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第1章 新人編
第3話ー⑭ 異変
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目を覚ました優香は研究の一環もかねて、いろんな検査をすることとなった。所長曰く暴走後の覚醒は珍しい症例のため、とても貴重なデータということらしい。
「じゃあ、私行ってくるね!」
「うん」
キリヤは笑顔で検査室に向かった優香を見て、なんだかいろいろ吹っ切れたみたいだ――と思ったのだった。
「あとは検査に何も問題がなければ……」
そう思いながら、キリヤは緊張した表情で優香が検査を終えるのを待った。
――数分後。
「ありがとうございました! ってキリヤ君、もしかしてここでずっと待っていたの? それに、ふふふ……なんか顔怖いよ?」
「え!?」
それから検査員から検査結果は良好だという事を聞いたキリヤは、安心してようやく顔が緩んだのだった。
そして優香はすぐに任務へ復帰できることになったが、任務続きだったことと療養を兼ねて、キリヤと共に優香は少し長めの休暇をもらうことになった――。
「休暇と言っても、特にやることもないんだよね……」
キリヤはアイスコーヒーを片手に優香にそう告げる。
「そういえば、施設に行きたいって前に言っていたよね? 休暇中は施設で過ごさない?」
優香がニコっとしながらそう言うと、
「施設か……。そうだね! 行こう!!」
キリヤも嬉しそうにそう答えた。
「じゃあ決まりだね。白銀さんには私から言っておくよ!」
「ありがとう、優香」
いつもの優香だ――キリヤはそんなことを思いながら、優香の顔を見つめた。
そしてふと、自分が暴走した時のことを思い出すキリヤ。
『本当に信じられるの? また裏切られるかもしれないよ? それでも耐えられる? 次はきっともうないよ?』
そう言われても自分は元の世界に戻ると決めた。待っている人たちの元へ帰ると……そして目を覚ました。
(優香が目を覚ましたってことは、もう一人の自分と会話してわかり合えたってことだよね)
「ねえ、優香も見たの?」
「見たって? 何のこと?」
優香はきょとんとして、そう言った。
「僕が暴走して昏睡状態になった時、夢の中でもう一人の自分と会話をしたんだよ。その時に君はここにいたほうがいいって言われてね。でも僕はそれを断って、元の世界に戻ってこられたんだ。だから優香も同じようなことがあったのかなって」
キリヤの話を聞き、優香は顎に手を当ててその時のことを思い出そうとしていた。そして、
「私は……うーん。思い出せないかも。何も見ていなかったんじゃない?」
そう言って笑った。
「え……そうなの?」
「うん。だって思い出せないってことは、見ていないってことなんじゃない?」
優香の問いに、キリヤは首をひねった。
「そうなのかな……」
「キリヤ君はそのことをちゃんと覚えているんでしょ?」
「う、うん」
「じゃあやっぱり私は見ていないんだよ」
そう言ってカップに入ったコーヒーを飲む優香。
「そっか……」
優香と自分の違いは何かと考えるキリヤ。しかしいくら考えを巡らせても答えは出なかった。
「……そうだ! じゃあ今度、先生にも聞いてみたらいいじゃない? 先生だって、暴走したことがあるんでしょ? だったらキリヤ君と同じものを見ているかもしれないじゃない!」
確かに――! キリヤはそう思い頷くと、
「そうするよ!」
笑顔でそう答えた。
「じゃあ先生への連絡はよろしくね?」
「うん!」
(そうだ、優香のことも報告しないとなあ。先生、遊びに行くって言ったら喜んでくれるかな――)
「あらあら、ニヤニヤしちゃって」
優香はそう呟きながら、暁のことを考えているであろうキリヤを見つめたのだった。
それから数日後、キリヤたちは久々に保護施設を訪れることになった――。
「じゃあ、私行ってくるね!」
「うん」
キリヤは笑顔で検査室に向かった優香を見て、なんだかいろいろ吹っ切れたみたいだ――と思ったのだった。
「あとは検査に何も問題がなければ……」
そう思いながら、キリヤは緊張した表情で優香が検査を終えるのを待った。
――数分後。
「ありがとうございました! ってキリヤ君、もしかしてここでずっと待っていたの? それに、ふふふ……なんか顔怖いよ?」
「え!?」
それから検査員から検査結果は良好だという事を聞いたキリヤは、安心してようやく顔が緩んだのだった。
そして優香はすぐに任務へ復帰できることになったが、任務続きだったことと療養を兼ねて、キリヤと共に優香は少し長めの休暇をもらうことになった――。
「休暇と言っても、特にやることもないんだよね……」
キリヤはアイスコーヒーを片手に優香にそう告げる。
「そういえば、施設に行きたいって前に言っていたよね? 休暇中は施設で過ごさない?」
優香がニコっとしながらそう言うと、
「施設か……。そうだね! 行こう!!」
キリヤも嬉しそうにそう答えた。
「じゃあ決まりだね。白銀さんには私から言っておくよ!」
「ありがとう、優香」
いつもの優香だ――キリヤはそんなことを思いながら、優香の顔を見つめた。
そしてふと、自分が暴走した時のことを思い出すキリヤ。
『本当に信じられるの? また裏切られるかもしれないよ? それでも耐えられる? 次はきっともうないよ?』
そう言われても自分は元の世界に戻ると決めた。待っている人たちの元へ帰ると……そして目を覚ました。
(優香が目を覚ましたってことは、もう一人の自分と会話してわかり合えたってことだよね)
「ねえ、優香も見たの?」
「見たって? 何のこと?」
優香はきょとんとして、そう言った。
「僕が暴走して昏睡状態になった時、夢の中でもう一人の自分と会話をしたんだよ。その時に君はここにいたほうがいいって言われてね。でも僕はそれを断って、元の世界に戻ってこられたんだ。だから優香も同じようなことがあったのかなって」
キリヤの話を聞き、優香は顎に手を当ててその時のことを思い出そうとしていた。そして、
「私は……うーん。思い出せないかも。何も見ていなかったんじゃない?」
そう言って笑った。
「え……そうなの?」
「うん。だって思い出せないってことは、見ていないってことなんじゃない?」
優香の問いに、キリヤは首をひねった。
「そうなのかな……」
「キリヤ君はそのことをちゃんと覚えているんでしょ?」
「う、うん」
「じゃあやっぱり私は見ていないんだよ」
そう言ってカップに入ったコーヒーを飲む優香。
「そっか……」
優香と自分の違いは何かと考えるキリヤ。しかしいくら考えを巡らせても答えは出なかった。
「……そうだ! じゃあ今度、先生にも聞いてみたらいいじゃない? 先生だって、暴走したことがあるんでしょ? だったらキリヤ君と同じものを見ているかもしれないじゃない!」
確かに――! キリヤはそう思い頷くと、
「そうするよ!」
笑顔でそう答えた。
「じゃあ先生への連絡はよろしくね?」
「うん!」
(そうだ、優香のことも報告しないとなあ。先生、遊びに行くって言ったら喜んでくれるかな――)
「あらあら、ニヤニヤしちゃって」
優香はそう呟きながら、暁のことを考えているであろうキリヤを見つめたのだった。
それから数日後、キリヤたちは久々に保護施設を訪れることになった――。
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