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36 食事会
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食事会はレストランの個室を借りて、男女5対5で行われる。
そこそこ高級なレストランでの食事は、相手の男性達がご馳走してくれるらしい。騎士団で稼いでいる人達だから、遠慮なく美味しいものをご馳走になろうとアン達と話しながら店に向かう。
「アン、待ってたよ。みんな中で待ってる。
こんちには。私はアンの婚約者のクリフです。よろしく!」
「こんにちは! 今日はよろしくお願いしまーす」
レストランではクリフが待っていて、個室まで案内してくれた。
「クリフ、マリアは用事があるから途中で抜けるけどいいよね? 今日は人が足りないから、無理を言って来てもらったんだ」
アンは部屋に入る前に、マリアが先に帰ることをクリフに伝えてくれる。
「大丈夫だ。マリアさん、わざわざありがとう。途中で勝手に抜けて大丈夫だから」
「すみません。よろしくお願いします」
部屋に入ると、騎士っぽい雰囲気の人達がいて、その中には私服のヘクターとあの男の姿もある。
ヒソヒソ……
「みんなカッコいいじゃない!」
「やったー! アン、ありがとう」
アンの友達は相手の男性達を見て小声で話しながら喜んでいる。だが、マリアはテッドがいたことで気が重くなっていた。
テッドに恋人がいるのか分からないけど、ドリスさんと別れてこうやって遊び歩いているのかしら? 喋りたくないから目は合わさないようにしよう。
無難に自己紹介をして席に座ろうとした時、
「早く仲良くなれるように、男女交互に座ろう」
相手の男性の一人がとんでもないことを言い出す。王都の騎士だけあって、こういう場に慣れているようだ。
「マリアさん、ここの席座って!」
それはヘクターの声だった。マリアはその瞬間、嫌な予感がしていた。
この場で嫌だなんて言って雰囲気を悪くしたくない。仕方ないからその席に座るが、気がつくとヘクターとテッドに挟まれていた。
最悪だわ……。テッドも何を考えて隣に座るの?
しかし、本当の地獄はこれからだった。ヘクターはニコニコしながら爆弾を投下する。
「マリアさんは部隊長と幼馴染だって聞きましたよ。せっかく再会したんですから、二人でゆっくり話でもして下さい。
みんなも二人の再会を邪魔するなよ!」
「そうなんだー! じゃあ、積もる話があるわね」
「部隊長、俺たちは素敵な再会を邪魔しませんから、二人で楽しんで下さい。
あ、二人で抜けても構いませんよー」
くっ……!
部隊長、部隊長って……テッドのくせにちょっと出世したからって調子に乗らないでよ。
マリアはテーブルの下で拳を強く握りしめていた。せっかくアンが爪を綺麗に磨いてくれたのに、その爪が手のひらに食い込んで痛い。
この男達は何なのよ? さっきから勝手なことばかり言って! テッドも否定しないで何を考えているの?
マリアはイライラしてきたが、表向きは表情を崩さずに和かな笑みを浮かべていた。これも全てカミラの教育の賜物だ。
しかし、隣に座るテッドの方は一度も見ていない。こんなヤツの顔なんて見たくないと思ったから。
ここで怒りを抑えずにテッドが二股した最低野郎だと暴露したら、雰囲気をぶち壊してアンやクリフに迷惑をかけてしまう。今はひたすら我慢だ。
その時、隣で黙っていたテッドは勢いよく立ち上がる。
「ありがとう。実はせっかくマリアに会えたから二人で話したいと思っていたんだ。
俺たちは抜けるから、後はみんなで楽しんでくれ」
……この男、何を言ってるの?
「さすが部隊長、こんな時でも男前だせ!」
「部隊長、マリアさん、お幸せにー!」
「幼馴染が再会して素敵な恋に発展するのかしら」
事情を知らないヘクターやアンの友人達は、勝手に盛り上がっている。
こんな男と二人で話すことなんてないって叫べたら楽なのに……
「マリア、行こう!」
テッドはマリアの手を引き、部屋から連れ出そうとする。
「ちょっと……」
「ちょっと待って下さい! マリアはこの後、用事があってすぐ帰る予定でした。
マリアの予定も考えずに連れて行こうとするのはやめて下さい」
その力強い声はアンだった。マリアが困っていることに気付いて助け舟を出してくれたのだ。
しかし、テッドは引かなかった。
「マリア、用事があるなら私が送っていく。行こうか」
これはテッドにきちんと話をしないと分からないわね。
この場でこの男を怒ることは出来ないから、外でガツンと言ってやる!
「アンさん、地元の知り合いが送ってくれると言っているので、今日はこれで失礼します。
みなさんで楽しんで下さいね。それでは!」
マリアは得意の作り笑顔で挨拶をして、すぐに店から出た。
そこそこ高級なレストランでの食事は、相手の男性達がご馳走してくれるらしい。騎士団で稼いでいる人達だから、遠慮なく美味しいものをご馳走になろうとアン達と話しながら店に向かう。
「アン、待ってたよ。みんな中で待ってる。
こんちには。私はアンの婚約者のクリフです。よろしく!」
「こんにちは! 今日はよろしくお願いしまーす」
レストランではクリフが待っていて、個室まで案内してくれた。
「クリフ、マリアは用事があるから途中で抜けるけどいいよね? 今日は人が足りないから、無理を言って来てもらったんだ」
アンは部屋に入る前に、マリアが先に帰ることをクリフに伝えてくれる。
「大丈夫だ。マリアさん、わざわざありがとう。途中で勝手に抜けて大丈夫だから」
「すみません。よろしくお願いします」
部屋に入ると、騎士っぽい雰囲気の人達がいて、その中には私服のヘクターとあの男の姿もある。
ヒソヒソ……
「みんなカッコいいじゃない!」
「やったー! アン、ありがとう」
アンの友達は相手の男性達を見て小声で話しながら喜んでいる。だが、マリアはテッドがいたことで気が重くなっていた。
テッドに恋人がいるのか分からないけど、ドリスさんと別れてこうやって遊び歩いているのかしら? 喋りたくないから目は合わさないようにしよう。
無難に自己紹介をして席に座ろうとした時、
「早く仲良くなれるように、男女交互に座ろう」
相手の男性の一人がとんでもないことを言い出す。王都の騎士だけあって、こういう場に慣れているようだ。
「マリアさん、ここの席座って!」
それはヘクターの声だった。マリアはその瞬間、嫌な予感がしていた。
この場で嫌だなんて言って雰囲気を悪くしたくない。仕方ないからその席に座るが、気がつくとヘクターとテッドに挟まれていた。
最悪だわ……。テッドも何を考えて隣に座るの?
しかし、本当の地獄はこれからだった。ヘクターはニコニコしながら爆弾を投下する。
「マリアさんは部隊長と幼馴染だって聞きましたよ。せっかく再会したんですから、二人でゆっくり話でもして下さい。
みんなも二人の再会を邪魔するなよ!」
「そうなんだー! じゃあ、積もる話があるわね」
「部隊長、俺たちは素敵な再会を邪魔しませんから、二人で楽しんで下さい。
あ、二人で抜けても構いませんよー」
くっ……!
部隊長、部隊長って……テッドのくせにちょっと出世したからって調子に乗らないでよ。
マリアはテーブルの下で拳を強く握りしめていた。せっかくアンが爪を綺麗に磨いてくれたのに、その爪が手のひらに食い込んで痛い。
この男達は何なのよ? さっきから勝手なことばかり言って! テッドも否定しないで何を考えているの?
マリアはイライラしてきたが、表向きは表情を崩さずに和かな笑みを浮かべていた。これも全てカミラの教育の賜物だ。
しかし、隣に座るテッドの方は一度も見ていない。こんなヤツの顔なんて見たくないと思ったから。
ここで怒りを抑えずにテッドが二股した最低野郎だと暴露したら、雰囲気をぶち壊してアンやクリフに迷惑をかけてしまう。今はひたすら我慢だ。
その時、隣で黙っていたテッドは勢いよく立ち上がる。
「ありがとう。実はせっかくマリアに会えたから二人で話したいと思っていたんだ。
俺たちは抜けるから、後はみんなで楽しんでくれ」
……この男、何を言ってるの?
「さすが部隊長、こんな時でも男前だせ!」
「部隊長、マリアさん、お幸せにー!」
「幼馴染が再会して素敵な恋に発展するのかしら」
事情を知らないヘクターやアンの友人達は、勝手に盛り上がっている。
こんな男と二人で話すことなんてないって叫べたら楽なのに……
「マリア、行こう!」
テッドはマリアの手を引き、部屋から連れ出そうとする。
「ちょっと……」
「ちょっと待って下さい! マリアはこの後、用事があってすぐ帰る予定でした。
マリアの予定も考えずに連れて行こうとするのはやめて下さい」
その力強い声はアンだった。マリアが困っていることに気付いて助け舟を出してくれたのだ。
しかし、テッドは引かなかった。
「マリア、用事があるなら私が送っていく。行こうか」
これはテッドにきちんと話をしないと分からないわね。
この場でこの男を怒ることは出来ないから、外でガツンと言ってやる!
「アンさん、地元の知り合いが送ってくれると言っているので、今日はこれで失礼します。
みなさんで楽しんで下さいね。それでは!」
マリアは得意の作り笑顔で挨拶をして、すぐに店から出た。
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