婚約者と義妹に裏切られたので、ざまぁして逃げてみた

せいめ

文字の大きさ
22 / 41

21 閑話 レイモンド

しおりを挟む
 私の婚約者は、艶やかな黒髪に海のような青い瞳を持つ、落ち着いた雰囲気の美少女だ。
 一つ年下の彼女と出会ったのは、学園の図書館だった。
 彼女はいつも窓側の席に座り、美しい所作で読書をしていた。育ちの良さそうな彼女はとても目を引く存在で、他の令息達も彼女のことを見つめている。
 そんな彼女を私自身も無意識に目で追っていて、気付くと彼女に恋をしていた。
 しかし、静かに読書をしている彼女に私から声を掛けることは出来ず、時間だけが過ぎていく。

 そんなある日、彼女が本棚の高い位置にあった本を取ろうと、必死に背伸びをしている姿を見た私は、気付くとその場に駆け寄っていて、本を彼女に手渡していた。
 そのことがきっかけで、会えば挨拶をする間柄になり、そこから好きな本やオススメの本などの話が出来るようになっていて、親しくなることが出来た。
 彼女に自分の気持ちを伝え、婚約を申し込んだ時は、涙を流して喜んでくれた。

 彼女とはずっと一緒にいれるものだと思っていた。


 それは、結婚まであと半年を切った頃だと思う。


「レイモンド。結婚まであと少しだが、閨の準備は大丈夫なのか?
 初めてはなかなか上手く出来ないらしいから、後腐れのない夫人に手解きをしてもらった方がいいらしいぞ。一緒に仮面舞踏会にでも行かないか?」

 私と同じく、結婚を控えている友人の一人から仮面舞踏会の話をされる。
 仮面舞踏会は素性を隠して、後腐れのない付き合いが出来る場だと聞いている。しかし、既婚者が行くことが一般的で、未婚の者が行くとあまりいい顔をされない場所らしい。

「それはやめておく。閨の手解きを受けるとはいえ、それはただの女遊びだろう?
 私はローラを裏切りたくないし、悲しませるようなことはしたくないんだ」

「……だよな。可愛いシーウェル嬢をレイモンドは溺愛しているもんな。
 でも初夜で失敗すると、女性は閨を嫌がるようになってしまうこともあるらしいぞ」

「私なりに閨の勉強はしているから大丈夫だ」

 その時はそれで終わったのだが、後日、友人はまた誘ってくる。

「仮面舞踏会に行って来たぞ。
 やってみないと分からないことばかりだった。結婚前に隠れて参加する令息がいるとは聞いていたが、あれは納得だな。色々教えてもらえて良かったよ。
 婚約者には口が裂けても言えないが、彼女を喜ばせるためだから仕方がない。
 レイモンドもどうだ? 俺が付き添ってやる」

「私は遠慮しておくよ」

「行った方が初夜は絶対に上手くいくぞ。女性の体は男とは全然違うから、勉強だと思って行くべきだ」

 初夜か……。気分は乗らないが、確かに少し不安はある。
 散々迷った挙句、私は友人達と仮面舞踏会に行くことにした。


 仮面舞踏会は、顔を仮面で隠して名前や身分を明かさずに参加するのがルールだ。
 その中で、ダンスに誘ってくれた二十代くらいの貴婦人から休憩のできる個室に誘われた私は、初めて女性と体を繋げてしまった。

「初めてなのね。色々教えてあげるわ。
 大丈夫よ。ここでのことは他言しないのがルールだから」

 ローラに対しての罪悪感はあったが、他の令息もしていることだと聞いて、何とか心を落ち着かせた。
 行為を終えた後、夫人は私に纏わりつくこともなく、サッと部屋から出て行ってくれた。割り切った方が相手をしてくれて良かったと思ったのだが……
 夫人が出て行ってすぐ、急に部屋のドアが開けられたと思ったら、金髪の若い女性が部屋に入って来た。

「君は……?」

 驚いた私が声を掛けると、

「あら、私が分かりませんか?
 寂しいわぁ。もうすぐ私達は身内になるのに」

 そう言って仮面を取った女性は私のよく知る人物だった……

「き、君は! どうしてここに?」

「やはり分からなかったのですね。良かった!
 私のこの特徴的な髪色を隠すため、カツラを被って遊びに来ていたのです。今日は珍しい人達が来ていると思って見ていたら、アストン様がいることに気付いてしまいました。気になってずっと見ていましたのよ。
 先程の夫人とは楽しめましたか?
 でも、意外だわぁ。お義姉様に一途だと思っていたアストン様が、こんな所に来て不貞をしているなんて……。お義姉様が知ったら悲しむでしょうね。
 ふふっ、いつも澄ましたお義姉様が泣いて取り乱す姿を見るのは面白そうですわ。
 私は義妹として、このことをお義姉様に報告させて頂きます」

 私はその言葉に動揺してしまった。
 愛するローラにだけは知られたくない……

「ふふ……。バラされたくないって顔をしてますわね。
 そうねー、私の願い事を聞いてくれるなら、秘密にしてあげますわよ」

「願い事とは何だ? 金か? それとも宝石か?」

 ニヤっと気味の悪い笑みを浮かべたリリアン・シーウェルはとんでもないことを言い出すのであった。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

(完)そんなに妹が大事なの?と彼に言おうとしたら・・・

青空一夏
恋愛
デートのたびに、病弱な妹を優先する彼に文句を言おうとしたけれど・・・

(完)貴女は私の全てを奪う妹のふりをする他人ですよね?

青空一夏
恋愛
公爵令嬢の私は婚約者の王太子殿下と優しい家族に、気の合う親友に囲まれ充実した生活を送っていた。それは完璧なバランスがとれた幸せな世界。 けれど、それは一人の女のせいで歪んだ世界になっていくのだった。なぜ私がこんな思いをしなければならないの? 中世ヨーロッパ風異世界。魔道具使用により現代文明のような便利さが普通仕様になっている異世界です。

婚約者から婚約破棄をされて喜んだのに、どうも様子がおかしい

恋愛
婚約者には初恋の人がいる。 王太子リエトの婚約者ベルティーナ=アンナローロ公爵令嬢は、呼び出された先で婚約破棄を告げられた。婚約者の隣には、家族や婚約者が常に可愛いと口にする従妹がいて。次の婚約者は従妹になると。 待ちに待った婚約破棄を喜んでいると思われる訳にもいかず、冷静に、でも笑顔は忘れずに二人の幸せを願ってあっさりと従者と部屋を出た。 婚約破棄をされた件で父に勘当されるか、何処かの貴族の後妻にされるか待っていても一向に婚約破棄の話をされない。また、婚約破棄をしたのに何故か王太子から呼び出しの声が掛かる。 従者を連れてさっさと家を出たいべルティーナと従者のせいで拗らせまくったリエトの話。 ※なろうさんにも公開しています。 ※短編→長編に変更しました(2023.7.19)

[完結]いらない子と思われていた令嬢は・・・・・・

青空一夏
恋愛
私は両親の目には映らない。それは妹が生まれてから、ずっとだ。弟が生まれてからは、もう私は存在しない。 婚約者は妹を選び、両親は当然のようにそれを喜ぶ。 「取られる方が悪いんじゃないの? 魅力がないほうが負け」 妹の言葉を肯定する家族達。 そうですか・・・・・・私は邪魔者ですよね、だから私はいなくなります。 ※以前投稿していたものを引き下げ、大幅に改稿したものになります。

私の婚約者とキスする妹を見た時、婚約破棄されるのだと分かっていました

あねもね
恋愛
妹は私と違って美貌の持ち主で、親の愛情をふんだんに受けて育った結果、傲慢になりました。 自分には手に入らないものは何もないくせに、私のものを欲しがり、果てには私の婚約者まで奪いました。 その時分かりました。婚約破棄されるのだと……。

【完結】婚約者の義妹と恋に落ちたので婚約破棄した処、「妃教育の修了」を条件に結婚が許されたが結果が芳しくない。何故だ?同じ高位貴族だろう?

つくも茄子
恋愛
国王唯一の王子エドワード。 彼は婚約者の公爵令嬢であるキャサリンを公の場所で婚約破棄を宣言した。 次の婚約者は恋人であるアリス。 アリスはキャサリンの義妹。 愛するアリスと結婚するには「妃教育を修了させること」だった。 同じ高位貴族。 少し頑張ればアリスは直ぐに妃教育を終了させると踏んでいたが散々な結果で終わる。 八番目の教育係も辞めていく。 王妃腹でないエドワードは立太子が遠のく事に困ってしまう。 だが、エドワードは知らなかった事がある。 彼が事実を知るのは何時になるのか……それは誰も知らない。 他サイトにも公開中。

今更気付いてももう遅い。

ユウキ
恋愛
ある晴れた日、卒業の季節に集まる面々は、一様に暗く。 今更真相に気付いても、後悔してももう遅い。何もかも、取り戻せないのです。

完結 貴方が忘れたと言うのなら私も全て忘却しましょう

音爽(ネソウ)
恋愛
商談に出立した恋人で婚約者、だが出向いた地で事故が発生。 幸い大怪我は負わなかったが頭を強打したせいで記憶を失ったという。 事故前はあれほど愛しいと言っていた容姿までバカにしてくる恋人に深く傷つく。 しかし、それはすべて大嘘だった。商談の失敗を隠蔽し、愛人を侍らせる為に偽りを語ったのだ。 己の事も婚約者の事も忘れ去った振りをして彼は甲斐甲斐しく世話をする愛人に愛を囁く。 修復不可能と判断した恋人は別れを決断した。

処理中です...