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第7章 それぞれのサイカイ
第51話ー⑥ 俺たちの歌
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教室にて――。
授業開始時刻を超えたが、未だに教室に来ていないしおんに暁は不安に思っていた。
たまに朝寝坊をしてぎりぎりに来ることはあったけれど、時間を超えても来ないなんて――
「真一、しおんに何かあったとか聞いてないか?」
暁はいつも行動を共にしてる真一にそう尋ねたが、真一はタブレットから目を離さず、「さあ」とそっけなく答えた。
「そうか。真一が理由を知らないんじゃな……」
「あ! そういえば、早朝に何か叫んでいたような気がします」
まゆおは思い出したようにそう告げた。
「え!? もしかして何かあったんじゃないか?? 俺、ちょっと部屋に行ってみるよ!」
暁はそう言ってから、教室を出た。
「早朝に叫び声って……」
暁はそう呟きながら、廊下を早歩きで進んでいた。
しおんの能力は消失している。だから能力の暴走なんてことはないはずだ。でも例がないだけで、能力の再覚醒なんてこともあるんじゃないのか? もしそうだとしたら、しおんは――
そう思いながら、つい悪い想像をしてしまう暁。
「とにかく急ごう。何もないといいが……」
そして男子の生活スペース付近を通りかかった暁は、しおんが走ってくる姿を見つける。
「せ、先生! すみません! 寝過ごしました……」
「ああ、よかった! 何かあったんじゃないかって心配したんだぞ! まゆおが早朝に叫び声を聞いたって言うから」
そしてしおんは頭を搔きながら、
「あはは。実は徹夜で曲を作っていたんですよ。それで完成した時に、急に気が緩んでそのまま寝落ちして……」
申し訳なさそうな顔でそう答えた。
「曲? しかも徹夜でって……」
「実は真一のために、どうしても早く完成させたくて」
しおんは恥ずかしそうにそう答えた。
「真一のために?」
なんで急にそんな――?
暁はそんな疑問が頭に浮かんだ。
「はい。あいつ、急に熱が冷めたみたいになっちゃってて。だから俺の音楽を正面からぶつけたら、また熱くなるんじゃないかって思ったんですよ! だから――」
「ははは! そうだったんだな。しおん、お前は友達想いの優しいやつなんだな」
しおんが真一のことを大切なパートナーだと思っていることは知っていた暁だったが、自分が思っている以上にしおんが真一のことを想っているんだという事を知り、嬉しくて思わず笑みがこぼれていた。
「あはは。俺はただ、真一とずっと一緒に音楽をやりたいだけなんですよ。真一の音楽に対する気持ちは本物で、俺を熱くさせてくれるんです! だから真一とずっと一緒にいれば、絶対に世界一になれるって俺は確信しているんですよ!!」
しおんは右手で拳を作り、嬉しそうにそう言った。
そして暁はしおんのその言葉から、未来への可能性を感じた。
しおんと真一なら、本当に世界一のミュージシャンになれるんじゃないのか、と――。
「そうか。しおんがそう思っていれば、冷めた真一の心をまた熱くすることができると俺は思うよ。その想いは、きっと連鎖していくものなんだからさ」
「ははは。そうだといいですけどね!」
「それと俺は2人の歌には、大きな力があると思うんだよ。だからここで終わっちゃいけない。もっともっと多くの人たちに届けなくちゃな! 世界の舞台で演奏するしおんたちを見られる日が楽しみだ!!」
暁は笑顔でしおんにそう答えた。
「ありがとう、先生! そう言ってもらえて嬉しいです」
「ははは! 本当に期待するからな! でも、その前にお前はまだ学生なんだから、しっかりと勉強して卒業すること! いいな?」
「はーい」
「まったく……じゃあ教室に行こうか」
それから暁はしおんと教室に戻った。
授業開始時刻を超えたが、未だに教室に来ていないしおんに暁は不安に思っていた。
たまに朝寝坊をしてぎりぎりに来ることはあったけれど、時間を超えても来ないなんて――
「真一、しおんに何かあったとか聞いてないか?」
暁はいつも行動を共にしてる真一にそう尋ねたが、真一はタブレットから目を離さず、「さあ」とそっけなく答えた。
「そうか。真一が理由を知らないんじゃな……」
「あ! そういえば、早朝に何か叫んでいたような気がします」
まゆおは思い出したようにそう告げた。
「え!? もしかして何かあったんじゃないか?? 俺、ちょっと部屋に行ってみるよ!」
暁はそう言ってから、教室を出た。
「早朝に叫び声って……」
暁はそう呟きながら、廊下を早歩きで進んでいた。
しおんの能力は消失している。だから能力の暴走なんてことはないはずだ。でも例がないだけで、能力の再覚醒なんてこともあるんじゃないのか? もしそうだとしたら、しおんは――
そう思いながら、つい悪い想像をしてしまう暁。
「とにかく急ごう。何もないといいが……」
そして男子の生活スペース付近を通りかかった暁は、しおんが走ってくる姿を見つける。
「せ、先生! すみません! 寝過ごしました……」
「ああ、よかった! 何かあったんじゃないかって心配したんだぞ! まゆおが早朝に叫び声を聞いたって言うから」
そしてしおんは頭を搔きながら、
「あはは。実は徹夜で曲を作っていたんですよ。それで完成した時に、急に気が緩んでそのまま寝落ちして……」
申し訳なさそうな顔でそう答えた。
「曲? しかも徹夜でって……」
「実は真一のために、どうしても早く完成させたくて」
しおんは恥ずかしそうにそう答えた。
「真一のために?」
なんで急にそんな――?
暁はそんな疑問が頭に浮かんだ。
「はい。あいつ、急に熱が冷めたみたいになっちゃってて。だから俺の音楽を正面からぶつけたら、また熱くなるんじゃないかって思ったんですよ! だから――」
「ははは! そうだったんだな。しおん、お前は友達想いの優しいやつなんだな」
しおんが真一のことを大切なパートナーだと思っていることは知っていた暁だったが、自分が思っている以上にしおんが真一のことを想っているんだという事を知り、嬉しくて思わず笑みがこぼれていた。
「あはは。俺はただ、真一とずっと一緒に音楽をやりたいだけなんですよ。真一の音楽に対する気持ちは本物で、俺を熱くさせてくれるんです! だから真一とずっと一緒にいれば、絶対に世界一になれるって俺は確信しているんですよ!!」
しおんは右手で拳を作り、嬉しそうにそう言った。
そして暁はしおんのその言葉から、未来への可能性を感じた。
しおんと真一なら、本当に世界一のミュージシャンになれるんじゃないのか、と――。
「そうか。しおんがそう思っていれば、冷めた真一の心をまた熱くすることができると俺は思うよ。その想いは、きっと連鎖していくものなんだからさ」
「ははは。そうだといいですけどね!」
「それと俺は2人の歌には、大きな力があると思うんだよ。だからここで終わっちゃいけない。もっともっと多くの人たちに届けなくちゃな! 世界の舞台で演奏するしおんたちを見られる日が楽しみだ!!」
暁は笑顔でしおんにそう答えた。
「ありがとう、先生! そう言ってもらえて嬉しいです」
「ははは! 本当に期待するからな! でも、その前にお前はまだ学生なんだから、しっかりと勉強して卒業すること! いいな?」
「はーい」
「まったく……じゃあ教室に行こうか」
それから暁はしおんと教室に戻った。
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