まだ20歳の未亡人なので、この後は好きに生きてもいいですか?

せいめ

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新しい生活

久しぶりのバーネット伯爵家

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 バーネット様と2人きりで馬車に乗ったのはいつぶりだろうか?
 私の隣に座ったバーネット様は、私の腰を抱き寄せてくる。


「…バーネット様?」

「リア、夫婦なのだからこれくらいは許してくれ。」


 行方不明になる前よりも、距離が近いような気がする。
 夫婦としてのスキンシップはあったが、人前で見せつけるように抱きしめてきたり、馬車の中でまでこんなにくっついて座ったりとかはなかった。
 何を考えているのか分からないし、前とは違ったことをするから、余計に警戒してしまう。


「リアが王太子殿下と仲が良いみたいで良かったよ。
 殿下の優秀な影が動いてくれたから、リアは助かったのだからね。
 殿下には感謝しないといけないな…。」

「ええ…。殿下とアンブリッジ公爵様には本当にお世話になっているのです。」


 私の話を笑顔で聞いてくれるバーネット様。
 しかし、気がついてしまった。バーネット様の目は全く笑っていなかったことに…。


「……!」

「…リア?どうかしたか?」

「い、いえ。バーネット様が怒っておられるように見えてしまったので、少し驚いてしまっただけですわ。」

「まあ…、怒ってはいるよ。大事な妻が危険に晒されたのだから当然だろう?
 私が守ることが出来なくて悔しかったのに、殿下やアンブリッジ公爵様に助けてもらったとリアは嬉しそうに話すものだからね…。
 私は嫉妬深い男なんだよ。」


 前はこんなことを話すような人ではなかったと思う。今更、本性をさらけ出すことにしたのかしら?


 馬車がバーネット伯爵家に着いたようだ。
 このバーネット伯爵家は王宮から馬車で10分くらいの一等地にある。
 今更だが、バーネット伯爵家はかなり裕福で力のある伯爵家であることを理解する。力のあるバーネット伯爵家だから、離縁を望んでも私の実家からの圧力はあまり効果はないし、他の家門も無視は出来ない家門でもあるのだ。

 こんなバーネット伯爵家の当主だから、あのスカル男爵令嬢は寝取ってやろうと考えたのかもしれない。
 見目麗しい資産家の伯爵様が、妻と上手くいってないと知り、私を嵌めてまで手に入れようとしたのだろう。

 この人が欲しいのなら、もっと上手くやって欲しかったわね…。
 スカル男爵令嬢が殿方からあそこまで評判が悪くなる程、異性関係にだらしなかったなんて知らなかった。だから以前は、可愛いとか恋人にしたいとか評判になっていたのに、最近はそんな話は全く聞かなかったのだろう。
 どんな方にも公平に接する真面目なアンブリッジ公爵様が、あそこまで嫌悪感をあらわにしていたのだから、相当すごい令嬢だったのね。


「…リア?追い詰めたような顔をしているけど大丈夫か?
 邸についたけど、具合が悪いなら抱っこするか?」

「だ、大丈夫ですわ。」

「そうか。」


 馬車を降りると、家令のダニエルが出迎えてくれた。


「ダニエル。リアが帰って来てくれたから、部屋の用意を頼む。
 それと疲れているから、湯の用意と夜食を頼めるか?」

「畏まりました。急いで準備致します。
 奥様、お帰りをずっと待っておりました。」

「ダニエル、元気そうで良かったわ。
 今夜はお世話になります。」


 ダニエルはバーネット様が一番信用している家令だ。
 私もダニエルには伯爵家のことを教えてもらったり、バーネット様が行方不明になった時は支えてもらったりと、とにかくお世話になった記憶しかない。


「リア、まずは湯に浸かって疲れを取ってくるといい。
 その後に一緒に夜食でも食べよう。」


 確かにあの近衛騎士に触れたれたりしたから、体を洗いたいわね。


「そうさせていただきますわ。ありがとうございます。」


 この邸で生活していた時にもお世話になっていた、馴染みのメイド達が湯浴みをしてくれた。


「奥様。寝る前ですので、こちらのドレスでよろしいでしょうか?」


 メイドが出してきたドレスは、私がこの邸で生活していた時に使っていた物だった。
 休日や夜間などに着ていた、ゆったりとしたシンプルなドレス。


「勿論よ。……まだ取っておいてくれたのね。」

「あの時、奥様は私物を処分して欲しいと言ってこの邸を出て行かれましたが、アドルフ様が処分せずに取っておくようにと命令されまして、奥様の物はそのまま取っておいてあるのです。」


 バーネット様の弟のアドルフ様が…。


「アドルフ様は今はどちらにいらっしゃるのかしら?」

「アドルフ様は子爵位を継いでから、別邸の方に引っ越されました。」

「そうなのね…。」


 バーネット様と2人きりの邸は気不味いから、アドルフ様もいてくれたら良かったのに…。そう思ってしまったことは内緒だ。


 
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