16 / 126
第1章 新人編
第2話ー③ 風船少年
しおりを挟む
夕食の用意ができたことを伝えるために、紗季は優香の部屋に訪れていた。
「お迎えに上がりました。食事のお時間です」
それから優香は紗季の後ろについて歩く。
そして優香は食堂に向かう途中でキリヤの姿がないことに疑問を抱いた。
「あの、キリヤ君は……」
「先ほど、お部屋の前でお呼びしたのですが、桑島様からの返事がなくて。もうお休みになったのかなと思い、それ以上は何も」
「そうですか」
優香は紗季の言葉に違和感を覚える。
通常のキリヤ君ならともかく、任務中のキリヤ君がそんなことをするだろうか。むしろさっきまで何もせずにゴロゴロしていた私の部屋に来て、『ちゃんとして!』って言ってくるような人のはず――。
「何かあったのかな……」
優香はそんなことを考えて歩いていると、正面から七三分けの少年の姿を見つける。
そして少年も優香の存在に気が付き、
「紗季、その人は?」
優香の顔をまじまじと見ながら、紗季にそう尋ねた。
「はい。こちらは明日のパーティで太陽坊ちゃまの警護をすることになっている、糸原優香様です」
「こんにちは。初めまして」
優香は紗季に紹介され、その少年に頭を下げる。
「へえ」
なんだか態度の大きい少年だなあ。浜風さんへの態度を見ると、おそらくこの子が太陽坊ちゃまなんだろうね――。
そんなことを思いながら、太陽を見つめる優香。
「警護役って、2人もいたんだね」
「2人も……?」
まるで自分以外にもいることを知っているような口ぶりね――
そして優香ははっとして、
「もしかして、もう1人のお兄さんにあった?」
笑顔で太陽にそう尋ねた。
「さあ? 知らなーい!」
そう言いながらニヤニヤと笑い、太陽はどこかへ走り去った。
(あれは何か知ってる言い方ね……キリヤ君、こんなに小さい子に何されてるのよ)
そう思いながら、額に手を当てる優香。
「はあ。あの、浜風さん……。太陽坊ちゃまが来客の人が来たときって、いつもどんな感じですか?」
優香が呆れながらそう尋ねると、紗季は困った顔をしながら、
「……お察しの通りです。太陽坊ちゃまはご主人様や奥様から構ってもらえないさみしさからなのか、お客様や警護の方にいつもいたずらをするのです」
「そうですか」
確かにここにいると、さみしさを感じてしまうかもしれない。親から見てもらえないさみしさは、私にも理解はできる。構ってほしくて、自分を見てほしくて、つい間違った行動に走ってしまうもの――。
そう思いながら、優香は俯く。
(今はそうじゃなくて!!)
そして優香は顔を上げて、
「あの、キリヤ君の場所に心当たりはないですか?」
紗季にそう尋ねた。
「たぶん――」
それから優香は紗季に連れられて、キリヤの捜索に向かったのだった。
「お迎えに上がりました。食事のお時間です」
それから優香は紗季の後ろについて歩く。
そして優香は食堂に向かう途中でキリヤの姿がないことに疑問を抱いた。
「あの、キリヤ君は……」
「先ほど、お部屋の前でお呼びしたのですが、桑島様からの返事がなくて。もうお休みになったのかなと思い、それ以上は何も」
「そうですか」
優香は紗季の言葉に違和感を覚える。
通常のキリヤ君ならともかく、任務中のキリヤ君がそんなことをするだろうか。むしろさっきまで何もせずにゴロゴロしていた私の部屋に来て、『ちゃんとして!』って言ってくるような人のはず――。
「何かあったのかな……」
優香はそんなことを考えて歩いていると、正面から七三分けの少年の姿を見つける。
そして少年も優香の存在に気が付き、
「紗季、その人は?」
優香の顔をまじまじと見ながら、紗季にそう尋ねた。
「はい。こちらは明日のパーティで太陽坊ちゃまの警護をすることになっている、糸原優香様です」
「こんにちは。初めまして」
優香は紗季に紹介され、その少年に頭を下げる。
「へえ」
なんだか態度の大きい少年だなあ。浜風さんへの態度を見ると、おそらくこの子が太陽坊ちゃまなんだろうね――。
そんなことを思いながら、太陽を見つめる優香。
「警護役って、2人もいたんだね」
「2人も……?」
まるで自分以外にもいることを知っているような口ぶりね――
そして優香ははっとして、
「もしかして、もう1人のお兄さんにあった?」
笑顔で太陽にそう尋ねた。
「さあ? 知らなーい!」
そう言いながらニヤニヤと笑い、太陽はどこかへ走り去った。
(あれは何か知ってる言い方ね……キリヤ君、こんなに小さい子に何されてるのよ)
そう思いながら、額に手を当てる優香。
「はあ。あの、浜風さん……。太陽坊ちゃまが来客の人が来たときって、いつもどんな感じですか?」
優香が呆れながらそう尋ねると、紗季は困った顔をしながら、
「……お察しの通りです。太陽坊ちゃまはご主人様や奥様から構ってもらえないさみしさからなのか、お客様や警護の方にいつもいたずらをするのです」
「そうですか」
確かにここにいると、さみしさを感じてしまうかもしれない。親から見てもらえないさみしさは、私にも理解はできる。構ってほしくて、自分を見てほしくて、つい間違った行動に走ってしまうもの――。
そう思いながら、優香は俯く。
(今はそうじゃなくて!!)
そして優香は顔を上げて、
「あの、キリヤ君の場所に心当たりはないですか?」
紗季にそう尋ねた。
「たぶん――」
それから優香は紗季に連れられて、キリヤの捜索に向かったのだった。
0
お気に入りに追加
7
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
私を幽閉した王子がこちらを気にしているのはなぜですか?
水谷繭
恋愛
婚約者である王太子リュシアンから日々疎まれながら過ごしてきたジスレーヌ。ある日のお茶会で、リュシアンが何者かに毒を盛られ倒れてしまう。
日ごろからジスレーヌをよく思っていなかった令嬢たちは、揃ってジスレーヌが毒を入れるところを見たと証言。令嬢たちの嘘を信じたリュシアンは、ジスレーヌを「裁きの家」というお屋敷に幽閉するよう指示する。
そこは二十年前に魔女と呼ばれた女が幽閉されて死んだ、いわくつきの屋敷だった。何とか幽閉期間を耐えようと怯えながら過ごすジスレーヌ。
一方、ジスレーヌを閉じ込めた張本人の王子はジスレーヌを気にしているようで……。
◇小説家になろうにも掲載中です!
◆表紙はGilry Drop様からお借りした画像を加工して使用しています
処刑された勇者は二度目の人生で復讐を選ぶ
シロタカズキ
ファンタジー
──勇者は、すべてを裏切られ、処刑された。
だが、彼の魂は復讐の炎と共に蘇る──。
かつて魔王を討ち、人類を救った勇者 レオン・アルヴァレス。
だが、彼を待っていたのは称賛ではなく、 王族・貴族・元仲間たちによる裏切りと処刑だった。
「力が強すぎる」という理由で異端者として断罪され、広場で公開処刑されるレオン。
国民は歓喜し、王は満足げに笑い、かつての仲間たちは目を背ける。
そして、勇者は 死んだ。
──はずだった。
十年後。
王国は繁栄の影で腐敗し、裏切り者たちは安穏とした日々を送っていた。
しかし、そんな彼らの前に死んだはずの勇者が現れる。
「よくもまあ、のうのうと生きていられたものだな」
これは、英雄ではなくなった男の復讐譚。
彼を裏切った王族、貴族、そしてかつての仲間たちを絶望の淵に叩き落とすための第二の人生が、いま始まる──。
ヒロインは始まる前に退場していました
サクラ
ファンタジー
とある乙女ゲームの世界で目覚めたのは、原作を知らない一人の少女。
産まれた時点で本来あるべき道筋を外れてしまっていた彼女は、知らない世界でどう生き抜くのか。
母の愛情、突然の別れ、事故からの死亡扱いで目覚めた場所はゴミ捨て場、
捨てる神あれば拾う神あり?
人の温かさに触れて成長する少女に再び訪れる試練。
そして、本来のヒロインが現れない世界ではどんな未来が訪れるのか。
主人公が7歳になる頃までは平和、ホノボノが続きます。
ダークファンタジーになる予定でしたが、主人公ヴィオの天真爛漫キャラに ダーク要素は少なめとなっております。
同作品を『小説を読もう』『カクヨム』でも配信中。カクヨム先行となっております。
追いつくまで しばらくの間 0時、12時の一日2話更新予定
作者 非常に豆腐マインドですので、悪意あるコメントは削除しますので悪しからず。

婚約者が隣国の王子殿下に夢中なので潔く身を引いたら病弱王女の婚約者に選ばれました。
ユウ
ファンタジー
辺境伯爵家の次男シオンは八歳の頃から伯爵令嬢のサンドラと婚約していた。
我儘で少し夢見がちのサンドラは隣国の皇太子殿下に憧れていた。
その為事あるごとに…
「ライルハルト様だったらもっと美しいのに」
「どうして貴方はライルハルト様じゃないの」
隣国の皇太子殿下と比べて罵倒した。
そんな中隣国からライルハルトが留学に来たことで関係は悪化した。
そして社交界では二人が恋仲で悲恋だと噂をされ爪はじきに合うシオンは二人を思って身を引き、騎士団を辞めて国を出ようとするが王命により病弱な第二王女殿下の婚約を望まれる。
生まれつき体が弱く他国に嫁ぐこともできないハズレ姫と呼ばれるリディア王女を献身的に支え続ける中王はシオンを婿養子に望む。
一方サンドラは皇太子殿下に近づくも既に婚約者がいる事に気づき、シオンと復縁を望むのだが…
HOT一位となりました!
皆様ありがとうございます!

抽選結果は大魔王だったので、剣と魔法と平和と欲に溢れた異世界で、のんびりとスローライフしたいと思います。
蒼樹 煉
ファンタジー
抽選で、大魔王として転生したので、取り敢えず、まったりと魔物生成しながら、一応、大魔王なので、広々とした領土で、スローライフっぽいものを目指していきたいと思います。
※誹謗中傷による「感想」は、お断りです。見付け次第、削除します。
小説家になろう、カクヨムにも掲載しています。
※駄文+誤字脱字+その他諸々でグダグダですが、宜しくお願いします。

料理の上手さを見込まれてモフモフ聖獣に育てられた俺は、剣も魔法も使えず、一人ではドラゴンくらいしか倒せないのに、聖女や剣聖たちから溺愛される
向原 行人
ファンタジー
母を早くに亡くし、男だらけの五人兄弟で家事の全てを任されていた長男の俺は、気付いたら異世界に転生していた。
アルフレッドという名の子供になっていたのだが、山奥に一人ぼっち。
普通に考えて、親に捨てられ死を待つだけという、とんでもないハードモード転生だったのだが、偶然通りかかった人の言葉を話す聖獣――白虎が現れ、俺を育ててくれた。
白虎は食べ物の獲り方を教えてくれたので、俺は前世で培った家事の腕を振るい、調理という形で恩を返す。
そんな毎日が十数年続き、俺がもうすぐ十六歳になるという所で、白虎からそろそろ人間の社会で生きる様にと言われてしまった。
剣も魔法も使えない俺は、少しだけ使える聖獣の力と家事能力しか取り柄が無いので、とりあえず異世界の定番である冒険者を目指す事に。
だが、この世界では職業学校を卒業しないと冒険者になれないのだとか。
おまけに聖獣の力を人前で使うと、恐れられて嫌われる……と。
俺は聖獣の力を使わずに、冒険者となる事が出来るのだろうか。
※第○話:主人公視点
挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点
となります。

異世界転生ファミリー
くろねこ教授
ファンタジー
辺境のとある家族。その一家には秘密があった?!
辺境の村に住む何の変哲もないマーティン一家。
アリス・マーティンは美人で料理が旨い主婦。
アーサーは元腕利きの冒険者、村の自警団のリーダー格で頼れる男。
長男のナイトはクールで賢い美少年。
ソフィアは産まれて一年の赤ん坊。
何の不思議もない家族と思われたが……
彼等には実は他人に知られる訳にはいかない秘密があったのだ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる