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第2章 魔女たちの暗躍編

第3話ー⑩ 毒リンゴの力

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 翌日、キリヤたちは再びこの街を訪れた。

 昨日同様、キリヤたちは分かれてそれぞれの問題の解決にあたった。

 午前中のキリヤは、慎太から聞いた手掛かりを頼りに『キキ』と呼ばれる少女を探した。

「確か路地裏で出会ったって慎太は言っていたよね。だったら路地裏を中心に探せば、もしかしたら……」

 そんなことを言いながら、キリヤは街中の路地裏を周る。しかし、どこを探しても『キキ』には出会えなかった。

「優香の調査と同じで、同じ地域をターゲットにしているわけじゃないにかもしれない。そう考えると、このあたりを探しても無意味なのかな」

 でももし慎太が本当に『ポイズン・アップル』を埋め込まれているのなら、どこかで様子を窺っている可能性もある、か――。

 そうだとしたら、闇雲に街中を探し回るより慎太と行動する方が『キキ』と会う確率は高まるんじゃないかとキリヤは思った。

「よし。とりあえず今日も慎太と合流しよう」

 きっと何か手掛かりが掴めるはずだ。

 そしてキリヤは昨日慎太と別れた場所へ向かった。



「さすがにここでは会えないだろうから、どうにかして探し出すしかないよね」

 そんなことを呟きつつ、キリヤは昨日慎太と別れた場所を徘徊していた。

 時刻は午後3時。そろそろ慎太も帰宅していてもおかしくはない時間だ。偶然会えればラッキーだけど、僕はそんなに幸運な方ではないからな――。

「はあ。昨日、連絡先を聞いておくべきだったよね……」

 昨日の自分に後悔しつつ、キリヤは慎太を探した。

 そして昨日立ち寄ったハンバーガーショップでの会話をふと思い出す。

 ――ここのお店は結構好きなんだ。だからよく来るかも!

「そうだ! あのバーガーショップにいるかもしれない!!」

 それからキリヤは昨日訪れたバーガーショップへ向かった。



 バーガーショップ前。

「ここにいるといいけど……」

 そしてキリヤはガラス張りの自動扉の中へ入っていく。

「いらっしゃいませー♪」

 今日も甲高い女性の接客が聞こえた。

 そして店内は学生や小さな子供連れの母親たちが楽しそうに食事をしているようだった。

 それからキリヤは注文カウンターには向かわず、店内を回る。すると――

「あれ、キリヤ君?」

 聞きなれた少年の声が聞こえた。

「慎太!! やっぱりここにいた!!」

 キリヤは目当ての慎太を見つけて、ほっとしたのだった。

「奇遇だね! 休憩しに来たの?」
「うーん。まあそんなところかな?」

 まさか調査のために慎太を探していたなんて言えないよね――

「そっか! また会えて嬉しいよ! こっちで一緒に食べよ!」
「う、うん!!」

 そしてキリヤは慎太の正面に座る。

「まだ、注文していないんだね? 僕はここで待ってるけど、キリヤ君はひとりで注文行ける?」
「うーん。……頑張ってみる」

 キリヤはそう言って立ち上がり、注文カウンターへと向かった。

 これも仕事だと思えば! きっと、きっと大丈夫のはず。昨日一回見ているんだし、僕ならできるよね――。

 そんなことを思いながら、注文の列に並ぶキリヤ。

「これをクリアしないと、慎太と相席ができない。そうなると、せっかく慎太を見つけた僕の苦労が……」

 キリヤは決意したようにぐっと拳を握り、頷く。

 きっと僕ならできる。だって僕はもう子供じゃないんだから――。

 キリヤはそうは思いつつも、緊張で鼓動が早くなっていた。

 キリヤがカウンターの前に立つと販売員の女性が満面の笑みを向けて、

「いらっしゃいませぇ! ご注文は何に致しますかぁ?」

 甲高い声でキリヤにそう告げる。

「え、っと……」

 たくさんあるメニューを見ながら、キリヤは自分が言いやすそうなバーガーを選んだ。

「こ、このダブルチーズバーガーをください」

 キリヤが恐る恐る告げると女性は笑顔を崩さず、

「はい。ダブルチーズバーガーですねぇ! 単品ですか? セットにしますか?」

 再びキリヤに質問を飛ばす。

「ええっと……じゃあセットで」
「はい。ダブルチーズバーガーセットですね! サイドメニューは何にされますかぁ?」
「サ、サイドメニュー!? えっと……」

 キリヤが困っていると、販売員の女性は、

「サイドメニューはこちらですね! ポテトのセットとサラダのセット、チキンナゲットのセットがあります!」

 丁寧に笑顔で教えてくれた。

「ありがとうございます。じゃあポテトのセットで……」
「では、今度はドリンクをお選びください! ちなみにドリンクはこちらからお選びいただけます!」

 キリヤが初心者であることを察したのか、丁寧にドリンクメニューの説明をする女性。その女性の名札には『斎藤』と書いてあることを確認するキリヤ。

 ――ありがとう、斎藤さん。

 キリヤは心の中でそんなことを思いつつ注文を終え、商品配達用のナンバープレートをもらい慎太の元へと帰っていった。

「お疲れ様! ずっと見ていたけど、頑張ったね!」

 そう言って、腹を抱えて笑う慎太。

「それ、褒めてるの? けなしてるの?」
「両方かな? ははは!」

 そう言って笑う慎太に、キリヤは少しだけむっとするのだった。

 そしてそんなキリヤの顔を見た慎太は、また腹を抱えて笑っていた。

「そんなに笑うなよー!! ははは」

 慎太の笑いにつられ、キリヤも自然と笑いがこみ上げていた。

 ――なんだろう、この感覚。今まで味わったことがないくらい、心地いいな。

 キリヤはそんなことを思いながら、慎太と笑いあっていたのだった。

 そしてそれからしばらくして、キリヤが初めて1人で注文した『ダブルチーズバーガーセット』が運ばれてきた。

「これが!! 僕の、初めての!!」

 キリヤは感動しながら、そのバーガーを噛みしめたのだった。
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