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第三章 奥美濃ダンジョン
おすそわけ
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奥美濃ダンジョンに行って、刀を手に入れたその日の晩。悠斗は茜たちとのグループチャットで彼女たちに連絡をした。
『奥美濃ダンジョンでたくさんスイートンとマッスルチキンを倒したから、良かったらもらってくれないかな?』
2人はスイートンとマッスルチキンがおいしいと言っていたので、持って帰ってきた一部をおすそわけしようと思ったのだ。
少し経つと返事がくる。
『えっ?!いいんですか』
『いただけるなら嬉しいです!』
受け取って貰える反応が返ってきたので、悠斗は渡すタイミングを調整することにした。2人は金華山ダンジョンをメインで活動していると聞いている。悠斗がそれに合わせて金華山ダンジョンに行くのが1番良いだろう。そう思って悠斗は2人の予定を尋ねた。
『うん、明日とか金華山ダンジョンに入る予定だったりしない?」
『明日行く予定です』
『じゃあ、持ってくよ』
すぐにでも渡せそうだ、と悠斗は安堵する。その後、茜からメッセージが送られてきた。
『悠斗さんが良ければ、一緒にダンジョン探索しませんか?』
『僕たちのほうがレベルが低いので、足引っ張っちゃうかもですけど……』
元々、おすそわけを渡しに行くついでに、金華山ダンジョンで新しく手に入れた武器を試そうと思っていたので、その話は悠斗としてもちょうど良いものだ。
『ぜひ一緒に探索させて欲しい』
悠斗は提案を二つ返事で了承する。
そして、金華山ダンジョン前で明日何時に集まるか、等を決めて2人とのやりとりは終わったのだ。
翌日。
悠斗は待ち合わせ時間に間に合うように、金華山ダンジョンを訪れた。
すると、少し余裕をもって早めに来たものの、茜たちはもう来ている。大量発生のときに防具がだいぶボロボロになっていたが、新調したらしい新しめの防具を身につけていた。そして茜は大槌を背にしょっており、朔夜は杖を腰にかけている。
そんな2人に近づけば、悠斗に気づいたようで、同時に声をかけてくれた。
「「おはようございます、悠斗さん」」
「おはよう。待たせてごめんね」
時間には十分間に合ってはいるものの、先に来ている2人を待たせたのは明白だ。ゆえに、悠斗が挨拶と謝罪を口にすれば、2人とも気にしていないというように首を横に振る。
「早速入りましょうか」
「そうだね」
準備は3人ともできているので、そのまま探索証をかざし、ゲートを通って、金華山ダンジョンの中に入った。
ダンジョンに入ってすぐの浅いところでは、他の探索者が結構いる。そのため、少し先に進みながら、ダンジョン探索の方針について話し合うことにした。
「2人は普段どんな感じで入っているの?」
「浅いところは今みたいに人が多いので、少し進んで人が少なくなったところを探索するようにしてます」
「ダンジョンボスを目指して進んで、収納の容量に限界がきそうなら戻る、余裕があればダンジョンボスに挑戦する、って感じですね」
「朔夜くんが収納の魔法が使えるんだっけ?」
「はい。でも茜も使えますよ」
「ただ私の収納魔法は容量が少なすぎて……増やすようにはしているんですけど、なかなか……」
無限収納のスキルを持つ悠斗はともかく、通常他の探索者は収納の魔導具か魔法を駆使してダンジョン内で回収したものを持ち帰っているため、その容量に制限がある。魔導具は容量が決まっているが、魔法の場合、使用を繰り返したり、レベルを上げたりすることで容量が増える場合があるのだ。
「今回は容量は気にしないでもらって良いと思うから、ダンジョンボスまで倒しに行くのはどう?」
「そうですね!ボスを倒した方がやっぱ実入りは良いので、ありがたいです!」
嬉しそうに茜が笑う。朔夜も同じ気持ちなようだ。
そんな2人に言っておかなくては、と悠斗は言葉を続けた。
「あと、今回武器を変えようと思ってて、はじめはもしかしたら動きがぎこちないかもしれない。あまり良くなさそうなら、剣も持ってきているからすぐに戻すよ」
「わかりました。新しい武器はその刀ですか?」
悠斗が持つ刀を朔夜が指す。
「うん」
「これ『神威刃物』のですよね」
「そう。昨日帰りに寄って、どうしても使いたくなってしまってね……」
ソロではなく他者とダンジョンに入るのだから慣れた武器の方が良かったかもしれない。悠斗は話をして、2人がもし難色を示したらすぐに剣に持ち変えるつもりでいた。
「良いですね!」
「そういう直感で選ぶ武器は相性が良いって聞きます。私も前は剣だったんですけど、大槌にどうしても惹かれてしまって、スキルも合うものを手に入れられたので、今はこれにしているんです」
しかしながら、2人からは思わぬ肯定的な反応が返ってくる。
そしてどうやら茜も、悠斗と同じく店で見た大槌に惹かれ手にしてみたら軽々と持てたらしい。その後、鑑定石を見てみたら『怪力』のスキルを手に入れていて、大槌を武器に変更したようだ。
「武器を変えるなら早いほうが良いので、今日はどんどん刀を使っちゃってください!」
「たぶん悠斗さんなら大丈夫な気はしますけど、何かあればフォローさせてもらうので」
「ありがとう……!助かるよ」
頼もしい言葉が返ってきて悠斗は感激する。こうして支えてくれる仲間がいるというのは心強いな、と感じた。
と、こうして今日のダンジョン探索のだいたいの方針が決まったので、3人は他の探索者が少なくなるところまで足早に移動し、魔物を倒し始めたのだ。
『奥美濃ダンジョンでたくさんスイートンとマッスルチキンを倒したから、良かったらもらってくれないかな?』
2人はスイートンとマッスルチキンがおいしいと言っていたので、持って帰ってきた一部をおすそわけしようと思ったのだ。
少し経つと返事がくる。
『えっ?!いいんですか』
『いただけるなら嬉しいです!』
受け取って貰える反応が返ってきたので、悠斗は渡すタイミングを調整することにした。2人は金華山ダンジョンをメインで活動していると聞いている。悠斗がそれに合わせて金華山ダンジョンに行くのが1番良いだろう。そう思って悠斗は2人の予定を尋ねた。
『うん、明日とか金華山ダンジョンに入る予定だったりしない?」
『明日行く予定です』
『じゃあ、持ってくよ』
すぐにでも渡せそうだ、と悠斗は安堵する。その後、茜からメッセージが送られてきた。
『悠斗さんが良ければ、一緒にダンジョン探索しませんか?』
『僕たちのほうがレベルが低いので、足引っ張っちゃうかもですけど……』
元々、おすそわけを渡しに行くついでに、金華山ダンジョンで新しく手に入れた武器を試そうと思っていたので、その話は悠斗としてもちょうど良いものだ。
『ぜひ一緒に探索させて欲しい』
悠斗は提案を二つ返事で了承する。
そして、金華山ダンジョン前で明日何時に集まるか、等を決めて2人とのやりとりは終わったのだ。
翌日。
悠斗は待ち合わせ時間に間に合うように、金華山ダンジョンを訪れた。
すると、少し余裕をもって早めに来たものの、茜たちはもう来ている。大量発生のときに防具がだいぶボロボロになっていたが、新調したらしい新しめの防具を身につけていた。そして茜は大槌を背にしょっており、朔夜は杖を腰にかけている。
そんな2人に近づけば、悠斗に気づいたようで、同時に声をかけてくれた。
「「おはようございます、悠斗さん」」
「おはよう。待たせてごめんね」
時間には十分間に合ってはいるものの、先に来ている2人を待たせたのは明白だ。ゆえに、悠斗が挨拶と謝罪を口にすれば、2人とも気にしていないというように首を横に振る。
「早速入りましょうか」
「そうだね」
準備は3人ともできているので、そのまま探索証をかざし、ゲートを通って、金華山ダンジョンの中に入った。
ダンジョンに入ってすぐの浅いところでは、他の探索者が結構いる。そのため、少し先に進みながら、ダンジョン探索の方針について話し合うことにした。
「2人は普段どんな感じで入っているの?」
「浅いところは今みたいに人が多いので、少し進んで人が少なくなったところを探索するようにしてます」
「ダンジョンボスを目指して進んで、収納の容量に限界がきそうなら戻る、余裕があればダンジョンボスに挑戦する、って感じですね」
「朔夜くんが収納の魔法が使えるんだっけ?」
「はい。でも茜も使えますよ」
「ただ私の収納魔法は容量が少なすぎて……増やすようにはしているんですけど、なかなか……」
無限収納のスキルを持つ悠斗はともかく、通常他の探索者は収納の魔導具か魔法を駆使してダンジョン内で回収したものを持ち帰っているため、その容量に制限がある。魔導具は容量が決まっているが、魔法の場合、使用を繰り返したり、レベルを上げたりすることで容量が増える場合があるのだ。
「今回は容量は気にしないでもらって良いと思うから、ダンジョンボスまで倒しに行くのはどう?」
「そうですね!ボスを倒した方がやっぱ実入りは良いので、ありがたいです!」
嬉しそうに茜が笑う。朔夜も同じ気持ちなようだ。
そんな2人に言っておかなくては、と悠斗は言葉を続けた。
「あと、今回武器を変えようと思ってて、はじめはもしかしたら動きがぎこちないかもしれない。あまり良くなさそうなら、剣も持ってきているからすぐに戻すよ」
「わかりました。新しい武器はその刀ですか?」
悠斗が持つ刀を朔夜が指す。
「うん」
「これ『神威刃物』のですよね」
「そう。昨日帰りに寄って、どうしても使いたくなってしまってね……」
ソロではなく他者とダンジョンに入るのだから慣れた武器の方が良かったかもしれない。悠斗は話をして、2人がもし難色を示したらすぐに剣に持ち変えるつもりでいた。
「良いですね!」
「そういう直感で選ぶ武器は相性が良いって聞きます。私も前は剣だったんですけど、大槌にどうしても惹かれてしまって、スキルも合うものを手に入れられたので、今はこれにしているんです」
しかしながら、2人からは思わぬ肯定的な反応が返ってくる。
そしてどうやら茜も、悠斗と同じく店で見た大槌に惹かれ手にしてみたら軽々と持てたらしい。その後、鑑定石を見てみたら『怪力』のスキルを手に入れていて、大槌を武器に変更したようだ。
「武器を変えるなら早いほうが良いので、今日はどんどん刀を使っちゃってください!」
「たぶん悠斗さんなら大丈夫な気はしますけど、何かあればフォローさせてもらうので」
「ありがとう……!助かるよ」
頼もしい言葉が返ってきて悠斗は感激する。こうして支えてくれる仲間がいるというのは心強いな、と感じた。
と、こうして今日のダンジョン探索のだいたいの方針が決まったので、3人は他の探索者が少なくなるところまで足早に移動し、魔物を倒し始めたのだ。
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