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暴走
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シーンと静まり返った室内にはクロヴィスのプラムを呼ぶ虚しい叫びだけが響いていた。
王太子たちはかける言葉を失いその様子を見守る中、アンスリウムがヨロヨロとクロヴィスの側に近づく。
「く、クロヴィスさん。落ち着いて下さい。プラムさんもクロヴィスさんのそんな姿見たくないと思うはずです。」
その言葉にクロヴィスは動きを止める。
もし、クロヴィスの顔を見ることが出来たのなら皆必死に止めたはずだ。
アンスリウムに余計なことを言わせないために。
だが、アンスリウムはクロヴィスの変化に気づかず尚も続ける。
「プラムさんのことは…とても悲しいです。だけど!前を向いて頑張らなきゃ。」
目に涙を浮かべながら笑うアンスリウムにクロヴィスも顔を上げ笑顔を向ける。
アンスリウムもホッとしたように、クロヴィスの名前を呼び、手を握ろうと手を伸ばす。
「クロヴィ——」
だがそれは、
「アンスリウム!危ないっ!」
魔術師くんがアンスリウムを引っ張ったことより妨げられた。
そして、アンスリウムがいた所には数秒遅れて風の刃が通り過ぎる。
アンスリウムが、呆然とそれを見る中。
クロヴィスは笑顔を一変。
無表情で舌打ちをし、虚ろな目でアンスリウムたちを見つめる。
「あぁーあ、なんで避けるかなぁー。せっかく僕が痛くないよう一発で殺してあげようとしたのに。」
アンスリウムはクロヴィスの豹変に、驚き言葉がでない。
クロヴィスは構わず淡々と言葉を紡ぐ。
「何を言うのかと思ったら、謝罪でもなく。プラムが僕のこんな姿なんて望んでない?前を見て歩け??」
クロヴィスは鼻で笑いながらゆっくりとアンスリウムに近づく。
アンスリウムは殺気にガタガタと震えることしか出来ず、ただクロヴィスを見つめていた。
「本当…。
——バカにすんな。」
そう言い、ユラユラと近づくクロヴィスに魔術師くんは異議を唱える。
「お前!平民のくせに何様のつもりなの?!せっかくアンスリウムが君のために慰めてあげたのに!」
そう言い、牽制のためにか投げられたファイアーボールを。
「だから?」
——それがどーした。
それを、剣を軽く振るだけで胡散させながら冷めた目でクロヴィスは魔術師くんを見つめる。
「お前もさ、なんでプラムに謝らないの?なんで、自分は関係ないみたいに高みの見物なの?」
あまりの出来事に固まっている魔術師くんに。だが、返事は求めていないのかそのまま言葉を紡ぐ。
「本当に。君たちって自分勝手だよね。」
魔術師くんの首に刃を、当てながらクロヴィス。
「そんなに。アンスリウムが死ぬのが見たくないのなら君から死にな。」
そういい、刃を振りかぶり——
そのまま、王太子に向かって切りかかった。
「不意打ちで殺そうとするなら、もっと分かりにくくしなよ。」
ニヤニヤと笑っていう、クロヴィスに。
王太子は、黙るしかなかった。
何故なら。今の攻撃は魔法で何重にも隠蔽し。
——しかも。
「王家の秘術である、妖精の力も借りているのにね。」
固まる王太子に、尚もクロヴィスは続ける。
「あぁ、本当に君たち弱い。こんなことなら最初にさっさと殺しておくべきだったかな。」
ユラユラと、だが隙はなく歩き回るにクロヴィスに。
「俺たちは君に何かしたのか?」
堪らず、王太子が尋ねる。
確かにプラムが死んでしまったのはこちらの不手際もある。
だが、クロヴィスの行動の節々には何年もの恨みがあるように見える。
「恨み?そんなもので収まりきるようなものではないよ。でも、そんなことはどうでもいいでしょ。どーせ君たちは死ぬんだ。関係ない。」
「そんなことをしたら、国が黙ってないぞ」
ここにいるのは国の重鎮の子供達だ。
そんなことをすれば死刑は免れない。
「うるさい。」
王太子の。すぐ横を魔法が通り過ぎる。
「ねぇ、この世界はね。アンスリウムが死ねばループするの。だから、僕がプラムに会うにはアンスリウムを殺す必要がある。わかった?」
黒くドロリと濁った目を見つめ、王太子は思う。
——狂っている。と。
「そんなこと、知るか!君のそんな妄言に僕たちを巻き込むな。」
いつの間に移動したのか、魔術師くんはプラムの首に短剣を当てながら狂ったように叫ぶ。
「君は死体でもプラムのことがすきなんでしょ?ほらほら、君の大好きなプラムの体に新たな傷がついちゃうよ。それが嫌なら武器を下ろして僕たちを解放しろ。」
「あは、あははははハハハハハハハっ!今更なにを、そんなことをしても変わらないよ。本当にバカだね。君は僕の地雷を踏み抜いた。」
狂ったように笑うクロヴィスの周りにありえない量の魔力が渦巻く。
「どーせ、この世界は動かぬ世界。回らぬ世界。
——アンスリウムが死んだら終わる世界。」
可視化できるようになるまでに凝縮された魔力がクロヴィスの言の葉に合わせて踊る。
「おい、何を言っている!やめろ!」
「まるで、ここは閉じられた鳥かご。空虚な妄想。こんな、つまらない世界。進まない世界。」
慌てて王太子たちが、クロヴィスを止めようと魔法を投げる。
だが、クロヴィスの周りに張り巡らされている障壁により全て跳ね返された。
「僕が終わらせてあげよう。
——消しされ。」
それは、一瞬のことだった。
王太子はもちろん、学園も王城も全てが水のように蒸発した。
後に残ったのは、プラムとその傍に立つクロヴィスだけだった。
「あぁー、ここまでするつもりはなかったのに。」
まぁ、しょうがないか。
遠くに見える光を見ながら、クロヴィスはボンヤリと思う。
「初めて。ループする世界に感謝するよ。」
これは、僕の…俺の油断が招いた結末。
俺の中に新たに加わった一つの業。
クロヴィスはおもむろに胸に手を当て、一つの光の塊を取り出す。
それを、プラムの胸に近づけると、それは静かに吸い込まれるように消えていった。
「次の世界では。君を幸せに導けるといいな。」
その言葉を最後にクロヴィスは光に呑まれる。
世界は回る。
同じ時間を回る。
繰り返される時間。
変わらない一つの結末。
だが。それは一つの異分子により変わる。
プラムが光に飲み込まれる直前。
プラムの体の周りを柔らかな光が覆う。
そして。世界は光に飲み込まれ。
——また。新たな世界が構築された。
王太子たちはかける言葉を失いその様子を見守る中、アンスリウムがヨロヨロとクロヴィスの側に近づく。
「く、クロヴィスさん。落ち着いて下さい。プラムさんもクロヴィスさんのそんな姿見たくないと思うはずです。」
その言葉にクロヴィスは動きを止める。
もし、クロヴィスの顔を見ることが出来たのなら皆必死に止めたはずだ。
アンスリウムに余計なことを言わせないために。
だが、アンスリウムはクロヴィスの変化に気づかず尚も続ける。
「プラムさんのことは…とても悲しいです。だけど!前を向いて頑張らなきゃ。」
目に涙を浮かべながら笑うアンスリウムにクロヴィスも顔を上げ笑顔を向ける。
アンスリウムもホッとしたように、クロヴィスの名前を呼び、手を握ろうと手を伸ばす。
「クロヴィ——」
だがそれは、
「アンスリウム!危ないっ!」
魔術師くんがアンスリウムを引っ張ったことより妨げられた。
そして、アンスリウムがいた所には数秒遅れて風の刃が通り過ぎる。
アンスリウムが、呆然とそれを見る中。
クロヴィスは笑顔を一変。
無表情で舌打ちをし、虚ろな目でアンスリウムたちを見つめる。
「あぁーあ、なんで避けるかなぁー。せっかく僕が痛くないよう一発で殺してあげようとしたのに。」
アンスリウムはクロヴィスの豹変に、驚き言葉がでない。
クロヴィスは構わず淡々と言葉を紡ぐ。
「何を言うのかと思ったら、謝罪でもなく。プラムが僕のこんな姿なんて望んでない?前を見て歩け??」
クロヴィスは鼻で笑いながらゆっくりとアンスリウムに近づく。
アンスリウムは殺気にガタガタと震えることしか出来ず、ただクロヴィスを見つめていた。
「本当…。
——バカにすんな。」
そう言い、ユラユラと近づくクロヴィスに魔術師くんは異議を唱える。
「お前!平民のくせに何様のつもりなの?!せっかくアンスリウムが君のために慰めてあげたのに!」
そう言い、牽制のためにか投げられたファイアーボールを。
「だから?」
——それがどーした。
それを、剣を軽く振るだけで胡散させながら冷めた目でクロヴィスは魔術師くんを見つめる。
「お前もさ、なんでプラムに謝らないの?なんで、自分は関係ないみたいに高みの見物なの?」
あまりの出来事に固まっている魔術師くんに。だが、返事は求めていないのかそのまま言葉を紡ぐ。
「本当に。君たちって自分勝手だよね。」
魔術師くんの首に刃を、当てながらクロヴィス。
「そんなに。アンスリウムが死ぬのが見たくないのなら君から死にな。」
そういい、刃を振りかぶり——
そのまま、王太子に向かって切りかかった。
「不意打ちで殺そうとするなら、もっと分かりにくくしなよ。」
ニヤニヤと笑っていう、クロヴィスに。
王太子は、黙るしかなかった。
何故なら。今の攻撃は魔法で何重にも隠蔽し。
——しかも。
「王家の秘術である、妖精の力も借りているのにね。」
固まる王太子に、尚もクロヴィスは続ける。
「あぁ、本当に君たち弱い。こんなことなら最初にさっさと殺しておくべきだったかな。」
ユラユラと、だが隙はなく歩き回るにクロヴィスに。
「俺たちは君に何かしたのか?」
堪らず、王太子が尋ねる。
確かにプラムが死んでしまったのはこちらの不手際もある。
だが、クロヴィスの行動の節々には何年もの恨みがあるように見える。
「恨み?そんなもので収まりきるようなものではないよ。でも、そんなことはどうでもいいでしょ。どーせ君たちは死ぬんだ。関係ない。」
「そんなことをしたら、国が黙ってないぞ」
ここにいるのは国の重鎮の子供達だ。
そんなことをすれば死刑は免れない。
「うるさい。」
王太子の。すぐ横を魔法が通り過ぎる。
「ねぇ、この世界はね。アンスリウムが死ねばループするの。だから、僕がプラムに会うにはアンスリウムを殺す必要がある。わかった?」
黒くドロリと濁った目を見つめ、王太子は思う。
——狂っている。と。
「そんなこと、知るか!君のそんな妄言に僕たちを巻き込むな。」
いつの間に移動したのか、魔術師くんはプラムの首に短剣を当てながら狂ったように叫ぶ。
「君は死体でもプラムのことがすきなんでしょ?ほらほら、君の大好きなプラムの体に新たな傷がついちゃうよ。それが嫌なら武器を下ろして僕たちを解放しろ。」
「あは、あははははハハハハハハハっ!今更なにを、そんなことをしても変わらないよ。本当にバカだね。君は僕の地雷を踏み抜いた。」
狂ったように笑うクロヴィスの周りにありえない量の魔力が渦巻く。
「どーせ、この世界は動かぬ世界。回らぬ世界。
——アンスリウムが死んだら終わる世界。」
可視化できるようになるまでに凝縮された魔力がクロヴィスの言の葉に合わせて踊る。
「おい、何を言っている!やめろ!」
「まるで、ここは閉じられた鳥かご。空虚な妄想。こんな、つまらない世界。進まない世界。」
慌てて王太子たちが、クロヴィスを止めようと魔法を投げる。
だが、クロヴィスの周りに張り巡らされている障壁により全て跳ね返された。
「僕が終わらせてあげよう。
——消しされ。」
それは、一瞬のことだった。
王太子はもちろん、学園も王城も全てが水のように蒸発した。
後に残ったのは、プラムとその傍に立つクロヴィスだけだった。
「あぁー、ここまでするつもりはなかったのに。」
まぁ、しょうがないか。
遠くに見える光を見ながら、クロヴィスはボンヤリと思う。
「初めて。ループする世界に感謝するよ。」
これは、僕の…俺の油断が招いた結末。
俺の中に新たに加わった一つの業。
クロヴィスはおもむろに胸に手を当て、一つの光の塊を取り出す。
それを、プラムの胸に近づけると、それは静かに吸い込まれるように消えていった。
「次の世界では。君を幸せに導けるといいな。」
その言葉を最後にクロヴィスは光に呑まれる。
世界は回る。
同じ時間を回る。
繰り返される時間。
変わらない一つの結末。
だが。それは一つの異分子により変わる。
プラムが光に飲み込まれる直前。
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