラスの劇は、二人が令嬢方に大人気なこともあって、非常に盛り上がっていたようだった…。興味ないけど。
そして、ついに待ちに待ったお義兄様のクラスの出番になる。
お義兄様…、すごいカッコいい!勿論、バイオリンの演奏も素敵だわ。
あの真剣な表情が堪らないわね!
ステージのお義兄様に手を振りたいくらいだけど…、我慢ね。
やはり見に来て良かったー!
私のお義兄様が一番よ!
しかしこの後に、地獄が私を待っているのであった…。
169
お気に入りに追加
8,367
あなたにおすすめの小説

王子は婚約破棄を泣いて詫びる
tartan321
恋愛
最愛の妹を失った王子は婚約者のキャシーに復讐を企てた。非力な王子ではあったが、仲間の協力を取り付けて、キャシーを王宮から追い出すことに成功する。
目的を達成し安堵した王子の前に突然死んだ妹の霊が現れた。
「お兄さま。キャシー様を3日以内に連れ戻して!」
存亡をかけた戦いの前に王子はただただ無力だった。
王子は妹の言葉を信じ、遥か遠くの村にいるキャシーを訪ねることにした……。

貴方が側妃を望んだのです
cyaru
恋愛
「君はそれでいいのか」王太子ハロルドは言った。
「えぇ。勿論ですわ」婚約者の公爵令嬢フランセアは答えた。
誠の愛に気がついたと言われたフランセアは微笑んで答えた。
※2022年6月12日。一部書き足しました。
※架空のお話です。現実世界の話ではありません。
史実などに基づいたものではない事をご理解ください。
※話の都合上、残酷な描写がありますがそれがざまぁなのかは受け取り方は人それぞれです。
表現的にどうかと思う回は冒頭に注意喚起を書き込むようにしますが有無は作者の判断です。
※更新していくうえでタグは幾つか増えます。
※作者都合のご都合主義です。
※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。
※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります)
※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。

運命の番?棄てたのは貴方です
ひよこ1号
恋愛
竜人族の侯爵令嬢エデュラには愛する番が居た。二人は幼い頃に出会い、婚約していたが、番である第一王子エリンギルは、新たに番と名乗り出たリリアーデと婚約する。邪魔になったエデュラとの婚約を解消し、番を引き裂いた大罪人として追放するが……。一方で幼い頃に出会った侯爵令嬢を忘れられない帝国の皇子は、男爵令息と身分を偽り竜人国へと留学していた。
番との運命の出会いと別離の物語。番でない人々の貫く愛。
※自己設定満載ですので気を付けてください。
※性描写はないですが、一線を越える個所もあります
※多少の残酷表現あります。
以上2点からセルフレイティング
挙式後すぐに離婚届を手渡された私は、この結婚は予め捨てられることが確定していた事実を知らされました
結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
【結婚した日に、「君にこれを預けておく」と離婚届を手渡されました】
今日、私は子供の頃からずっと大好きだった人と結婚した。しかし、式の後に絶望的な事を彼に言われた。
「ごめん、本当は君とは結婚したくなかったんだ。これを預けておくから、その気になったら提出してくれ」
そう言って手渡されたのは何と離婚届けだった。
そしてどこまでも冷たい態度の夫の行動に傷つけられていく私。
けれどその裏には私の知らない、ある深い事情が隠されていた。
その真意を知った時、私は―。
※暫く鬱展開が続きます
※他サイトでも投稿中

不遇な王妃は国王の愛を望まない
ゆきむらさり
恋愛
〔あらすじ〕📝ある時、クラウン王国の国王カルロスの元に、自ら命を絶った王妃アリーヤの訃報が届く。王妃アリーヤを冷遇しておきながら嘆く国王カルロスに皆は不思議がる。なにせ国王カルロスは幼馴染の側妃ベリンダを寵愛し、政略結婚の為に他国アメジスト王国から輿入れした不遇の王女アリーヤには見向きもしない。はたから見れば哀れな王妃アリーヤだが、実は他に愛する人がいる王妃アリーヤにもその方が都合が良いとも。彼女が真に望むのは愛する人と共に居られる些細な幸せ。ある時、自国に囚われの身である愛する人の訃報を受け取る王妃アリーヤは絶望に駆られるも……。主人公の舞台は途中から変わります。
※設定などは独自の世界観で、あくまでもご都合主義。断罪あり(苦手な方はご注意下さい)。ハピエン🩷
※稚拙ながらも投稿初日からHOTランキング(2024.11.21)に入れて頂き、ありがとうございます🙂 今回初めて最高ランキング5位(11/23)✨ まさに感無量です🥲

初夜に大暴言を吐かれた伯爵夫人は、微笑みと共に我が道を行く ―旦那様、今更擦り寄られても困ります―
望月 或
恋愛
「お前の噂を聞いたぞ。毎夜町に出て男を求め、毎回違う男と朝までふしだらな行為に明け暮れているそうだな? その上糸目を付けず服や装飾品を買い漁り、多大な借金を背負っているとか……。そんな醜悪な女が俺の妻だとは非常に不愉快極まりない! 今後俺に話し掛けるな! 俺に一切関与するな! 同じ空気を吸ってるだけでとんでもなく不快だ……!!」
【王命】で決められた婚姻をし、ハイド・ランジニカ伯爵とオリービア・フレイグラント子爵令嬢の初夜は、彼のその暴言で始まった。
そして、それに返したオリービアの一言は、
「あらあら、まぁ」
の六文字だった。
屋敷に住まわせている、ハイドの愛人と噂されるユーカリや、その取巻きの使用人達の嫌がらせも何のその、オリービアは微笑みを絶やさず自分の道を突き進んでいく。
ユーカリだけを信じ心酔していたハイドだったが、オリービアが屋敷に来てから徐々に変化が表れ始めて……
※作者独自の世界観満載です。違和感を感じたら、「あぁ、こういう世界なんだな」と思って頂けたら有難いです……。

なにをおっしゃいますやら
基本二度寝
恋愛
本日、五年通った学び舎を卒業する。
エリクシア侯爵令嬢は、己をエスコートする男を見上げた。
微笑んで見せれば、男は目線を逸らす。
エブリシアは苦笑した。
今日までなのだから。
今日、エブリシアは婚約解消する事が決まっているのだから。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる