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11 騎士団の寮
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翌日、マリアは洗濯場のベテランおばちゃんのハンナと一緒に騎士団の寮に来ていた。
「マリア。騎士団の寮では身の回りのことは自分でやる決まりがあって、寝具を取り替えることも騎士が自分でやっているんだ。
騎士達は寝具交換をするために、洗濯する寝具をここまで持って来てくれることになっている。そしたら、洗濯済みの綺麗な寝具を騎士に手渡してくれるかい?」
ハンナから仕事内容の説明を受けたマリアは、ため息をつきたくなっていた。
寝具を騎士に渡す仕事なんてしたら、直接、騎士達と顔を合わせなくてはならない。だが、テッドのことで騎士が苦手になっていたマリアは、なるべく騎士とは接触したくないと思っていた。
テッドやテッドの新しい恋人がマリアに向けてきたような、蔑む目で見られたらどうしようかと不安だったのだ。
マリアは王都に来てから、可愛い子やお洒落な子を沢山見てしまったので、自分の容姿に対して更に自信を無くしてしまっていた。だから見知らぬ男性と顔を合わせることすら嫌だったのである。
もし騎士達に、『天パのブスが洗濯場で働いているぞ!』なんて言われたらどうしようかと……
「ハンナさん、私は寝具を手渡す仕事よりも、寝具を洗い場まで運ぶ力仕事の方をやりますよ。
ハンナさん達よりも私は力持ちですから!」
騎士との接触を避けるために、裏方の力仕事の方をやりたいと言ってみたマリアだったが……
「それは私達ババアがやるからいいよ。
騎士達だって、朝からババアと顔を合わせるよりも若くて可愛い子の顔を見た方が元気になれるだろうからね。
ふふっ! じゃあ、頼んだよ」
強引でお節介のハンナは意味深に笑った後、裏方に行ってしまう。
私は若いだけで全然可愛くないのに……と、マリアは心の中で叫びたい気持ちになっていた。
起床時間から朝食の後の時間までが寝具を出す時間になっているらしく、寮で生活している騎士達が汚れた寝具を持ってやってくる。
マリアは苦手な騎士と余計な接触は避けたかったので、朝の挨拶をしながら淡々と仕事をこなすことにした。
「……あれ? 今日はいつものおばちゃんじゃないんだ。君も洗濯場の使用人なの?」
時々、気さくそうな騎士が初めて見るマリアに声を掛けてくることがある。
「はい……。公爵邸の洗濯場で働いております」
マリアは、余計な話はせずに最低限の会話で終わらせようとした。
「まだここが慣れないから、少し緊張している?
もっとリラックスしていいと思うよ。みんな、君みたいな可愛らしい子が働きに来てくれたら嬉しいに決まっているんだから」
「……はい。お気遣いありがとうございます」
マリアは気さくに話しかけてくれた若い騎士が恐ろしく見えた。
私みたいな天パの芋臭いブスに対して、〝可愛い〟だなんて平気な顔をして嘘をつく姿は結婚詐欺師みたいだと。何て怖い人なんだろうと思ってしまったのだ。
可愛くない子にも、可愛いって平気で言えちゃうほど、王都の騎士達は女慣れしていて遊び人なのねと。
ちょっと褒められたからと真に受けていたら、遊び人の騎士達にバカにされてしまう……
マリアは警戒感を強く感じていた。
最低限の挨拶だけをして行ってしまう騎士もいれば、先程の気さくな騎士のように話しかけてくる者もいたりして、マリアは少し面倒に感じていた。
やはり自分には裏方の仕事があっているから、ここにはもう来たくないとハンナさん達に後で話をしようかと考えていたその時……
「君はもしかして、お嬢様を破落戸から助けてくれたお嬢さんか……?」
声を掛けて来た騎士を見ると、何となく見覚えがあった。
その瞬間、ハッとした。その騎士はお嬢様の護衛騎士で、お嬢様を助けたあの日、お礼を遠慮して実家の住所をなかなか教えなかったマリアに対して、訳ありの家出少女ではないのかと言ってきた人物だったからである。
「マリア。騎士団の寮では身の回りのことは自分でやる決まりがあって、寝具を取り替えることも騎士が自分でやっているんだ。
騎士達は寝具交換をするために、洗濯する寝具をここまで持って来てくれることになっている。そしたら、洗濯済みの綺麗な寝具を騎士に手渡してくれるかい?」
ハンナから仕事内容の説明を受けたマリアは、ため息をつきたくなっていた。
寝具を騎士に渡す仕事なんてしたら、直接、騎士達と顔を合わせなくてはならない。だが、テッドのことで騎士が苦手になっていたマリアは、なるべく騎士とは接触したくないと思っていた。
テッドやテッドの新しい恋人がマリアに向けてきたような、蔑む目で見られたらどうしようかと不安だったのだ。
マリアは王都に来てから、可愛い子やお洒落な子を沢山見てしまったので、自分の容姿に対して更に自信を無くしてしまっていた。だから見知らぬ男性と顔を合わせることすら嫌だったのである。
もし騎士達に、『天パのブスが洗濯場で働いているぞ!』なんて言われたらどうしようかと……
「ハンナさん、私は寝具を手渡す仕事よりも、寝具を洗い場まで運ぶ力仕事の方をやりますよ。
ハンナさん達よりも私は力持ちですから!」
騎士との接触を避けるために、裏方の力仕事の方をやりたいと言ってみたマリアだったが……
「それは私達ババアがやるからいいよ。
騎士達だって、朝からババアと顔を合わせるよりも若くて可愛い子の顔を見た方が元気になれるだろうからね。
ふふっ! じゃあ、頼んだよ」
強引でお節介のハンナは意味深に笑った後、裏方に行ってしまう。
私は若いだけで全然可愛くないのに……と、マリアは心の中で叫びたい気持ちになっていた。
起床時間から朝食の後の時間までが寝具を出す時間になっているらしく、寮で生活している騎士達が汚れた寝具を持ってやってくる。
マリアは苦手な騎士と余計な接触は避けたかったので、朝の挨拶をしながら淡々と仕事をこなすことにした。
「……あれ? 今日はいつものおばちゃんじゃないんだ。君も洗濯場の使用人なの?」
時々、気さくそうな騎士が初めて見るマリアに声を掛けてくることがある。
「はい……。公爵邸の洗濯場で働いております」
マリアは、余計な話はせずに最低限の会話で終わらせようとした。
「まだここが慣れないから、少し緊張している?
もっとリラックスしていいと思うよ。みんな、君みたいな可愛らしい子が働きに来てくれたら嬉しいに決まっているんだから」
「……はい。お気遣いありがとうございます」
マリアは気さくに話しかけてくれた若い騎士が恐ろしく見えた。
私みたいな天パの芋臭いブスに対して、〝可愛い〟だなんて平気な顔をして嘘をつく姿は結婚詐欺師みたいだと。何て怖い人なんだろうと思ってしまったのだ。
可愛くない子にも、可愛いって平気で言えちゃうほど、王都の騎士達は女慣れしていて遊び人なのねと。
ちょっと褒められたからと真に受けていたら、遊び人の騎士達にバカにされてしまう……
マリアは警戒感を強く感じていた。
最低限の挨拶だけをして行ってしまう騎士もいれば、先程の気さくな騎士のように話しかけてくる者もいたりして、マリアは少し面倒に感じていた。
やはり自分には裏方の仕事があっているから、ここにはもう来たくないとハンナさん達に後で話をしようかと考えていたその時……
「君はもしかして、お嬢様を破落戸から助けてくれたお嬢さんか……?」
声を掛けて来た騎士を見ると、何となく見覚えがあった。
その瞬間、ハッとした。その騎士はお嬢様の護衛騎士で、お嬢様を助けたあの日、お礼を遠慮して実家の住所をなかなか教えなかったマリアに対して、訳ありの家出少女ではないのかと言ってきた人物だったからである。
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