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第9章 新たな希望と変わる世界
第69話ー⑤ 捕らわれの獣たち 前編
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龍海と黒服の男はエレベーターに乗り、12階にやってきた。
「どういうつもりだ! 私だけ、優香たちと別室なんて――」
龍海は目の前にいる黒服の男を睨みながらそう告げる。
「あなたのお帰りをお待ちの方がいるという事です。さあこちらへ」
龍海がそう言われて入った部屋には、一人の男がいた。
「おかえり、龍海。僕の可愛い愛娘」
「お前は……」
「おやおや。飼い主のことを忘れてしまったのかい?」
ニヤリと笑いながら龍海にそういう男。
「忘れはしないさ。隼人……よくも私を騙してくれたな」
「騙すなんて人聞きの悪い! でも、湖畔の時は悪かったね。まさか研究所の連中に捕まるなんてさ」
そう言って鼻で笑う隼人。
「捕まったんじゃない、優香たちに助けてもらったのだ! それに命の恩人である魔女様にならともかく……もう私はお前に従う義理はないぞ!」
龍海の言葉を聞いた隼人は深い溜息を吐くと、
「……そうか。あいつらに余計なことを吹き込まれたようだな、龍海。まったく野良犬は、躾からちゃんとしてやらないといけないな。ああ。野良犬じゃなくて、野良ドラゴンか――?」
そう言いながら龍海に歩み寄る。そして隼人は龍海の前で立ち止まると、龍海の首をゆっくりと掴み、その首を強く握る。
「お前、な、にを――」
「龍化しなければ、お前はただの非力な少女だよなあ、龍海ぃ?」
狂気じみた視線を龍海に注ぎながら、ゆっくりと静かにそう告げる隼人。
「お前には選択肢が2つある。ここで死ぬか、それとも僕に従うか。そのどっちかだ。さあ、どうする?」
「あ、わた、しは――」
龍海はそう言いながら、隼人を睨んだままだった。
「そうか、そうか。お前はここで死にたいのか」
そう言って龍海の首を絞めている手の力をさらに強める隼人。
「ああゔぅぅ……」
「隼人様、それはやりすぎかと」
黒服の男は静かにそう告げる。
「何? もしかして、僕に逆らう気?? お前も恵里菜にしか従えないとかいうわけ??」
隼人は龍海の首を強く握りしめたまま、黒服の男に顔を向ける。
「そういうわけでは……ただ、ここでその少女を殺めてしまえば、『グリム』の連中に弱みを握られかねません」
「弱み……?」
そう言って黒服の男の方へ顔を向ける隼人。
「ええ。その少女がどれほど我々のことを話したのかわかりかねます。もしあなたのことを既に知り得ているのだとしたら、我々に不利な状況が生まれるかもしれません」
隼人は苦しそうな龍海の顔を見ながら、「ふーん」と呟く。
「少女殺害を公表され、そして総理の座から降ろされてしまえば、あなたの計画に支障が出るのではないですか?」
黒服の言葉を聞き、少し下を向いて考える隼人。そして、
「それもそうだな……はあ。捕まる前に龍海を回収すべきだったよ。まったく、ほたるはそういうところの機転が利かなくて困るね」
そう言って龍海を握っていた手を放す隼人。
「げっほ、げっほ――」
龍海は息苦しそうにせき込み、そして深呼吸をした。
「よかったね、龍海。君は命拾いをした。でも――」
隼人は龍海の顔面をじっと見つめて微笑むと、
「僕に従えないというのなら、君に自由はない」
冷酷にそう告げた。
「連れていけ。こいつは特別ルームに監禁だ」
「はい……」
そして黒服の男は龍海を抱き上げて、部屋の外へ出て行った。
「すまないね。でも仕方がないんだ。もう、恵里菜様はいないんだから――」
そう呟き、黒服の男は龍海を特別ルームへ運んでいった。
「どういうつもりだ! 私だけ、優香たちと別室なんて――」
龍海は目の前にいる黒服の男を睨みながらそう告げる。
「あなたのお帰りをお待ちの方がいるという事です。さあこちらへ」
龍海がそう言われて入った部屋には、一人の男がいた。
「おかえり、龍海。僕の可愛い愛娘」
「お前は……」
「おやおや。飼い主のことを忘れてしまったのかい?」
ニヤリと笑いながら龍海にそういう男。
「忘れはしないさ。隼人……よくも私を騙してくれたな」
「騙すなんて人聞きの悪い! でも、湖畔の時は悪かったね。まさか研究所の連中に捕まるなんてさ」
そう言って鼻で笑う隼人。
「捕まったんじゃない、優香たちに助けてもらったのだ! それに命の恩人である魔女様にならともかく……もう私はお前に従う義理はないぞ!」
龍海の言葉を聞いた隼人は深い溜息を吐くと、
「……そうか。あいつらに余計なことを吹き込まれたようだな、龍海。まったく野良犬は、躾からちゃんとしてやらないといけないな。ああ。野良犬じゃなくて、野良ドラゴンか――?」
そう言いながら龍海に歩み寄る。そして隼人は龍海の前で立ち止まると、龍海の首をゆっくりと掴み、その首を強く握る。
「お前、な、にを――」
「龍化しなければ、お前はただの非力な少女だよなあ、龍海ぃ?」
狂気じみた視線を龍海に注ぎながら、ゆっくりと静かにそう告げる隼人。
「お前には選択肢が2つある。ここで死ぬか、それとも僕に従うか。そのどっちかだ。さあ、どうする?」
「あ、わた、しは――」
龍海はそう言いながら、隼人を睨んだままだった。
「そうか、そうか。お前はここで死にたいのか」
そう言って龍海の首を絞めている手の力をさらに強める隼人。
「ああゔぅぅ……」
「隼人様、それはやりすぎかと」
黒服の男は静かにそう告げる。
「何? もしかして、僕に逆らう気?? お前も恵里菜にしか従えないとかいうわけ??」
隼人は龍海の首を強く握りしめたまま、黒服の男に顔を向ける。
「そういうわけでは……ただ、ここでその少女を殺めてしまえば、『グリム』の連中に弱みを握られかねません」
「弱み……?」
そう言って黒服の男の方へ顔を向ける隼人。
「ええ。その少女がどれほど我々のことを話したのかわかりかねます。もしあなたのことを既に知り得ているのだとしたら、我々に不利な状況が生まれるかもしれません」
隼人は苦しそうな龍海の顔を見ながら、「ふーん」と呟く。
「少女殺害を公表され、そして総理の座から降ろされてしまえば、あなたの計画に支障が出るのではないですか?」
黒服の言葉を聞き、少し下を向いて考える隼人。そして、
「それもそうだな……はあ。捕まる前に龍海を回収すべきだったよ。まったく、ほたるはそういうところの機転が利かなくて困るね」
そう言って龍海を握っていた手を放す隼人。
「げっほ、げっほ――」
龍海は息苦しそうにせき込み、そして深呼吸をした。
「よかったね、龍海。君は命拾いをした。でも――」
隼人は龍海の顔面をじっと見つめて微笑むと、
「僕に従えないというのなら、君に自由はない」
冷酷にそう告げた。
「連れていけ。こいつは特別ルームに監禁だ」
「はい……」
そして黒服の男は龍海を抱き上げて、部屋の外へ出て行った。
「すまないね。でも仕方がないんだ。もう、恵里菜様はいないんだから――」
そう呟き、黒服の男は龍海を特別ルームへ運んでいった。
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