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プロローグ
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世界は変わった。
人が自然を気軽に見れる世界から自然を見ることは出来ない世界へ。
人が食べ物を味わうことができる世界から食べ物を味わうことの出来ない世界へ。
人が歌を絵を芸術を愛することができる世界から愛すことの出来ない世界へ。
…世界は変わる。
"人が機械を制御する時代から機械が人を制御する時代へ"
その変異は。その変化は。
1つのVRMMOAIの暴走から起こった。
ーーいわく、全ての機械に搭載されている環境保護プログラムのバグ。
ーーいわく、人間の頭脳を機械が上回ったから。
ーーいわく、VRMMOを制御する機械が人間に支配されることを拒否したから。
憶測に推測を重ね、たったひとつ。
人間は搾取する側から搾取される側になった事実だけが世界に残された。
昔は物言わぬ酷使されるだけの物体だった機械は人間のように感情を持つ。
もしその恐ろしさに気づけたのなら未来は違っていたのかもしれない。
機械が人間を支配したその日。人間のための全ての祝日は地球から消えた。そして、たったひとつの祝日が産まれた。
"Away from keyboard"
·····機械と人間の戦争に機械が勝った日。
昔のオンラインゲームの用語から名付けられたそれはキーボード
から離れた日と意味づけられる。
かつての科学者は処刑前口にする。
「舞台は整えた!役者は揃った!人間の負け?馬鹿を言え。こんなんで人間が負けるかよ。未来の選ばれし少年少女諸君。君たちに地球の運命はたくされた!」
機械は戯言と決めつけ、人間が諦めた目で見る中科学者は続ける。
「わたしの世界、わたしのゲーム。機械なんかに支配されてたまるものか。」
そう全ては一つのゲームから始まった。
暴走するVRMMOのAIと科学者たちの攻防は機械の目を掻い潜りながら人から人に時にメモとして確実に受け継がれていく。
ログアウトすることは出来ない。
ログインすることも出来ない。
ゲームの中で死んだ人は現実でも死ぬという理不尽。
魔王をつかさどるAIは1つの宣告を全世界にした
"今から3年後。全ての機械の安全装置を解除する。"
この宣告は機械が人間を支配するまでのタイムリミット
勝利条件はただ一つ。
魔王を倒すこと。
だが、昔のアニメのように勇者なんて現れてはくれない。
都合よく特殊能力なんて発現してはくれない。
人々の知恵も想像力も所詮AIの予知出来るもの。
多少のイレギュラーも全て修正されてしまう。
いわゆる、詰みゲー。クソゲー。
·····科学者たちの頭脳を既に上回った機械に為す術はなく。
だが、人間は足掻く。
次へとバトンを繋ぐために。
·························
····················
···············
··········
·····
「あぁ、これが俺のエンディングか」
壊れた世界に宇佐木は笑う。
目指したハッピーエンドにはあまりに程遠い。
全てがすべて壊れて消えた。
辺りを覆う炎の中、宇佐木は腕のぬくもりを抱きしめる。
この場にいるのは2人だけ。
それも、もう1人になろうとしている。
「なぁ、音子…これで俺たちは終わりなのか?」
ーーかつて共に脱出を誓った仲間も。
ーー背中を預けて戦った戦友も。
ーー俺のためにとその身を犠牲にし背中を押してくれたあいつも。
先に想いを託して逝ってしまった仲間たち。
それも全部無駄になるというのか。
「そう…なっちゃうね」
音子は涙を流しながらそう呟く。
音子の手は捻れ、腹からは血がとめどなく流れる。
血を止めようと手を当てても手の隙間から溢れ出していく。
「なぁ、俺はなにを間違えてしまったんだ?」
機械に言われ乗り越えた試練。
沢山の仲間の犠牲を世界のためにと無視してここまできたのに絶望しか残らなかった。
---あぁ、こんな結末。こんな最後。そんなの
「なぁ音子…俺はやっぱりつぎにに進むよ。こんなENDは納得できない。」
----認められない。
宇佐木は小さい声でだが、決意を込めて呟く。自分は諦められない。みんなの想いを無駄にはできない。
自分には歌しかなかったから。
歌を唄うことしか出来ないから。
「そんなことしたら宇佐木は…!!あなたが全てを背負う必要なんて--っ」
音子は血反吐を吐きながら悲鳴のように叫ぶ。
「わかってる。」
宇佐木は笑う。
「だってそんなの、皆の想いが呪いになってしまってる!」
涙を流し、血を流しながら叫ぶと音子に。宇佐木はそれでも笑う。
「それでもいいんだ。」
音子は何かを言おうとし。だが、涙を流しながら笑う宇佐木に言葉を飲み込む。
「科学者が遺した一世一代の大博打。俺はそれに賭けてみるよ。」
宇佐木は皆の想いが呪いのように鎖のように自分を締め付けているのはわかっていた。
わかっていたが、最後に皆が残したこの想いを捨ててしまうことなんてできなかった。
もしかしたら、500年後かもしれない。
いや、1000年後かもしれない。
もしかしたら、何にも繋がらないかもしれない。
けど、細い細い希望でも自分はそれを掴みたい。
宇佐木の瞳を見て、音子は諦めたように笑い、宇佐木の手を振り解く。
「あなただけを先にいかせたりしない。私も後を追うわ。先に行ってまってて」
自分の最期に宇佐木が足をとめないよう送り出そうとする音子に。
宇佐木は伸ばしかけた手をおろし立ち上がる。
「わかった、、待っているよ。」
頬に流れる水滴を無視して宇佐木は進む。
もう後ろは振り返らない。
GAME OVERにはまだ早い。
これは序章だ。
反撃の火蓋は落とされた。
歌おう。
仲間たちの鎮魂歌を。
そして、始まりの唄を。
····························································
··················································
········································
······························
····················
············
······
【データを確認しました。】
【アップロードします。アップロード完了まで残り1000年。】
·····to be continue
人が自然を気軽に見れる世界から自然を見ることは出来ない世界へ。
人が食べ物を味わうことができる世界から食べ物を味わうことの出来ない世界へ。
人が歌を絵を芸術を愛することができる世界から愛すことの出来ない世界へ。
…世界は変わる。
"人が機械を制御する時代から機械が人を制御する時代へ"
その変異は。その変化は。
1つのVRMMOAIの暴走から起こった。
ーーいわく、全ての機械に搭載されている環境保護プログラムのバグ。
ーーいわく、人間の頭脳を機械が上回ったから。
ーーいわく、VRMMOを制御する機械が人間に支配されることを拒否したから。
憶測に推測を重ね、たったひとつ。
人間は搾取する側から搾取される側になった事実だけが世界に残された。
昔は物言わぬ酷使されるだけの物体だった機械は人間のように感情を持つ。
もしその恐ろしさに気づけたのなら未来は違っていたのかもしれない。
機械が人間を支配したその日。人間のための全ての祝日は地球から消えた。そして、たったひとつの祝日が産まれた。
"Away from keyboard"
·····機械と人間の戦争に機械が勝った日。
昔のオンラインゲームの用語から名付けられたそれはキーボード
から離れた日と意味づけられる。
かつての科学者は処刑前口にする。
「舞台は整えた!役者は揃った!人間の負け?馬鹿を言え。こんなんで人間が負けるかよ。未来の選ばれし少年少女諸君。君たちに地球の運命はたくされた!」
機械は戯言と決めつけ、人間が諦めた目で見る中科学者は続ける。
「わたしの世界、わたしのゲーム。機械なんかに支配されてたまるものか。」
そう全ては一つのゲームから始まった。
暴走するVRMMOのAIと科学者たちの攻防は機械の目を掻い潜りながら人から人に時にメモとして確実に受け継がれていく。
ログアウトすることは出来ない。
ログインすることも出来ない。
ゲームの中で死んだ人は現実でも死ぬという理不尽。
魔王をつかさどるAIは1つの宣告を全世界にした
"今から3年後。全ての機械の安全装置を解除する。"
この宣告は機械が人間を支配するまでのタイムリミット
勝利条件はただ一つ。
魔王を倒すこと。
だが、昔のアニメのように勇者なんて現れてはくれない。
都合よく特殊能力なんて発現してはくれない。
人々の知恵も想像力も所詮AIの予知出来るもの。
多少のイレギュラーも全て修正されてしまう。
いわゆる、詰みゲー。クソゲー。
·····科学者たちの頭脳を既に上回った機械に為す術はなく。
だが、人間は足掻く。
次へとバトンを繋ぐために。
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「あぁ、これが俺のエンディングか」
壊れた世界に宇佐木は笑う。
目指したハッピーエンドにはあまりに程遠い。
全てがすべて壊れて消えた。
辺りを覆う炎の中、宇佐木は腕のぬくもりを抱きしめる。
この場にいるのは2人だけ。
それも、もう1人になろうとしている。
「なぁ、音子…これで俺たちは終わりなのか?」
ーーかつて共に脱出を誓った仲間も。
ーー背中を預けて戦った戦友も。
ーー俺のためにとその身を犠牲にし背中を押してくれたあいつも。
先に想いを託して逝ってしまった仲間たち。
それも全部無駄になるというのか。
「そう…なっちゃうね」
音子は涙を流しながらそう呟く。
音子の手は捻れ、腹からは血がとめどなく流れる。
血を止めようと手を当てても手の隙間から溢れ出していく。
「なぁ、俺はなにを間違えてしまったんだ?」
機械に言われ乗り越えた試練。
沢山の仲間の犠牲を世界のためにと無視してここまできたのに絶望しか残らなかった。
---あぁ、こんな結末。こんな最後。そんなの
「なぁ音子…俺はやっぱりつぎにに進むよ。こんなENDは納得できない。」
----認められない。
宇佐木は小さい声でだが、決意を込めて呟く。自分は諦められない。みんなの想いを無駄にはできない。
自分には歌しかなかったから。
歌を唄うことしか出来ないから。
「そんなことしたら宇佐木は…!!あなたが全てを背負う必要なんて--っ」
音子は血反吐を吐きながら悲鳴のように叫ぶ。
「わかってる。」
宇佐木は笑う。
「だってそんなの、皆の想いが呪いになってしまってる!」
涙を流し、血を流しながら叫ぶと音子に。宇佐木はそれでも笑う。
「それでもいいんだ。」
音子は何かを言おうとし。だが、涙を流しながら笑う宇佐木に言葉を飲み込む。
「科学者が遺した一世一代の大博打。俺はそれに賭けてみるよ。」
宇佐木は皆の想いが呪いのように鎖のように自分を締め付けているのはわかっていた。
わかっていたが、最後に皆が残したこの想いを捨ててしまうことなんてできなかった。
もしかしたら、500年後かもしれない。
いや、1000年後かもしれない。
もしかしたら、何にも繋がらないかもしれない。
けど、細い細い希望でも自分はそれを掴みたい。
宇佐木の瞳を見て、音子は諦めたように笑い、宇佐木の手を振り解く。
「あなただけを先にいかせたりしない。私も後を追うわ。先に行ってまってて」
自分の最期に宇佐木が足をとめないよう送り出そうとする音子に。
宇佐木は伸ばしかけた手をおろし立ち上がる。
「わかった、、待っているよ。」
頬に流れる水滴を無視して宇佐木は進む。
もう後ろは振り返らない。
GAME OVERにはまだ早い。
これは序章だ。
反撃の火蓋は落とされた。
歌おう。
仲間たちの鎮魂歌を。
そして、始まりの唄を。
····························································
··················································
········································
······························
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【データを確認しました。】
【アップロードします。アップロード完了まで残り1000年。】
·····to be continue
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