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公爵家で働き出して三ヶ月を迎えたマリアは、洗濯場から掃除の部署に異動することになってしまう。
気楽な裏方である洗濯場の仕事を気に入っていたマリアは、メイド長から配置転換の話をされた時、ショックでしかなかった。
自分は洗濯場の仕事が好きだからこれからも洗濯場で働きたいと伝えてみたのだが、メイド長からはまだ若いのだから他の仕事も覚えて欲しいということを言われてしまったのだ。
そんなマリアは、同室の先輩であるアンに掃除の仕事で注意すべきことを教えてもらっている。
「マリア。掃除の仕事は、裏方で洗濯をしていた時とは全然違うんだ。
掃除をする場所や時間帯によっては、公爵家の方々と顔を合わせることがあるし、入ってはいけない場所もあるからね。
高価な絵や壺などが沢山置いてあるから、壊さないように気をつけるんだよ」
「はい。気をつけます」
こんな時、アンは本当に頼りになる先輩だった。
新しい部署に行く前にある程度の話を聞いていれば、精神的に安心できるからだ。
「邸の中で掃除をしていると、洗濯場のババア達とは違った面倒な奴らと顔を合わせる時もある。
それは行儀見習いで来ている貴族のお嬢様たちだ。
あの女達は公爵家の分家で爵位は大して高くないようだが、私達平民の使用人を見下して、嫌がらせをしてくる時があるからね」
公爵家の使用人に貴族出身の人が多いことは聞いていた。しかし、今までは貴族出身の人のいない下働きの仕事だったから、マリアは面倒な貴族令嬢に関わることなく平和に過ごせていたのだ。
「いいかい? あまり目立たないようにしなよ。
最近のマリアはお手入れを頑張っていたから、髪とお肌は見違えるほど綺麗になったし、化粧も上手になって、ここに来た時とは比べ物にならないくらい垢抜けて可愛くなったからね。
あの女達は自分より可愛い子は面白くないだろうし、反対に容姿が良くない子のことを平気で馬鹿にしたりするんだ。ニコニコして近づいて来てもナイフを隠し持っていると思って、気を緩めないように。
笑顔でいても何を考えているのかが分からないのが貴族だからね。
口答えもしない方がいいね。『生意気よー』って言われて、ビンタをされるかもしれない」
アンは厳しい顔で貴族のことをボロクソ言っている。マリアはその話を聞きながら、やっぱり自分には洗濯場の仕事が一番合っているのだと改めて思うのであった。
「アンさん、色々教えてくれてありがとうございます。
でも私は可愛くないから大丈夫です。田舎では女の子として扱われたことなんて一度もなかったんですよ!
アンさんが髪やお肌のお手入れ方法や、化粧の仕方を教えてくれたおかげで、随分とマシになりましたけど、王都の女の子達と比べたら自分は全然ダメだということは分かっていますから。
目立つ行動をしないようにして、真面目にやるようにしますね」
アンはため息をつきたくなっていた。最近のマリアは、公爵家に来た頃とは別人のように可愛くなっているのに、本人があまりにも無自覚だったからだ。
今まで誰も気がつかなかったが、マリアは磨けば綺麗になる子だった。
寮の栄養のある美味しい食事は、マリアの貧相だった体を女の子らしい魅力的な体に変えてくれたし、日焼けをしないように注意して生活し、お肌のお手入れを丁寧にしていたら、お肌は色白の綺麗な卵肌のように変化した。
更にマリアの整った顔立ちは、薄化粧をしただけでも化粧映えしてとても美しくなる。
クルクルの爆発したような天パを気にしていたが、丁寧にトリートメントをするようにしたら、チリチリに傷んでいた髪がしっとりまとまるようになり、天パというよりはカールで巻いたような髪に変化していた。
くすんでいたはずの金髪は、今では艶のある金髪になっていて、他の人達から綺麗だと褒められることもある。
今のマリアは街を歩いていると、道行く男たちがチラチラと熱い視線を送ってくるほど可愛くなっていたのだ。
本人は『アンさんが可愛いからみんな見ていますね!』と言って大きく勘違いしているが……
マリアは王都に多く存在するあざとい女達とは違って、擦れていないところが大きな魅力だとアンは思っている。
こういうタイプの女の子が好きな男は沢山いるはずだから、マリアは絶対にモテるはずだとアンは確信していた。
それなのにマリア本人は自分に自信がないのか、いくら褒めても全く信用してくれない。どうしたらもっと自分に自信を持ってくれるのだろうと、アンはずっと気にしていた。
アンにとってのマリアは、今では可愛い妹のような存在になっていたのだ。
気楽な裏方である洗濯場の仕事を気に入っていたマリアは、メイド長から配置転換の話をされた時、ショックでしかなかった。
自分は洗濯場の仕事が好きだからこれからも洗濯場で働きたいと伝えてみたのだが、メイド長からはまだ若いのだから他の仕事も覚えて欲しいということを言われてしまったのだ。
そんなマリアは、同室の先輩であるアンに掃除の仕事で注意すべきことを教えてもらっている。
「マリア。掃除の仕事は、裏方で洗濯をしていた時とは全然違うんだ。
掃除をする場所や時間帯によっては、公爵家の方々と顔を合わせることがあるし、入ってはいけない場所もあるからね。
高価な絵や壺などが沢山置いてあるから、壊さないように気をつけるんだよ」
「はい。気をつけます」
こんな時、アンは本当に頼りになる先輩だった。
新しい部署に行く前にある程度の話を聞いていれば、精神的に安心できるからだ。
「邸の中で掃除をしていると、洗濯場のババア達とは違った面倒な奴らと顔を合わせる時もある。
それは行儀見習いで来ている貴族のお嬢様たちだ。
あの女達は公爵家の分家で爵位は大して高くないようだが、私達平民の使用人を見下して、嫌がらせをしてくる時があるからね」
公爵家の使用人に貴族出身の人が多いことは聞いていた。しかし、今までは貴族出身の人のいない下働きの仕事だったから、マリアは面倒な貴族令嬢に関わることなく平和に過ごせていたのだ。
「いいかい? あまり目立たないようにしなよ。
最近のマリアはお手入れを頑張っていたから、髪とお肌は見違えるほど綺麗になったし、化粧も上手になって、ここに来た時とは比べ物にならないくらい垢抜けて可愛くなったからね。
あの女達は自分より可愛い子は面白くないだろうし、反対に容姿が良くない子のことを平気で馬鹿にしたりするんだ。ニコニコして近づいて来てもナイフを隠し持っていると思って、気を緩めないように。
笑顔でいても何を考えているのかが分からないのが貴族だからね。
口答えもしない方がいいね。『生意気よー』って言われて、ビンタをされるかもしれない」
アンは厳しい顔で貴族のことをボロクソ言っている。マリアはその話を聞きながら、やっぱり自分には洗濯場の仕事が一番合っているのだと改めて思うのであった。
「アンさん、色々教えてくれてありがとうございます。
でも私は可愛くないから大丈夫です。田舎では女の子として扱われたことなんて一度もなかったんですよ!
アンさんが髪やお肌のお手入れ方法や、化粧の仕方を教えてくれたおかげで、随分とマシになりましたけど、王都の女の子達と比べたら自分は全然ダメだということは分かっていますから。
目立つ行動をしないようにして、真面目にやるようにしますね」
アンはため息をつきたくなっていた。最近のマリアは、公爵家に来た頃とは別人のように可愛くなっているのに、本人があまりにも無自覚だったからだ。
今まで誰も気がつかなかったが、マリアは磨けば綺麗になる子だった。
寮の栄養のある美味しい食事は、マリアの貧相だった体を女の子らしい魅力的な体に変えてくれたし、日焼けをしないように注意して生活し、お肌のお手入れを丁寧にしていたら、お肌は色白の綺麗な卵肌のように変化した。
更にマリアの整った顔立ちは、薄化粧をしただけでも化粧映えしてとても美しくなる。
クルクルの爆発したような天パを気にしていたが、丁寧にトリートメントをするようにしたら、チリチリに傷んでいた髪がしっとりまとまるようになり、天パというよりはカールで巻いたような髪に変化していた。
くすんでいたはずの金髪は、今では艶のある金髪になっていて、他の人達から綺麗だと褒められることもある。
今のマリアは街を歩いていると、道行く男たちがチラチラと熱い視線を送ってくるほど可愛くなっていたのだ。
本人は『アンさんが可愛いからみんな見ていますね!』と言って大きく勘違いしているが……
マリアは王都に多く存在するあざとい女達とは違って、擦れていないところが大きな魅力だとアンは思っている。
こういうタイプの女の子が好きな男は沢山いるはずだから、マリアは絶対にモテるはずだとアンは確信していた。
それなのにマリア本人は自分に自信がないのか、いくら褒めても全く信用してくれない。どうしたらもっと自分に自信を持ってくれるのだろうと、アンはずっと気にしていた。
アンにとってのマリアは、今では可愛い妹のような存在になっていたのだ。
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