まだ20歳の未亡人なので、この後は好きに生きてもいいですか?

せいめ

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新しい生活

夜会にて 2

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 王太子殿下にエスコートされ、広間に出て行くと会場内が騒ついたような気がする。
 殿下が目立つということと、私は私で噂の人物だから仕方がないのかもしれない。

 殿下は、全くそんなことは気にしていないようで、柔らかい笑みを浮かべている。

「シャノン嬢。最近どうして裏庭に来てくれなかったのです?
 私はずっと貴女に会いたかった…。」

 そんな言葉をダンスを踊りながら囁かないで欲しい。間違えて足でも踏んでしまいそうだわ。
 みんなに注目されている中で踊るだけでもプレッシャーなのに。殿下って優しそうに見えて、実は少し腹黒なのかしら…。

「も、申し訳ありませんでした。」

「…何も言ってくれないのですか?
 貴女の元夫が生きて帰って来たから、彼の元に帰りたくなったとか?」

「それだけは絶対にあり得ませんわ!」

 相手は殿下なのに、つい強い口調になってしまった。

「……取り乱して申し訳ありませんでした。」

「私こそ申し訳ない。少し意地悪を言ってしまいました。
 最近シャノン嬢に会えなくて寂しかった時に、元夫が見つかったなんて聞いてしまったので、シャノン嬢は元夫のところに戻ってしまうのではと不安になってしまいました。」

 いつもの優しい口調の殿下に戻っていた。

「前にもお話したかもしれませんが、私達はただの政略結婚でしたし、私が望んだ結婚ではありませんでした。
 生きていて下さったことは、大変喜ばしいことだと思いますが、元に戻ろうなんて考えは全くありません。
 私は今の生活が幸せなのです。」

「それを聞いて安心しました。
 それと…、ワイラー侯爵令嬢が貴女に非礼な態度を取ったらしいですね。偶然、私の側近が目にしたようで、私に知らせてくれたのですが。
 あの女はエリザベスに対しても無礼を働くような人間でしてね…。勝手に私の側妃になるだとか周りに言いふらして困っていたのですが、急に騎士爵の男と真実の愛を貫くことになったらしいです。
 もう貴女には絡んで来ることはないと思うので安心して下さい。」

 あの日の出来事は殿下の耳に入っていたのね…。
 しかし、あのワイラー侯爵令嬢が騎士爵の人と真実の愛だなんて、本当に信じられないわ。

「ご心配をおかけしました。
 ですが、あのワイラー侯爵令嬢が真実の愛だなんて…、正直驚きました。」

「私の側妃になることを望んでいたのは、父侯爵ですから。娘を駒の一つと考えていたのだと思います。
 ワイラー侯爵令嬢は、前から護衛騎士とは仲が良かったらしいのですが、爵位を持たない騎士だからと、身分のことを悩んでたようです。
 騎士爵なら私でもすぐに与えることが出来るので、護衛騎士に爵位を与えることにしたのですよ。それによって、ワイラー侯爵令嬢は真実の愛を貫くことが出来たようです。」

 殿下がワイラー侯爵令嬢の愛する人に爵位を与えたってこと?驚きだわ。

「そうでしたか…。きっとワイラー侯爵令嬢は殿下に感謝しておられるでしょうね。」

「そうだと嬉しいですね。」

 会話しながら踊ったダンスは、すぐに一曲終わってしまった。

「シャノン嬢、私は諦めませんよ。」

 優しい表情から、一瞬で真顔になる殿下。

「それは……」

「シャノン嬢。貴女と踊りたがっている令息が沢山待ち伏せしているようなので、私が母上の所までエスコート致します。」

「は、はい。」

 そんな令息いないと思うけど、殿下に想いを寄せる令嬢たちには絡まれそうなので、殿下にエスコートしてもらうことにした。


「アメリア、素敵なダンスだったわよ。疲れたでしょうから、ミラとそこに座って何か食べて休みなさい。」

 王妃殿下にまで見られていたのね…。恥ずかしすぎるわ。

 王妃殿下がミラとお呼びになるのは、ヘミングウェイ伯爵夫人だ。2人で休憩してなさいってことらしい。
 こんな場ですら、休憩時間だけは気遣ってくれる王妃殿下。やはり私は、王妃殿下にずっとお仕えしたいと思ってしまう。

「シャノン様、王妃殿下がそこまで言って下さっているので、休ませてもらいましょうか。
 王宮のスイーツがとても美味しいですから、いただきましょう!」

「はい。ぜひ!」



 スイーツは美味しかったし、ヘミングウェイ伯爵夫人がここまで甘党の人なのも驚きだった。
 完璧美人って感じの夫人が、少女のように無邪気にスイーツを食べている姿になぜが癒される私。


「シャノン様、もし花摘みにいくなら今のうちに行ってきて下さいね。」

「はい。それでは席を少し離れさせて頂きます。」






 花摘みを終え、身嗜みをチェックし終わった後、会場に戻ろうとした時だった。
 
「シャノン伯爵令嬢。」

 窓の方から名前を呼ばれ振り向く。そこには、もう話をすることもないだろうと思っていたバーネット様がいた。

「忙しいのに、呼び止めてしまって申し訳ない。
 そんな顔をしないでくれ。
 ああ…、君は今日も美しいな。こんなにも愛しい妻を私は忘れてしまっていたなんて…。」



 この前、別れを告げたのに。どうして……


 今、私を愛しい妻って言った?

 
 驚く私にバーネット様はフッと微笑む。


「リア……。記憶が戻ったんだ。近々、君を迎えに行くよ。」


「………。」




 
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