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第2章 魔女たちの暗躍編
第2話ー② 眠り姫との再会
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「それで? キリヤ君たちはなんでこんなところに?」
いろはは歩きながら、キリヤにそう問いかける。
「まあ、仕事というか……」
「そっか! そういえば、仕事って何をしているんだっけ?」
「あ、そこからか……えっとね」
キリヤはいろはに、研究所で働いていることを明かした。
そして今は『ポイズン・アップル』の情報収集として、いろはの暮らす施設にやってきたことを伝える。
「そうだったんだね。なんか大変だねぇ」
いろははキリヤの話を聞くと「うんうん」と頷きながら、そう言った。
「そういういろはは、元気にしてた? 保護施設を出て2年になるけど、寂しくはない?」
「寂しくないといえば、ウソになるかな。寂しいよ。だってあそこにいた時はみんながいたからね……」
そう言って悲し気な表情をするいろは。
「でもさ、みんなを守るためには、これが一番だったって思うから!」
いろははそう言って、キリヤたちに笑顔を向けた。
「そっか……」
いろはがなぜこんな思いをしなければならないのか――。
キリヤはそれがとても悔しかった。
いろはは何もしていない。ただ巻き込まれただけなのに、一人でこんなところに連れてこられて……早くこの件を解決して、いろはには自由になってもらいたい――。
キリヤはそう思ったのだった。
それからキリヤたちはいろはの暮らしている施設にたどり着いたのだった。
「施設と言うよりは――」
「そうだね」
キリヤと優香はその建物を見て、目を丸くした。
「ははは……アタシも初めて見た時は驚いたよ」
それは木造できている建物で、日本の古き良き時代を醸し出していた。瓦の屋根に玄関の引き戸、廊下から覗くふすまや畳など。キリヤは見たことのないその造りに興味津々になる。
「じゃあ、こっち!」
キリヤたちはいろはに続いて、建物中に入っていく。
その中は畳のいい香りが漂っていた。
「これが、畳のにおい……」
キリヤはそう言って、思いっきり息を吸い込む。
「花咲さんの部屋からも似たような香りがしますね」
「へえ。そうなんだ……」
キリヤたちがそんな会話をしている中、いろははどんどん先に進んでいた。
「ほら! 二人共! 置いて行くよー」
「あ、うん。ごめん!」
そしてキリヤたちはいろはの元へと急ぐ。
「じゃあ、こっち」
そう言っていろはが指さした場所は、格子のついた引き戸。
「ただの引き戸、だよね? 何か特別な造りになっているの?」
「この扉は防犯用で簡単には開かないようになっております!」
いろはは自慢げにそう語っていた。
「防犯用……?」
いろははそう言うが、どう見ても防犯上安心とは思えないくらい普通の格子引き戸だとキリヤはそう思った。
キリヤが頭をひねらせていると、優香が黙ってその扉に近づき、そっとそれに触れる。
「そういうことか……」
「優香?」
優香は顎に手を当てて考えるしぐさをしていた。
何かに気が付いたのかな――。
そんな優香の様子をいろはは楽しそうにニコニコしながら見ていた。
状況が理解できないキリヤは、頭上にクエスチョンが飛んだままだった。
「一体なんだって言うわけ?」
キリヤはそう言いながら、引き戸をそっと引く。
「あれ……開かない。というか動かない? なんで!?」
しかもただの引き戸じゃなくて、重みを感じる。これじゃまるで――
「これ、鉄製の扉ですよね。そしてこれを開けるためには、引くのではなく……」
そう言って優香はしゃがみこみ、扉の下に手を掛けて、思いっきり上に持ちあげる。
「正解! さすがは、優香ちゃんだね!」
そして優香が扉を持ちあげたことにより、先の廊下が露出した。
「ありがとうございます」
優香は微笑みながら、いろはにそう伝えた。
「こんなに重そうな鉄扉なのに、軽々と――」
キリヤがそう呟くと、いろはと優香から鋭い視線を感じた。
「ごめんなさい……」
女子って怖いな――
キリヤはそう思いながら、いろはの後に続いて先に進んで行ったのだった。
いろはは歩きながら、キリヤにそう問いかける。
「まあ、仕事というか……」
「そっか! そういえば、仕事って何をしているんだっけ?」
「あ、そこからか……えっとね」
キリヤはいろはに、研究所で働いていることを明かした。
そして今は『ポイズン・アップル』の情報収集として、いろはの暮らす施設にやってきたことを伝える。
「そうだったんだね。なんか大変だねぇ」
いろははキリヤの話を聞くと「うんうん」と頷きながら、そう言った。
「そういういろはは、元気にしてた? 保護施設を出て2年になるけど、寂しくはない?」
「寂しくないといえば、ウソになるかな。寂しいよ。だってあそこにいた時はみんながいたからね……」
そう言って悲し気な表情をするいろは。
「でもさ、みんなを守るためには、これが一番だったって思うから!」
いろははそう言って、キリヤたちに笑顔を向けた。
「そっか……」
いろはがなぜこんな思いをしなければならないのか――。
キリヤはそれがとても悔しかった。
いろはは何もしていない。ただ巻き込まれただけなのに、一人でこんなところに連れてこられて……早くこの件を解決して、いろはには自由になってもらいたい――。
キリヤはそう思ったのだった。
それからキリヤたちはいろはの暮らしている施設にたどり着いたのだった。
「施設と言うよりは――」
「そうだね」
キリヤと優香はその建物を見て、目を丸くした。
「ははは……アタシも初めて見た時は驚いたよ」
それは木造できている建物で、日本の古き良き時代を醸し出していた。瓦の屋根に玄関の引き戸、廊下から覗くふすまや畳など。キリヤは見たことのないその造りに興味津々になる。
「じゃあ、こっち!」
キリヤたちはいろはに続いて、建物中に入っていく。
その中は畳のいい香りが漂っていた。
「これが、畳のにおい……」
キリヤはそう言って、思いっきり息を吸い込む。
「花咲さんの部屋からも似たような香りがしますね」
「へえ。そうなんだ……」
キリヤたちがそんな会話をしている中、いろははどんどん先に進んでいた。
「ほら! 二人共! 置いて行くよー」
「あ、うん。ごめん!」
そしてキリヤたちはいろはの元へと急ぐ。
「じゃあ、こっち」
そう言っていろはが指さした場所は、格子のついた引き戸。
「ただの引き戸、だよね? 何か特別な造りになっているの?」
「この扉は防犯用で簡単には開かないようになっております!」
いろはは自慢げにそう語っていた。
「防犯用……?」
いろははそう言うが、どう見ても防犯上安心とは思えないくらい普通の格子引き戸だとキリヤはそう思った。
キリヤが頭をひねらせていると、優香が黙ってその扉に近づき、そっとそれに触れる。
「そういうことか……」
「優香?」
優香は顎に手を当てて考えるしぐさをしていた。
何かに気が付いたのかな――。
そんな優香の様子をいろはは楽しそうにニコニコしながら見ていた。
状況が理解できないキリヤは、頭上にクエスチョンが飛んだままだった。
「一体なんだって言うわけ?」
キリヤはそう言いながら、引き戸をそっと引く。
「あれ……開かない。というか動かない? なんで!?」
しかもただの引き戸じゃなくて、重みを感じる。これじゃまるで――
「これ、鉄製の扉ですよね。そしてこれを開けるためには、引くのではなく……」
そう言って優香はしゃがみこみ、扉の下に手を掛けて、思いっきり上に持ちあげる。
「正解! さすがは、優香ちゃんだね!」
そして優香が扉を持ちあげたことにより、先の廊下が露出した。
「ありがとうございます」
優香は微笑みながら、いろはにそう伝えた。
「こんなに重そうな鉄扉なのに、軽々と――」
キリヤがそう呟くと、いろはと優香から鋭い視線を感じた。
「ごめんなさい……」
女子って怖いな――
キリヤはそう思いながら、いろはの後に続いて先に進んで行ったのだった。
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