まだ20歳の未亡人なので、この後は好きに生きてもいいですか?

せいめ

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新しい生活

恋人はいらない

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 普通にランチを食べ終わった後、花摘みから戻ると、待っていてくれているはずの支店長の姿が消えていた。

 あれ?支店長がいないわ…


「メアリー。支店長は急ぎの仕事があるからと、先に帰られた。支店長からは、私が君を送るように頼まれているから、私が送らせてもらうよ。
 君はゆっくり戻って来ていいと支店長が言っていたから、少しだけ、ホテルのガーデンでも見に行かないか?」

 支店長を目で探していたら、スコット様に声を掛けられる。
 わざわざ待っていてくれたのだろうけど、何だかお見合いみたいね…。

「では、少しだけ…。」

 スコット様にエスコートしてもらい、緑の綺麗なホテルのガーデンを歩く。
 護衛騎士は少し離れた所にいる。あの距離なら会話は聞こえないだろう。恐らく、私達が2人で会話出来るようにとの配慮なのだと思う。

「メアリーは、商会長の遠縁だと聞いた…。」

 表面上はそういうことになっているのよね。

「はい。」

「実はあの日、紅茶を運んできてくれたメアリーに、私は一目惚れをしてしまったようなんだ。気がつくと君の事ばかり考えている。
 身分的にも問題はないと思う。…私の恋人になってくれないか?」

 え…?

 人生で初めて告白された私は、頭の中が真っ白になってしまった。

「……あ、あの。大変申し訳ありません。
 お気持ちは嬉しいのですが、私はいずれは両親が決めた人と結婚しなければならない身なのです。
 ですから、スコット様のお気持ちにはお応えできませんわ。
 本当に申し訳ありません。」

 スコット様は謝る私をじっと見ている。

「私が嫌いで断っているわけではないのなら、私は簡単には諦めないよ。
 必要なら、君の両親に交際の許可をもらいに行くつもりだ。」

 困ったわ……。ここまで真剣に言われるなんて。
 未亡人だって打ち明ける?
 大金持ちの商会の跡取りなのだから、恋人が未亡人だなんてあり得ないわよね。
 何より、この方をそんな目で見たことはないし、今は恋人は要らない。

「スコット様。
 私は未亡人なのです。貴方様に私は相応しくありませんわ。
 それに…、私は恋人は欲しいとは思っていません。
 本当に申し訳ありません。」

「……亡くなったご主人が忘れられないのか?」

 普通はそう思うわよね。

 開放されて嬉しいなんて言えないし…。忘れられないってことにしておこうかしら。断るのにちょうど良い理由になるわね。

「…ええ。そうなのです。」

「そうか…。分かった。でも、私は諦めないよ。
 それに、恋人が無理なら友人になって欲しい。それなら良いだろう?」

「友人なら大丈夫ですわ。」

 でも諦めて下さい。

「…ありがとう。じゃあ、友人として仲良くして欲しい。」



 私は友人という関係を甘く見ていた。

 スコット様は、私の仕事終わりの時間に外で待っていてくれて、食事に誘ってくれたり、職場に差し入れのお菓子を届けてくれたり、ただの友人関係よりも距離が近いような気がする。
 悪いからこれで最後にして欲しいと言っても、友人なのだから気にしないでと言われてしまうのだ。
 
 友人か…。

 確かにエドガーとは友人として、食事やピクニックに行ったりして、時々、クロエも一緒だったりするから気楽な友人関係でいたけど、スコット様はエドガーのように気楽な友人関係になるのは難しいわね。
 少し年上で、お金持ちの商会の跡取りみたいだから、気を遣ってしまうわ。



 天気のいいある日。仕事中に買い出しに出かけた私は、紅茶のお店を目指して歩いていた。

「失礼!」

 後ろから声をかけられて振り向くと、旦那様そっくりの騎士様がいた。
 今日もお休みなのかしら。

「ご機嫌よう。」

「……。」

 呼び止めておいて、無言なの?

「…何か御用でしょうか?」

「言いにくいのだが…。うちの主人を弄ぶのはやめてくれないか?
 あの人は、君を本気で好いている。その気がないなら、ハッキリ言ってやってくれ。
 君は美しいから、いくらでも男が寄ってくるだろう?
 うちの主人はああ見えて真面目な人だから、君にのめり込み過ぎて、後で傷ついたりしないか心配なんだ。」


 この人は何を言っているのかしら……

 
 あ!この騎士様から見たら私は、大切な主人を誑かしている悪女に見えているということなのね…。

 私の事情なんて何も知らない貴方にそこまで言われてしまうなんて。

「大変申し訳ありませんでした。今後は近付かないように気を付けますわ。
 失礼致します。」

「…お、おい!」



 振り向かずに早々とその場を立ち去った。



 
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