まだ20歳の未亡人なので、この後は好きに生きてもいいですか?

せいめ

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新しい生活

また会ってしまった

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 また1週間が始まった。

 今日は、従業員のティータイムの時の紅茶やお菓子の買い出しのために、一人で街中を歩いている。

 まずは紅茶のお店に行こうか…。

 定期的に買いに来ているので、紅茶の味見をさせてくれるくらいに店の店主とも仲良くなってしまった。

「メアリーちゃん、新作の紅茶を淹れてあげるから、座って待っててくれ。」

「いつもありがとうございます。」

 私のお父様くらいの店主は、いつもこんな感じで美味しい紅茶を淹れてくれるのだ。
 店の隅には、小さなテーブルと椅子が置いてあり、いつもそこに座って紅茶をご馳走になっている。

 店主が淹れてくれた紅茶を楽しんでいると、別にお客様が来たようだ。

「いらっしゃいませ。」

「紅茶を探しているのだが……。」

「はい。茶葉の種類やブランドなど、何かお決まりですか?」

 店主とお客様のやり取りが聞こえてくる。

 お客様の声が……。気のせいかもしれないけど、旦那様の声に似ているような気もする。
 私…、疲れているのかしら、

 何となく気になり、お客様の方をチラッと見ると………。
 バチっと目が合ってしまった。

「………!」

 驚きのあまり、また固まってしまった。

「君は確か…、ヨーク商会の…。」

 そのお客様は、旦那様そっくりの護衛騎士だった。
 あの時のような騎士服ではなく、白いシャツに黒のスラックス姿。休日なのかもしれない。


 落ち着かないと…。よし。

「ご機嫌よう。騎士様はお買い物でしょうか?」

「ああ。休日で買い物に来たんだ。
 ……この前、君が淹れてくれた紅茶が美味しかったから、自分でも淹れてみたいと思って買いに来てみたのだが、紅茶の種類が分からないことに気付いた。何ていう種類か教えて貰えないか?」

 無表情だけど、何となく気不味そうに話す騎士様。
 旦那様と一緒で、この方も紅茶がお好きなのね。

「あの紅茶は、マリレーのダージリンですわ。」

「…ありがとう。
 店主、その種類は置いてあるか?」

「はい。こちらですね。」

「じゃあ、それの小さい缶をくれるか?」

「ありがとうございます。良かったら、味見をしていきますか?」

「味見?」

「すぐに淹れますので、あのお嬢様のテーブルの椅子にかけてお待ち下さい。」



 そして、私の目の前で騎士様が紅茶を飲んでいる。

 …このままいるのも辛いから、私はもう店を出よう。

「私は仕事中ですので、お先に失礼させて頂きますわ。
 ご機嫌よう。」

「…あ、ああ。今日は助かった。ありがとう。」

「失礼致します。」


 ハァー。何だか疲れたわ。わずか10分くらいの出来事だったのに。



 それから数日後。

「メアリー。今日のランチなんだが、急遽、フィール商会のスコット殿と会食することになったのだ。
 先方からメアリーもぜひ一緒にと声を掛けて頂いたのだが、大丈夫か?」

 正直断りたかった。

「私でよろしいのでしょうか?他に同伴するのに相応しい方が沢山いると思うのですが…。」

「メアリーと指名を受けているんだ。」

「メアリー、行って来なさいよ。フィール商会の人達、カッコよかったし、会食だから美味しいレストランに行くんでしょ?
 羨ましいわ!」

 私こそ、クロエのそのポジティブなところが羨ましいわよ…。

「分かりました。」

「助かるよ。悪いな…。」

 大事な取引先だから、しょうがないわよね。



 支店長と馬車に乗りやって来たのは、高級ホテルだった。
 だから…、勤務中に着替える時間をくれたのね。慌てて寮に帰って着替えを取りに行って来たから、少し疲れてしまったわよ。



 ホテルの中の高級レストランでコース料理を頂く。久しぶりにこんな食事を頂くわね。
 
 横に座るのは支店長。私の前に向かい合うように座っているのがスコット様で、その横には旦那様そっくりの護衛騎士が一緒に座って食事をしている。

 普通は護衛騎士は一緒には食べないはずなのだろうけど、スコット様が一緒にと声を掛けて座らせていたのだ。あまり危険な場所じゃないし、スコット様は気さくで優しい方のようだから、護衛騎士にも食事を勧めたのだろう。

「メアリーは、マナーが完璧で所作がとても美しいな。本当は高貴な身分の御令嬢なのではと疑ってしまうよ。」

 スコット様、笑顔で私に話を振らないで…。

「両親がマナーに厳しかっただけですわ。」

「そうだったのか!私の護衛のロイもこう見えて、すごく所作が綺麗なんだよ。」

 旦那様のそっくりさんは、ロイ様と言うのね。




 
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