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01 プロローグ

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 よく晴れた日の早朝。王都にある名門伯爵家のタウンハウスにて……


「伯爵様、フローラお嬢様のお姿が見当たりません!」

「……何を言っている? 今日はフローラの結婚式だぞ。ずっと楽しみにしていた結婚式の日にいなくなるはずがないだろう。違う部屋にいるはずだ」

「それが……、心当たりのある場所を探しているのですが見つからないのです。
 お嬢様の部屋からは伯爵様宛に手紙が……」

 メイド長から渡された手紙は、令嬢から父である伯爵宛に書かれたものであった。


〝お父様へ

 大切な日にいなくなることをお許しください。
 私はアストン侯爵令息とは結婚出来ません。
 その代わりに、彼とリリアンの結婚を認めてあげて下さい。
 私は少し前に二人が逢瀬を重ねていることを知ってしまいました。二人は男女の関係で愛し合っています。私の友人達にも二人が逢瀬を繰り返しているところを目撃されてしまいました。
 このまま何も知らないフリをして、愛し合う二人の邪魔者で居続けるのは辛いのです。
 大切な義妹と愛する婚約者の裏切りを知ってしまった以上、私はここにいることは出来ません。弱い私をお許しください。
 最後にお願いがあります。今回のことはお義母様は何も悪くありません。お義母様を責めるようなことはしないでください。
 今までお世話になりました。

 フローラより〟


 手紙を読んだ伯爵は震えながら叫ぶ。

「……リリアンを呼べ。今すぐにだ。早くしろ!」

「か、畏まりました」


 その数時間後、王都のある教会では結婚式が執り行われていた。
 名門貴族の令息と令嬢の結婚式ということで盛大な式なのだが、令息は血色が悪く無表情で花嫁の令嬢を見ようともしない。
 令嬢の方も顔色が悪く、泣くのを我慢するのが精一杯といった表情である。
 そんな二人の様子から、この結婚は誰が見ても祝福されるものではないということが分かる。

「あのウエディングドレスは、本来は誰が着る予定だったのかしら? あの方の体型に全く合っていないようですわ」

「小柄で可愛らしい雰囲気の方にマーメードラインのドレスはちょっとねぇ。
 もっと大人びた方が選ぶデザインだと思いますわ」

 嘲笑う声が聞こえる中、結婚指輪の交換が行われることになる。
 しかし……

「いっ、痛い」

 花嫁の表情が苦痛に満ちている。なぜならば、指輪のサイズが花嫁に合ってなかったから。結婚指輪のサイズが小さいことに気付かずに、無理に指にはめようとしたので痛みがあったようだ。
 なかなか指輪の交換が終わらない二人に、招待客達は何が起こっているのかと、好奇心を隠しきれない態度で見つめていた。


「ざまぁーみろ……」


 騒ついている中で、その小さな声に気づく者は誰もいなかった。


 
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