巻き戻り令嬢は長生きしたい。二度目の人生はあなた達を愛しません

せいめ

文字の大きさ
上 下
29 / 102
二度目の話

再会

しおりを挟む
 お茶会が始まり、一度目の時と同様に赤系のドレスを着た令嬢達が殿下を取り囲んでいた。
 今回もカッコいい王太子殿下は大人気のようだ。

 一度目の時の私は、あの殿下狙いの令嬢達に混ざる気にはならず、美味しそうなスイーツの誘惑に負けて、一人でモグモグと食べていたのよね。
 でも食べている途中で、別行動していたお義兄様に、一人で食べていて目立っているからやめるようにと注意されてしまったのよ。
 確かに、この場で一人で食べまくるのは別の意味で目立つわ。今回はやめよう。


 お義兄様は、学園の友人達を私に紹介してくれた。令息だけでなく、同じクラスだという令嬢達まで。
 一人でいるよりも、グループの中にいると目立たないからって考えなのかしらね。

「まあ!コールマン様の妹君?可愛いわね。
 私達は同じクラスでいつも勉強を教えてもらっているの。」

「あら!こんな可愛い妹君が邸で待っているから、コールマン様はいつも早々と帰ってしまうのね。」

 お義兄様の友人達は気さくな方ばかりのようだった。
 友人達の妹さんを紹介してくれたりして、思った以上に楽しい時間を過ごすことが出来たし、目立つことなくお茶会を終えることが出来たと思っていた。


 


 時間が経ったし、多分この雰囲気の感じだと、もうすぐお開きね。帰る前にトイレに行っておこうかしら。
 お義兄様に花摘みに行くことを伝えて、一人トイレに向かう私。トイレを終え、化粧室を出たところで、誰かに呼び止められる。

「そこの貴女!ちょっとよろしいかしら?」

 ハァー。やはり、一人でいる所を狙って来るのね。

「……。」

 私は無言で声の主の方を見た。
 あ…、やっぱりあなた達ですか…。

「……。」

「私達が声を掛けているのに、挨拶もしてくれないのかしら?」

「王妃殿下に褒められたからって、何か勘違いしているのではなくて。」

「何て礼儀知らずなのかしらね。」

「ぷっ!ふふっ。ふふっ…。」

 私に絡んできた、殿下を狙う赤ドレス軍団の3人の令嬢は、一度目の時と全く変わってなくて、何だか安心してしまった。
 思わず、「お久しぶりー!」って言いたくなってしまった私は、笑いが込み上げてきてしまったのだ。

「え?何で笑っているのかしら?」

「あなた、私達を馬鹿にしているの?」

 自分達よりも年下の令嬢に絡んだのに、私がこんな反応だからイラついているのね。

「馬鹿にしているのは貴女方ではなくて?
 ゴメス伯爵令嬢とグラント伯爵令嬢、侯爵令嬢の私が発言を許してないのに、その態度は何なのです?
 貴女達は格下の身分でありながら、私に挨拶を求めるのですか?貴女達こそ、礼儀知らずですわね。
 後日、コールマン侯爵家からゴメス伯爵家とグラント伯爵家に正式に抗議させて頂きます。」
 
 まさか自分達の名前を、お茶会デビューしたばかりの私が知っているとは思わなかったのだろう。二人は固まってしまった。

「ギロリー侯爵令嬢。うちのコールマン侯爵家は、財政難であるギロリー侯爵家を助けるために、うちの侯爵領の通行料を、ギロリー侯爵家とその商団に限って、五年間、免除してあげています。
 感謝されることはあっても、そのような態度を取られる覚えはありませんわ。それにも関わらず、貴女は私にそのような物言いをなさるのですね?
 貴女のことも両親に報告させて頂きますわ。」

「え…?うちが財政難?」

 知らなかったのね…。
 財政難だから、一族は王太子殿下との婚約で、王家との繋がりを強く望んでいるって有名な話だったと思うけど。

「ハァー。何も知らないのですね。
 こんな所で、私みたいな年下の令嬢なんかに絡んでいる暇があるならば、少しはご自分の将来のために、色々なことを学ばれてはいかがでしょうか?」

 久しぶりの女の戦いがとても新鮮すぎて、生きていることを実感してしまった私。
 そんな私はつい言い過ぎてしまった…。
 
 誰だって自分よりも年下の者から、こんな風に説教じみたことを言われたら面白くはない。
 目の前にいるギロリー侯爵令嬢もそのように感じたらしく…

「何なの…?ちょっと名門だからって!」

 ギロリー侯爵令嬢の手が振り上げられた!

 うわー、殴られる…

「やめないか!!」

 ……誰かが来てくれたようだ。

「三人で年下の御令嬢に絡んで、君たちは恥ずかしいとは思わないのか?
 このことはうちの公爵家から王家に報告させてもらう。殿下の側近と妃候補を探す茶会で、年下の御令嬢を虐めていたとな。」

「ひっ!ブレア様、私達は…」

 ブレア様って言ってるわ…

「私は君たちのやり取りを始めから見ていた。誤魔化しは出来ない。
 今すぐ、ここから去ることだ!」

 赤ドレス軍団の三人は去って行ってしまった…

 うっ…。顔を合わせたくなかったし、もう話すつもりはなかったのに。

「…大丈夫か?」

 無言で下を向く私に、一度目の人生の元夫で、死神認定しているブレア公爵令息が話しかけてきた。

「だ、大丈夫ですわ。助けて下さってありがとうございました。」

 無難にお礼を言う私。笑顔が引きっつってないわよね…?

「顔色が悪いような気がするが、どこか座れる場所で休んだ方がいいか?」

 貴方に関わりたくないだけなのよー。

「い、いえ…。本当に大丈夫ですわ。会場内で義兄が待っておりますので、私はそろそろ戻らせて頂きます。
 本当にありがとうございました。」

「心配だから、君の義兄上の所まで付き添わせてくれ。」

 ひぃー!関わりたくないって空気読んでー。

「お、お気持ちだけ頂戴致しますわ。」

「しかし…」

 その時、私の敬愛する人の声が聞こえた。

「アナ!いつまでも戻らないから、心配したぞ。」

「お…、お義兄様ー!」

「アナ?…どうした?」

 絶対的な存在のお義兄様の顔を見たら、安心してしまい、涙目になる私。

「コールマン侯爵令息の義妹君でしたか。
 実は先程……」

 ブレア公爵令息は義兄にさっきの出来事を説明してくれた。

「アナ…、初めてのお茶会でそんな辛い思いをしたのか。助けてあげられなくて悪かった。
 ブレア公爵令息、私の大切な義妹を助けて下さってありがとうございました。」

「いえ、偶然居合わせただけですので、気になさらず。」

「アナ、泣きそうな顔になっている…
 もう怖くない。私がお前に無礼を働いた女狐どもを倒してやるからな。」

 お義様は私を抱きしめて、頭を撫でてくれた。

 ブラコンだから嬉しいけど……、この場ではやめてよ。

「お義兄様、このような場でお恥ずかしいですわ。」

「アナが泣きそうな時は、泣き顔が見えないように隠す必要があるだろう?」

「もう!お義兄様ったら。いつまでも私を子供扱いしないで下さいませ!」

「コールマン侯爵令息が義妹君を溺愛していると噂で聞いたことがありますが、本当なのですね。」

 ここでブレア公爵令息が口を開いた。

「アナは私の一番の宝物なのですよ。」

 このお義兄様はシスコンを隠す気はないらしい。

「確かに…。それだけ可愛いらしい義妹君なら、私が義兄だったとしても溺愛してしまうでしょうね。」

 ……この男は何を言ってるの?

 貴方はバーカー子爵令嬢でも溺愛してればいいのよ。





 二度目の人生で初めてのお茶会は、こんな感じで終わった。

 



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

王子は婚約破棄を泣いて詫びる

tartan321
恋愛
最愛の妹を失った王子は婚約者のキャシーに復讐を企てた。非力な王子ではあったが、仲間の協力を取り付けて、キャシーを王宮から追い出すことに成功する。 目的を達成し安堵した王子の前に突然死んだ妹の霊が現れた。 「お兄さま。キャシー様を3日以内に連れ戻して!」 存亡をかけた戦いの前に王子はただただ無力だった。  王子は妹の言葉を信じ、遥か遠くの村にいるキャシーを訪ねることにした……。

貴方が側妃を望んだのです

cyaru
恋愛
「君はそれでいいのか」王太子ハロルドは言った。 「えぇ。勿論ですわ」婚約者の公爵令嬢フランセアは答えた。 誠の愛に気がついたと言われたフランセアは微笑んで答えた。 ※2022年6月12日。一部書き足しました。 ※架空のお話です。現実世界の話ではありません。  史実などに基づいたものではない事をご理解ください。 ※話の都合上、残酷な描写がありますがそれがざまぁなのかは受け取り方は人それぞれです。  表現的にどうかと思う回は冒頭に注意喚起を書き込むようにしますが有無は作者の判断です。 ※更新していくうえでタグは幾つか増えます。 ※作者都合のご都合主義です。 ※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。 ※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります) ※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。

運命の番?棄てたのは貴方です

ひよこ1号
恋愛
竜人族の侯爵令嬢エデュラには愛する番が居た。二人は幼い頃に出会い、婚約していたが、番である第一王子エリンギルは、新たに番と名乗り出たリリアーデと婚約する。邪魔になったエデュラとの婚約を解消し、番を引き裂いた大罪人として追放するが……。一方で幼い頃に出会った侯爵令嬢を忘れられない帝国の皇子は、男爵令息と身分を偽り竜人国へと留学していた。 番との運命の出会いと別離の物語。番でない人々の貫く愛。 ※自己設定満載ですので気を付けてください。 ※性描写はないですが、一線を越える個所もあります ※多少の残酷表現あります。 以上2点からセルフレイティング

挙式後すぐに離婚届を手渡された私は、この結婚は予め捨てられることが確定していた事実を知らされました

結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
【結婚した日に、「君にこれを預けておく」と離婚届を手渡されました】 今日、私は子供の頃からずっと大好きだった人と結婚した。しかし、式の後に絶望的な事を彼に言われた。 「ごめん、本当は君とは結婚したくなかったんだ。これを預けておくから、その気になったら提出してくれ」 そう言って手渡されたのは何と離婚届けだった。 そしてどこまでも冷たい態度の夫の行動に傷つけられていく私。 けれどその裏には私の知らない、ある深い事情が隠されていた。 その真意を知った時、私は―。 ※暫く鬱展開が続きます ※他サイトでも投稿中

初夜に大暴言を吐かれた伯爵夫人は、微笑みと共に我が道を行く ―旦那様、今更擦り寄られても困ります―

望月 或
恋愛
「お前の噂を聞いたぞ。毎夜町に出て男を求め、毎回違う男と朝までふしだらな行為に明け暮れているそうだな? その上糸目を付けず服や装飾品を買い漁り、多大な借金を背負っているとか……。そんな醜悪な女が俺の妻だとは非常に不愉快極まりない! 今後俺に話し掛けるな! 俺に一切関与するな! 同じ空気を吸ってるだけでとんでもなく不快だ……!!」 【王命】で決められた婚姻をし、ハイド・ランジニカ伯爵とオリービア・フレイグラント子爵令嬢の初夜は、彼のその暴言で始まった。 そして、それに返したオリービアの一言は、 「あらあら、まぁ」 の六文字だった。  屋敷に住まわせている、ハイドの愛人と噂されるユーカリや、その取巻きの使用人達の嫌がらせも何のその、オリービアは微笑みを絶やさず自分の道を突き進んでいく。 ユーカリだけを信じ心酔していたハイドだったが、オリービアが屋敷に来てから徐々に変化が表れ始めて…… ※作者独自の世界観満載です。違和感を感じたら、「あぁ、こういう世界なんだな」と思って頂けたら有難いです……。

不遇な王妃は国王の愛を望まない

ゆきむらさり
恋愛
〔あらすじ〕📝ある時、クラウン王国の国王カルロスの元に、自ら命を絶った王妃アリーヤの訃報が届く。王妃アリーヤを冷遇しておきながら嘆く国王カルロスに皆は不思議がる。なにせ国王カルロスは幼馴染の側妃ベリンダを寵愛し、政略結婚の為に他国アメジスト王国から輿入れした不遇の王女アリーヤには見向きもしない。はたから見れば哀れな王妃アリーヤだが、実は他に愛する人がいる王妃アリーヤにもその方が都合が良いとも。彼女が真に望むのは愛する人と共に居られる些細な幸せ。ある時、自国に囚われの身である愛する人の訃報を受け取る王妃アリーヤは絶望に駆られるも……。主人公の舞台は途中から変わります。 ※設定などは独自の世界観で、あくまでもご都合主義。断罪あり(苦手な方はご注意下さい)。ハピエン🩷 ※稚拙ながらも投稿初日からHOTランキング(2024.11.21)に入れて頂き、ありがとうございます🙂 今回初めて最高ランキング5位(11/23)✨ まさに感無量です🥲

旦那様には愛人がいますが気にしません。

りつ
恋愛
 イレーナの夫には愛人がいた。名はマリアンヌ。子どものように可愛らしい彼女のお腹にはすでに子どもまでいた。けれどイレーナは別に気にしなかった。彼女は子どもが嫌いだったから。 ※表紙は「かんたん表紙メーカー」様で作成しました。

【完結】365日後の花言葉

Ringo
恋愛
許せなかった。 幼い頃からの婚約者でもあり、誰よりも大好きで愛していたあなただからこそ。 あなたの裏切りを知った翌朝、私の元に届いたのはゼラニウムの花束。 “ごめんなさい” 言い訳もせず、拒絶し続ける私の元に通い続けるあなたの愛情を、私はもう一度信じてもいいの? ※勢いよく本編完結しまして、番外編ではイチャイチャするふたりのその後をお届けします。

処理中です...