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二度目の話
孤児院に行って来ます!
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「アナ、本当に一人で大丈夫か?」
「ハンナや護衛騎士が一緒ですから大丈夫ですわ。
お義兄様は、今日も勉強を頑張って下さいね。」
「気をつけて行くんだぞ。
本当は一緒に行きたいのだが、今日は義父上と侯爵家の勉強をする約束をしているから行けないんだ。ごめんな。」
「ふふっ!最近のお義兄様は心配性ですわね。
それでは行って来ます!」
今日は孤児院に遊びに行く日。
うちの侯爵家は、孤児院や教会に寄付を沢山する程、慈善事業には熱心な家門だと思う。
そんな家門の令嬢である私は、小さな頃から定期的に孤児院に行って、子供達と一緒に遊ぶのが当たり前のようになっていた。
お転婆な私は、孤児院にいる子供達と遊ぶのが好きだった。鬼ごっこしたり、隠れんぼしたり、木登りしたり…。同じ貴族令嬢の子たちとは出来ない遊びを、ここでは沢山出来るのが嬉しかった。
孤児院に遊びに来た時は、貴族令嬢だからと特別扱いはしないようにと、両親が孤児院の職員に伝えていたおかげで、子供達とは普通に仲の良い友人のような関係で過ごせていたので、孤児院で過ごす時間はいつも楽しみにしていたくらいだった。
「あっ!お嬢様だー!」
「こんにちはー!お嬢様、久しぶり!」
「みんなこんにちは!久しぶりね。元気だった?」
…と、こんな感じでみんな気さくに話しかけてくれる。人懐っこい子が多いから、孤児院の雰囲気は良いし、私みたいな令嬢でも仲良く遊ぶことが出来るのだ。
貴族の人間関係のように、腹の探り合いみたいなものがないから、本当に楽。
もし貴族令嬢が嫌になってしまったら、孤児院の職員として雇ってもらいたいくらいだわ。
「今日は皆んなにお洋服と靴と、お菓子を沢山持って来たわよ。」
「「ありがとうございます!」」
実は今日は、ただ遊びに来たわけではない。
ある人物をうちの見習い騎士として勧誘しようと思って来ているのだ。
ええと…、アーサーはどこだろう?
「ねぇ、アーサーはいるのかしら?」
「アーサーは、院長先生のお手伝いをしていると思うよ。」
「そうなのね。ありがとう。」
アーサーは私の一つ年上の男の子で、年が近いこともあって、一緒に遊んだり、おしゃべりを楽しんだりと、私は友人の一人だと思っている。
一度目の人生の時、私は12歳くらいの頃から、王都のタウンハウスでの生活が中心になってしまったので、その頃から領地の中にあるこの孤児院に来る機会が減ってしまい、気づいた時には、アーサーは誰かに引き取られたらしく、孤児院から居なくなっていた。
そんなアーサーと私は、王都で再会することになる。
それは私が16歳になった頃だったと思う。
王太子殿下の婚約者になっていた私は、時々、殿下の婚約者の座を奪おうとする家門が仕向けたと思われる暗殺者に狙われることがあったのだが、その暗殺者として私を襲ってきた者達の中に、アーサーがいたのだ。
アーサーはただ暗殺をしろと命令されて来たに違いない。相手が誰なのか深くは知らされずにやって来て、暗殺のターゲットを見て私だと気付いたようだった。
アーサーは私の顔を見て怯んだようで、その一瞬の隙を突かれて、私の護衛をしていた近衛騎士達に斬られてしまったのだ。
『お嬢様……』
『アーサー…?
いやぁぁぁー』
アーサーは私を呼んで絶命した。
あの時の私は、精神的に参ってしまい、しばらく王妃教育をお休みしたんだっけ…。
アーサーを斬りつけた近衛騎士達とも、気まずい思いをしたし、散々だった。
あの時のアーサーの悲しそうな目が脳裏に焼き付いて離れない。
今だから思うのだが、孤児のアーサーは、捨て駒の暗殺者にするのにちょうど良かったのかもしれない。
真面目で優しくて、運動神経のいい子だったのに…。
それにしても、王太子殿下の婚約者はもう二度とやりたくないわね。楽しいことよりも、辛いことばかりで、何も良いことなんてなかった。
茨の道でしかなかったわよ。
やはり、殿下とは絶対に関わらない方がいい。
「ハンナや護衛騎士が一緒ですから大丈夫ですわ。
お義兄様は、今日も勉強を頑張って下さいね。」
「気をつけて行くんだぞ。
本当は一緒に行きたいのだが、今日は義父上と侯爵家の勉強をする約束をしているから行けないんだ。ごめんな。」
「ふふっ!最近のお義兄様は心配性ですわね。
それでは行って来ます!」
今日は孤児院に遊びに行く日。
うちの侯爵家は、孤児院や教会に寄付を沢山する程、慈善事業には熱心な家門だと思う。
そんな家門の令嬢である私は、小さな頃から定期的に孤児院に行って、子供達と一緒に遊ぶのが当たり前のようになっていた。
お転婆な私は、孤児院にいる子供達と遊ぶのが好きだった。鬼ごっこしたり、隠れんぼしたり、木登りしたり…。同じ貴族令嬢の子たちとは出来ない遊びを、ここでは沢山出来るのが嬉しかった。
孤児院に遊びに来た時は、貴族令嬢だからと特別扱いはしないようにと、両親が孤児院の職員に伝えていたおかげで、子供達とは普通に仲の良い友人のような関係で過ごせていたので、孤児院で過ごす時間はいつも楽しみにしていたくらいだった。
「あっ!お嬢様だー!」
「こんにちはー!お嬢様、久しぶり!」
「みんなこんにちは!久しぶりね。元気だった?」
…と、こんな感じでみんな気さくに話しかけてくれる。人懐っこい子が多いから、孤児院の雰囲気は良いし、私みたいな令嬢でも仲良く遊ぶことが出来るのだ。
貴族の人間関係のように、腹の探り合いみたいなものがないから、本当に楽。
もし貴族令嬢が嫌になってしまったら、孤児院の職員として雇ってもらいたいくらいだわ。
「今日は皆んなにお洋服と靴と、お菓子を沢山持って来たわよ。」
「「ありがとうございます!」」
実は今日は、ただ遊びに来たわけではない。
ある人物をうちの見習い騎士として勧誘しようと思って来ているのだ。
ええと…、アーサーはどこだろう?
「ねぇ、アーサーはいるのかしら?」
「アーサーは、院長先生のお手伝いをしていると思うよ。」
「そうなのね。ありがとう。」
アーサーは私の一つ年上の男の子で、年が近いこともあって、一緒に遊んだり、おしゃべりを楽しんだりと、私は友人の一人だと思っている。
一度目の人生の時、私は12歳くらいの頃から、王都のタウンハウスでの生活が中心になってしまったので、その頃から領地の中にあるこの孤児院に来る機会が減ってしまい、気づいた時には、アーサーは誰かに引き取られたらしく、孤児院から居なくなっていた。
そんなアーサーと私は、王都で再会することになる。
それは私が16歳になった頃だったと思う。
王太子殿下の婚約者になっていた私は、時々、殿下の婚約者の座を奪おうとする家門が仕向けたと思われる暗殺者に狙われることがあったのだが、その暗殺者として私を襲ってきた者達の中に、アーサーがいたのだ。
アーサーはただ暗殺をしろと命令されて来たに違いない。相手が誰なのか深くは知らされずにやって来て、暗殺のターゲットを見て私だと気付いたようだった。
アーサーは私の顔を見て怯んだようで、その一瞬の隙を突かれて、私の護衛をしていた近衛騎士達に斬られてしまったのだ。
『お嬢様……』
『アーサー…?
いやぁぁぁー』
アーサーは私を呼んで絶命した。
あの時の私は、精神的に参ってしまい、しばらく王妃教育をお休みしたんだっけ…。
アーサーを斬りつけた近衛騎士達とも、気まずい思いをしたし、散々だった。
あの時のアーサーの悲しそうな目が脳裏に焼き付いて離れない。
今だから思うのだが、孤児のアーサーは、捨て駒の暗殺者にするのにちょうど良かったのかもしれない。
真面目で優しくて、運動神経のいい子だったのに…。
それにしても、王太子殿下の婚約者はもう二度とやりたくないわね。楽しいことよりも、辛いことばかりで、何も良いことなんてなかった。
茨の道でしかなかったわよ。
やはり、殿下とは絶対に関わらない方がいい。
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