まだ２０歳の未亡人なので、この後は好きに生きてもいいですか？

新しい生活

貴方が憎い

　神官から、バーネット様と私は2人で話し合うべきだと言われてしまい、部屋で2人きりにされてしまった。

　何も話すことなんてないのに…。

　この人と2人きりで話す日が来るなんて…。今世ではもう絶対にないと思っていたのに。


「リア…。君に不憫な思いをさせてしまったことを謝りたいと思っていた。
　記憶喪失になって、大切な君のことを忘れていたなんて情けない…。本当に申し訳なかった。」

「いえ…。バーネット様も事故でお辛い思いをされたのでしょうから、謝罪は必要ありませんわ。
　バーネット様がご無事で良かったと思っております。」

「………。」

「……。」


　会話が途切れてしまった…

　

「せっかく君と2人になれたのに、沢山あり過ぎて何の話をしてよいのか分からないな。」

　だったら、私はそろそろ仕事に戻りたいのだけれど。
　そのことを言おうとした時…

「リア…。死後離婚が取り消されたら、すぐに君を迎えに行く。
　君はこんな大変な仕事はしなくていいし、私は子爵位を継承したら騎士団は辞めるつもりだ。領地経営だけで十分生活は出来るし、これからは夫婦の時間を大切にしたい。早く君との子も欲しいと思っているんだ。」


　この人は、全く私の話を聞いていないのね。

　それとも、ワザと聞かないようにしているのかしら…。


「バーネット様。私は貴方の所には戻りませんわ。
　死後離婚が取り消されて、また夫婦に戻らなければならないというならば、私は貴方とは離縁したいと思っております。
　私は別の生きる道を進んでしまいましたし、元々私は、貴方との結婚は全く望んでいなかったのです。
　貴方には他に愛した人がいたのではないですか？
　私のことなんて忘れて、その方の所に行かれてはどうでしょう？」

「私は絶対にリアと離縁はしない。
　君を裏切ったことは申し訳ないと思っている。でも、君以外に愛した人なんていない。これからの私の人生を捧げて、君に償っていきたいと考えている。」


　相変わらず、自分のことしか考えてないのね…


「そこに私の幸せはあるのでしょうか？」

「……君が幸せになれるように、私は努力するつもりだ。」

「私の幸せは私が決めます。貴方には決められません。
　私のこの気持ちは、どうすれば貴方に分かってもらえるのでしょうか？
　貴方の目の前で私が不貞をすれば、貴方は私の心の痛みを分かってくれますか？」

「…っ！そんなことを言うくらい私を憎んでいるのか？」

「ええ。私は貴方が憎い…。
　貴方との婚約期間中も結婚生活も、私は一度も幸せを感じたことはありませんでした。
　貴方の顔を見る度に、私はあの日の光景を思い出してとても辛いのです。
　貴方は自由に女遊びをしていたかもしれませんが、私は不誠実な貴方に縛られて、恋をすることすら出来なかった。
　許せないし、私の時間を返して欲しい。
　もうバーネット様とは関わりたくないのです。」


　ここまで言えばきっと諦めてくれるわよね？


　しかし…


「リア。君がいくら私を憎んでいても、嫌っていたとしても、君を手放すことは出来ないんだ…。
　諦めてくれ。」


　この人は狂っているの…？
　私の人生を何だと思っているのかしら。


「リア…、泣かないで欲しい。泣くほど私が嫌なのかい？」

「……っ。…はい。」

「ハァー。自分でも、何でここまでリアに拘るのかは分からないんだ。自分でも重い男だと思うよ。
　すまないな…。」


　そこまで言ったところで、バーネット卿がソファーからスッと立ち上がり、私の座るソファーにやって来た。

「リア？泣いている君を見てしまったら、私は君の夫として、すぐに君を慰めたいって思ってしまうんだよ。」


　何を言って？…え？


　ドサッ…


　私はソファーに押し倒されてしまっていた。