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新しい生活

閑話 王太子妃 エリザベス

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 いくら実家の力で大好きな王太子殿下の婚約者になれたとはいえ、大好きな殿下の妻になるという夢を叶えるために、厳しい王妃教育を何年も頑張ってきたのだから、学園で運良く殿下の目についた、心の優しい、可愛いだけのヒロイン(私のお母様)に寵愛を奪われたら、そりゃー誰だってショックだろうし、憎いと感じると思うのよ。
 でもね…、悪いのは殿下(私のお父様)だからね。
 好きではなかったとしても、婚約者がいる身でありながら、他の女に心を奪われた男が悪い。
 2人の子供として偶然生まれてきただけの私は悪くないから!まあ、お母様にそっくりな見た目が面白くないのかもしれないけれど、子供に罪はないのよ。


 なのに…、悪役令嬢とその息子は何で私にここまでしてくるのよー!


 あの後、悪戯で私を池に突き落とした第二王子は、お父様が激怒して幽閉してしまった。
 罪状は殺人未遂。お父様はそれでも許すことが出来ず、毒杯を飲ませようかとまで言ったようだが、母である悪役令嬢とその父の公爵が泣きながら必死に謝ってきたらしい。

『実の妹を殺そうとまでした、お前そっくりな底意地の悪い王子など、私の息子ではない。身分剥奪の上、今すぐ処刑してやりたいくらいだ。』

 お父様はそこまで言ったとか。
 実際に私は死にかけて、数日間意識不明になって記憶喪失にまでなったからね。

 しかし、そこで心優しいヒロインのお母様は黙っていなかったらしい。

『陛下。どうか第二王子殿下をお助け下さいませ。
 誰でも過ちを犯すことはあります。まだ13歳の第二王子殿下に、処刑などあまりにも惨いことだと思いますわ。
 どうかご慈悲を…。』

 美しい涙を流しながら跪くヒロインに負けたお父様は、処刑をすることはやめたとか。

『側妃様は慈愛に満ちた素晴らしいお方でございます。』

 …と私の乳母が話していたが、違うから!
 私からしたら、ただの世間知らずのお人好しよ!
 そんなんだから、悪役令嬢にやられるんだよ。
 
 でもその後くらいから、地味に分かりにくい嫌がらせをされるようになってきた。
 
 ベッドの中に毛虫が入れられていて、全身に湿疹ができてしまったり、私の愛用の椅子が壊れるように細工してあったり、ドレスに針が仕込んであったり…。

 そして、悪役令嬢の息子の第一王子である異母兄は、明らかに私に対して、敵意剥き出しの目で見ている。
 弟が私のせいで幽閉されてさしまったことが面白くないみたいだし、未だに立太子されないことや、父である国王から愛されないのも私のせいだと思っているようだ。

 今はお父様がいるからいいけれど、お父様に何かあったら、私はすぐに消されるな。悪役令嬢か父公爵か、第一王子あたりに。
 そんな私は国外の王族に嫁ぐのがベストかもしれない。

 その日から私の人生の目標は、異世界版の国際結婚になった。
 この国よりも強い力のある国の王子との婚約が決まれば、私に簡単には手を出せないはず。
 そう考えた私は国際結婚できるように、勉学に励むことにした。外国語や外国の政治や文化などを学ぶために図書館に通う日々。
 しかし、図書館に通い始めてしばらく経つ頃、第一王子の手先らしき子息達に絡まれるようになる。


「いくら学をつけようとしても、王女殿下は血筋がよろしくないのですから、無駄なことは諦めて、降嫁先を探した方がいいのではないですか?」

「よろしければ、うちに降嫁します?王女殿下なら貰ってあげてもいいですよ。」

「いやいや。そんなことしたら、王子殿下に睨まれてしまうよ。
 うちは降嫁は無理でも、こっそり仲良くしてあげるくらいならいいですよ。」


 ムカつくー!こっちは生きるために必死なのに!
 お前ら誰だ?私の父ちゃんは国王なんだぞ!…とブチギレそうになった時だった。


「お前たち、年下の王女殿下を数人で侮辱しているが、そんな見苦しいことはやめるべきだ。
 王女殿下には国王陛下が護衛で影をつけているようだし、第二王子のしたことも、影に全て目撃されていたって話だ…。
 国王陛下は、王女殿下をとても大切になさっているから、お前たちのことも国王陛下の耳に入るかもしれないな。
 分かったら、さっさと立ち去れ!」

「何だって…?」

「行こうぜ!」


 それがライアンとの出会いだった。


 ライアンは私より5つ年上の侯爵家の三男らしい。三男で実家は継げないからと、文官か騎士として独り立ち出来るように、図書館で勉強していると教えてくれた。
 ライアンは図書館で会うと、勉強を教えてくれたり、話し相手になってくれたり、とにかくいい奴だった。


「ライアン、こうやって仲良くしてくれるのは嬉しいのだけれど、これが正妃様や第一王子殿下にバレたら、貴方まで嫌がらせをされるかもしれないわ。
 だから、人がいる時は離れていた方がいいと思うの。」


 こんな話をしているのに、ライアンは余裕そうだった。


「王女殿下。うちの侯爵家は割と力のある家門ですし、正妃様のご実家の公爵家とは派閥が違うので、元々仲がよくありません。今更、気にすることではないのです。
 それに、離れていては王女殿下をお守り出来ないでしょう?」


 私を見つめるライアンの目は優しくて、心が温かくなったような気がする。


「……ありがとう。ライアンがいてくれて嬉しい。」


 それからしばらくしてから知ったのだが、図書館で私に絡んできた第一王子の手先らしい子息達は、王宮への立ち入りが禁止され、第一王子の側近候補からも外されたと聞いた。

 

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