まだ20歳の未亡人なので、この後は好きに生きてもいいですか?

せいめ

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新しい生活

閑話 王太子妃 エリザベス

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 悪役令嬢やその息子の第一王子から、地味な嫌がらせを受けたり、死なない程度の毒を盛られたりしながらも、めげることなく必死に生きていた私は、貴族学園を卒業と同時に、スペン国に嫁ぐことになった。

 お父様はスペン国で私が困らないようにと、スペン国に駐在している大使を、お父様の息のかかった伯爵にしてくれたようだ。また、いざという時に私が使用できる隠し財産を沢山用意してくれたらしい。
 その他に、護衛も出来る有能なメイドを数人と、お父様の影を3人も私にくれた。

「エリー。お父様はエリーの幸せをずっと祈っているよ。愛してる。
 手紙を待っているからね。
 ライアン…、娘を頼む。」

「お父様…、私もお父様が大好き。愛してます。手紙書きますね。いつまでもお元気で。」

 私はこの時には、すっかりファザコン王女になっていたのだ。

「国王陛下。私の命に変えましても、王女殿下をお守り致します。」

「エリー。お母様はいつも、エリーを想っているわ。
 幸せになってね。
 つらい時は帰って来てもいいのよ。お母様はいつでもエリーの居場所でありたいのだから。」

 ハァー。普通の人の結婚なら出戻りは許されるだろうし、親からそんな風に言われたら、嬉しいのだろうけど…。
 私は国同士の政略で嫁ぐのだし、この国に出戻って来たら、悪役令嬢親子に殺されるわ!
 さすがヒロインね。娘の前でもブレないわ。
 お母様は最後までお母様だった…。

「お、お母様。この国の為にも、スペン国で頑張りますわね。
 お母様もどうかお元気で。大好きですわ。」

 悪役令嬢とその息子である異母兄には、サヨナラを言わずに出発した。
 私の最後のささやかな反抗だ。














 一週間程の船旅の後、私は無事にスペン国に到着していた。


 私の形だけの旦那様になる王太子殿下にも初めてお会いする。
 手紙のやり取りは何度もしていたから、何となく気付いてはいたけれど、殿下の顔を見てすぐに確信した。
 殿下の見た目は、乙女ゲームの世界の王子様らしく、キラキラのイケメンなんだけど、あの胡散臭い笑顔は、私の予想通り絶対に腹黒ね。
 大国の次期国王となる人物なのだから、腹黒なのは当然か。

 腹黒殿下には、根掘り葉掘り、色々話を聞く事にした。
 殿下の想い人にはいつ会えるのかとか、私はいつになったら離宮に引っ越せるのかとか色々…。
 しかし、殿下の表情が浮かない。
 えっ…?もしかして、フラれたとか?

「殿下。もしかして、恋人と別れてしまったのですか?」

「……付き合っていない。彼女は私をそんな目で見たことはないと思うし、彼女にはずっと会えてないんだ。」

「もしかして、片想いですか?」

「………。」

 えー!私の楽しいニートライフの実現のためにも、殿下には早く愛する人と結ばれて欲しいし、跡継ぎも早く作って欲しいのに…。


 私がこの国に来て1番初めに影達に命令したのは、暗殺や政敵の調査などではなく、殿下の愛する人の調査だった。


「エリザベス様。殿下の愛するお方ですが、殿下の学生時代の先輩で、とても優秀な方のようです。社交界の花と呼ばれる程にお美しい方とか。」

 美しくて優秀なのね!これは王妃の仕事の代行を頼めるじゃないの!

「しかしそのお方は婚約者がいたらしく、殿下は想いを伝えることは出来なかったようで、卒業してすぐに結婚されて伯爵夫人になったようです。」

「えー!人妻なの?不倫になってしまうじゃないの!」

「それが…、結婚して1年後くらいに、ご主人は事故で亡くなったとされて、実家の方に戻られたとか。」

「未亡人か。側妃なら問題ないわね。」

「今は、王妃殿下の紹介で、地方の商業都市の商家で働いているようです。」

「…商家で働く?何で?実家は貧乏なのかしら?」

「そんなことはなさそうですが、しばらくは貴族生活を離れたいと考えているとか。
 それと、その方は王妃殿下のお気に入りでもあるようです。」

「王妃殿下のお気に入りなら、すぐに後宮に迎えてしまえばいいのに…。何やってんのよ。」


 殿下は、とても厳しく強気に仕事を進めるようなお方のようだが、好きな人にはとても弱い男のようだった。私のお父様と一緒じゃないの。
 でもさ、こんなことをしているうちに、商家で恋人でもできちゃったらどうするのよ!

 そんな事を心配しているうちに、殿下と私の結婚式を迎え、私達は表向きは夫婦になった。
 勿論、殿下とは永遠に白い結婚だ。私にはライアンだけだからね。





 
 
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