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46 助かった
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胸がドクドクする中、馬から降りた男が近づいてきた。
「もしかして……、マリアか?」
それは自分のよく知る人物の声だった。
ハッとして顔を上げると、そこにいたのは幼馴染であり、最悪な別れをした元恋人のテッドだった。
「……テッドなの? どうして?」
「やっぱりマリア! みんな心配していたんだぞ。ずっと探していたんだ。生きていて良かった……っ。
私は騎士団の遠征で辺境に来たばかりだ。マリアはどうしてこんな所に? ボロボロじゃないか」
テッドが私を探していた? ナゼ……?
「テッドは、私が事件に巻き込まれたことを知っているの?」
「勿論だ。ベインズ公爵令嬢を狙った貴族も、雇われた野盗や農民もみんな捕らえられた。
公爵家はマリアを探すために、うちの騎士団にも捜索の協力を依頼してきた。お前が事件に巻き込まれて行方不明になっていると聞いた時の私の気持ちが分かるか?
本当に……無事で良かった……」
泣きそうな表情のテッドはマリアを抱き締めてきた。
「……っ、テッドぉー、怖かったよぉ」
「マリア、頑張ったな……」
知らない土地で心細い時に、自分のよく知る同郷の人に会えば安心するもので、色々あって弱っていたマリアは、たとえテッドが最悪な別れをした元恋人であっても、今は付き合いの長い幼馴染として再会を喜んでいた。
更に、お嬢様を狙った悪いヤツも雇われた野盗や農民たちも捕らえられたと聞き、安堵から涙が止まらなくなってしまう。
「みんながマリアを心配しているから早く知らせてやらないとな。マリアを騎士団で保護して王都のベインズ公爵家まできちんと送るから安心しろ」
「うっ……、テッド……見つけてくれてありがとう。本当に助かったよぉ」
「もう大丈夫だ。だから、もう泣くな……」
抱き合って泣きながら再会を喜ぶ二人は、知らない人から見たら恋人同士にしか見えなかった。
「部隊長、そちらはもしかして?」
「ああ、ずっと探していたマリアだ。ベインズ公爵家に保護したことを知らせなければならない」
「マリアさん? ボロボロの服装で王都にいた時と雰囲気が違かったから気づきませんでした。
マリアさんがどんな格好をしていてもすぐに気付くなんてさすが部隊長です。愛の力は凄いですね!」
今のマリアは、農民のボロボロの服を着ていてすっぴんだった。髪の毛はトリートメントができなかったせいで天パがパサつき、酷い状態になっていたのを一つ結いにして何とかまとめている。
王都にいた時のマリアとは見た目が随分と変わってしまっていたのだ。
話しかけてきた若手騎士の声を聞いて現実に戻される。
この声はもしかして……
「……ヘクターさんですか?」
「はい、ヘクターです。マリアさん、見つかって良かったです! 部隊長はずっと落ち込んでいたんですよ。
離れ離れになっていた恋人同士の再会を近くで見ることができて感動しています」
ヘクターの言葉を聞いてハッとしたマリアは、慌ててテッドから離れる。
「私達は恋人同士ではありません。知らない場所で心細い時に幼馴染に再会できて嬉しかっただけです」
「ははっ! そういうことにしておきましょう」
その後、マリアはテッドの馬に乗せてもらい、騎士団の宿舎まで向かった。そこでマリアに何があったのかの事情聴取を受け、その後にテッドが騎士団で手配した宿屋まで送ってくれることになった。
「マリア、店がまだ開いているから、買い物に行こう。必要な物を買ってやるよ」
「そこまでしなくてもいいよ。私を王都まで連れて行ってくれたらそれでいいの」
「気にするな。そんなボロボロの服で歩いていたら、目立つし何かと不便だぞ。
服と靴と化粧品くらいは必要だな。今まで何も買ってやれなかったから私が買ってやるよ」
マリアはこれ以上テッドに借りを作りたくはなかった。
「テッド、そういうのはいいのよ。私達はただの幼馴染でしょ?
あ、そうだ! 近くの宝石店に行って、このブレスレットを売ってきてくれない? そのお金で買うようにするわ」
マリアはポケットの中から小さめの宝石のついたブレスレットを取り出す。それはクレアお嬢様が身代わりになるマリアに着けてくれたアクセサリーの中の一つだった。他に髪飾りやネックレスもあるが、宝石が大きすぎて平民が持っているのは不自然なので売るつもりはなかった。それらは布に包んで、体にサラシを巻くようにして身につけ、肌身離さず持っている。
クレアお嬢様は捨てても売っても構わないと言っていたから、ブレスレットは有り難く使わせてもらって、他の宝石は返そう。
「マリア、こんな時まで遠慮しなくていいんだ。
服くらいは買ってやるから……」
「私が嫌なの。お願い! この汚れた格好で宝石店に入れないから、テッドにお願いしたいの」
「……分かった」
テッドはどことなく悲しそうな顔をしていたが、宝石店をすぐに見つけて売ってきてくれた。
小さめの宝石だったが、価値の高い宝石のようで高額で売れたらしく、そのお金で着替えの服や下着、靴と化粧品と鞄を購入することが出来た。
「マリア、私がお前に出来ることはないか?」
「それなら……、辺境を離れる前に私を助けてくれた人達に挨拶に行きたいの。
あんなことがあって逃げるように出てきてしまったけど、助けてくれた恩人だからお礼は伝えたいと思ってね。急に居なくなったから心配していたら悪いし、一人では行けないから、テッドが付き添ってくれたら心強いわ」
「勿論だ」
翌日、テッドの付き添いでカールとダニーの家に行くことになった。
「もしかして……、マリアか?」
それは自分のよく知る人物の声だった。
ハッとして顔を上げると、そこにいたのは幼馴染であり、最悪な別れをした元恋人のテッドだった。
「……テッドなの? どうして?」
「やっぱりマリア! みんな心配していたんだぞ。ずっと探していたんだ。生きていて良かった……っ。
私は騎士団の遠征で辺境に来たばかりだ。マリアはどうしてこんな所に? ボロボロじゃないか」
テッドが私を探していた? ナゼ……?
「テッドは、私が事件に巻き込まれたことを知っているの?」
「勿論だ。ベインズ公爵令嬢を狙った貴族も、雇われた野盗や農民もみんな捕らえられた。
公爵家はマリアを探すために、うちの騎士団にも捜索の協力を依頼してきた。お前が事件に巻き込まれて行方不明になっていると聞いた時の私の気持ちが分かるか?
本当に……無事で良かった……」
泣きそうな表情のテッドはマリアを抱き締めてきた。
「……っ、テッドぉー、怖かったよぉ」
「マリア、頑張ったな……」
知らない土地で心細い時に、自分のよく知る同郷の人に会えば安心するもので、色々あって弱っていたマリアは、たとえテッドが最悪な別れをした元恋人であっても、今は付き合いの長い幼馴染として再会を喜んでいた。
更に、お嬢様を狙った悪いヤツも雇われた野盗や農民たちも捕らえられたと聞き、安堵から涙が止まらなくなってしまう。
「みんながマリアを心配しているから早く知らせてやらないとな。マリアを騎士団で保護して王都のベインズ公爵家まできちんと送るから安心しろ」
「うっ……、テッド……見つけてくれてありがとう。本当に助かったよぉ」
「もう大丈夫だ。だから、もう泣くな……」
抱き合って泣きながら再会を喜ぶ二人は、知らない人から見たら恋人同士にしか見えなかった。
「部隊長、そちらはもしかして?」
「ああ、ずっと探していたマリアだ。ベインズ公爵家に保護したことを知らせなければならない」
「マリアさん? ボロボロの服装で王都にいた時と雰囲気が違かったから気づきませんでした。
マリアさんがどんな格好をしていてもすぐに気付くなんてさすが部隊長です。愛の力は凄いですね!」
今のマリアは、農民のボロボロの服を着ていてすっぴんだった。髪の毛はトリートメントができなかったせいで天パがパサつき、酷い状態になっていたのを一つ結いにして何とかまとめている。
王都にいた時のマリアとは見た目が随分と変わってしまっていたのだ。
話しかけてきた若手騎士の声を聞いて現実に戻される。
この声はもしかして……
「……ヘクターさんですか?」
「はい、ヘクターです。マリアさん、見つかって良かったです! 部隊長はずっと落ち込んでいたんですよ。
離れ離れになっていた恋人同士の再会を近くで見ることができて感動しています」
ヘクターの言葉を聞いてハッとしたマリアは、慌ててテッドから離れる。
「私達は恋人同士ではありません。知らない場所で心細い時に幼馴染に再会できて嬉しかっただけです」
「ははっ! そういうことにしておきましょう」
その後、マリアはテッドの馬に乗せてもらい、騎士団の宿舎まで向かった。そこでマリアに何があったのかの事情聴取を受け、その後にテッドが騎士団で手配した宿屋まで送ってくれることになった。
「マリア、店がまだ開いているから、買い物に行こう。必要な物を買ってやるよ」
「そこまでしなくてもいいよ。私を王都まで連れて行ってくれたらそれでいいの」
「気にするな。そんなボロボロの服で歩いていたら、目立つし何かと不便だぞ。
服と靴と化粧品くらいは必要だな。今まで何も買ってやれなかったから私が買ってやるよ」
マリアはこれ以上テッドに借りを作りたくはなかった。
「テッド、そういうのはいいのよ。私達はただの幼馴染でしょ?
あ、そうだ! 近くの宝石店に行って、このブレスレットを売ってきてくれない? そのお金で買うようにするわ」
マリアはポケットの中から小さめの宝石のついたブレスレットを取り出す。それはクレアお嬢様が身代わりになるマリアに着けてくれたアクセサリーの中の一つだった。他に髪飾りやネックレスもあるが、宝石が大きすぎて平民が持っているのは不自然なので売るつもりはなかった。それらは布に包んで、体にサラシを巻くようにして身につけ、肌身離さず持っている。
クレアお嬢様は捨てても売っても構わないと言っていたから、ブレスレットは有り難く使わせてもらって、他の宝石は返そう。
「マリア、こんな時まで遠慮しなくていいんだ。
服くらいは買ってやるから……」
「私が嫌なの。お願い! この汚れた格好で宝石店に入れないから、テッドにお願いしたいの」
「……分かった」
テッドはどことなく悲しそうな顔をしていたが、宝石店をすぐに見つけて売ってきてくれた。
小さめの宝石だったが、価値の高い宝石のようで高額で売れたらしく、そのお金で着替えの服や下着、靴と化粧品と鞄を購入することが出来た。
「マリア、私がお前に出来ることはないか?」
「それなら……、辺境を離れる前に私を助けてくれた人達に挨拶に行きたいの。
あんなことがあって逃げるように出てきてしまったけど、助けてくれた恩人だからお礼は伝えたいと思ってね。急に居なくなったから心配していたら悪いし、一人では行けないから、テッドが付き添ってくれたら心強いわ」
「勿論だ」
翌日、テッドの付き添いでカールとダニーの家に行くことになった。
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