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第2章 魔女たちの暗躍編

第6話ー⑨ 訪問者

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 都内某所、会議室にて――。

 キリヤたち以外の『グリム』メンバーは呼び出された意味もわからず、その場で待っていた。

「一体、何が始まるのだろうね」

 ゆめかは所長の隣でそう呟いた。

「わからない。でも、私たちはもしかしたらここから帰れないなんてことも……」
「ははは。確かに」

 それから会議室内は急に真っ暗になった。そして真っ白だった壁が、スクリーンとして映像を映し出す。

『初めまして、『グリム』の皆さん』

 真っ黒のワンピースを着た女性が首から下のみの姿で映し出されてそう言った。

 その声にはっとするゆめか。

「この声……」
「知っているのかい?」

 所長はゆめかの顔を見て、そう尋ねた。

「――ええ、忘れるはずもない。私が閉じ込められていた施設に来た女性の声。そして私の友人の心を奪っていた人」

 ゆめかはそう言って拳を握りしめた。

『今日は忠告のためにここへ呼んだの。私達『エヴィル・クイーン』は、あなたたち『グリム』に好き勝手なことはさせないってことを伝えるためにね』
「忠告……」

 所長は鋭い視線をスクリーンに向けた。

『うふふ。気をつけないと大切なものを失うことになるわよ。あ、そうそう。今、研究所がどうなっているか知っているかしら? 知らないわよね。特別に見せてあげましょう』

 スクリーンに映る女性がそう言うと画面が切り替わり、そこには見知らぬ少年少女たちと応戦するキリヤたちが映し出された。

「これは――!?」

 所長は目を見開き、その映像を見つめる。

『驚いたでしょ? さて、この子たちはどうなってしまうのでしょうね』

 そして画面は女性に切り替わり、

『あなたたちは子供たちを研究するための施設の人間でしょう。だからその役目を忘れないことね。じゃあ、またいつか会いましょ』

 そう言って映像はそこで途切れた。

「所長、急いで戻ろう。キリヤ君たちが心配だ」

 ゆめかは慌てながら、所長へそう告げる。

「あ、ああ、そうだな」

 それから所長たちは急いで研究所に戻っていった。


 ***


 とある議員の個室――。

 黒いワンピースを着た女性はソファに腰かけていた。

 そしてその部屋の扉がゆっくりと開くと――

「あら、もう少し遅いかと思ったわ」

 振り返ることもなく、女性はそう告げた。

「本当は予定通りなんだろう、恵里菜?」

 そう言って恵里菜の前に姿を現す声の主。

「そう呼ばれるのも懐かしいわね、篤志。いえ、今は『アンチドーテ』のドクターだったかしら」
「ははは。隼人は今日もお勤めかい??」
「ええ。あいつしか総理の変わりはできないもの」
「そうか」

 それから見つめ合う恵里菜と篤志。

「――友人との再会を喜びに来たってわけじゃないんでしょ」
「言わなくても君ならわかっているんじゃないのかい?」
「ええ、当然ね」
「そうか。じゃあ、さようなら。恵里菜――」

 そう言って恵里菜に手のひらを向ける篤志。

「うふふ。私をここで消しても、何も変わらないわ。だって私の意思は子供たちに引き継いだから」
「そうはさせないさ。私の子供たちが、君の陰謀を打ち砕くから」
「そう。それは楽しみ――」

 そして恵里菜は笑顔を作ったまま、姿を消した。

「残念だよ、恵里菜。私は……僕は君と――」

 篤志はそう呟き、顔を伏せた。そしてゆっくりと顔を上げると、

「さて、私も行こう。子供たちのもとへ」

 そう言って部屋を出るために扉の方へ身体を向けた。すると、

「――君は?」

 篤志は部屋の隅で怯える少年を見つけた。そして目の前まで歩み寄り、少年と同じ高さになるように座る。

「独りぼっちなら、私のところへ来ないか? 大丈夫、私は君の味方だよ」

 そう言って篤志は、少年に手を差し出す。すると、少年はその手を取り、微笑んだ。

「じゃあ行こうか、我が家に」

 そして篤志は少年を連れて『アンチドーテ』の基地に戻っていった。
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