まだ２０歳の未亡人なので、この後は好きに生きてもいいですか？

新しい生活

王妃殿下の侍女

　王都に戻った後、実家のタウンハウスで数日過ごした後に、王宮の寮に引っ越すことになった。

　お父様もお母様も、王妃殿下の侍女になるということをとても喜んでくれていた。

　王妃殿下の侍女とは、働く女性の中で最も名誉のある仕事だという認識らしい。縁談の話も沢山来るだろうし、結婚しなくても自分で稼いで生きていけると。

　もう無理に結婚はしたくない私としては、侍女として評価されるようにしっかりやりたいと思っている。

　せっかくのチャンスなのだから。


　王宮の寮は、普通に貴族用の豪華な部屋だった。私専属のメイドもいるようだし、何の不便もなさそうね…。

　荷物を運び込むのに一緒に来てくれた両親は、豪華な寮や部屋を見て安心していた。私が一人暮らしをするというのは、やはり心配であったようだ。
　寮の入り口には警備の騎士がいるから、安全面でも問題は無さそうだわ。

　王妃殿下の侍女になるのに、見すぼらしい格好は出来ないからと、両親は慌ててデザイナーを呼び付けて、沢山のドレスや靴、アクセサリーを注文してくれた。間に合わないので後日届けてくれるらしい。
　侍女らしく、あまり華美になり過ぎずに、品の良い上質なドレスと言って依頼しておいた。



　仕事の初日を迎える。


「シャノン様、お久しぶりね。お元気そうで何よりよ。
　貴女と一緒に働けることを楽しみにしていたから、嬉しいわ。」

　ヘミングウェイ伯爵夫人が、眩しいくらいの笑顔を向けてくれる。

「ヘミングウェイ伯爵夫人。この度は色々とお世話になりました。
　これからは、王妃殿下の侍女として、誠心誠意努めて参ります。ご指導の程どうぞよろしくお願い致します。」

　私の直属の上司兼・指導係は予想通り、ヘミングウェイ伯爵夫人だった。


　ヘミングウェイ伯爵夫人に連れられて、王妃殿下の執務室に入る。

　ハァー。緊張するわね……

　執務室に入ると、王妃殿下がわざわざ立ち上がって出迎えてくれる。慌ててカーテシーをする私。

「気を遣わないで楽にしてちょうだい。」

　顔を上げると、王太子殿下に似た美形の王妃殿下がいる。
　あの時からずっとお会いしてないけど、殿下は顔立ちは王妃殿下に似ていて、目や髪色は陛下なのね…。

「シャノン嬢、久しぶりね。商会長から色々聞いているわよ。仕事を覚えるのが早くて、すぐに即戦力になってくれたと話していたわ。
　せっかく楽しく仕事をしていたのに、急に呼び戻すようなことをしてごめんなさいね。」

「王妃殿下。私は王妃殿下のご慈悲に深く感謝しております。
　至らないところが沢山ある私でございますが、どうぞよろしくお願い致します。」

「よろしくね。貴女には期待しているわ。」


　私の仕事は王妃殿下の執務の補佐らしい。
　学生時代、文官試験を受けたかった私にとってはやりがいのある仕事だと思う。

　早く仕事を覚えて、信頼されるようになりたいわ。