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第2章 魔女たちの暗躍編
第1話ー② 途絶えない未来
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帰宅した剛は、部屋のベッドの上に寝転んだ。
いつものベッド、いつもの部屋のはずなのになぜかしっくりこないと感じる剛。
なんだか違うんだよな。いつもと何かが違う気がする――そう思う剛だったが、やっぱりその理由はわからなかった。
「なんなんだ……? 俺はいったいどうしたって言うんだよ」
ため息交じりにそんなことを呟く剛。
でもこの状況、前にあったような――?
剛はそう思いつつも、その状況を思い出せなかった。
「ま、気のせい……かな」
そうして剛はベッドに顔をうずめる。
「俺、何か大切なことを忘れているような気がするんだよな……それに、なんだか嫌な予感が――」
剛がそう思った時、消防車のサイレンが外から聞こえた。
「サイレン? それに嫌な予感が当たって……」
そしてこの消防車が向かう先を剛はなんとなく知っていた。
「行ってみよう。きっとこの嫌な予感だって、何かの気のせいだ!」
それから剛はその消防車を追うように家を出て、嫌な予感のするその場所へと向かった。
そしてその場所にたどり着いた剛は呆然とする。
「やっぱり……」
猛々と燃え盛る炎。そしてその周りには、多くのギャラリーの姿。
この後、母親が泣き叫びながら出てくる――
「離してください!! まだ……まだ家の中に子供が!!」
剛の思った通り、泣き叫びながら消防官に肩を支えられつつ出てくる女性がいた。
この人はアカネの母さんだ――。
剛は冷静にそう思い、アカネの母を見つめていた。
「落ち着いてください!! 今、助けに向かいますから!!」
消防官はなだめるように、アカネの母にそう告げた。
ダメだ……この家はもう――
そして消防官が突入準備をしていると、そこにあった建物は崩れ落ちた。
「アカネ!! アカネえええええ!!」
そこには焼け崩れた家に残る炎の燃える音とアカネの母の悲痛な叫び声だけが聞こえていた。
それを見ていた剛は、足が震えて動くことができず、その場で立ち尽くすしかなかった。
なんで俺はこうなることを知っていた――?
その恐怖と目の前で起こった出来事に剛は動揺していた。
そして炎が鎮火されたあとアカネの死体は、その焼け跡から出てきた。
「困ったら助けるって、何でも頼ってくれって言ったのに、俺はまた何もできなかったのか……」
しかし剛はアカネの死を知っても、涙が出てこなかった。
これは初めてじゃない。前に一度、同じことが……もしかして、これは俺の記憶――?
ふとそんなことを思う剛。
それから今回の火事はアカネの父が吸いかけのたばこを放置したことによる不始末が原因だという事が判明した。つまりアカネは父親に殺されたという事だった。
そしてそれを知った俺は、自分があの時父親にガツンと言えていたら、燃えている家の中に入っていけたらとそう言って自分を責めて、力を求めるようになるはず――。
剛はアカネを救えずに荒んだ日々を送っている自分を俯瞰的に見ていた。
それはまるで目の前で起こっていることが誰かの人生を動画で見せられているようで、自分のことのはずなのになぜか当事者ではないような感覚で日々が過ぎていった。
アカネを救えなかったのは自分の心の弱さのせいだ――そう思ってその弱さを隠すように生きていくことになる剛。
そしてアカネの死から数か月後、剛は『白雪姫症候群』に目覚める。
「この力があれば、俺はもう弱くない……。S級クラスの俺は、最強だ。これで大切な人を失うことはない!!」
当時の俺は、この強大な力で大切な人たちを救えると信じて疑わなかった。でも――
『お前は弱い。自分の弱さに気が付けないままじゃな』
俺が弱い……? そんなはず!!
でもその人のいう事は正しかった。俺はずっと自分の弱さを隠して生きてきた。自分の弱さを認めてこなかったんだ――。
『俺は本当の強い人間になりたい!!』
気が付くと真っ暗な空間に剛はいた。
「ここはどこだ……?」
そう言ってキョロキョロと周りを確認する剛。
『なあ、お前は本当に強くなれるのか? 結局は先生に頼り切りだったんだろ。お前ひとりじゃ、何にもできなかった』
「え、俺……?」
剛は目の前に立つ、もう一人の自分を見て目を丸くする。
でも確かにこいつの言う通りだ。俺は俺一人では何もできなかった。だから受験勉強でもうまくいかずに――。
そう思いながら、俯く剛。
『このままここにいたらいい。ここなら何度もアカネは生き返る。それにお前がアカネを救う道だってあるかもしれないだろう』
「このまま……」
『そうだ。辛い過去を抱えたまま、生きていたくないだろ? だから、ここにいるのがお前のためさ』
確かに、俺の言う通りかもしれないな。このままここで過ごして、アカネを今度こそ助けるんだ――。
『あっちの世界は辛いことばかりだから』
そう言って笑う、もう一人の剛。
「確かに、そうかもな。俺がいた世界は辛いことばかりだったよ」
そう呟きながら、眠る前の世界のことを思い返す剛。そして初めて会った時の暁の姿を思い出す。
そうだよ。俺も先生みたいな教師になりたくて――
「……すまんな、俺。やっぱりここにはいられない。だって、俺は暁先生みたいな教師になりたいんだからさ」
そう言って、剛はもう一人の剛ににやりと笑いかける。
『……そっか。お前はその道を選ぶんだな。後悔は、ないのか?』
もう一人の剛は心配そうに、剛に問いかけた。
「大丈夫さ。俺は火山剛だぜ! こんなところで燃え尽きるわけないだろ?」
『ははっ。それもそうか!』
そう言って、剛たちは笑いあった。
『もう一人の俺、そろそろ起きる時間だ。もうこっちに来るんじゃないぞ』
「おう! ……なあ。そういえば、ここって一体どこなんだ?」
剛がそう問うと、もう一人の剛は、
『お前の心の中だよ』
と言いながら、笑って消えた。
「心の中……そうか」
そして剛の視界が真っ白になった。
いつものベッド、いつもの部屋のはずなのになぜかしっくりこないと感じる剛。
なんだか違うんだよな。いつもと何かが違う気がする――そう思う剛だったが、やっぱりその理由はわからなかった。
「なんなんだ……? 俺はいったいどうしたって言うんだよ」
ため息交じりにそんなことを呟く剛。
でもこの状況、前にあったような――?
剛はそう思いつつも、その状況を思い出せなかった。
「ま、気のせい……かな」
そうして剛はベッドに顔をうずめる。
「俺、何か大切なことを忘れているような気がするんだよな……それに、なんだか嫌な予感が――」
剛がそう思った時、消防車のサイレンが外から聞こえた。
「サイレン? それに嫌な予感が当たって……」
そしてこの消防車が向かう先を剛はなんとなく知っていた。
「行ってみよう。きっとこの嫌な予感だって、何かの気のせいだ!」
それから剛はその消防車を追うように家を出て、嫌な予感のするその場所へと向かった。
そしてその場所にたどり着いた剛は呆然とする。
「やっぱり……」
猛々と燃え盛る炎。そしてその周りには、多くのギャラリーの姿。
この後、母親が泣き叫びながら出てくる――
「離してください!! まだ……まだ家の中に子供が!!」
剛の思った通り、泣き叫びながら消防官に肩を支えられつつ出てくる女性がいた。
この人はアカネの母さんだ――。
剛は冷静にそう思い、アカネの母を見つめていた。
「落ち着いてください!! 今、助けに向かいますから!!」
消防官はなだめるように、アカネの母にそう告げた。
ダメだ……この家はもう――
そして消防官が突入準備をしていると、そこにあった建物は崩れ落ちた。
「アカネ!! アカネえええええ!!」
そこには焼け崩れた家に残る炎の燃える音とアカネの母の悲痛な叫び声だけが聞こえていた。
それを見ていた剛は、足が震えて動くことができず、その場で立ち尽くすしかなかった。
なんで俺はこうなることを知っていた――?
その恐怖と目の前で起こった出来事に剛は動揺していた。
そして炎が鎮火されたあとアカネの死体は、その焼け跡から出てきた。
「困ったら助けるって、何でも頼ってくれって言ったのに、俺はまた何もできなかったのか……」
しかし剛はアカネの死を知っても、涙が出てこなかった。
これは初めてじゃない。前に一度、同じことが……もしかして、これは俺の記憶――?
ふとそんなことを思う剛。
それから今回の火事はアカネの父が吸いかけのたばこを放置したことによる不始末が原因だという事が判明した。つまりアカネは父親に殺されたという事だった。
そしてそれを知った俺は、自分があの時父親にガツンと言えていたら、燃えている家の中に入っていけたらとそう言って自分を責めて、力を求めるようになるはず――。
剛はアカネを救えずに荒んだ日々を送っている自分を俯瞰的に見ていた。
それはまるで目の前で起こっていることが誰かの人生を動画で見せられているようで、自分のことのはずなのになぜか当事者ではないような感覚で日々が過ぎていった。
アカネを救えなかったのは自分の心の弱さのせいだ――そう思ってその弱さを隠すように生きていくことになる剛。
そしてアカネの死から数か月後、剛は『白雪姫症候群』に目覚める。
「この力があれば、俺はもう弱くない……。S級クラスの俺は、最強だ。これで大切な人を失うことはない!!」
当時の俺は、この強大な力で大切な人たちを救えると信じて疑わなかった。でも――
『お前は弱い。自分の弱さに気が付けないままじゃな』
俺が弱い……? そんなはず!!
でもその人のいう事は正しかった。俺はずっと自分の弱さを隠して生きてきた。自分の弱さを認めてこなかったんだ――。
『俺は本当の強い人間になりたい!!』
気が付くと真っ暗な空間に剛はいた。
「ここはどこだ……?」
そう言ってキョロキョロと周りを確認する剛。
『なあ、お前は本当に強くなれるのか? 結局は先生に頼り切りだったんだろ。お前ひとりじゃ、何にもできなかった』
「え、俺……?」
剛は目の前に立つ、もう一人の自分を見て目を丸くする。
でも確かにこいつの言う通りだ。俺は俺一人では何もできなかった。だから受験勉強でもうまくいかずに――。
そう思いながら、俯く剛。
『このままここにいたらいい。ここなら何度もアカネは生き返る。それにお前がアカネを救う道だってあるかもしれないだろう』
「このまま……」
『そうだ。辛い過去を抱えたまま、生きていたくないだろ? だから、ここにいるのがお前のためさ』
確かに、俺の言う通りかもしれないな。このままここで過ごして、アカネを今度こそ助けるんだ――。
『あっちの世界は辛いことばかりだから』
そう言って笑う、もう一人の剛。
「確かに、そうかもな。俺がいた世界は辛いことばかりだったよ」
そう呟きながら、眠る前の世界のことを思い返す剛。そして初めて会った時の暁の姿を思い出す。
そうだよ。俺も先生みたいな教師になりたくて――
「……すまんな、俺。やっぱりここにはいられない。だって、俺は暁先生みたいな教師になりたいんだからさ」
そう言って、剛はもう一人の剛ににやりと笑いかける。
『……そっか。お前はその道を選ぶんだな。後悔は、ないのか?』
もう一人の剛は心配そうに、剛に問いかけた。
「大丈夫さ。俺は火山剛だぜ! こんなところで燃え尽きるわけないだろ?」
『ははっ。それもそうか!』
そう言って、剛たちは笑いあった。
『もう一人の俺、そろそろ起きる時間だ。もうこっちに来るんじゃないぞ』
「おう! ……なあ。そういえば、ここって一体どこなんだ?」
剛がそう問うと、もう一人の剛は、
『お前の心の中だよ』
と言いながら、笑って消えた。
「心の中……そうか」
そして剛の視界が真っ白になった。
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