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12 ドレス
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リリアンは父から一週間の謹慎を命じられ、その間は部屋で静かに過ごしていたようだ。
アストン様は、リリアンに殴られた翌日に私に会いに来てくれたようだが、頬が内出血していたので義母が上手く言って面会を断ってくれたから助かった。
そして今日は、アストン様と二人で衣装合わせに来ている。二人で出掛けるのはあと何回あるのか分からないけど、本当に苦痛でしかない。
アストン様も私が彼の不貞を知っていることに気付いているのか、やたら愛を囁いてくるし、ベタベタとスキンシップを図ろうとしたりして本当に迷惑な人になっていた。
不貞を知ってしまった時は悲しかったけど、結婚しないで逃げると決めたら、この男に持っていた恋心も愛情も気付いたら消えていた。
あんなに好きだったのに、今は冷めた目でしかこの男を見れなくなっている。ここまで極端に感情が変化してしまった自分自身に本気で驚いているほどだ。
衣装合わせの方は、ドレスのデザインはすでに決めていたので、今日はドレスの細かな調節をするために来ただけだった。しかし店に入ってすぐ、あるドレスが目に入る。
「そちらは、最近流行りのマーメイドラインをウェディングドレスにしたものでして、うちの店の新作のドレスになります。
スレンダーで長身のお嬢様にとてもお似合いになると思いますわ」
私がドレスを見ていると、店のデザイナーが声を掛けてくれる。新作のドレスを勧めるのはどこの店も一緒よね。
それより、デザイナーはこのドレスはスレンダーな方や長身の方にお勧めだと言っていた……
「ローラ、そのドレスが気になるなら試着してみるといい」
「レイ様。私はもうウェディングドレスは決めてますから、試着は大丈夫ですわ」
「デザイナーからそのドレスが君に似合うと言われてしまったら、私は君が着ている姿を見たくなってしまったんだよ」
「お嬢様、ぜひ試着してみて下さいませ」
アストン様とデザイナーが勧めてくれたので、せっかくだから試着することした。
「まあ! やはりお嬢様にとてもお似合いですわ。
大人っぽいお嬢様には、フリルが沢山のフワフワしたデザインのドレスより、マーメイドラインのドレスの方が素敵ですわね」
フリルが沢山のフワフワのドレスが似合うのはリリアンだと思う。
このドレスは小柄で可愛らしい雰囲気のリリアンに似合うドレスではないということらしい……
「着てみて気付いたけど、本当に素敵なドレスね」
「ローラ、とても似合っているよ。想像以上だ。
先に決めていたドレスも良かったけど、こっちのドレスもいいな。
もしこっちのドレスの方がいいと思うなら、変えてもいいんだ。いくら掛かっても構わないから、君の気に入ったドレスにして欲しい」
「でも、先に決めたドレスはフルオーダーでキャンセルが出来ませんわ。そこまでご迷惑を掛けるわけにはいきません」
「キャンセル出来なくても構わない。ドレス二着分の支払いくらい平気だ。
幾ら掛かっても構わないから、君が気に入った物を着て欲しいんだ。
人生で一度だけの結婚式なのだから、ウェディングドレスには拘るべきだと思うよ」
不貞がバレたから、ウェディングドレスにお金を掛けることで、私のご機嫌取りでもしたいのかしら?
そっちがその気なら、そのご機嫌取りを利用させて頂くことにするわ。
「レイ様、ありがとうございます。
私、こちらのドレスが気に入ってしまいましたわ」
「私もこのドレスを着たローラに見惚れてしまったから、これに変更しよう」
結局、初めにオーダーしていたAラインのウェディングドレスは、未使用で無難なデザインだったこともあり、店で引き取ってくれることになった。
そして私は、リリアンには絶対に似合わないマーメイドラインのウェディングドレスに変更することにした。
試着したドレスは店頭に飾る見本品なので、私のサイズに合わせた物を新しく作成するとデザイナーは張り切っている。
「結婚式まで約一か月なのだけど、間に合うかしら?」
「ええ。絶対に間に合わせますわ。しかし、生地やレース、刺繍などの細かなところは今から急ぎで決めて頂きたいと思います」
「ありがとう。ところで、この店はいつも何時に開店するのかしら?」
「十時に開店でございます」
「そう……。でも、朝早くから出勤して、開店前にお仕事をされていたりするのかしら?
急にドレスを変更して、無理に忙しくさせてしまったなら申し訳ないと思って」
「忙しい時は残業で帰りが遅くなることはありますが、朝早く出勤して開店前に仕事をすることはほとんどありませんわ。
お気遣いありがとうございます」
ということは、結婚式当日の朝に急遽ドレスを変えたいと思っても、この店は開いていないのね。
ドレスの店は他にもあるけれど、うちの伯爵家はこの店だけを贔屓にしているから、今更他の店を利用しようとは思わないだろう。
この素敵なドレスは、私からリリアンに譲ってあげる……
アストン様は、リリアンに殴られた翌日に私に会いに来てくれたようだが、頬が内出血していたので義母が上手く言って面会を断ってくれたから助かった。
そして今日は、アストン様と二人で衣装合わせに来ている。二人で出掛けるのはあと何回あるのか分からないけど、本当に苦痛でしかない。
アストン様も私が彼の不貞を知っていることに気付いているのか、やたら愛を囁いてくるし、ベタベタとスキンシップを図ろうとしたりして本当に迷惑な人になっていた。
不貞を知ってしまった時は悲しかったけど、結婚しないで逃げると決めたら、この男に持っていた恋心も愛情も気付いたら消えていた。
あんなに好きだったのに、今は冷めた目でしかこの男を見れなくなっている。ここまで極端に感情が変化してしまった自分自身に本気で驚いているほどだ。
衣装合わせの方は、ドレスのデザインはすでに決めていたので、今日はドレスの細かな調節をするために来ただけだった。しかし店に入ってすぐ、あるドレスが目に入る。
「そちらは、最近流行りのマーメイドラインをウェディングドレスにしたものでして、うちの店の新作のドレスになります。
スレンダーで長身のお嬢様にとてもお似合いになると思いますわ」
私がドレスを見ていると、店のデザイナーが声を掛けてくれる。新作のドレスを勧めるのはどこの店も一緒よね。
それより、デザイナーはこのドレスはスレンダーな方や長身の方にお勧めだと言っていた……
「ローラ、そのドレスが気になるなら試着してみるといい」
「レイ様。私はもうウェディングドレスは決めてますから、試着は大丈夫ですわ」
「デザイナーからそのドレスが君に似合うと言われてしまったら、私は君が着ている姿を見たくなってしまったんだよ」
「お嬢様、ぜひ試着してみて下さいませ」
アストン様とデザイナーが勧めてくれたので、せっかくだから試着することした。
「まあ! やはりお嬢様にとてもお似合いですわ。
大人っぽいお嬢様には、フリルが沢山のフワフワしたデザインのドレスより、マーメイドラインのドレスの方が素敵ですわね」
フリルが沢山のフワフワのドレスが似合うのはリリアンだと思う。
このドレスは小柄で可愛らしい雰囲気のリリアンに似合うドレスではないということらしい……
「着てみて気付いたけど、本当に素敵なドレスね」
「ローラ、とても似合っているよ。想像以上だ。
先に決めていたドレスも良かったけど、こっちのドレスもいいな。
もしこっちのドレスの方がいいと思うなら、変えてもいいんだ。いくら掛かっても構わないから、君の気に入ったドレスにして欲しい」
「でも、先に決めたドレスはフルオーダーでキャンセルが出来ませんわ。そこまでご迷惑を掛けるわけにはいきません」
「キャンセル出来なくても構わない。ドレス二着分の支払いくらい平気だ。
幾ら掛かっても構わないから、君が気に入った物を着て欲しいんだ。
人生で一度だけの結婚式なのだから、ウェディングドレスには拘るべきだと思うよ」
不貞がバレたから、ウェディングドレスにお金を掛けることで、私のご機嫌取りでもしたいのかしら?
そっちがその気なら、そのご機嫌取りを利用させて頂くことにするわ。
「レイ様、ありがとうございます。
私、こちらのドレスが気に入ってしまいましたわ」
「私もこのドレスを着たローラに見惚れてしまったから、これに変更しよう」
結局、初めにオーダーしていたAラインのウェディングドレスは、未使用で無難なデザインだったこともあり、店で引き取ってくれることになった。
そして私は、リリアンには絶対に似合わないマーメイドラインのウェディングドレスに変更することにした。
試着したドレスは店頭に飾る見本品なので、私のサイズに合わせた物を新しく作成するとデザイナーは張り切っている。
「結婚式まで約一か月なのだけど、間に合うかしら?」
「ええ。絶対に間に合わせますわ。しかし、生地やレース、刺繍などの細かなところは今から急ぎで決めて頂きたいと思います」
「ありがとう。ところで、この店はいつも何時に開店するのかしら?」
「十時に開店でございます」
「そう……。でも、朝早くから出勤して、開店前にお仕事をされていたりするのかしら?
急にドレスを変更して、無理に忙しくさせてしまったなら申し訳ないと思って」
「忙しい時は残業で帰りが遅くなることはありますが、朝早く出勤して開店前に仕事をすることはほとんどありませんわ。
お気遣いありがとうございます」
ということは、結婚式当日の朝に急遽ドレスを変えたいと思っても、この店は開いていないのね。
ドレスの店は他にもあるけれど、うちの伯爵家はこの店だけを贔屓にしているから、今更他の店を利用しようとは思わないだろう。
この素敵なドレスは、私からリリアンに譲ってあげる……
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