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二度目の話

ブレア公爵家からの招待

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 王都で生活するようになってから、お茶会に参加する機会が増え、ドレスを注文することが多くなった。
 お母様が張り切って注文してるが、それよりもお義兄様がデザインに口を出すので、一度目とは違った雰囲気のドレスばかり着ているような気がする。

 そんなある日、お母様からお茶会の招待状が届いたことを知らされる。

「二人にブレア公爵家からお茶会の招待状が届いているわよ。
 筆頭公爵家からの招待だから、とても光栄なことよ。
 ドレスはこの前注文したものがあるから、それを着て行きなさいね。」

 ……は?ブレア公爵家ですって?

 ブレア公爵家のお茶会なんて、一度目の人生ではなかったはず…。
 私が一度目とは違った動きをしているから、あの時とは違う出来事が起きているの?

 というか、ブレア公爵家のお茶会なんて行きたくないのだけど、やはり筆頭公爵家だから断れないってことなのかしら?

「お母様、それは私も招待されているのでしょうか?
 筆頭公爵家のお茶会は、私には敷居が高すぎるような気がしますので、私は参加を見合わせた方がいいと思うのですが…。」

 毒を盛られた邸になんて行きたくないわー!

「ぜひ二人で来て欲しいと書いてあるわよ。
 それに王妃殿下のお茶会では、ブレア公爵令息に助けて頂いたのでしょ?これは絶対に行ってきなさい!
 公爵令息に必ずお礼をお伝えしてくるのよ!」

「あっ…、はい。」

 お母様の笑顔から殺気を感じたわね。これは絶対命令ってことね。
 行きたくないのに…。当日は風邪でもひかないかな?仮病はバレる自信があるから、無理そうだし。
 行きたくなさすぎて、泣きそうだわ…。

「アナ、私も一緒だから大丈夫だ。」

 うっ…。お義兄様は今日も優しいわ。

「お茶会では、お義兄様の側にいるようにしますね。」



 そして、お茶会当日を迎える。



 馬車がブレア公爵家の正門を通り抜け、大き過ぎる邸が見えてきた。
 ああ…。この邸は一度目の人生で、お義兄様が迎えに来てくれた日ぶりね。
 あの時は毒で弱りきって歩けなくなっていて、お義兄様に抱き抱えてもらって、この邸から脱出したのよ。
 こんな嫌な思い出しかない邸なんて、もう絶対に来るつもりはなかったのに…。
 筆頭公爵家の力、恐るべし…。


「アナ、今日も元気がないな。
 そんなに嫌か?」

「…お義兄様には何でもバレてしまうので正直に話しますが、本当に憂鬱なのです。
 名門のお邸に招待されるのは荷が重く感じてしまいまして。もっと気楽な気持ちで参加出来そうなお茶会の方がいいですわ。」

「筆頭公爵家だから緊張しているんだな。
 アナならマナーは完璧だから大丈夫だ。」

 一人だったら絶対に無理だったわね。
 お義兄様がこうやって手を握ってくれるから嬉しいし、頑張ろうって思えるわ。

 馬車から降りると、そこにはブレア公爵令息と、一度目の人生での元義母であった公爵夫人が出迎えてくれた。
 二人の後ろには、沢山の使用人達が控えているのが見えるけど、私を毒殺したメイド長はいるのかしら?
 熱々の紅茶でも投げつけてやりたいくらいだけど、今の人生では全く関係のない人だから、そんなことは出来ないわね。

「今日は来て下さってありがとう。
 コールマン侯爵家の方々とはずっと交流したいと思っておりましたのよ。
 楽しんで頂けたら嬉しいわ。」

 笑顔で声を掛けて下さる公爵夫人。

「本日はご招待して下さりありがとうございます。」

 お義兄様の挨拶に合わせて、カーテシーをする私。
 こんな時は、私は喋らずに済むから助かるわね。

「まあ、素敵な義兄妹ね。噂通りだわ。
 アル。二人をご案内して差し上げて。」

「はい、母上。
 コールマン公爵令息・令嬢、どうぞこちらへ。」

 さすが公爵令息ね。一度目の元夫とはいえ、相変わらず所作が洗練されて綺麗だわ。
 あの何を考えているか分からない笑顔も、容姿も、何も知らない人から見たら眉目秀麗と言えるわね。
 まあ、私のお義兄様ほどではないけれど。

 お茶会をする部屋に案内されると、すでに他の令息と令嬢方が数人いた。
 この人達は、確かブレア公爵家の分家の人達ね。特別、害になりそうな人はいなかったはず。ブレア公爵令息にだけ気をつければ、何とかなるかしらね。

 あれ?バーカー子爵令嬢も確かブレア公爵家の遠縁で、幼馴染って言っていたわよね。今日は来ていないのかしら?幼馴染って言うんだから、これくらいの年齢の時にはすでに仲良しになっているはずよね。


 

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