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第三章 奥美濃ダンジョン
双子の事情
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探索は順調に進んだ。
「このマウンテンリスは私がやりますね」
「それじゃあ俺は奥のを倒すよ」
「お願いします!」
1匹であれば1人ずつ交代で、複数現れれば協力して、などと臨機応変に魔物を倒していく。
新しい武器に変えた悠斗だったが、やはり店で感じた手馴染みは刀との相性の良さを示していたようだ。魔剣術は刀でも問題なく使用することができている。むしろはじめて使うというのに、数匹魔物を倒した辺りでもう剣よりも扱いやすくなっていたのだ。
金華山ダンジョンのボスを倒すこともあると言っていたように、茜と朔夜は戦い慣れていた。確かに、悠斗とレベル差はあるかもしれないが、その経験によってか、全く違和感がなく共闘ができている。
「朔夜くん、後ろお願い!」
悠斗と茜が魔物を倒そうとしたところで、3人の後ろから魔物が現れた。それを朔夜に頼めば、すぐさま彼は魔法を放つ。
「はい、……サンダー!」
魔物は1匹だけだったので、エリアサンダーという広い範囲を攻撃する魔法ではなく、朔夜は通常攻撃用の魔法を使う。魔物はあっさりと絶命した。
悠斗と茜も、苦戦することなく魔物を倒す。
そうして、3人はどんどんとダンジョンの奥深くへと進んだ。
油断は禁物ではあるが、戦闘に大分余裕があるので、特にセーフエリアを歩いている時は会話が多くなる。また、他の探索者も姿もほとんど見なくなってきたころには、やや個人的な話もするようになった。
「2人はどれぐらいの間隔でダンジョンに潜っているの?」
「週に4回ですね。前は週5~6回だったんですけど、最近は物件探しとかがあって時間がとれなくって」
「物件探し?」
気になったので悠斗が思わず聞き返すと、茜が答える。
「私たち、養護施設で暮らしてるんです。本当は18歳まではいられるんですけど、施設の事情でなるべく早く出なきゃいけないことになってまって……」
17歳という年齢で、探索者としてダンジョンに潜っていることから、悠斗はある程度、彼らの事情を予想していた。彼らを養育するものがおらず、探索者として働かざるを得ないということを。養護施設にいるということは、その予想は外れていなかったようだ。
「今、住むところを探しているんですがなかなかいいところがないんですよね」
「紹介とかはないのかな?」
「なくはないんですけど、施設が紹介してくれる物件の中で、良いものは埋まってて、残ってるのは周辺の治安が良くなかったり、交通の便が悪かったりなところなんですよ」
「それは微妙だね……」
「だから自分たちでも探してるんです」
紹介ではなく、普通に探せば物件はたくさんあるが、今度は選択肢が増える分、色々と考えると、コレという物件がないようで、難航しているようだ。
現在の成人年齢は18歳である。成人する前に養護施設から出なくてはいけない状況さ違法なのでは、と悠斗は話してて思った。しかし、それはそうでもないらしい。なんとか18歳の成人年齢までいられればと調べたものの、不発に終わったという。
「前と同じくらいダンジョン探索したいんですけど、物件探しとか施設を出ていく準備があって難しい、って感じです」
「それは……大変だね……」
そう言うしか悠斗はできなかった。
現在、悠斗は両親から受け継いだ一軒家に住んでいる。家を借りた経験はなく、法律に詳しいわけでもない。この件に関して、悠斗がアドバイスしたり、手助けすることはできないのだ。
「だから、今日は収納の容量を気にせず、ダンジョンボスまで行けるの、すっごくありがたいんです!」
「うん、どしどし魔物を倒してくれて大丈夫だから」
「はい!」
「ありがとうございます!」
ここまでも積極的に魔物を倒していたが、改めて気合を入れて倒しまくることを悠斗たちは確認し合う。そうこうしていると、次の空洞に辿り着いた。そのため、戦闘態勢に入り、この話は終わりとなったのだ。
「このマウンテンリスは私がやりますね」
「それじゃあ俺は奥のを倒すよ」
「お願いします!」
1匹であれば1人ずつ交代で、複数現れれば協力して、などと臨機応変に魔物を倒していく。
新しい武器に変えた悠斗だったが、やはり店で感じた手馴染みは刀との相性の良さを示していたようだ。魔剣術は刀でも問題なく使用することができている。むしろはじめて使うというのに、数匹魔物を倒した辺りでもう剣よりも扱いやすくなっていたのだ。
金華山ダンジョンのボスを倒すこともあると言っていたように、茜と朔夜は戦い慣れていた。確かに、悠斗とレベル差はあるかもしれないが、その経験によってか、全く違和感がなく共闘ができている。
「朔夜くん、後ろお願い!」
悠斗と茜が魔物を倒そうとしたところで、3人の後ろから魔物が現れた。それを朔夜に頼めば、すぐさま彼は魔法を放つ。
「はい、……サンダー!」
魔物は1匹だけだったので、エリアサンダーという広い範囲を攻撃する魔法ではなく、朔夜は通常攻撃用の魔法を使う。魔物はあっさりと絶命した。
悠斗と茜も、苦戦することなく魔物を倒す。
そうして、3人はどんどんとダンジョンの奥深くへと進んだ。
油断は禁物ではあるが、戦闘に大分余裕があるので、特にセーフエリアを歩いている時は会話が多くなる。また、他の探索者も姿もほとんど見なくなってきたころには、やや個人的な話もするようになった。
「2人はどれぐらいの間隔でダンジョンに潜っているの?」
「週に4回ですね。前は週5~6回だったんですけど、最近は物件探しとかがあって時間がとれなくって」
「物件探し?」
気になったので悠斗が思わず聞き返すと、茜が答える。
「私たち、養護施設で暮らしてるんです。本当は18歳まではいられるんですけど、施設の事情でなるべく早く出なきゃいけないことになってまって……」
17歳という年齢で、探索者としてダンジョンに潜っていることから、悠斗はある程度、彼らの事情を予想していた。彼らを養育するものがおらず、探索者として働かざるを得ないということを。養護施設にいるということは、その予想は外れていなかったようだ。
「今、住むところを探しているんですがなかなかいいところがないんですよね」
「紹介とかはないのかな?」
「なくはないんですけど、施設が紹介してくれる物件の中で、良いものは埋まってて、残ってるのは周辺の治安が良くなかったり、交通の便が悪かったりなところなんですよ」
「それは微妙だね……」
「だから自分たちでも探してるんです」
紹介ではなく、普通に探せば物件はたくさんあるが、今度は選択肢が増える分、色々と考えると、コレという物件がないようで、難航しているようだ。
現在の成人年齢は18歳である。成人する前に養護施設から出なくてはいけない状況さ違法なのでは、と悠斗は話してて思った。しかし、それはそうでもないらしい。なんとか18歳の成人年齢までいられればと調べたものの、不発に終わったという。
「前と同じくらいダンジョン探索したいんですけど、物件探しとか施設を出ていく準備があって難しい、って感じです」
「それは……大変だね……」
そう言うしか悠斗はできなかった。
現在、悠斗は両親から受け継いだ一軒家に住んでいる。家を借りた経験はなく、法律に詳しいわけでもない。この件に関して、悠斗がアドバイスしたり、手助けすることはできないのだ。
「だから、今日は収納の容量を気にせず、ダンジョンボスまで行けるの、すっごくありがたいんです!」
「うん、どしどし魔物を倒してくれて大丈夫だから」
「はい!」
「ありがとうございます!」
ここまでも積極的に魔物を倒していたが、改めて気合を入れて倒しまくることを悠斗たちは確認し合う。そうこうしていると、次の空洞に辿り着いた。そのため、戦闘態勢に入り、この話は終わりとなったのだ。
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