悪役令嬢、冤罪で一度命を落とすも今度はモフモフと一緒に幸せをつかむ

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 その日の夜、夕食の席で聖女の話をした。
「今日、聖女の神託を受けたというご令嬢が学園に編入してきたの」
「まあ、そうなの?」
「本当か!?しかし胡散臭い話だな」
お母様とおじい様は驚いていた。お父様は全く動じなかった。多分、城の方にはもう情報が入っているのだろう。

「聖女と本人は言ってますが、魔力なんて微々たるものでしたよ」
今日はお兄様が週末でもないのに家にいる。ラフィ殿下が城に戻ったからだそうだ。

「お兄様、聖女様に会ったの?」
「ああ、ラフィ殿下と廊下を歩いていたら偶然な」
「そう……その、どうだった?可愛らしい方だったけれど」
「なんとも。本当に聖女なのか怪しいとは思ったけどね」
お兄様も聖女を好きになってはいなかった。嬉しいのと、安心したのとでちょっと涙ぐんでしまう。

「リーザ、どうした?もしかしてあの聖女に何か言われたか?」
「いいえ、いいえ、そうではないの」
まだ、出会ったばかり。これから変わるかもしれない。気を引き締めて私は話を戻す。

「聖女様の事なのだけれど、ジュスト様もおっしゃっていたわ」
昼間の話を皆に聞かせる。
「それは怪しいわね」
「王族までも欺いたとして極刑になるぞ」
お母様とおじい様は、偽物と断定したようだ。

まだわからない。でも明らかに前とは違う。私はそれが嬉しくてたまらなかった。
部屋に戻ってルーチェとオスクリタを抱きしめる。
「前とは明らかに違うわ。これからどうなるかはわからないけれど、今は喜んでもいいわよね」
『勿論だよ、エリーザ。これからだって大丈夫なんだから』
『あの女は聖女の力など微塵も持っていなかった。光の魔力がほんの少しあるだけだ』

「もしかして、あの時彼女の方へ行ったのって確認しに行ったという事?」
『そうだ。近くでしっかり確認しておこうと思ったんだ』
「そうなると、本当に彼女は嘘をついてるという事?」
『そうなるね。多分、エリーザと同じで前の記憶を持っていて、自分は聖女になるはずだって確信しているんじゃないかな』

確かにそうなのかもしれない。前と同じような時期に力を得るだろうと先走ったという事か。
「それでも油断はしないようにしよう」
油断して、足元を掬われるなんて事にはならないように。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

「もうエリーザは眠ったのかな?」
執務室に入ってきた二匹の小さな豹に聞く。肯定するようにコクンと頷いた。

「ここからは腹を割って話したい」
すると、二匹は元の大きさの美しい豹になった。

『ここからは念話で話すよ』
『お前ほどの魔力ならば問題はないだろう』
二匹の言葉が頭の中に直接聞こえた。
「わかった。ありがとう、神獣たちよ」

『まずはこっちから質問していい?』
ルーチェだった。
「勿論」
『父上は記憶を持っているね』
流石。なんのごまかしもない、ストレートに聞いてくる。

「ああ、全て覚えているよ」
『なら話は早い。あの女は、今回は聖女の力はない』
「聖女ではないと?」
『そうだ。神はあの女に力を与えていない』
『だから、神託を受けたというのは真っ赤な嘘だよ。本人は聖女にいずれなる気でいるみたいだけど』

「もしや、聖女も?」
『正解。記憶を持っているみたい』
『ジュストというやつもだな』
『父上も気付いているだろうけど、チェーザレもだよ』
「そうだな」

『記憶を持っている二人は、聖女に対する感情が前とは全く反応が違ってた。記憶がある事も関係しているんだろうけど、なんていうのかな。根本から興味がないという感じ』
「どういうことだ?」
ルーチェの言っている事が掴めない。
『前は二人ともポーッと呆けていた。まるで魅了されたように』

「聖女の力には魅了もあったのか?」
『いや、ない』
『そもそも神が選定していた時は、しっかりとした聖女たる器の持ち主だったんだ』
「選定していた時とは彼女がいくつの時だ?」
『14の時』
ではそこから15歳になるまでに何かがあったのだろう。

「少し調べる必要があるな」
二匹が頷いた。

『あ、それとだ。第二王子はダメだな。もう落ちた』
「あれは逆にそれでいい。エリーザに近づかなければいいんだ」
『なるほど』
二匹は愉快そうに笑った。

「今回は誰も殺させない。子供たちもラファエロ殿下も」
『そのために僕たちがいるんだ』
『エリーザは勿論、チェーザレもラファエロも守ってやる』
「ありがとう、これほどに強力な助っ人はいないな」

『助っ人っていうなら、自分の息子も仲間に入れてあげなよ』
「チェーザレをか?」
『あいつはもう大きな関門を突破した。聖女にいいようにされる事はない』
『それにね、チェーザレ、物凄く強いよ』
『ラファエロもな』
それはよくわかっている。実際に稽古をつけたのは私と父だ。多分、騎士団に入れたらトップ争い出来るだろう。

「そうだな。そろそろ本格的に魔の森へと入らせるか」
私はうんうんと頷く二匹の頭を優しく撫でた。
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