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第2章 魔女たちの暗躍編
第3話ー⑬ 毒リンゴの力
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――移動中の車内にて。
今日は慎太と何をしようかなと考えながら、キリヤはニコニコと笑っていた。
「最近、やけに楽しそうだよね」
優香は隣に座るキリヤの方を真顔で見て、そう告げた。
「そ、そうかな? 僕はいつも通りだと思うけど」
「そう。君がそう思うなら、それでいいけど。でも間違えないでね」
優香の言葉にキリヤは首をかしげる。
「え、それって何のこと……?」
「私たちのやるべきことだよ。君がどうしようと君の勝手だけど、でも目的だけは見失わないようにね」
「……わかってるよ」
キリヤはそう言って、優香から目をそらした。
僕のやるべきこと、それは能力者を救うこと。そんなことはわかっているつもりだ。でも……少しくらいは僕もこの時間を楽しみたい。そう、ほんの少しだけ――
そして移り行く景色を見つめながら、キリヤは慎太の言った言葉を思い出していた。
『これからもずっと友達でいてくれる? もしキリヤ君がこの街を離れることになっても』
もう少しだけ……本当にもう少ししたら僕のやるべきことをちゃんとやるから。だから今だけは――
そう思いながら、キリヤは外の景色を黙って見つめていたのだった。
翌日、再びキリヤたちはあの街へ。
キリヤはいつものように午前中は一人で街の調査。そして午後からは慎太と合流して『キキ』という少女を探した。
「どこにもいないね」
「もしかしてもうこの街にはいないかもしれない」
「そっか……」
そう言って落ち込む慎太。
「ま、まあまたいつか会えるって! そんなに気を落とさないでよ!」
「うん。でもさ、もしそうだとしたら、キリヤ君はもうこの街に来る理由が無くなっちゃうわけだよね」
「あ……そうなるね」
「それがなんだかさみしいというか。せっかく仲良くなって毎日会っていたのに、この日常が無くなるのが寂しいなって」
慎太はそう言って俯いた。
僕だって、このまま慎太と一緒に居たいよ――
「……ねえ、慎太。慎太が良ければ、この街を一緒に出ない?」
「え、駆け落ちってこと!?」
「そうじゃなくて!! うーん。話せば長くなるというか……。とりあえず慎太の気持ちを聞かせて!」
キリヤがそう言うと、慎太は「うーん」とうなって考えていた。
「どうなの?」
「そりゃ、ここから出てキリヤ君とずっと一緒にいられたらうれしいけど……でもそんなことできるわけ――」
「そっか。ありがとう。慎太の了承は得られたし、あとは僕の上司と慎太の両親が納得したら、慎太はこの街を出られるよ!」
キリヤが笑顔でそう言うと、
「え、どういうこと?」
慎太はきょとんとしてそう答える。
「今はまだ話せない……かな。でも話がまとまったらすべてを話すから!!」
キリヤがそう言うと、慎太は一度首をひねってから「わかった」と笑顔で返した。
これで慎太を保護できる。そうしたら、もう安全だ。そして僕たちはこれからもずっと友達でいられるんだね――
「じゃあそろそろいい時間だし、今日はこれで……また明日ね、慎太」
「うん! また!!」
そしてキリヤは慎太と別れたのだった。
慎太と別れたキリヤはいつもの優香との集合場所へと向かう。すると、その途中でキリヤは優香と鉢合わせたのだった。
「こんなところでどうしたの、優香?」
「よかった! 実はこの近くで能力者が暴走しているって報告があってね。キリヤ君は何か知らない?」
「え……僕は何も」
「そっか! じゃあとりあえず急ごう! 繁華街の路地裏だって!」
『繁華街の路地裏』というワードが妙に引っ掛かるキリヤ。
慎太と初めて会ったのも、繁華街の路地裏だったよね――
「まさか、ね……」
そしてキリヤは優香と共に暴走している能力者の元へと向かったのだった。
今日は慎太と何をしようかなと考えながら、キリヤはニコニコと笑っていた。
「最近、やけに楽しそうだよね」
優香は隣に座るキリヤの方を真顔で見て、そう告げた。
「そ、そうかな? 僕はいつも通りだと思うけど」
「そう。君がそう思うなら、それでいいけど。でも間違えないでね」
優香の言葉にキリヤは首をかしげる。
「え、それって何のこと……?」
「私たちのやるべきことだよ。君がどうしようと君の勝手だけど、でも目的だけは見失わないようにね」
「……わかってるよ」
キリヤはそう言って、優香から目をそらした。
僕のやるべきこと、それは能力者を救うこと。そんなことはわかっているつもりだ。でも……少しくらいは僕もこの時間を楽しみたい。そう、ほんの少しだけ――
そして移り行く景色を見つめながら、キリヤは慎太の言った言葉を思い出していた。
『これからもずっと友達でいてくれる? もしキリヤ君がこの街を離れることになっても』
もう少しだけ……本当にもう少ししたら僕のやるべきことをちゃんとやるから。だから今だけは――
そう思いながら、キリヤは外の景色を黙って見つめていたのだった。
翌日、再びキリヤたちはあの街へ。
キリヤはいつものように午前中は一人で街の調査。そして午後からは慎太と合流して『キキ』という少女を探した。
「どこにもいないね」
「もしかしてもうこの街にはいないかもしれない」
「そっか……」
そう言って落ち込む慎太。
「ま、まあまたいつか会えるって! そんなに気を落とさないでよ!」
「うん。でもさ、もしそうだとしたら、キリヤ君はもうこの街に来る理由が無くなっちゃうわけだよね」
「あ……そうなるね」
「それがなんだかさみしいというか。せっかく仲良くなって毎日会っていたのに、この日常が無くなるのが寂しいなって」
慎太はそう言って俯いた。
僕だって、このまま慎太と一緒に居たいよ――
「……ねえ、慎太。慎太が良ければ、この街を一緒に出ない?」
「え、駆け落ちってこと!?」
「そうじゃなくて!! うーん。話せば長くなるというか……。とりあえず慎太の気持ちを聞かせて!」
キリヤがそう言うと、慎太は「うーん」とうなって考えていた。
「どうなの?」
「そりゃ、ここから出てキリヤ君とずっと一緒にいられたらうれしいけど……でもそんなことできるわけ――」
「そっか。ありがとう。慎太の了承は得られたし、あとは僕の上司と慎太の両親が納得したら、慎太はこの街を出られるよ!」
キリヤが笑顔でそう言うと、
「え、どういうこと?」
慎太はきょとんとしてそう答える。
「今はまだ話せない……かな。でも話がまとまったらすべてを話すから!!」
キリヤがそう言うと、慎太は一度首をひねってから「わかった」と笑顔で返した。
これで慎太を保護できる。そうしたら、もう安全だ。そして僕たちはこれからもずっと友達でいられるんだね――
「じゃあそろそろいい時間だし、今日はこれで……また明日ね、慎太」
「うん! また!!」
そしてキリヤは慎太と別れたのだった。
慎太と別れたキリヤはいつもの優香との集合場所へと向かう。すると、その途中でキリヤは優香と鉢合わせたのだった。
「こんなところでどうしたの、優香?」
「よかった! 実はこの近くで能力者が暴走しているって報告があってね。キリヤ君は何か知らない?」
「え……僕は何も」
「そっか! じゃあとりあえず急ごう! 繁華街の路地裏だって!」
『繁華街の路地裏』というワードが妙に引っ掛かるキリヤ。
慎太と初めて会ったのも、繁華街の路地裏だったよね――
「まさか、ね……」
そしてキリヤは優香と共に暴走している能力者の元へと向かったのだった。
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