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神獣に敵なし
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私の言葉にまたもや、お頭がキョトンとする。だからそれは相当に気持ち悪いですって。
「嬢ちゃんよお、これからおまえはどんな目に遭うか分かっているのか?」
呆れたように言うお頭。世間知らずだとでも思っているのだろう。
「わかっておりますよ。まずはここにいる男達に凌辱されるのでしょう。そして本依頼である殺人。私を殺してこの林のどこかにでも埋めるおつもりでしょ」
貴族と相対するようににこやかな笑みを作って言ってやった。
「それがわかってて、なんで笑ってんだ?」
ちょっと不気味に思ったらしいお頭。後ろにいる男数人も顔が引きついている。
ルーチェとオスクリタを床に降ろしてやる。そして、再び笑顔で言った。
「だって、そうなるつもりが更々ないからですわ」
言い終わるのと同時に、魔力を膨らませる。まずはこの部屋から誰も出られないようにしなければ。闇の力でこの家を覆うように結界を作る。
「よし。はい、これでどなたもこの建物からは出られませんわ」
「は?なに言ってんだ」
私を連れて来た男が、バカにしたように階下に降りた。扉をガチャガチャする。しかし扉はびくともしない。
「バカな」
窓へと手をかけるが、ガタガタいうだけで全く開かない。
「だったらこうしてやる!」
おもむろにイスを持ち上げて、窓に向かって思い切り投げた。イスは、窓にぶつかって落ちる。窓は何もなかったようにびくともしていなかった。
「お頭!本当に出られねえ!」
軽くパニックになっている男の後頭部を殴るお頭。
「落ち着け。例え出れなくなったとしても所詮魔法だ。この嬢ちゃんをぶっ殺せばすぐに解ける」
「そ、そ、そうか。だったらもう早く殺っちまおうぜ」
まだ、完全には落ち着いていないようだ。
「バカか?こんな上玉、一度も抱かずに殺すなんて勿体ないだろう。きっと生娘だろうしな」
お頭の余裕を感じ取ったのか、他の男達もお頭の意見に賛成したかのように嫌な顔で笑っている。
「ふふ、魔法をあまり知らない皆さんは、意外と肝が据わっているようですね」
魔法の凄さを知らない人というのは、大抵こういう反応をする。
「何を言うか。嬢ちゃんも随分と肝が据わってるぜ。その余裕の顔が恐怖と痛みと快感で歪んでいく様を見るのはきっと、ものすごく楽しいだろうよ」
お頭はどうやら変態さんのようだ。
「私があなた達に捕まるとでも?あなた達が私に捕まえられるのに?」
そう言った私の横には、大きな美しい金と黒の豹がいる。
「なっ!?なんだそいつらは。いつの間に出てきやがった?」
「いつの間にとは?最初からずっと私と一緒におりましたが?」
コテンと首を傾げて見せる。
「いる訳がないだろう!嬢ちゃんが連れてたのは小っせい猫……だったはず」
「そうです、正解ですわ。ですが、猫の姿は仮の姿なんですの。こちらが本当の姿。とっても美しいでしょう」
二匹を背中を優しく撫でる。二匹は応えるように、私の肩に顔を擦り付けた。
「さあ、始めましょう。果たしてこの子達に勝てますか?」
「お、怖気づくな!所詮は獣。銃でやれ!」
お頭が咄嗟にしてはいい判断をする。ナイフではリーチで負けてしまいますものね。でもね、獣は獣でも、ただの獣ではないのですよ。自分に光の結界を張る。
「さ、これで私にはあなた達以外、誰も触れる事は出来ないわ。だからルーチェとオスクリタは暴れちゃってもいいわよ」
『わあい』
『よし』
「殺してはダメよ。どんな罪になろうとも、きちんと自身で償う事が出来る程度にはしておいてね」
向かっていったあの子達に、今のセリフが果たして聞こえたか……少し不安ではあるが、馬車の中で殺すなとは言ったので大丈夫だろう、多分。
「ダメだ!銃すら避けやがる」
「うわあ!いてえ。俺の足に玉当てやがったのは誰だ!?」
「ぐっ、爪が」
「お頭ダメだ。銃じゃ流れ弾が味方に当たっちまう」
大きくはない建物の中で銃を使えばそうなるだろう。ましてや神獣相手に、銃など効くはずもない。
気が付けば、男達は二匹にまとめられ詰め寄られていた。
「へっ、この時を待っていたぜ!!」
他の男達が戦意喪失してる中、お頭だけは諦めていなかった。
「この距離なら流石に外さねえ」
2丁の銃口を、ルーチェとオスクリタに向ける。
「死ねえ!」
言ったお頭の手には銃がなかった。
「え?あれ?」
両手を交互に見て、自分の周りを見て、それより少し遠くを見た時、それを見つけた。
「なんで?」
「作戦は悪くなかったのですけれどね。とっくにこの子達に弾かれましたわ。策士策に溺れるというやつですね。何も言わずに実行すれば少しは違ったかも?まあそれでも無理ですけれど。この子達にそんな武器は効きませんので」
私はお頭の傍まで行った。
「では、皆さま拘束させていただきます。闇の力の拘束ですので注意してください。暴れれば暴れるだけ拘束がきつくなりますので」
闇の力で全員まとめて縛り上げる。
「バカだろ。皆いっぺんになんて縛れるわけがねえ」
そう言ってお頭が隙間を作ろうともがいた。勿論、拘束がグッと強くなる。
「ガッ、いってえ。どうして?こんなに緩々なのに」
「魔法ですから。絶対に解けませんよ」
私の言葉に全員が絶句。
「ふふふ。よし、捕まえたっと」
「嬢ちゃんよお、これからおまえはどんな目に遭うか分かっているのか?」
呆れたように言うお頭。世間知らずだとでも思っているのだろう。
「わかっておりますよ。まずはここにいる男達に凌辱されるのでしょう。そして本依頼である殺人。私を殺してこの林のどこかにでも埋めるおつもりでしょ」
貴族と相対するようににこやかな笑みを作って言ってやった。
「それがわかってて、なんで笑ってんだ?」
ちょっと不気味に思ったらしいお頭。後ろにいる男数人も顔が引きついている。
ルーチェとオスクリタを床に降ろしてやる。そして、再び笑顔で言った。
「だって、そうなるつもりが更々ないからですわ」
言い終わるのと同時に、魔力を膨らませる。まずはこの部屋から誰も出られないようにしなければ。闇の力でこの家を覆うように結界を作る。
「よし。はい、これでどなたもこの建物からは出られませんわ」
「は?なに言ってんだ」
私を連れて来た男が、バカにしたように階下に降りた。扉をガチャガチャする。しかし扉はびくともしない。
「バカな」
窓へと手をかけるが、ガタガタいうだけで全く開かない。
「だったらこうしてやる!」
おもむろにイスを持ち上げて、窓に向かって思い切り投げた。イスは、窓にぶつかって落ちる。窓は何もなかったようにびくともしていなかった。
「お頭!本当に出られねえ!」
軽くパニックになっている男の後頭部を殴るお頭。
「落ち着け。例え出れなくなったとしても所詮魔法だ。この嬢ちゃんをぶっ殺せばすぐに解ける」
「そ、そ、そうか。だったらもう早く殺っちまおうぜ」
まだ、完全には落ち着いていないようだ。
「バカか?こんな上玉、一度も抱かずに殺すなんて勿体ないだろう。きっと生娘だろうしな」
お頭の余裕を感じ取ったのか、他の男達もお頭の意見に賛成したかのように嫌な顔で笑っている。
「ふふ、魔法をあまり知らない皆さんは、意外と肝が据わっているようですね」
魔法の凄さを知らない人というのは、大抵こういう反応をする。
「何を言うか。嬢ちゃんも随分と肝が据わってるぜ。その余裕の顔が恐怖と痛みと快感で歪んでいく様を見るのはきっと、ものすごく楽しいだろうよ」
お頭はどうやら変態さんのようだ。
「私があなた達に捕まるとでも?あなた達が私に捕まえられるのに?」
そう言った私の横には、大きな美しい金と黒の豹がいる。
「なっ!?なんだそいつらは。いつの間に出てきやがった?」
「いつの間にとは?最初からずっと私と一緒におりましたが?」
コテンと首を傾げて見せる。
「いる訳がないだろう!嬢ちゃんが連れてたのは小っせい猫……だったはず」
「そうです、正解ですわ。ですが、猫の姿は仮の姿なんですの。こちらが本当の姿。とっても美しいでしょう」
二匹を背中を優しく撫でる。二匹は応えるように、私の肩に顔を擦り付けた。
「さあ、始めましょう。果たしてこの子達に勝てますか?」
「お、怖気づくな!所詮は獣。銃でやれ!」
お頭が咄嗟にしてはいい判断をする。ナイフではリーチで負けてしまいますものね。でもね、獣は獣でも、ただの獣ではないのですよ。自分に光の結界を張る。
「さ、これで私にはあなた達以外、誰も触れる事は出来ないわ。だからルーチェとオスクリタは暴れちゃってもいいわよ」
『わあい』
『よし』
「殺してはダメよ。どんな罪になろうとも、きちんと自身で償う事が出来る程度にはしておいてね」
向かっていったあの子達に、今のセリフが果たして聞こえたか……少し不安ではあるが、馬車の中で殺すなとは言ったので大丈夫だろう、多分。
「ダメだ!銃すら避けやがる」
「うわあ!いてえ。俺の足に玉当てやがったのは誰だ!?」
「ぐっ、爪が」
「お頭ダメだ。銃じゃ流れ弾が味方に当たっちまう」
大きくはない建物の中で銃を使えばそうなるだろう。ましてや神獣相手に、銃など効くはずもない。
気が付けば、男達は二匹にまとめられ詰め寄られていた。
「へっ、この時を待っていたぜ!!」
他の男達が戦意喪失してる中、お頭だけは諦めていなかった。
「この距離なら流石に外さねえ」
2丁の銃口を、ルーチェとオスクリタに向ける。
「死ねえ!」
言ったお頭の手には銃がなかった。
「え?あれ?」
両手を交互に見て、自分の周りを見て、それより少し遠くを見た時、それを見つけた。
「なんで?」
「作戦は悪くなかったのですけれどね。とっくにこの子達に弾かれましたわ。策士策に溺れるというやつですね。何も言わずに実行すれば少しは違ったかも?まあそれでも無理ですけれど。この子達にそんな武器は効きませんので」
私はお頭の傍まで行った。
「では、皆さま拘束させていただきます。闇の力の拘束ですので注意してください。暴れれば暴れるだけ拘束がきつくなりますので」
闇の力で全員まとめて縛り上げる。
「バカだろ。皆いっぺんになんて縛れるわけがねえ」
そう言ってお頭が隙間を作ろうともがいた。勿論、拘束がグッと強くなる。
「ガッ、いってえ。どうして?こんなに緩々なのに」
「魔法ですから。絶対に解けませんよ」
私の言葉に全員が絶句。
「ふふふ。よし、捕まえたっと」
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