まだ２０歳の未亡人なので、この後は好きに生きてもいいですか？

新しい生活

商会のパーティー 1

　隣国のフィール商会の方が連れていたのは、亡くなった旦那様そっくりの護衛騎士だった。

　でも、時間が経って冷静になってみると、背格好や顔は旦那様にそっくりだったけど、私を見ても無反応だったし、雰囲気は全く違うものだったように思う。

　旦那様は何を考えているのか分からなかったけど、表面的には穏やかで優しい人だった。
　あの護衛騎士は無表情で冷たそうな雰囲気だったと思う。護衛騎士だからあんな感じなのは当たり前なのかもしれないけれど、きっと他人の空似だわ。
　旦那様は亡くなったのだから…。

　この事を気にするのはやめよう。もう顔を会わせることはないのだろうし…。

　そう考えた私は、いつも通りに仕事をすることにした。


　その数日後、支店長からあることを告げられる。

「メアリー。フィール商会との大口の取引が決まったお祝いに、フィール商会長の別荘でパーティーを開くらしい。
　うちの商会からは、商会長や各支店長と秘書と、一般の従業員みんなで来て欲しいと招待を受けている。
　恐らく、フィール商会とうちの商会とで交流をしたいという考えなのだろう。
　メアリーも是非来て欲しいと名指しで声を掛けられているのだが、参加出来るか？」

「フィール商会とうちの従業員だけのパーティーでよろしいのでしょうか？」

「私はそう聞いている。」

「分かりました。名指しで招待されているのでしたら、参加させて頂きますわ。」

　名指しされたなら断れないわよね。
　貴族が来ないのなら参加しても問題はないだろう…。

「そうか！助かるよ。じゃあ、来週の週末だから、頼んだぞ。」

　支店長がホッとした顔をしていた。




　フィール商会とのパーティーは、新しい出会いがあるかもしれないと、若い独身女性たちで何を着ていこうかとか、髪型やメイクはどうしようかとかの話で盛り上がっている。

　勿論、クロエも張り切っている。
　クロエは友人は沢山いるのに、特別な人はまだいないらしい。

「メアリーは何を着て行くか決まった？今週末に一緒にドレスを見に行かない？」

　ドレスは3着持って来てはいるんだけど…。でも平民の人はどんなドレスを着るのか分からないから、一応一緒に見に行こうかしら。
　1人だけ違かったドレスを着て目立ちたくはないしね。

「ええ。私も何を着ていいか分からないから、クロエと一緒に行くわ！」

「メアリー、そんな風に言われたら、私が全身コーディネートしちゃうわよ！」

「ふふっ！お願いしちゃおうかしら。」



　週末、クロエと一緒に買い物に出かけた。ドレスのお店に行き、店員さんやクロエと一緒に選んだのは、夜空のような深い青のドレスだった。
　貴族が着る程豪華ではないが、シンプルで着やすいから気に入っている。
　クロエはベージュピンクのドレスで、可愛らしいクロエに良く似合っていた。
　髪やメイクは、寮の管理人をしているマダムが得意らしく、当日私が可愛くしてあげるわよと言ってくれたので、お願いすることに決めた。


　そして当日。マダムがハーフアップに編み込んで、メイクまでしてくれた。

「メアリーはそのままで十分綺麗だから、メイクは薄くしておいたわよ。」

「ありがとうございます。」

「楽しんで来なさいね。」



　今日は、エドガーが実家の馬車で迎えに来てくれることになっている。
　クロエは家の近くの友人に送ってもらうらしく、現地で会う予定だ。

　寮の前に行くと、すでに馬車が待っていてくれた。エドガーの姿も見える。

「……メアリー、綺麗だな。今日は悪い男に捕まらないように、私の側にいるようにして。」

「エドガーも貴公子みたいで素敵よ。今日はよろしくお願いしますわね。」

　久しぶりのパーティーだから、緊張するわね。