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新しい生活
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バーネット伯爵様と無事に離縁出来た私は、半年後に王太子殿下の側妃として嫁ぐことが正式に決まった。
それに伴い、アンブリッジ公爵家に養子に入ることになり、今の私はシャノン伯爵令嬢ではなく、アンブリッジ公爵令嬢と呼ばれている。アンブリッジ公爵様のことも、お義兄様と呼ぶようにと公爵様本人から言われている。
学生時代には生徒会長とお呼びしていた方を、お義兄様と呼ぶ日がくるとは、あの時の私からしたら、想像も出来なかったことだと思う。
「リア、母上がそろそろ君に妃教育をしたいと言っているんだが、君はマナーも語学も堪能だったから、妃教育は何の問題もないと思うんだ。
私が嫌なのは、母上がリアに執務の引き継ぎをしたいらしく、来週からでいいから、また母上の執務室に来て欲しいと言われてしまったことだ。
王宮に君が行くと、働いている文官や近衛が君をジロジロと見るのが嫌だし、リアが執務で忙しくなったら、私と過ごす時間が減ってしまうから最悪だ…。」
後宮で殿下を待つだけの生活に飽きてしまっていた私は、また王妃殿下の所に行けると聞いて、正直なところとても嬉しいのだけれど…。そのことを口にしたら殿下が不機嫌になって、ベッドに引きずり込まれて意地悪をされてしまいそうだから、余計なことを言うのはやめた方がいいわね。
「殿下…。誰も私のことなどに興味はありませんわ。
それよりも、周りの人達に私が殿下の側妃だと認めてもらえるよう、精一杯頑張ります。
ですから、王妃殿下の執務の引き継ぎに行くことを、どうかお許し下さい。」
「…リアからそんな事を言われたら、私は何も文句は言えないよ。
リア、愛してる…。」
「私も殿下を愛していますわ。」
後日、王妃殿下の執務室に行くと、以前と変わらず温かく迎えてくれた王妃殿下とヘミングウェイ伯爵夫人がいた。
執務室のこの雰囲気が、実は私は好きだったりする。殿下には絶対に言えないけれど。
半年はあっという間で、結婚式の日を迎える。
側妃の結婚式なのに、それなりの規模の結婚式で、私はとても緊張してしまったけれど、素敵な式になったと思う。
式の後、殿下と私は一週間のお休みを頂き、二人で初めて出掛けることになる。
どこに行くのかと思っていたら、殿下は海の近くにある離宮に泊まりに連れて行ってくれた。子供の頃によく来ていた所で、殿下が一番気に入っている離宮らしく、私を連れて来たかったのだと教えてくれた。
こんな風に泊まりに来ることは、私は初めてのことだったので、殿下と一緒に来ることが出来て嬉しかった。
エリザベス様やライアン様とは、4人で食事をしたり、お茶会をしたりして、ちょっとした家族のような関係になっている。
エリザベス様と殿下が、兄妹喧嘩みたいになる時もあるけれど、仲が良い証拠だと思うから、私もライアン様も特に二人の喧嘩を止めるようなことはしていない。
側妃になったことで、王族主催の夜会にも出席するようになると、バーネット伯爵様を見かけることもある。
バーネット伯爵様は、私が側妃になるよりも先に、ウォード侯爵令嬢と再婚をしたようだ。
二人の様子を遠目で眺めていたら、バーネット伯爵様は相変わらず光のない目をしているように見えた。
そして、バーネット伯爵様と結婚出来て喜んでいるはずの夫人は……、何で死んだような目をしているの?
バチっ!
二人を見つめすぎてしまい、バーネット伯爵様と目が合ったような気がする。
いけない!気を付けないと。
離縁する時に、今後は私には関わらないということをバーネット伯爵様と殿下との間で約束をしたようなので、バーネット伯爵様も夫人も私の側には来ないし、話しかけて来ることもない。
でも、偶然にバーネット伯爵様が視界に入ってしまうことがあり、気をつけないと目が合いそうになる。
やはり…、伯爵様のあの目は何を考えているのか分からないから怖い。
しかし、それよりも厄介な人が私の身近にいるのよね。
「リア、今日の夜会でバーネット伯爵を見ていたよね?」
殿下は色々な人達に話しかけられて、忙しかったはずなのに、どうしてそのことに気付いているのかしら?
「バーネット伯爵ではなく、夫人が気になっただけですわ。」
「…本当?私は嫉妬深いからね。いくらリアが私の妻になったとしても、全然安心してないから。
伯爵と夫人の関係は、きっと最悪だろうから、夫人も傲慢に振る舞えるほどの元気はないだろう。
伯爵は平民に愛人がいるらしいし。」
「え…?愛人を囲っているのですか?」
「伯爵を見張っている影からはそう聞いている。
何でも、リアと同じ髪色で体型も似ているらしい。顔は全然似てないと聞いているけどね。
伯爵がどんな思いで愛人を抱いているのかと想像しただけで、狂いそうなほどに腹が立つが、愛人を持つなとは約束はしてないからね…。」
あの男はやはり狂っている…。
「殿下…、私はあの伯爵が憎いです。
だから殿下やエリザベス様が、私をあの男の所から助け出して下さったことに、心から感謝しておりますわ。
愛しています。私には殿下だけです…。」
殿下の表情が和らぐのが分かった。
「私もリアだけだ。ずっと好きだったし、諦めなくて良かった。
伯爵はこれからも見張り続けるから、リアは心配しなくて大丈夫だよ。
愛してる…。」
そのまま抱きしめられと思ったら、ベッドに連れていかれてしまった。
そんな毎日を過ごしていたからか、あっという間に妊娠してしまい、気付くと男の子二人に、女の子一人の三人の子供に恵まれていた。
エリザベス様や、ライアン様まで子供達を可愛がってくれるので、子供達は父も母も二人ずついると思い込んでいるかもしれない。でも私は、そんな家族だってあってもいいと思っている。
明るく元気で聡明なエリザベス様に、知的で落ち着いていながら、剣の達人でもあるライアン様。そんな二人を子供達はとても慕っていて、今日も子供達の笑い声が聞こえてくる。
こんな日々がずっと続きますように…。
おわり
これで完結になります。
最後まで呼んで下さってありがとうございました。
それに伴い、アンブリッジ公爵家に養子に入ることになり、今の私はシャノン伯爵令嬢ではなく、アンブリッジ公爵令嬢と呼ばれている。アンブリッジ公爵様のことも、お義兄様と呼ぶようにと公爵様本人から言われている。
学生時代には生徒会長とお呼びしていた方を、お義兄様と呼ぶ日がくるとは、あの時の私からしたら、想像も出来なかったことだと思う。
「リア、母上がそろそろ君に妃教育をしたいと言っているんだが、君はマナーも語学も堪能だったから、妃教育は何の問題もないと思うんだ。
私が嫌なのは、母上がリアに執務の引き継ぎをしたいらしく、来週からでいいから、また母上の執務室に来て欲しいと言われてしまったことだ。
王宮に君が行くと、働いている文官や近衛が君をジロジロと見るのが嫌だし、リアが執務で忙しくなったら、私と過ごす時間が減ってしまうから最悪だ…。」
後宮で殿下を待つだけの生活に飽きてしまっていた私は、また王妃殿下の所に行けると聞いて、正直なところとても嬉しいのだけれど…。そのことを口にしたら殿下が不機嫌になって、ベッドに引きずり込まれて意地悪をされてしまいそうだから、余計なことを言うのはやめた方がいいわね。
「殿下…。誰も私のことなどに興味はありませんわ。
それよりも、周りの人達に私が殿下の側妃だと認めてもらえるよう、精一杯頑張ります。
ですから、王妃殿下の執務の引き継ぎに行くことを、どうかお許し下さい。」
「…リアからそんな事を言われたら、私は何も文句は言えないよ。
リア、愛してる…。」
「私も殿下を愛していますわ。」
後日、王妃殿下の執務室に行くと、以前と変わらず温かく迎えてくれた王妃殿下とヘミングウェイ伯爵夫人がいた。
執務室のこの雰囲気が、実は私は好きだったりする。殿下には絶対に言えないけれど。
半年はあっという間で、結婚式の日を迎える。
側妃の結婚式なのに、それなりの規模の結婚式で、私はとても緊張してしまったけれど、素敵な式になったと思う。
式の後、殿下と私は一週間のお休みを頂き、二人で初めて出掛けることになる。
どこに行くのかと思っていたら、殿下は海の近くにある離宮に泊まりに連れて行ってくれた。子供の頃によく来ていた所で、殿下が一番気に入っている離宮らしく、私を連れて来たかったのだと教えてくれた。
こんな風に泊まりに来ることは、私は初めてのことだったので、殿下と一緒に来ることが出来て嬉しかった。
エリザベス様やライアン様とは、4人で食事をしたり、お茶会をしたりして、ちょっとした家族のような関係になっている。
エリザベス様と殿下が、兄妹喧嘩みたいになる時もあるけれど、仲が良い証拠だと思うから、私もライアン様も特に二人の喧嘩を止めるようなことはしていない。
側妃になったことで、王族主催の夜会にも出席するようになると、バーネット伯爵様を見かけることもある。
バーネット伯爵様は、私が側妃になるよりも先に、ウォード侯爵令嬢と再婚をしたようだ。
二人の様子を遠目で眺めていたら、バーネット伯爵様は相変わらず光のない目をしているように見えた。
そして、バーネット伯爵様と結婚出来て喜んでいるはずの夫人は……、何で死んだような目をしているの?
バチっ!
二人を見つめすぎてしまい、バーネット伯爵様と目が合ったような気がする。
いけない!気を付けないと。
離縁する時に、今後は私には関わらないということをバーネット伯爵様と殿下との間で約束をしたようなので、バーネット伯爵様も夫人も私の側には来ないし、話しかけて来ることもない。
でも、偶然にバーネット伯爵様が視界に入ってしまうことがあり、気をつけないと目が合いそうになる。
やはり…、伯爵様のあの目は何を考えているのか分からないから怖い。
しかし、それよりも厄介な人が私の身近にいるのよね。
「リア、今日の夜会でバーネット伯爵を見ていたよね?」
殿下は色々な人達に話しかけられて、忙しかったはずなのに、どうしてそのことに気付いているのかしら?
「バーネット伯爵ではなく、夫人が気になっただけですわ。」
「…本当?私は嫉妬深いからね。いくらリアが私の妻になったとしても、全然安心してないから。
伯爵と夫人の関係は、きっと最悪だろうから、夫人も傲慢に振る舞えるほどの元気はないだろう。
伯爵は平民に愛人がいるらしいし。」
「え…?愛人を囲っているのですか?」
「伯爵を見張っている影からはそう聞いている。
何でも、リアと同じ髪色で体型も似ているらしい。顔は全然似てないと聞いているけどね。
伯爵がどんな思いで愛人を抱いているのかと想像しただけで、狂いそうなほどに腹が立つが、愛人を持つなとは約束はしてないからね…。」
あの男はやはり狂っている…。
「殿下…、私はあの伯爵が憎いです。
だから殿下やエリザベス様が、私をあの男の所から助け出して下さったことに、心から感謝しておりますわ。
愛しています。私には殿下だけです…。」
殿下の表情が和らぐのが分かった。
「私もリアだけだ。ずっと好きだったし、諦めなくて良かった。
伯爵はこれからも見張り続けるから、リアは心配しなくて大丈夫だよ。
愛してる…。」
そのまま抱きしめられと思ったら、ベッドに連れていかれてしまった。
そんな毎日を過ごしていたからか、あっという間に妊娠してしまい、気付くと男の子二人に、女の子一人の三人の子供に恵まれていた。
エリザベス様や、ライアン様まで子供達を可愛がってくれるので、子供達は父も母も二人ずついると思い込んでいるかもしれない。でも私は、そんな家族だってあってもいいと思っている。
明るく元気で聡明なエリザベス様に、知的で落ち着いていながら、剣の達人でもあるライアン様。そんな二人を子供達はとても慕っていて、今日も子供達の笑い声が聞こえてくる。
こんな日々がずっと続きますように…。
おわり
これで完結になります。
最後まで呼んで下さってありがとうございました。
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