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第一章 岐阜ダンジョン
転職活動のはじまり
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1週間前、朝霧 悠斗は新卒から勤めていた会社を辞めた。
売上が年々下がり、組織改編やら人員整理やらが行われ、悠斗のいた部署はなくなることになった。そのときの面談で、希望者は他の部署に異動ができるが、もし退職を選択すれば微々たるものではあるものの、退職金がもらえるという話をされたのだ。
悠斗は悩んだ。
この先、会社に勤め続けてもずっといられるとは限らない。今回は異動により残れても、また少し経ったら今度は希望退職ではなく、問答無用でリストラされるかもしれないのだ。それほど会社の業績は悪かった。
さらに言えば、面談ではっきりとは言わなかったが、悠斗が残ることを選択した場合、上司へははじめからリストラの話がいくような口ぶりだった。
上司には妻と子供二人という家族がいる。悠斗はよく家族の話を聞いてて、とても大事にしていることを知っていた。
その一方で悠斗は一人暮らしの独身だ。養う家族もいないし、上司よりはるかに若い。転職するにしても悠斗のほうが有利だろう。
そう、諸々を考えて悠斗は会社を辞めることに決めたのだ。
やめてから1週間、完全に気が抜けてしまいほぼ家から出なかった。しかしいつまでも何もしないで引きこもっているわけにはいかない。
貯金はこれまでにしてきたものがそこそこあるし、退職金も入っている。失業保険も貰えるようになれば、当面の生活はできるだろう。しかし何年も暮らしていけるほどの余裕は全くない。
生活費の他に、今は亡き両親から継いだ一軒家はできれば手放したくはないから維持費が必要だ。それに前の会社の給料では夢のまた夢だったが、いつか北海道に住む姉に会いに行きたいと考えている。
金を稼がなければならなかった。
「ハローワーク、行くか」
悠斗は1週間の充電期間を経て、ハローワークに行くことに決めたのだ。
ハローワーク、公共職業安定所は退職をしたらまず行く必要のある場所の一つである。本当は退職後すぐに行くように言われていたが、1週間経過してしまった。誤差の範囲だとしてもらいたい。
久しぶりに仕事に行っていたときぐらいに身だしなみを整えた。
家から車で40分ぐらいのところにハローワークがある。
電車でも行けなくはないが、交通費と車の燃料費を考え、あまり差異はなさそうだったので車で行くことにした。ほぼ家に引きこもっていたので、車ならハロワークの帰りに買い物も済ませたいところだ。
そんなことを考えながら、十年以上使っている車に悠斗は乗り込んだ。そろそろ車は限界を迎えるかもしれない。しかし、買い替える余裕は今の悠斗にはないので、騙し騙し使っていた。定期収入が絶たれたのでまだまだ車には現役でいてもらわないといけない。
エンジンをかけて、発進する。
悠斗が住んでいるのは岐阜県の愛知県との県境に近いところだ。
ハローワークがある場所は、会社とは反対の方向にあった。そのため10分も走れば、こちらの方にきたのは久しぶりだなと感じる。
交通量は多いが、渋滞となるほどではない。大体予定した時間通りに悠斗はハローワークへと辿り着いた。
はじまる時間に合わせてやってきたが、駐車場が結構埋まっている。悠斗はなんとかあいているところを見つけ、駐車をした。
車を降りればちょうどハロワークが開いたようで、入り口付近に並んでいた人々が建物の中へと入って行く。その流れに乗って、悠斗も入り口を通り、受付へと向かった。
受付の前にいた職員が、順番に入ってきた人々に対し声をかけている。どうやら用件を聞いて色々ある受付に振り分けているようだ。
「本日はどのようなご用件でしょうか?」
「離職手続きをしたいです」
「かしこまりました」
悠斗も例に漏れず話しかけられたので答えれば、職員は隣に置いている機械を操作し、番号の書かれた紙を発行した。
「こちらの番号でお待ちください」
「ありがとうございます」
番号札を受け取り、悠斗は待合用の椅子に腰掛けた。
用意された椅子は少し空いているが、受付にはまだまだ人がいるので埋まるのも時間の問題だろう。
番号は15番だ。今呼ばれているのは5番なことから、少し時間がかかるかもしれない。悠斗はスマホを取り出し、調べ物をしたり、電子書籍を読んだりする。
「15番の方、Aの窓口までお願いします」
20分程経ったところで、番号が呼ばれた。指定された窓口に向かう。女性の職員が、応対してくれた。
「よろしくお願いします」
用意された椅子に悠斗が座ると、職員は早速と口を開く。
「本日は離職手続きですね」
「はい」
「それではまず……、」
悠斗が頷けば、職員は早速手続きを始める。いくつか書類を出すように言われた。もし持ってきていなければ後日持ってくることとなるが、あらかじめハローワークのHPで調べていた悠斗のは全て揃えてきている。そのためすぐに書類を提出することができた。
職員は悠斗が渡した書類をざっと確認する。問題なかったようで、書類を机の上に置いた職員はパソコンを操作する。
「探索者講習は受講されたことはありませんね」
「はい」
「離職された方はまず探索者講習を受けていただく必要があります。こちら現在申込可能な日程と講習場の一覧です」
「それじゃあこの日程と場所でお願いします」
予定は特にないし、早ければ早いほど良いと悠斗は思った。そのため、悠斗の家から通える場所で、一番早い日程を選んだ。
悠斗の言葉を受けて、職員はパソコンを操作し申込を素早く済ませてくれる。
机の上には悠斗の方に向けた小さなモニタがあった。そこに悠斗が指定した日程と場所が表示される。
「こちらで間違いないでしょうか?」
「大丈夫です」
「それでは『OK』ボタンを押してください」
職員の指示に従って、悠斗は画面をタップした。それで探索者講習の申込が完了したようだ。それを確認すると、何か印刷物があるようで職員が席を外す。
悠斗が退職した会社に入るための就職活動をしたときは、ハローワークではなく就活サイトを使っていた。
今回は転職なので使用するなら転職サイトではあるが、昔とは異なりまずはハローワークに来ないとそういったサイトに登録ができない。
それは数年前から離職をした者は必ずハローワークを訪れ、探索者講習を受けてからでないとなったからだ。
今から30年前。
突如、各国上空の至る所で何かが弾け、世界、地球全体が光に覆われた。その日は現在『始まりの日』と呼ばれている。
まばゆい光が収まった直後、世界全体で様々な変化が起きた。その変化の中でも最も影響を与えたのは『ダンジョン』の出現だ。
ダンジョンの中には、魔物と呼ばれる生き物が存在した。魔物には様々な種類がいる。食べられる魔物だったり、表皮が石で、それが燃料となったり。体液が薬になる魔物もいた。魔物は倒しても一定時間経つとまた沸いて出る。
加えて魔物は必ず『魔石』を体内に持っており、その『魔石』は様々なことに使える。
ダンジョンは資源の宝庫であり、ダンジョンがもたらす資源は人々の生活になくてはならないものとなった。
しかし、資源となりえる魔物は総じて強い。さらにいえば強い魔物には、普通の攻撃はほぼ通用しないといっていい。近代武器で攻撃してもほぼダメージを受けないのだ。
それならばどう倒せばいいのかというと。『始まりの日』の影響の一つとして、人間は『レベル』と『スキル』を持つようになった。魔物を倒した人間は『レベル』が上がる。そのレベルに応じた力を剣などの武器に乗せて攻撃できるようになり、レベルが高ければ強い魔物にも有効な攻撃ができた。
強い魔物からとれる素材で作成できる武器も一定の攻撃力を持つので、それならば多少の強さの魔物ならレベル関係なく倒すことは可能だ。しかし強い魔物を倒せるレベルの人間はまだ数少ないため、素材は足りていない。そのため、強い魔物を倒すことができる数は限られていた。
またダンジョンによって地形は様々であり、環境を整備することはできない。手を加えてもすぐに戻ってしまうからだ。
これらのことから、ダンジョンから資源を確保する方法は人間が直接足で探索をし、弱い魔物から順に倒し、レベルを上げて強くなる他なかった。
国としては、ダンジョンを探索する『探索者』を増やしたい。
けれど、ダンジョンは安全な場所ではなく、魔物に襲われたり、ダンジョンに設置されている罠によって命を落とすことがある。その確率はダンジョン外で生活しているより、はるかに高い。そんな職に強制的に就かせることはできなかった。
あくまで自主的に探索者を職として選ぶ人を増やすため、国は『探索者講習』というものを設け、ダンジョンに関する知識や、武器の扱い方などを学べるようにした。
その講習は無料で受けることができる。そこで興味を持ってもらえれば、という考えだ。探索者になる意思が元々ある者には、新人時代の生存率を上げて、強い探索者を増やすという目的もある。
さらに加えて、『探索者』の仕事に就く可能性が高い求職者に講習を受けることを義務づける法案が、数年前に可決した。講習を受けてそのまま『探索者』になってくれれば、という思惑である。実際求職者が講習を受けるようになってから、『探索者』は増えつつあるようだ。
探索者講習は求職者にとって義務なので、結果的に他の職に選ぶときも、探索者講習を受けた証書が必要となった。例えば転職サイトでは利用の際に証書番号を登録しなければならなかったりする。
職員が悠斗のいる受付へと戻ってくる。
「それではこちらが講習の案内と日程表、受講証になります」
「ありがとうございます」
「集合時間や持ち物は案内に記載されていますので、ご確認ください」
「わかりました」
講習の内容は座学が2日、武器の扱い方等の実践が2日。実践講習の最後に簡単なテストがあり、それをクリアしたら職員引率のもとEランクダンジョンの3階層まで潜る実地講習が1日あって、そこで終わりだ。
実践講習前のテストでクリアできなかったり、適用外となることもあるが、別にペナルティがあるわけではない。
あくまで『探索者』に興味を持ってもらうための施策だからだ。
「それでは以上で手続きは全て完了です。何かご質問はありますか?」
「ないです」
「かしこまりました。本日はお疲れ様でした」
講習の申込の後、微々たる額が出る失業保険の手続きなども行って、ハローワークへきた目的を達成した。
ハローワーク内にはまだまだたくさんの人がいて、空きそうにはない。
長居をしても邪魔になるだけだ、と悠斗は対応してくれた職員にお礼を告げて、すぐさまハローワークを後にした。
売上が年々下がり、組織改編やら人員整理やらが行われ、悠斗のいた部署はなくなることになった。そのときの面談で、希望者は他の部署に異動ができるが、もし退職を選択すれば微々たるものではあるものの、退職金がもらえるという話をされたのだ。
悠斗は悩んだ。
この先、会社に勤め続けてもずっといられるとは限らない。今回は異動により残れても、また少し経ったら今度は希望退職ではなく、問答無用でリストラされるかもしれないのだ。それほど会社の業績は悪かった。
さらに言えば、面談ではっきりとは言わなかったが、悠斗が残ることを選択した場合、上司へははじめからリストラの話がいくような口ぶりだった。
上司には妻と子供二人という家族がいる。悠斗はよく家族の話を聞いてて、とても大事にしていることを知っていた。
その一方で悠斗は一人暮らしの独身だ。養う家族もいないし、上司よりはるかに若い。転職するにしても悠斗のほうが有利だろう。
そう、諸々を考えて悠斗は会社を辞めることに決めたのだ。
やめてから1週間、完全に気が抜けてしまいほぼ家から出なかった。しかしいつまでも何もしないで引きこもっているわけにはいかない。
貯金はこれまでにしてきたものがそこそこあるし、退職金も入っている。失業保険も貰えるようになれば、当面の生活はできるだろう。しかし何年も暮らしていけるほどの余裕は全くない。
生活費の他に、今は亡き両親から継いだ一軒家はできれば手放したくはないから維持費が必要だ。それに前の会社の給料では夢のまた夢だったが、いつか北海道に住む姉に会いに行きたいと考えている。
金を稼がなければならなかった。
「ハローワーク、行くか」
悠斗は1週間の充電期間を経て、ハローワークに行くことに決めたのだ。
ハローワーク、公共職業安定所は退職をしたらまず行く必要のある場所の一つである。本当は退職後すぐに行くように言われていたが、1週間経過してしまった。誤差の範囲だとしてもらいたい。
久しぶりに仕事に行っていたときぐらいに身だしなみを整えた。
家から車で40分ぐらいのところにハローワークがある。
電車でも行けなくはないが、交通費と車の燃料費を考え、あまり差異はなさそうだったので車で行くことにした。ほぼ家に引きこもっていたので、車ならハロワークの帰りに買い物も済ませたいところだ。
そんなことを考えながら、十年以上使っている車に悠斗は乗り込んだ。そろそろ車は限界を迎えるかもしれない。しかし、買い替える余裕は今の悠斗にはないので、騙し騙し使っていた。定期収入が絶たれたのでまだまだ車には現役でいてもらわないといけない。
エンジンをかけて、発進する。
悠斗が住んでいるのは岐阜県の愛知県との県境に近いところだ。
ハローワークがある場所は、会社とは反対の方向にあった。そのため10分も走れば、こちらの方にきたのは久しぶりだなと感じる。
交通量は多いが、渋滞となるほどではない。大体予定した時間通りに悠斗はハローワークへと辿り着いた。
はじまる時間に合わせてやってきたが、駐車場が結構埋まっている。悠斗はなんとかあいているところを見つけ、駐車をした。
車を降りればちょうどハロワークが開いたようで、入り口付近に並んでいた人々が建物の中へと入って行く。その流れに乗って、悠斗も入り口を通り、受付へと向かった。
受付の前にいた職員が、順番に入ってきた人々に対し声をかけている。どうやら用件を聞いて色々ある受付に振り分けているようだ。
「本日はどのようなご用件でしょうか?」
「離職手続きをしたいです」
「かしこまりました」
悠斗も例に漏れず話しかけられたので答えれば、職員は隣に置いている機械を操作し、番号の書かれた紙を発行した。
「こちらの番号でお待ちください」
「ありがとうございます」
番号札を受け取り、悠斗は待合用の椅子に腰掛けた。
用意された椅子は少し空いているが、受付にはまだまだ人がいるので埋まるのも時間の問題だろう。
番号は15番だ。今呼ばれているのは5番なことから、少し時間がかかるかもしれない。悠斗はスマホを取り出し、調べ物をしたり、電子書籍を読んだりする。
「15番の方、Aの窓口までお願いします」
20分程経ったところで、番号が呼ばれた。指定された窓口に向かう。女性の職員が、応対してくれた。
「よろしくお願いします」
用意された椅子に悠斗が座ると、職員は早速と口を開く。
「本日は離職手続きですね」
「はい」
「それではまず……、」
悠斗が頷けば、職員は早速手続きを始める。いくつか書類を出すように言われた。もし持ってきていなければ後日持ってくることとなるが、あらかじめハローワークのHPで調べていた悠斗のは全て揃えてきている。そのためすぐに書類を提出することができた。
職員は悠斗が渡した書類をざっと確認する。問題なかったようで、書類を机の上に置いた職員はパソコンを操作する。
「探索者講習は受講されたことはありませんね」
「はい」
「離職された方はまず探索者講習を受けていただく必要があります。こちら現在申込可能な日程と講習場の一覧です」
「それじゃあこの日程と場所でお願いします」
予定は特にないし、早ければ早いほど良いと悠斗は思った。そのため、悠斗の家から通える場所で、一番早い日程を選んだ。
悠斗の言葉を受けて、職員はパソコンを操作し申込を素早く済ませてくれる。
机の上には悠斗の方に向けた小さなモニタがあった。そこに悠斗が指定した日程と場所が表示される。
「こちらで間違いないでしょうか?」
「大丈夫です」
「それでは『OK』ボタンを押してください」
職員の指示に従って、悠斗は画面をタップした。それで探索者講習の申込が完了したようだ。それを確認すると、何か印刷物があるようで職員が席を外す。
悠斗が退職した会社に入るための就職活動をしたときは、ハローワークではなく就活サイトを使っていた。
今回は転職なので使用するなら転職サイトではあるが、昔とは異なりまずはハローワークに来ないとそういったサイトに登録ができない。
それは数年前から離職をした者は必ずハローワークを訪れ、探索者講習を受けてからでないとなったからだ。
今から30年前。
突如、各国上空の至る所で何かが弾け、世界、地球全体が光に覆われた。その日は現在『始まりの日』と呼ばれている。
まばゆい光が収まった直後、世界全体で様々な変化が起きた。その変化の中でも最も影響を与えたのは『ダンジョン』の出現だ。
ダンジョンの中には、魔物と呼ばれる生き物が存在した。魔物には様々な種類がいる。食べられる魔物だったり、表皮が石で、それが燃料となったり。体液が薬になる魔物もいた。魔物は倒しても一定時間経つとまた沸いて出る。
加えて魔物は必ず『魔石』を体内に持っており、その『魔石』は様々なことに使える。
ダンジョンは資源の宝庫であり、ダンジョンがもたらす資源は人々の生活になくてはならないものとなった。
しかし、資源となりえる魔物は総じて強い。さらにいえば強い魔物には、普通の攻撃はほぼ通用しないといっていい。近代武器で攻撃してもほぼダメージを受けないのだ。
それならばどう倒せばいいのかというと。『始まりの日』の影響の一つとして、人間は『レベル』と『スキル』を持つようになった。魔物を倒した人間は『レベル』が上がる。そのレベルに応じた力を剣などの武器に乗せて攻撃できるようになり、レベルが高ければ強い魔物にも有効な攻撃ができた。
強い魔物からとれる素材で作成できる武器も一定の攻撃力を持つので、それならば多少の強さの魔物ならレベル関係なく倒すことは可能だ。しかし強い魔物を倒せるレベルの人間はまだ数少ないため、素材は足りていない。そのため、強い魔物を倒すことができる数は限られていた。
またダンジョンによって地形は様々であり、環境を整備することはできない。手を加えてもすぐに戻ってしまうからだ。
これらのことから、ダンジョンから資源を確保する方法は人間が直接足で探索をし、弱い魔物から順に倒し、レベルを上げて強くなる他なかった。
国としては、ダンジョンを探索する『探索者』を増やしたい。
けれど、ダンジョンは安全な場所ではなく、魔物に襲われたり、ダンジョンに設置されている罠によって命を落とすことがある。その確率はダンジョン外で生活しているより、はるかに高い。そんな職に強制的に就かせることはできなかった。
あくまで自主的に探索者を職として選ぶ人を増やすため、国は『探索者講習』というものを設け、ダンジョンに関する知識や、武器の扱い方などを学べるようにした。
その講習は無料で受けることができる。そこで興味を持ってもらえれば、という考えだ。探索者になる意思が元々ある者には、新人時代の生存率を上げて、強い探索者を増やすという目的もある。
さらに加えて、『探索者』の仕事に就く可能性が高い求職者に講習を受けることを義務づける法案が、数年前に可決した。講習を受けてそのまま『探索者』になってくれれば、という思惑である。実際求職者が講習を受けるようになってから、『探索者』は増えつつあるようだ。
探索者講習は求職者にとって義務なので、結果的に他の職に選ぶときも、探索者講習を受けた証書が必要となった。例えば転職サイトでは利用の際に証書番号を登録しなければならなかったりする。
職員が悠斗のいる受付へと戻ってくる。
「それではこちらが講習の案内と日程表、受講証になります」
「ありがとうございます」
「集合時間や持ち物は案内に記載されていますので、ご確認ください」
「わかりました」
講習の内容は座学が2日、武器の扱い方等の実践が2日。実践講習の最後に簡単なテストがあり、それをクリアしたら職員引率のもとEランクダンジョンの3階層まで潜る実地講習が1日あって、そこで終わりだ。
実践講習前のテストでクリアできなかったり、適用外となることもあるが、別にペナルティがあるわけではない。
あくまで『探索者』に興味を持ってもらうための施策だからだ。
「それでは以上で手続きは全て完了です。何かご質問はありますか?」
「ないです」
「かしこまりました。本日はお疲れ様でした」
講習の申込の後、微々たる額が出る失業保険の手続きなども行って、ハローワークへきた目的を達成した。
ハローワーク内にはまだまだたくさんの人がいて、空きそうにはない。
長居をしても邪魔になるだけだ、と悠斗は対応してくれた職員にお礼を告げて、すぐさまハローワークを後にした。
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