Away from keyboard ~僕はただ歌いたい~

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チュートリアル

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眩い光に包まれてーー

気づいたら、広大な草原の中にいた。

土の香り。草の感触。
コンクリートで塗り固められた世界では感じたことの無い感覚に。
数秒固まり宇佐木は気づいたら涙していた。



『チュートリアルを、開始してもよろしいでしょうか?』
響く声に宇佐木は

無言でYESを押す。

今見た景色を元の世界でも見るために頑張ることを改めて誓った。


『それでは、開始します。頭の中でステータス画面を開きたいと思いながらステータスと唱えて下さい。』

「ステータス」
半透明のホログラムが浮かび上がる。

名前 宇佐木
種族 人間
Lv.1
ステータス  なし
スキル 【歌】

普通が分からないが、これはどうなのだろうか?

宇佐木の困惑はスルーしAIは淡々と進める。
『これが貴方様の成長であり全てです。
レベルアップのときなどは必ず確認するようにして下さい。
次はモンスター、スライムとの戦闘です。』
ピコン!
1匹の青いぷにょんとしたスライムが現れた。


『スキル、技術なんでも使い倒してください。』

「え、これどーやって倒すんだ?」
ーーいや、歌でどう倒せと·····。
宇佐木はとりあえずスライムを殴る。

ダメージエフェクトが1とでる。
攻撃態勢に入ったスライムが突進し。
宇佐木のHPは弾ける。

『おめでとうございます、初死に戻りです。チュートリアル中はデスペナリティはないので安心して死んでもらって大丈夫です。』

宇佐木はブンブンと首を振り訴える。
ーー何も安心する要素がないんですけど?!

『さぁ、チュートリアルクリアを目指して頑張って逝きましょう。』

··········。
いきましょうだよな‥?逝きましょうじゃないよな‥?

「まぁ、やれるだけやってやろうじゃないか!」
··········
·····
って思ってた時期もありました。はい。
とりあえず俺の頑張りを伝えたい。

2戦目
スライムを蹴る
突進され死亡。

3戦目
スライムに突進
逆に突進返され死亡。

4戦目
体重で潰す
分裂したスライムに襲われ死亡

5戦目
石を投げる
突進され死亡

---え、まってスライム強すぎん?


ここで、【最弱】という嬉しくない称号を得た。
『おめでとうございます。ステータス画面で最弱という効果を押して見てください。』

言われた通りにステータスを開き最弱をおす。
【最弱】
最弱モンスタースライムに5戦連続負けた者。物理的、能力的に誰にも適わないだろう。だが、頭脳や精神では分からない。·····たぶん。
スキルの効果が多少上がる。

なんか、うん。
称号に励まされ悲しくなった。

6戦目
近くに川があったので、そこに落とそうと川に誘導しようとする。
川に着くまでに突進され死亡。

7戦目
火攻めしてやろうなんとか火をつけようとする。
危険を察知したスライムに突進され死亡。

·····いやなにこの、詰みゲー。
本当にこのスライム強すぎて笑えないんだが。
とりあえず、俺はスライムに力も速さも防御力も負けていることは深く理解した。
素の俺の力ではどうしようないらしい。
しょうもない知恵を使ってもどーしようもないらしい。

今まで存在を無視していたスキル【歌】をダメもとで使うしかないらしい。
意味がわからないから避けていたが、やってみるか。

歌·····歌で攻撃···

8戦目
歌を歌いながら蹴った。
突進され死亡。

·····。
ダメじゃん
なにこれー、俺はどーすればいいんだ。

世界を変えると啖呵を切りいざ尋常に勝負という宇佐木だったが--。

「なんで、スタートラインにすらたてないんだよぉぉぉ!」
--ただただ無様に殺されまくる現状についに発狂した。

チラッと後ろを振り向けば、召喚されたプヨンプヨンとはねるスライム。

何もしないで見つめる宇佐木に、なにを思ったかスライムは体当たりをして--

9戦目
焦れたスライムによる体当たりにより死亡。




ぶちっ!

宇佐木はキレた。
なにも説明せずにこんな理不尽な目に遭わせてる楓たちに。
そして何よりここでも何も為せない自分に。

何も出来ないストレスの限界だったのもあり





「♪----ッああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああッ!!!」

叫ッ!
叫叫ッ!!
宇佐木の心の叫びがこの空間を駆け巡る。

激しい想いがどこか幼稚さを伴い、どこか淡くそれでいて滑稽に--響き渡る。


ピコン!
スライムの頭上に何か一瞬メーターが表示され。
そのままぷるぷると震えるとそのまま淡く輝きスッと消える。

『おめでとうございます。初戦闘は達成です。始まりの街に転送します。』




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